グリモワール魔法学園【七属性の魔法使い】   作:ゆっけめがね

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※この作品の主人公は原作アプリの転校生ではありません。
 閲覧者様のイメージを壊す可能性があります。
 それでもOKという方は、よろしくお願いします。


第39話 ゲート

良介と鳴子がクエストに行ってる頃、生徒会室。

虎千代とチトセ、聖奈の3人がいた。

 

「そろそろ生徒会の仕事には慣れたか?」

 

虎千代がチトセに訪ねた。

 

「会長・・・学園の地下を捜索したのは【歴代会長に伝えられていた】からよね?」

 

「そうだ。

だがアタシも驚いてる。

まさかこんなに早く許可が出るとはな。

しかも出てきたのが意味不明な代物・・・いったいなんなのか。」

 

聖奈も話に入ってきた。

 

「あれが重要なものでなければ、そもそも秘匿されていなかったでしょう。」

 

「それだ。

なんなのかわからんが、重要なものに違いない。

それは確かだ。」

 

「東雲さんはあの本から霧が入ってくると言っていたけれど?」

 

「今のところ・・・時間停止の魔法もあいつが言ってるだけだ。

わかっているのは未知の魔法がかかっていることだけ。

鵜呑みにはできん。」

 

「生徒会の資料を漁ってみた?

歴代に伝えられていたなら・・・

少なくとも、最初に言いだした誰かは魔導書がなにか知っていることになる。

第7次侵攻後、という細かい指定までしているのだから・・・

執行部が簡単に折れた理由も、その誰かは知っていたんじゃなくて?」

 

「お前は知らないのか。

アタシのクエストのときも、他のときも・・・

まるで見てきたかのように先のことを言ってたお前だ。

知ってることを話してくれれば、膨大な資料を探す手間が省ける。」

 

「・・・会長。

私が調べましょう。

書記が何を言ったところで・・・

裏を取らなければならないことに変わりはありません。」

 

「私は学園の地下にそんな魔導書があることなんて知らなかったわ。」

 

「なぜだ?

これまでのことと今回のことになんの違いがある。」

 

「私が知っているのは【あなたがクエストの際に重傷を負い、引退】。」

 

「お前の助言と良介の活躍のおかげで助かったぞ?

回りくどかったがな。

健康そのものだ。」

 

「だから、あなたは【執行部に地下探索のことをかけあうことができた】。

あなたが引退していたら地下探索はなく、魔導書も発見されない。」

 

「・・・アタシが、引退したから?」

 

虎千代は眉間に皺をよせる。

 

「だから私は、その魔導書の意義についてなにも知らない。」

 

聖奈がチトセに注意する。

 

「・・・生徒会室で荒唐無稽な物語を口にするな。

創作物を発表する場ではない。」

 

「そう?

じゃあ実務的な提案をしましょう。

魔導書の魔法は私が解くわ。」

 

「心当たりがあるのか。」

 

「ええ。

東雲さんの言っていることは間違っていない。

あれは時間停止の魔法だし、使えたのはアイザック・ニュートンだけ。

そして私も、ニュートンについては詳しいつもりよ。」

 

チトセは笑みを見せる。

 

「・・・よし。

すでに東雲と宍戸、誠が着手していて、薫子に人材を探させている。

お前も合流してくれ。

聖奈、お前は生徒会の過去資料を頼む。」

 

「はい。」

 

チトセと聖奈は生徒会室を後にした。

 

   ***

 

同じ頃、風紀委員室。

風子と紗妃がいた。

 

「事件は多けれど・・・学内は平和ですね。

いいことです。」

 

「えーまー、平和ですね。

遊佐 鳴子がおとなしいですから。」

 

「・・・彼女が動かないだけで、そんなに変わるものですか?」

 

「半分じょーだん、半分ホンキですよ。

少なくとも彼女は・・・

教師部と執行部、開発局の人間を脅迫していることがわかっています。」

 

「・・・きょ、脅迫?」

 

風子はいきなり立ち上がると近くの棚に近づき、何かを取り出す。

 

「ここにも・・・ホラ、盗聴器。

こんなに簡単に見つかるってことは、他にもあるんでしょーね。」

 

「ま、まさかそこまで非常識な方とは・・・」

 

「甘いですよ、氷川。

ブドウ糖みてーにあまあまです。

そんなんじゃ遊佐 鳴子にパックリいかれちゃいます。

好物ですからね。」

 

「しかし彼女は立場としてなんの権限も持ってないはず・・・

一般生徒立入厳禁の執行部管轄区域にどうやって入るんですか?」

 

「彼女にとっちゃ、物理的に繋がってればなんの障害もねーのといっしょ。

そーゆー意味じゃ、生天目 つかさと同じくらい厄介ですね。

あの魔導書が見つかってから少しだけ大人しかったですが・・・

新学期が始まってから、また動き出しましたね。

年末年始暇ですかね。」

 

「・・・・・」

 

紗妃が不安そうな顔をする。

 

「じょーだんです。

遊佐 鳴子が【動かない】なら、それなりの理由がある。

動き出したならやはりそれ相応の理由がある。」

 

「・・・なにか思い当たるふしがありそうですね。」

 

「ええ。

彼女がなぜ、今になってりょーすけさんの実力を確認する気になったか・・・

なぜ、見つかった魔道書をほっぽって仲良くクエストに出かけたか・・・

理由ははっきりしませんが、行動から推測はできます。」

 

風子は一瞬、殺気立った表情をした。

 

「は、はぁ。」

 

「遊佐 鳴子はあの魔導書のことをすでに知っている。

から興味をもたない。

ただし、魔導書が見つかったのは予想外のことだった。

だから急遽、りょーすけさんの実力を確認する必要に迫られた。」

 

「・・・・・?

なぜ魔導書が見つかったのが予想外のことだと?」

 

「みんなが彼女の行動に疑問を抱いているからですよ。

【なぜ興味をもたない?】

・・・これまで、そんなこと一度もありませんでした。

要するに彼女は、工作をする時間がなかったんです。」

 

「・・・なるほど・・・では、なぜそれで良介さんとクエストに出る必要が?」

 

「近いうちに何かが起こるからです。

それにりょーすけさんが関わっている。」

 

「・・・そこは論理の飛躍があるようですが。」

 

「否定はしません。

ですがいーセンいってると思いますよ。

前提として、彼女は焦っている。

思わぬ【なにか】に焦っています。

なので、ウソで何重にも塗り固められた彼女の意思が見えてきました。」

 

「・・・全て、それを逆手にとった罠だとしたら・・・」

 

紗妃が再び不安そうな表情をする。

 

「そのときは潔く負けを認めましょう。

なぁに、それでもただの1敗。

それよりこれが本当だと仮定し・・・彼女を焦らせている【なにか】。

それを突き止めたら一発逆転ですよ。」

 

   ***

 

その頃、山奥。

 

「鳴子さん・・・なんですぐに言ってくれなかったんですか。

驚きましたよ。」

 

「いや、ごめん。

見事なタイミングで現れたものだね。」

 

「しかし、魔法、効きましたね。」

 

「・・・そりゃあ、魔法は効くさ。

魔物だからね。

人型の魔物は珍しいんだ。

君とブルームフィールドは騎士と戦ったようだけど。」

 

「ああ、あの時の。」

 

良介はエミリアとのクエストを思い出す。

 

「それが今度は赤ん坊だってさ。

ふふ、魔物の生態も驚きに満ちているね。」

 

なぜか嬉しそうに話す鳴子。

 

「・・・やっぱりあの話は作り話ですか。」

 

「・・・ん?

まさかあの話を信じてたわけじゃないだろ?」

 

「ええ、この地域にそんな話があるならとっくに知ってるはずですからね。」

 

「怪談は僕の作り話だ。

子供を食べた事実なんかない。

ここに村があったとか、そういうのも知らない。」

 

「やっぱりそうですか。」

 

良介はため息をつく。

 

「敵は全部、霧の魔物だよ。

それは間違いない。」

 

「・・・断言できる理由はあるんですか?」

 

良介はなんとなくで聞いてみた。

 

「なぜ断言できるかは・・・そうだね。」

 

鳴子は前を向いた。

目の前に魔物がいた。

 

「ここを切り抜けたら話そうか。」

 

「・・・わかりました。」

 

良介も魔物の方を向いた。

 

「はあっ!」

 

鳴子が両手から電撃を魔物に放つ。

しかし、魔物はその攻撃に耐える。

 

「む、倒しきれないか。」

 

そう言うと、良介の方を向く。

 

「・・・俺が倒せばいいんですね。」

 

「ああ、君の実力も見たいからね。」

 

良介は右手に電撃を溜め始める。

そして、溜まった電撃を魔物に放った。

 

「くらえっ!」

 

魔物は一撃で消し飛んだ。

 

「さすがだね。

それじゃ、次に行こうか。」

 

「わかりました。」

 

良介と鳴子は3体目の魔物の方へと向かった。

その頃、学園の廊下。

梓とつかさがいた。

 

「・・・・・つまらん。」

 

「(あ、やば。)」

 

梓はつかさを見つけた途端、逃げようとする。

 

「おい、どこへ行く。」

 

「え?

え、ええーと・・・自分、今お仕事中でして・・・」

 

「魔物を殺しに行くなら私も行こう。

貴様が受けるクエストだ、強いだろう?」

 

つかさは笑みを浮かべる。

 

「ま、まさかぁ!

自分が進んでクエストなんて受けないッスよ!

ちょっとした探偵の真似事みたいなもんで・・・

てゆーか生天目先輩、最近の一斉出動には参加してないッスよね?」

 

「弱いだろう、あれらの魔物は。」

 

つかさはため息をつく。

 

「よわ・・・そ、そっすか?

ポチもフェイスレスも雪だるまもそれなりに・・・」

 

「それなりだろうが。

侵攻のときに出てきたあいつらには及ばん。

それどころか、侵攻を経てから魔物全体が弱くなっているようだ。」

 

「あぁ・・・大規模に霧を払ったッスからね。

侵攻のあとはだいたいこんなの・・・」

 

「それではつまらん。

私はエジプトに行くぞ。」

 

「ええ、エジプト!?

まさか、いくら生天目先輩でも。」

 

「でも、なんだ?」

 

「・・・にゅ、入国できないっすよ!

あそこに入れるのってIMFと国連軍だけ・・・」

 

「知らん。

エジプトから南半球に渡る。

卒業まで待っていたら死んでしまう。」

 

「(あ、あわわ・・・な、生天目先輩がこんなに思いつめていたなんて・・・

確かに最近、妙に無理して元気出してた風ではあったッスけど・・・)」

 

梓はつかさを止めるため必死に考える。

 

「(どうにかして止めなきゃ・・・し、仕方ないッス・・・)」

 

梓はつかさに話しかける。

 

「ちょ、ちょっとタンマ!

今出てったらオイシイとこに立ち会えないッスよ!」

 

「・・・・・ほう?」

 

「え、ええと、オフレコでお願いしたいッスが・・・

この学園が、魔物のウヨウヨいる所と繋がる可能性があるッス。」

 

「信じがたいことだな。

ん?

なにかあるのか?」

 

「情報源は言えねッスが、確かッス!

遅くても卒業までには!」

 

「・・・なるほど?

もしそれが叶わなかった場合は?」

 

「あぅ・・・じ、自分が先輩と立ち会うッス。」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

しばらく無言が続いた後、つかさは高笑いをした。

 

「ハハハハ!

そこまでか!」

 

「(ホッ・・・)」

 

「いいだろう!

待ってやる!

期待して待っているぞ、服部!」

 

つかさは笑いながら去っていった。

 

「(・・・アレがゲートじゃなかったらどーしよ・・・魔法解けなかったらどーしよ・・・

・・・逃げるか・・・いや、良介先輩にぶつけるのもありッスね。)」

 

梓も後にした。

 

   ***

 

その頃、山奥。

 

「鳴子さん、魔物だと断言できる理由はなんですか?」

 

「魔物だと断言できるのは、僕たちにクエストが下りてきたからさ。

正体不明のものは多少時間がかかっても公権力が対応する。

魔物だということが判明したら、学園に依頼が来る。

つまり・・・」

 

「幽霊の正体はわかっている、と。」

 

「そう。

君が今まで戦ってきた魔物と同じだよ。」

 

「・・・本当ですか?」

 

良介はわざとらしく疑う。

 

「・・・本当だって。

学園に戻ったら誰かにきいてみるといい。

年度初めのオリエンテーションで伝えられるんだ。」

 

「・・・俺、知らないんですけど。」

 

「君は転校生だから知らなかったんだろう。

神凪たちを叱っておかないと。

ちなみに、魔物とそれ以外を見分ける方法は簡単だ。

わかるね?」

 

「倒して消えれば魔物。

なにか残れば違うってことですね。」

 

「ああ、多少荒っぽいがそれが確実なんだ。

だから・・・目の前にいる赤ん坊を倒して消えれば、それは魔物だってことだよ。」

 

「そうですか、わかりました・・・!」

 

良介は目の前にいる魔物に向かう。

雷の肉体強化ですばやく攻撃し、魔物の体勢を崩す。

その隙に鳴子が電撃で魔物を倒す。

 

「倒せましたね。」

 

「良介君、何故今の魔物は僕に倒させたんだい?

君ならさっきの攻撃で即に倒せていただろう?」

 

「ここまでの2体は俺が倒してましたからね。

1体ぐらいは鳴子さんに、と。」

 

「フフ、君は優しいんだね。」

 

「・・・よく言われます。」

 

良介と鳴子は周りを見渡し、魔物がいないことを確認する。

 

「お疲れ様。

全部片付いたようだ。

僕たちの報告が終わったら、正規の部隊がこの一帯を調べて回る。

人海戦術のローラー作戦だよ。

ご苦労なことだね。」

 

「魔物が残っていないか確認するためですか。」

 

「そう、仕事に漏れがないか・・・それと、なにかヒントがないかを探すんだ。

魔物の正体につながるようなものがないかをね。」

 

「魔物の正体・・・ですか。」

 

「・・・僕の目的はそれだよ。

魔物はある日突然、現れるようになった。

なぜ?

いかにして?

とても魅力的な謎だと思わないかい?」

 

「・・・謎ですか。」

 

「自然のものじゃない。

人為的なものとも考えにくい。

では答えはなんだろう。

人類を脅かす、異形の魔物。

その正体はいかに。

・・・というわけで、この辺にしておこう。」

 

「は、はぁ・・・そうですか。」

 

突然、鳴子の態度が変わり良介は少し気が抜けた。

 

「今日は興味深い体験をありがとう。

君が頼られる理由は、その人のよさだね。」

 

「人のよさ・・・ですか。」

 

良介と鳴子は学園に向かった。

 

   ***

 

すこし経って、魔法使いの村。

 

「違うわよ、そこは引いちゃダメなの。

罠なんだから。」

 

「ちがわっ!

あやつの性格からしてただの遊びじゃ!

だいたいなんで貴様がここにおるんじゃ!

不愉快な!」

 

「だって生徒会長に頼まれちゃったし・・・」

 

「この前【私を信じて・・・】とか言っとったじゃろが!

せめてその伏線を消化してから妾に近づけ!」

 

「いやだわ、伏線だなんて・・・あ、そこ、術式が途切れてるわよ。」

 

「ん?

むおぉ・・・やり直しじゃ・・・!」

 

「・・・ほら、途切れる寸前まで戻しといたぞ。」

 

「あら、やるわね誠君。」

 

「なんでお主までそんなことできるんじゃ・・・」

 

「今までいろんな本読んできたからな。

こういうことに関する本ももちろん読んだことがある。」

 

チトセ、アイラ、誠の3人が魔導書の魔法を解こうとしていた。

その状況を天と結希が見ていた。

 

「・・・なにやってるの、この人ら。」

 

「調べるのが面倒くさいから、術式分解と同時に解除魔法の作成してるの。」

 

「は、はぁ!?

魔法の作成がそんな簡単にできるわけないでしょ!?」

 

「常人にはね。

私にも無理。」

 

「・・・この学園、なんなのよ・・・」

 

「まあ東雲 アイラにとっては、短期間とはいえ家族だった相手だから。

ゼロからやるよりは簡単でしょうけど・・・」

 

「まだアイザック・ニュートンがなんたらって話を信じてるの?

そのニュートンが時間停止の魔法を使えたっていう文献もないのに。」

 

「私が信じなくても、魔法が解除できればいいわ。

それに彼女には間違いなく時間停止の魔法がかかってるし・・・

彼女が書いたと思われる魔導書も古くからある。

10年程度で、あそこまで魔法の造詣に深くはなれないしね。」

 

「そう?

私の側にも似たようなのいるけどね。」

 

「本当?

よかったら紹介してくれないかしら。」

 

「(・・・わざと言ってんのかしら・・・)」

 

3人の方はまたもめていた。

 

「おい、そこ違うくないか?」

 

「ええい、口を出すな!

妾1人ならとうにできあがっとったのに!」

 

「あらやだ。

私と誠君がいたからここまで進んでるんでしょう?」

 

「バカな!

てゆーかお主、なんでも知っとるんならこれもじゃろ!

サクッとやったらんかい、サクッと!」

 

「・・・いいの?」

 

「フン。

どーせそんなことじゃろーと思ったわ。」

 

「アドバイスが的確だからな。

解除魔法、できてるんだろ?」

 

「・・・ええ。

といっても、私の解除魔法は制限時間付よ。」

 

「ほーう?

何時間じゃ。」

 

「2秒。」

 

「ぶっ!

全然使い物にならんではないか!」

 

「たったの2秒・・・か。」

 

誠は少し考え込む。

 

「私1人ではそれが限界だったの。

だからあなたたちに完成させてもらおうと・・・」

 

「・・・いや、一度解除してみよう。」

 

誠がチトセにもちかけた。

 

「確かにそうじゃな。

これで霧が出たら・・・面白いことになるぞう。」

 

同時刻、報道部部室。

良介と鳴子が戻ってきていた。

 

「ふむ・・・東雲君と宍戸君だけじゃなく、誠君・・・如月 天・・・それに朱鷺坂 チトセ・・・

如月君はあの性格だ。

宍戸君への対抗心が強いんだろうが・・・

朱鷺坂 チトセがあの本を【調べている】・・・

どうやら、なんでも知ってるわけじゃなさそうだな。」

 

「・・・あの~、なんの話ですか?」

 

独り言を言っている鳴子に良介が尋ねる。

 

「ん?

いやいや、こっちの話だよ。

さあ、魔物を倒した報告に行こう。」

 

良介と鳴子は報告に向かったが何故か生徒会室に呼ばれた。

 

「・・・なんで僕がここに呼ばれるんだい。

事務室でいいはずだろ。」

 

「(なんで俺まで・・・)」

 

虎千代は鳴子に話しかけてきた。

 

「お前と話がしたい。」

 

「・・・過去の生徒会長の【遺言】は見つかったのかい?」

 

「それも含めてだ。

話しにくいこともあるだろうが、2人でどうだ。」

 

「当代の権力者と反体制ゲリラのリーダーが密会・・・そそるよ。

いいね。

だけど僕からの条件は【3人】だ。

良介君も含めてね。」

 

「・・・俺も?」

 

良介は驚愕した。

 

「彼を巻き込むな。

協力してもらってはいるが、一般生徒だ。」

 

「僕だって一般生徒さ。

それも善良な。

嫌なら僕も出て行く。」

 

「・・・・・」

 

虎千代は鳴子を睨みつける。

 

「どちらにしろ関係のあることだ。

今、聞いてもらった方がいい。」

 

「なぜそれがわかる。」

 

「いずれあなたにもわかるさ。

だけど僕には確信がある。

裏も取っている。

ジャーナリストが動く理由は好奇心と根拠だ。

それだけあればいい。」

 

「・・・・・」

 

すると、薫子が結希に話しかけた。

 

「・・・会計、行きますよ。」

 

「は、はっ・・・しかし・・・」

 

薫子は鳴子の方を見る。

 

「遊佐 鳴子。

会長を惑わせるような発言をすれば、私が許しませんよ。」

 

薫子は結希と共に生徒会室から出て行った。

 

「・・・悪いね、良介君。

少しだけ付き合ってくれたまえ。」

 

「・・・ええ。」

 

虎千代と鳴子は話し始めた。

 

「まずはそっちの話を聞こうか。」

 

「こちらに隠すことはもうない。

生徒会の資料を漁った。

【報道部主将と互いに約束を交わした後、封ずる】と書かれていた。

このことを知っていたな。」

 

「(・・・約束?)」

 

「もちろん。

報道部が生徒会に敵対していたのはそのためさ。

執行部に、この繋がりを突き止められないようにという措置だ。

時が経つにつれ忘れ去られたけどね、本来、仲がよかったんだよ。」

 

「書かれていた内容はこうだ。

第8次侵攻に備え、魔導書を開くべし。

第7次侵攻が終わった今、次の侵攻は早くて8年後。

通常なら10年後・・・

なんですぐに準備をする必要がるかアタシにはわからん。」

 

「簡単なことだろ?

魔導書をすぐに調べるようにと遺言があるなら・・・

第8次侵攻は【すぐに】来るってことだ。

それ以外になにがある。」

 

「すぐに・・・侵攻が・・・」

 

良介は少し驚く。

 

「あり得ない。

常識で考えればあり得ない・・・だが、驚いてないな。

魔物には常識が通じない。

そもそもスパンは短くなる傾向にある。

初回の侵攻後、第2次侵攻は70年後だった。

理屈はそれと同じだ。」

 

「魔導書についてもだ。

報道部主将にも同じ遺言が伝わっていただろう。

侵攻後、すぐに読んだはずだ。

なのにお前は魔導書に興味をもたない。

なぜだ?

お前はなにか、決定的なことを知ってるんじゃないのか。」

 

「・・・いいだろう。

ここからは交渉だ。

1つ条件を出す。

朱鷺坂 チトセの情報をもらいたい。」

 

「・・・朱鷺坂の?

お前なら自分で調べられるだろうに。」

 

「出すのか、出さないのか。

それ以外の曖昧な回答は許さない。」

 

鳴子は笑みを見せた。

 

「・・・いいだろう。

出す。」

 

「フフ、目的のためなら仲間を差し出すドライさもあなたのいいところだ。」

 

「生徒のデータベースにアクセスできるお前のことだ。

アタシたちの持っている情報なんて、そう大差ないのはわかってるだろ。」

 

「そうとも。

僕が聞きたかったのはあなたの覚悟だ。

これまで、まがりなりにも敵対してきた僕の要求を呑むかどうか。」

 

「・・・アタシには敵対しているという気持ちはなかった。

まあいい。

魔導書について知っていることを話せ。」

 

良介は鳴子の方を見つめた。

 

「西原 ゆえ子君が空と大地を見たと言っていたね。

瑠璃川君もあの空間の先になにかあると言っていた。」

 

「(あの時に言っていたことか・・・)」

 

「・・・ああ。

それであの本が【ゲート】じゃないかという話になってる。」

 

「・・・ゲート・・・」

 

良介はつぶやくように言った。

 

「あの本は【ゲート】さ。

そしてあの本の向こう側には、確かに世界がある。

いわば【裏】とも言うべき、もう1つの世界だ。」

 

「・・・お前はオカルトや陰謀論が得意だったな。

信用するための・・・」

 

と、突然鳴子は机に手を置いた。

 

「証拠ならある。

あなたが受け入れるかは知らないがね。

僕はアレが【ゲート】で、【もう1つの世界】に繋がっていると知ってる。

魔導書の正体も知ってるから、わざわざ調べる必要もない。

なぜなら・・・行ったことがあるからさ。」

 

「もう1つの・・・世界に・・・?」

 

鳴子の発言に良介は驚きを隠せなかった。


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