グリモワール魔法学園【七属性の魔法使い】   作:ゆっけめがね

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※この作品の主人公は原作アプリの転校生ではありません。
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 それでもOKという方は、よろしくお願いします。


第34話 温泉物語

クエストから2日後。

とある山奥。

 

「んん~!

故郷の空気、やみーですねー!

電車が長かったから、歩くの気持ちいいです。」

 

越水 ソフィア(こしみず そふぃあ)は伸びをした。

 

「ああ、しんど・・・九州って遠いわぁ。

おしりが痛くなってもた・・・」

 

香ノ葉はお尻をさすった。

 

「ほとんど寝てたから気にならなかったな。

で、ソフィアの実家ってどれぐらいかかるんだ?」

 

誠はあくびをしながら尋ねる。

場所は九州の大分。

誠、香ノ葉、葵はソフィアの実家に向かっていた。

本来は良介が付いて行くはずだったのだが、先日のクエストの負傷、そして風子と約束をしてしまったため、急遽誠が行くことになった。

無論、良介が風子とそんな約束していたことは香ノ葉たちも知らないことである。

 

「そうですね・・・徒歩270分くらいでしょうかー?

山の上ですよ!」

 

「に、にひゃくななじゅっぷんー!?」

 

「・・・約4時間半・・・だと・・・」

 

香ノ葉と誠は絶句した。

 

「あのう・・・それは車ですと何分でしょうか?」

 

葵がソフィアに尋ねる。

 

「いま車が通れないんです。

この前、崖が崩れたみたいで。」

 

「う、うそやろ・・・?」

 

「なんでこういう時に限って・・・」

 

「歩いていくのですか?

わたくし、こういったことが初めてでして。」

 

「お散歩しながら行きましょう。

山道も楽しいものがいっぱいですよー!

山の景色は、とってもびゅーりほーで美しいです!

とはいえ日が沈んだら危ないので、なるべく早足で。」

 

「あうぅ・・・話聞いただけで気絶しそうや・・・」

 

「帰りてぇ・・・」

 

香ノ葉と誠は嘆いた。

 

「誠さん、香ノ葉さん、ほらほら、そこにいいものが生えてますよー。」

 

「草やん。」

 

「いや、これは山菜だな。

山に入ってすぐなのにこんなところに生えてるんだな。」

 

「山菜?

山菜は山で採れるのですか?」

 

「おふこーす!

きれいなキノコもたくさん採れますよ!

 

「・・・きれいなキノコって、食べたらあかんのとちゃう?」

 

「へ?

そうなのですか?

おいしいと思いますけど・・・」

 

「色がきれいなキノコはほとんど毒キノコだからな・・・」

 

「ソフィアちゃん、可愛い顔して結構ワイルドやなぁ・・・」

 

「ささ、誠さんも元気出していきましょう。

ごーいんぐまいほーむ!」

 

「はぁ・・・良介のやつ・・・運がいいなぁ・・・」

 

誠は嘆きながら進み始めた。

その頃、良介。

 

「・・・で、風子。

街に来たのはいいが、どうするんだ?

俺は特に決めてないぞ?」

 

「だいじょーぶです。

実は映画のチケットを手に入れまして。」

 

良介と風子は風飛の街中に来ていた。

風子は左手首に、良介は左腕にギプスを巻いたままだった。

 

「映画・・・どんな映画なんだ?」

 

「今話題の恋愛映画だそーで。

かなり人気あるみてーです。」

 

「へえ、それは楽しみだな。

じゃ、早速映画館に向かうか。」

 

「はい、行きましょー。」

 

良介と風子は映画館に向かった。

 

   ***

 

再び山奥。

ソフィアがあるキノコを見つけた。

 

「あっ、このキノコおいしいんです。

小さい時よく食べました。」

 

「まあ、なんと鮮やかな!

自然の恵みですねえ。」

 

「・・・俺には禍々しい色にしか見えないんだけど。」

 

「ちょ、ちょっと!

やめや!

その色完全に毒キノコやないの!」

 

「え?

食べても大丈夫ですよ?

りとるクセがありますが。」

 

「誠さん、香ノ葉さん、わたくし、食べてみたいです。

これも人生経験のため!」

 

「いやいや、それ食べたら経験した瞬間人生終了するぞ!」

 

「んー・・・あ、そしたらこっちの茶色い傘のはどうですか?

これは美味しいですよー。

間違いないです!

色も普通ですし。」

 

ソフィアは近くにあった別のキノコを採ってきた。

 

「・・・あ、ほんまや。

普通のキノコやなぁ。

うーん、でも・・・」

 

「・・・ちょっと待て。

その、キノコ・・・どっかの図鑑で見た記憶が・・・」

 

「生で食べられますよ!

はむっ・・・」

 

ソフィアはキノコにかぶりついた。

 

「あっ!

あらら・・・食べてもた。」

 

「んん!

やみー♪」

 

「・・・大丈夫?

お腹壊さんの・・・?」

 

「のーぷろぶれむです!

歯ごたえ・・・シャキシャキしてます・・・」

 

「本当ですか?

わたくしも・・・」

 

「ちょい待ち、葵ちゃん。

食べたらあかん。」

 

「あっ・・・思い出した。

確かそのキノコ・・・」

 

「美味しいでしゅし、食べるとなんだか楽しい気分になれるんでしゅよ!

ふふ・・・むふふふふ・・・」

 

突然笑い出すソフィア。

 

「・・・ソフィアちゃん?」

 

「そういえば、このキノコが好きな天狗さんがいてですねー。」

 

「まあ、天狗様が。

昔話の中だけかと思っていましたが・・・」

 

「そうでしょう?

ワタシが小さい時からいつも遊んでくれるんでしゅよー。

んは・・・ふふふふ・・・」

 

「・・・毒は無いけど強力な幻惑効果が・・・」

 

「誠はん、それをはよ言ってーな。

吐き出させよ。

誠はんそっち押さえて。」

 

「あいよ、わかった。」

 

誠と香ノ葉が押さえようとする。

 

「しょわねぇしょわねぇ!

吐かんでん平気やきな!」

 

「!?」

 

「・・・なんて言ったんだ、今。」

 

「はよう来ちよ、誠さん!

あんげにしんけんエラしい花あっちね、見ちょくれんかえ!」

 

ソフィアは誠の手を引っ張り連れて行こうとする。

 

「待て待て!

どこに行こうとしてんだお前!?」

 

「ソフィアちゃん、危ない!

そっち崖やで!」

 

「ソフィアさん、急に言葉が変わりましたね。」

 

「コテコテの大分弁やで。

普段のしゃべりはなんなん?

演技?」

 

「ちがうちゃ、ソフィな、東京ン言葉よう話されんきなぁ・・・

英語ン方がようできっき・・・やき・・・

そげんくされ言わんじくり!」

 

ソフィアは香ノ葉に抱きつく。

 

「ぐあー、重いわぁ!

ちょっと誠はん、手伝ってぇな!

あ、あんまり変なトコ触らんといてよ。」

 

「へいへい、わかってるわかってる。

たく、早く元に戻れよ・・・」

 

「あんな、もうちょっとで見えちくるきね。

お父さんもお母さんもさかしーしよるかなぁ。

なー、会っちょくれね。

お父さん大分人やきちょっとおじーかもしらんけど、こばしちょるだけやきね。

お母さんアメリカんしやき、ひとすばえするように見ゆるき。

やけど・・・

2人とも優しいでな、温泉のよーでな・・・

あんなあ、わがんじょうにちょっと似ちょるんな。

うふふ。」

 

「・・・ソフィアさんの言葉、あまりわかりませんが・・・

なんだか幸せそうですね!

とってもほほえましいです。」

 

「そりゃそうだろうな。

離れ離れになってた家族に会うんだから。

家族がいるのは・・・いいことだからな。」

 

誠の表情が少し暗くなる。

 

「(そうや、誠はんの家族もダーリンと同じで魔物に・・・)」

 

香ノ葉が誠のことを気にかけていると、ソフィアが何かに反応する。

 

「あ!!

あっ!!」

 

「どうしましたか、ソフィアさん?」

 

「天狗さん・・・」

 

ソフィアは香ノ葉の方を見ていた。

 

「・・・ウチは香ノ葉やよ。

早くお家行こうな。」

 

「・・・大丈夫かこいつ。」

 

誠は呆れていた。

 

   ***

 

山の中、4人は何かを探していた。

 

「ソフィアさん、そこの温泉はどうですか?」

 

「あ、それは余所の旅館のですー!

看板が立ってます。」

 

「そない簡単に新しい源泉なんて見つからんわなぁ。」

 

「うーん、まだ見つかってない源泉はありそうな気がするんだがなぁ・・・」

 

「うう、ごめんなさい。

家の事情に巻き込んでしまいまして・・・」

 

「ええんよ。

越水温泉の危機なんやろ?

さっきの話・・・」

 

数時間前、越水旅館。

ソフィアがなんとか元に戻った後、温泉に入る話になっていた・・・が。

 

「どうやら、露天風呂がおさるさん達に占拠されているらしくて・・・

困りました。

温泉が使えなくなったら、ウチの旅館はどうすれば・・・」

 

「こうなったら俺が無理やり猿たちをどかすしか・・・」

 

「いや、あかんやろ。

返り討ちにあうだけやって。」

 

誠たちが話していると葵が話しかけてきた。

 

「あの・・・わたくし、お父様から聞いたことがあります。

出るまで掘れば・・・日本のどこからでも、温泉は出るのだと!」

 

「り、りありー!?

それはほんとですかー!?」

 

「いくら温泉大国、日本でもどこからでも出たりはしねえよ。」

 

「・・・それって、めぇ~・・・っちゃ、掘らんとあかんやつやないの?」

 

「そうですね。

めぇ~・・・っちゃ掘らないとならないかもしれません。」

 

「そんな深く、人力で掘れんよ。

現実的やないで。」

 

「いえ・・・あきらめるのはすとっぴっつです!

その案なんとかなるかもしれません・・・!」

 

「(・・・まさか、新しい源泉を見つけるとかじゃないだろうな。)」

 

そして、現在。

 

「・・・で、こうして新しい温泉を探しにきたわけやけど。」

 

「この辺は源泉が多いので、頑張って掘れば新しいのが見つかるかもなのです!

新しい温泉のために、掘って掘って掘りまくりますよー!」

 

「ど根性やなあ。

ま、ここまで来たんやし、ウチも付き合うで。

いざとなったら男手もあるしな。

なぁ誠はん。」

 

「お、おう・・・

(良介・・・なんでお前はこういう時に限って・・・!)」

 

「ソフィアさん、わたくしも頑張りますね。」

 

「葵さん、香ノ葉さん・・・誠さんも・・・さんきゅーべりーべりーまっちです!」

 

誠たちはその後、源泉が出ると思われる場所を掘っていた。

 

「しんどくなってきたわ・・・ほんまにここ掘ったら出てくるん?」

 

「間違いなっしんぐです。

この下にほっとなふぃーりんぐを感じます!」

 

「ソフィアさんは温泉がどこにあるかわかるのですか?」

 

「フフフ・・・あんだすたん。

ワタシの得意魔法はなんと・・・

水と火の相反する属性を融合させる・・・つまり・・・お湯を操ることなのですー!

びこーず、源泉があればそれを操るなど容易なことです、フフフー。」

 

「まぁ!

それではお湯をばーっと吹き出させたりできるんですか?」

 

「できますよ!」

 

「すごい!」

 

「やろうと思えば俺や良介もできることだが・・・それ以前に学園外で魔法禁止じゃなかったか?」

 

「ばっと!

学園外で魔法を使ったらいけませんので!

やっぱりシャベルで掘りますねー。」

 

「・・・・・

今ドッと疲れたわ・・・休憩しよか。」

 

「・・・そうだな。」

 

誠と香ノ葉は休憩に入ろうとした。

 

「疲れましたかー?

マッサージしましょうか!

 

「え、してくれるん?

嬉しいなぁ。

ウチ結構肩こるんよ。」

 

「ワタシマッサージ得意です。

いきますよー。」

 

「(あ、嫌な予感・・・)」

 

「ぬぇい!」

 

ソフィアは香ノ葉を突いた。

 

「うぐっ!」

 

香ノ葉は倒れてしまった。

 

「香ノ葉さん?

香ノ葉さーん!」

 

「誠さんもお疲れでしたらぜひー!」

 

「い、いや俺は別に・・・」

 

後ずさる誠。

ソフィアは誠にも容赦なく突いた。

 

「ぬぇい!」

 

「あべしっ!」

 

数十分後・・・

 

「う、うーん・・・」

 

誠は目を覚ました。

 

「・・・大丈夫ですかー?

どうです!

身体が軽くなったでしょう?」

 

「軽くって・・・あれ、身体が・・・」

 

「す、すごく楽やわ・・・どういう原理なん?」

 

「旅館仕込みのマッサージですからー!」

 

誠たちは再び掘り始めた。

 

   ***

 

「あれ、お隣の源泉だったんですね。

こっちで掘り当てた途端お湯が減っていってびっくりしました。」

 

誠たちは源泉を掘り当てたと思いきや、隣の源泉に当たってしまった。

 

「ふぅ・・・まったく、塞ぐの大変だったぞ。」

 

「ううぅ・・・失敗でした。

あいむそーりーです。」

 

と、突然香ノ葉の悲鳴が聞こえてきた。

 

「きゃああぁ!」

 

「どうしました、香ノ葉さん!」

 

「おさるが・・・おさるがウチの荷物とってったぁ!」

 

「何!?」

 

「まあ!

いけないおさるさんです!」

 

「あの猿め・・・!

とっ捕まえて駆逐してやる・・・!」

 

誠は猿を追いかけようとする。

 

「誠さん待ってください、ワタシも追いかけますー!」

 

誠とソフィアは猿を追いかけた。

 

「クソッ・・・どこ行きやがったあの猿!」

 

「はあ、はあ・・・ずいぶん遠くまで逃げましたね」

 

と、ソフィアは何かを見つけた。

 

「・・・おー・・・

すごい、大きな源泉・・・」

 

「確かにでかい源泉だな・・・あっ!」

 

「!

あそこ!

いました、おさるさん・・・あれ?

家族連れでしょうか・・・わぁ、ちっちゃいおさるさんがいっぱい・・・

みんな温泉に入ってますね。

あれがお母さんかな・・・」

 

「見た限り、誰も見つけてない感じだな。」

 

「そうですね・・・ここはきっと、誰も知らない源泉だと思うんですけど・・・

・・・・・・・・ここはおさるさんふぁみりーのお風呂ですから、また他に探しましょうー!

のーぷろぶれむです!

きっとまた見つかりますよ。」

 

「そうだな・・・ここはこのまま置いとくか。」

 

「あ、もし香ノ葉さんや葵さん・・・誠さんも、疲れていたら・・・

旅館に戻っていてください。

遅くなっちゃいますから・・・」

 

「いや、そういうわけにはいかない。」

 

「で、でも・・・」

 

「良介ほどじゃないが、俺もお人好しなんでね。

だから、手伝わせてくれ。」

 

「・・・ありがとうございます。

誠さんもじぇんとるまんです。

ふぁみりーにも、ふれんどにも恵まれてて・・・ほんとにワタシは・・・

・・・幸せ者ち・・・英語でどげんゆうやろ・・・」

 

「(最後の最後で素に戻ったな・・・)」

 

「・・・・・あ!

香ノ葉さんの荷物、返してもらわないとですー!

返してもらったら、香ノ葉さんと葵さんのところ、戻りましょう!」

 

「ああ、さっさと返してもらおう。」

 

   ***

 

誠たちは旅館に戻っていた。

 

「結局見つからんかったなぁ、新しい源泉。」

 

「うぅ・・・残念です。

せっかくみなさんが手伝ってくれたのに・・・」

 

「仕方ないさ。

源泉ってのはそう簡単に見つかるものじゃないからな。」

 

「ソフィアさん、あまり気を落とさないでくださいまし。」

 

「露天風呂に入ってもらいたかったです・・・」

 

「でもあの、お部屋についている狭いお風呂はすごく珍しいです!」

 

「(普通の家庭にあるお風呂はあんなもんなんだが・・・)」

 

「葵ちゃん葵ちゃん、やめや。

追い打ちみたいになっとるで。」

 

と、ソフィアの母親がやってきた。

 

「あ、お母さん・・・どげんしたん?

・・・え!?」

 

誠たちは露天風呂に向かった。

 

「お、おさるさんいなくなってますー!

どうして・・・お風呂が使えなくなるくらいいたはずなのに。」

 

「あれ?

これ、ウチの櫛や。

なんでこんなとこにあるん?

荷物に入れといたやつやのに・・・」

 

「荷物・・・!

もしかして、あのときのおさるさんファミリー・・・?

おさるさんファミリーが、新しい温泉を見つけたから・・・

だから、どいてくれたんでしょうか・・・?」

 

「かもな。

とりあえず猿たちがいなくなってよかった。」

 

「よかったですねソフィアさん!

これでお風呂使えますね。」

 

「は、はい!

おさるさん・・・みなさん。

ありがとうございます・・・」

 

「ほな、早速お風呂の掃除せななぁ。

念願の露天風呂や!

ウチらは女湯、誠はんは男湯な。」

 

「俺男湯1人で掃除すんの!?」

 

「あああ、掃除はワタシがやりますのでー!

越水旅館のおもてなし、めにーめにーさせていただきますよー!」

 

誠たちはその後、露天風呂を堪能した。




人物紹介

越水 ソフィア(こしみず そふぃあ)16歳
日米ハーフの帰国子女で九州にある温泉旅館の跡継ぎ。
厳密にはアメリカで生まれた1か月後に日本へ渡ったため、帰国子女ではなく英語も喋れない。
小さいころから温泉に浸かって育ったため、自らも大の温泉好き。
実家を盛り立てるために宣伝を欠かさない。
温泉好き。
九州の実家は温泉ほてる。

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