グリモワール魔法学園【七属性の魔法使い】   作:ゆっけめがね

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※この作品の主人公は原作アプリの転校生ではありません。
 閲覧者様のイメージを壊す可能性があります。
 それでもOKという方は、よろしくお願いします。



第32話 鐘の音は遠く

クリスマスパーティ終了から30分後。

生徒会室に風子と薫子がいた。

 

「・・・あー、知ってますよ。

数日前にトラックが襲われた奴でしょ?」

 

「ええ、そうです。

そして魔物の移動経路を追跡すると・・・」

 

「この学園が標的だったと。

まあ、そーでしょーね。

どっちかって言うとあのれんちゅーの【通り道】にトラックが入り込んだ・・・

そのほーが正しいでしょーね。

念のため第1報のときから準備してました。」

 

「それは僥倖です。

クリスマスパーティの最中に申し訳ありませんが。」

 

「心にも思ってないこと言わなくていーので。

こっちも仕事です。」

 

「・・・まあ、よいでしょう。

魔物は散開した国軍を【無視】して進攻中です。

戦うにあたっては、1度彼らの足を止めなければ、素通りするでしょう。」

 

「風紀委員が出るのはそのためですか。」

 

「生徒会は年末の調査に向けて手続きが忙しく、手を貸せませんが・・・

精鋭部隊がバックアップにつきます。

うまく使ってください。

それでも足りない場合は、パーティ中でも構いません。

一般生徒に出動を。」

 

「ウチの判断でいーんです?」

 

「もちろん。

今回の作戦はあなたに一任します。

信頼してますよ。」

 

「アンタさんに信頼されても嬉しくねーですが、いーでしょ。

やりましょ。

元から断るつもりはありませんでしたがね。」

 

と、生徒会室のドアが開き、良介が誠を引きずりながら入ってきた。

 

「遅れてすみません。

このバカが食べ過ぎたもんで。」

 

「ぐえー・・・ぐるじい・・・」

 

誠は腹をさすりながら苦しんでいた。

 

「・・・こちらのりょーすけさんと誠さんは?」

 

「ご協力をお願いしました。

特に良介さんが普段からあなた方のお手伝いされているそうで。」

 

「ふーん。

わざわざウチらのためにりょーすけさんを呼んでいただけるとは・・・

虎の情けでしょーかね?

アンタさんは呼んでないですよね。」

 

「どちらでもよいこと。

さあ、良介さん、誠さん。

お楽しみの所申し訳ありませんが・・・

風紀委員の【面倒見】をお願いしますね。」

 

「わかりました。

任せてください。」

 

良介は風子の方を見る。

 

「どもども。

一緒にクエストに出るのは二度目ですね。

なに、心配ありゃしません。

どーんと構えてくだせー。

ヨロシク。

・・・あ、いざとなったらフォローよろしくおねげーします。」

 

「ああ、わかった。

・・・で、こいつどうする?」

 

まだ腹をさすって苦しんでいる誠。

 

「りょーすけさんが引きずって連れてきてくだせー。

場所についてる頃には復活してるでしょ?」

 

「そうだな。

んじゃ、向かうか。」

 

良介は誠を引きずりながら風子とクエストに向かった。

少し経って、生徒会室。

薫子と虎千代がいた。

 

「会長、風紀委員でよろしいのですか?」

 

「よろしいってなんだ?

強さに不安はないだろ?

良介もいるし。」

 

「しかし水無月 風子は、これまで入学時にクエストに1度出たきりで・・・

風紀委員長になってからは1度も出ていません。」

 

「この前、旧科研に行ってたじゃないか。」

 

「あれは科研からの圧力で正式なクエスト発注はされていませんでした。」

 

「それって屁理屈って言わないか?」

 

「例え過去1回が2回だったとしても、実戦経験のなさが目に付きます。

リーダーは良介さんにすべきだったかと。」

 

「風紀委員なんだから、委員長がリーダーを務めるべきだろ。

それだけじゃない。

クエストに出てなくても、アイツの強さはわかる。

特に今回のように、走り続ける魔物への足止め魔法が得意だしな。

ダテに5年も取締りをやってないさ。

任せておこう。」

 

「・・・・・はぁ・・・・・かしこまりました。」

 

「さ、じゃあアタシ達は執行部だ。

【あの下】に入る許可を取り付けないとな。」

 

   ***

 

雪の降る郊外の公園、紗妃と怜がいた。

 

「・・・微かに鐘の音が聞こえますね。

街の方でしょうか。」

 

「たぶんそうだろう・・・風飛の街がルートに入ってなくてよかった。」

 

と、風子たちがやってきた。

 

「【ここ】もいちおー風飛市ですよ。

神凪。

ほんの端っこですけどね。

市民避難終わり。

イルミネーションだけ残ってるのが不気味ですねー。」

 

「委員長・・・風紀委員の仕事は学園の風紀を維持することです。

やりたくない、というわけではありませんが、外部の魔物と戦うより・・・」

 

「はっちゃけるかも知れない生徒の監視のほうがいいと?」

 

「・・・ええ・・・単刀直入に言えば。」

 

「だいじょーぶですよ。

それは服部にやってもらいますから。」

 

「・・・おい、風子・・・」

 

良介が呆れたように風子の隣を見る。

 

「え?

自分、ここにいるッスよ?」

 

「たまに学園まで様子を見に行ってくだせー。

ま、事態が事態なんで。

過度な取締りは不要です。」

 

「え、ええー・・・ここまで30分くらいかかったッスけど・・・」

 

「アンタさんの足なら10分でしょ。

おねげーしますよ。」

 

「もしもだったら俺の肉体強化は他人にもかけられるからかけてやるよ。

そしたら5分で往復できるだろ。」

 

「・・・だそーです。」

 

「あふぅ・・・ラ、ラジャっす・・・」

 

風子は紗妃の方を向き直る。

 

「さて、氷川。

風紀委員の仕事は学園の風紀を維持する。

せーかいです。

つまり、学園生だけじゃなく不審者や反魔法使い勢力、それに・・・

魔物が来たらお引取り願う。

第7次侵攻で1番軽傷だったのがウチらです。

こーゆーときくらい、目立ちましょ。

・・・あ、ここに2人命に関わるほどの重傷だった人がいましたね。」

 

「そうでもないさ。

左脇腹がえぐれて、背骨にヒビ入ってただけだ。」

 

「右肩の鎖骨が粉々になっただけだ。」

 

「いや・・・十分重傷なんですけど・・・」

 

いつの間にか誠が復活していた。

少し離れたところ、イヴが1人でいた。

 

「・・・・・」

 

と、風子がやってきた。

 

「いや、すいませんね。

頼っちゃって。」

 

「・・・・・」

 

「成績でアンタさんを釣ったのは謝ります。

パーティ行けず残念ですね。」

 

「興味ないので。」

 

「さいですか。

ま、早く片付けたら残り物も食べられるかもしれません。

風紀委員、総勢15名。

行きましょ。」

 

「・・・私は1人で。

では。」

 

イヴは1人で行ってしまった。

 

「・・・・・せっかくキメたのに。」

 

風子はため息をついた。

 

   ***

 

良介たちはやってきた魔物を倒していた。

 

「ふん!

・・・タイコンデロガで慣れすぎたせいかあんまり強く感じないな。」

 

「食後の運動にはちょうどいいけど・・・もう少し強くてもいいんじゃないか?」

 

良介と誠が最前線に立ち、そこから倒し損ねた雑魚を他の生徒が倒していた。

良介たちの後ろに怜と紗妃がいた。

 

「・・・ふぅ。

まだ雑魚のようだ。

本命は到着していないか。」

 

「ええ・・・まだしばらくは楽でしょう。」

 

「では今のうちに・・・いや、詮索などするものではないか。」

 

「なんのことです?

あなたにしては珍しく歯切れが悪いですね。」

 

「少し気になったんだ。

委員長は5年前に風紀委員長になったんだろ?

まだ10だか11だかでなれた実力も凄いが、なぜなろうとしたのか。」

 

「・・・ああ、幼い子供のときに風紀委員長を目指した理由ですか。

いえ、私はまだ3年目ですから・・・転校してきた時はすでに・・・

あなたのほうが詳しいのでは?」

 

「私は、風紀委員になった時期がお前と同じくらいなんだ。

仲のいいお前なら聞いているかもしれないと思っただけでな。」

 

2人が話していると、後ろから風子がやってきた。

 

「2人とも、ウチの前で内緒話ができると思わねーことです。」

 

「あ・・・委員長。

すみません、警備に戻ります。」

 

「別に風紀委員長を目指したのに特別な理由はねーですよ。」

 

「・・・そ、そうなのですか?」

 

「えーまー。

たぶん、アンタさんがたと同じですよ。

学園に転校してきた生徒は、あるいは覚醒後に友人も恋人も無くしたかも・・・

あるいは己の力を過信し、うぬぼれているかもしれない。

そんな人はね、ほっといたら社会に出ることは困難です。

魔法が使える、体が強化されるという肉体的な変化に加え・・・

魔物と戦うことで一般人とは常識が変わってくるわけですから。

誰かが正してやらねーといけねーでしょ。

ウチが言ってるのはそれですよ。

体も社会的地位も人間扱いされねーんで、せめて心だけはね。

ま、なにがどうしてといえば、あるときふと目覚めた、くらいですかね。」

 

「・・・・・・」

 

良介は風子の言葉を黙って聞いていた。

 

「・・・良介?

どうかしたか?」

 

「いや、別に。」

 

良介は誠と共に魔物を探しに向かった。

 

「委員長・・・」

 

「さ、みなさんが清く正しく過ごせるよーに、魔物を追い払っちまいましょう。」

 

その頃、良介たち。

 

「なあ、良介。」

 

「・・・なんだ?」

 

「お前、魔法使いとしてこんな力が欲しいって思ったことあるか?」

 

「・・・いや、ないな。

誠はあるのか?」

 

「入学当初はな。

今は何も思ってないけど。」

 

「どんな力が欲しかったんだ?」

 

「厨二病かって思うかもしれないが・・・神も悪魔も滅ぼせる力が欲しいって。」

 

「それまたなんで。」

 

「全部失ったのが神様、または悪魔の仕業だとしたら、それらを全部否定できる力が欲しいって思ってたな。」

 

「神も悪魔も滅ぼす力か・・・手に入れてたらどうしたんだ?」

 

「さあ・・・後先のこと何も考えてなかったからな。」

 

「あの頃の誠さんは今とは違う方向で問題児でしたねー。」

 

気がつくと風子が後ろにいた。

 

「風子、聞いてたのか。」

 

「ええ、あの頃の誠さんは常に殺気立ってましたからね。

転校して間もないのにクエストは1人でこなすし、呼び出ししても来ないし・・・

完全に頭痛の元でしたよ。」

 

「完全に風紀委員、生徒会に喧嘩売るようなことしてたんだなお前・・・」

 

良介は驚いたような顔をしていた。

 

「半月の間だけだよ。

そんなことしてたの。」

 

「その半月でなにがあったのかウチらは知らねーんですがね。

気づいたら今の誠さんになってましたよ。

ま、今もじゅーぶんに頭痛の元ですがね。」

 

「・・・何か問題起こしましたかね?」

 

「多数のセクハラの報告が来てるんですが・・・これは何ですかねー?」

 

「・・・一体なんのことやら。」

 

「・・・自覚なしか。」

 

「懲罰房行き、確定ですねーこれは。」

 

「・・・俺を懲罰房にするなら2人のあの情報・・・報道部に流しちゃおっかな~?」

 

誠が変な笑みを見せる。

 

「おや、一体誰と誰の情報なんですかねー?」

 

「そりゃあ、君ら2人に決まってんじゃんー。」

 

誠が良介と風子を指差す。

 

「・・・俺たちの情報?

何かあったか?」

 

「さあ・・・知らねーですね。」

 

「おや、とぼけるつもりですか。

カフェで仲良くパフェを食べてるって情報が・・・」

 

良介と風子が同時に誠を殴りつける。

 

「ぐびゅっ!?」

 

誠はそのまま後方に吹き飛ばされた。

 

「・・・風子、行くぞ。」

 

「りょーかいです。」

 

「ちょ・・・置いてかないでくれ・・・」

 

先に進む良介と風子を誠は後から追いかけた。

その頃、イヴ。

 

「・・・体も社会的地位も人間じゃない・・・

・・・そんなことは認めない・・・!」

 

と、梓がやってきた。

 

「あ、冬樹先輩ー。」

 

「っ!?」

 

「・・・あ、すいません。

集中の邪魔しちゃいました?」

 

「いえ・・・なにか用?」

 

「自分、今から学園に行ってくるんで、30分ほど前線をお願いします。」

 

「30分?」

 

「あ、いえ、良介先輩の強化魔法があるとはいえそれ以上短くするのは難しいかなーなんて・・・」

 

「・・・ここに来るだけで30分かかってるのに、巡回も入れて30分というの?」

 

「あ、あーっ。

そっちッスか。

いやまぁ、巡回っていっても本気で取り締まりは・・・」

 

「・・・いえ、いいわ。

時間が惜しいから早くいって。」

 

「そッスか?

しからば、ちょいとだけ失礼するッス。」

 

梓は行ってしまった。

 

「・・・そう、往復と巡回で30分は・・・なんでもないことなのね・・・

・・・才能なのかしら・・・努力なのかしら・・・いいえ、どちらでもいいわ。

足の速さよりも、魔物を倒す方が重要だもの・・・!」

 

イヴは1人で前線に向かった。


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