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良介とエミリアは廃墟の奥へと進んでいた。
「あれは・・・コウモリでは、ありませんでしたね。
群体性の魔物も報告されていますが、コウモリは洞窟から出ませんし・・・
何よりあの騎士は、群体などではありませんでした・・・
異なる魔物です。
しかも人型は・・・私も初めて見ました。」
「俺も人型は聞いたことがあるだけで見るのは初めてだ。
けど、何か問題でもあるのか?」
「人型は珍しいんです。
霧の魔物は変化にいくつか法則がありまして。
一般的に、戦闘に適した姿形を取ることが多いのです。
なので、生身ではあまり強くない人間の形は取りません。
ほとんどが獣の姿です。
他にも過去に存在した異形の生物などですね。」
「そういや、俺が戦ってきた魔物もほとんどがそうだったな。」
「不思議ですね。
霧の魔物は【なぜそうなるのか】がほとんどわかりません。
なぜ生まれるのか、なぜ人を襲うのか。
なぜ多様な形態を取るのか。
なぜ、私たちの文化圏にのみ存在する空想の生き物の姿も取れるのか。」
「・・・わからないことだらけだな。
・・・ん?」
良介は何かに気付き、前を見る。
「・・・うっ!
ま、またあの騎士が・・・!
構えてください!」
「チッ!
まだいたのか!」
良介は剣を構え、魔物に突っ込む。
魔物に攻撃をしたがバックステップで避けられた。
「何!?」
そのまま魔物は良介に攻撃する。
「くっ!」
かろうじて剣で防御したがバランスを崩してしまった。
魔物が追撃をしようとしたところエミリアが魔物に攻撃した。
「はぁっ!」
魔物は攻撃を受けたが、構わずエミリアに攻撃しようとした。
と、後ろから光弾が飛んできて魔物に命中し、魔物は消滅した。
良介の光の魔法だった。
「はぁ・・・はぁ・・・危なかったな。」
良介はフラつきながら立ち上がる。
「大丈夫ですか!?」
エミリアが良介の元にやってきた。
「ああ、大丈夫だ。
しかし今のは・・・」
「はい、あの騎士も、およそ魔物とは思えない動きです・・・
まるで人間のよう。
ヒットアンドアウェイで着実に狙ってきている・・・」
「ああ・・・どうなってんだ?」
「・・・思考能力が発達しているようにも見えます。」
「・・・何だって?」
エミリアの言葉に良介は首を捻る。
「魔物はあまり知能が高いとは言えませんでした。
ですが、ここ最近・・・
よくわからない動きを取る魔物が増えてきていると言います。
考え込んでいるようだったり、明らかに何かを守ろうとしていたり。」
「魔物なのにか?」
「・・・ご存じの通り、魔物は霧が実体化して生まれるものですが・・・
その霧は、もちろん自然現象の霧とは別のものです。
それがどこから生まれ出るのか、やはりそれも明らかになっていません。
答えがあるとしたら、そこなのでしょうけど・・・」
「わからないなら、気にしても仕方ないな。
それよりも・・・」
「はい。
もう驚いたりはしません。
襲撃の感覚は把握しています!」
「そうか。
よし・・・!」
良介とエミリアは構えた。
「来ます!」
***
魔物が2人のところに突っ込んできた。
良介が魔物の攻撃を受け止める。
そのまま魔物に攻撃しようとした。
魔物は読んでいたかのように避けようとした。
「引っかかったな!」
良介は風の肉体強化をかけ、後ろに回り込み、攻撃する。
「おりゃっ!」
攻撃を受け魔物はバランスを崩す。
エミリアがすかさず魔力を込めた一撃を食らわした。
「せぇやっ!」
魔物は消滅した。
「ふぅ・・・終わったか。」
良介とエミリアは武器を収める。
「・・・消えました。
やはり霧の魔物でしたね。」
「なんだよ。
ここにきて、魔物かどうか疑ってたのか?」
「あ、いえ、わかってましたよ?
ですが人型は噂でしか聞いていなかったので・・・やっと実感しました。」
「そうか。
しかし・・・困ったな。」
「・・・これは、今日はコウモリの方は無理ですね。
いったん学園に戻り報告しましょう。
突然現れた魔物と、それを討伐したこと。
コウモリのクエストは日を改めて、ですね。
私たちが受けるとは限りませんが、もしそうなったらお願いします。」
「ああ、いくらでも頼ってくれ。」
「・・・ありがとうございます。」
2人は学園に向かった。
その頃、学園、風紀委員室。
風子と紗妃がいた。
「転校生?
これまたまたポンポン入ってきやがりますね。
如月 天とは別ですよね?」
「はい。
例年に比べて多いですね。
資料が来たのでお渡ししておきます。」
紗妃は風子に資料を手渡した。
「・・・あー、まーた厄介なのが・・・予知の魔法使いですか。
世界に3人しかいないうちの1人。
しかも一番若い・・・
出身がニュージーランドって、なんでまたウチを希望したんですかねぇ。」
「さあ・・・それはわかりませんが・・・噂では学園長の招きだと・・・」
「学園長の噂なら確かですね。
自分で言いふらしてんですから、あのジーサン。
食えねー人ですよ、ホントに。
今何歳でしたっけ?」
「100近いと聞いていますが、正確なところは・・・」
「早く引退すりゃいーのに・・・」
と、イヴが入ってきた。
「・・・・・委員長。」
「お、来ましたね。
よかったよかった。」
「私は、所属しているだけのはずですが。」
「ええ、ウチはそれでいーって言ってましたがね。
ちょいとばかし、やってもらわにゃいけなくなりました。」
「・・・・・?」
「あなたもきょーみあることだと思いましてね。
ウチと一緒に成績あげるチャンスですよ。」
「・・・・・っ!」
少し経って学園、校門前。
良介とエミリアが戻ってきた。
「はぁ・・・なんだか、学園に入るのがおっくうですね・・・
結果的に許可がでたとはいえ、クエストを無視して別の魔物を討伐・・・
罰はあるでしょうか。
良介君には申し訳ないことをしてしまいました・・・」
「別に気にすることはないさ。
あの状況だとああするしかなかった。
仕方のないことだよ。」
「・・・でも、良介君のおかげで、1人の騎士を救うことができました。
一緒に戦ってくれて、ありがとうございます。
どうにか、罰は私だけになるようにお願いしてみますね。
それじゃあ行きましょうか。」
「(・・・恐らく、俺の方が重い罰になりそうな気がするが・・・)」
2人は生徒会室に向かった。
***
「・・・ふむ・・・ああ、まぁ、校則違反には間違いない。
クエスト放棄と非討伐対象との戦闘は結構な違反だからな。」
生徒会室に虎千代と風子がいた。
「2人とも初めてだから、水無月風紀委員長、お手柔らかに。」
「ええ。
わかってますよ。
まずエミリア・ブルームフィールド。
しばらくウチらと一緒に校門で取り締まりです。
7時に登校してくだせー。
ルール遵守の大切さを叩き込んであげます。」
「わかりました。」
「で、りょーすけさん。
あんたさんは彼女を止めなかったんで厳重注意です。」
「・・・だろうな。」
良介はため息をつく。
「氷川とセンセからみっちりお仕置きされてくだせー。
あと、2人とも【人型】について講義を受けるよーに。
確かまだでしたよね?」
と、エミリアが風子に質問した。
「・・・すいません、今回の魔物が人型ということですが・・・なにが問題なのでしょうか。
確かに珍しいですが、講義を取るほどのものとは思えませんが・・・」
「そりゃそーでしょ。
イギリスは人類根源説じゃねーですか。
人間から生まれた魔物が人間に似てても不思議に思わないでしょ。
ですがグリモアは違いましてね。
【武器を使う知能】を持つ魔物・・・
放っておくべからず、なんで。
そーいう意味で、これでも減刑してるんですよ。」
「・・・はぁ・・・わかりました。
人型の魔物については、認識を改めます。」
「結構。
郷に入っては郷に従えといーます。
きちんと理由も説明しますんで。」
良介が風子の話を聞いていると、風子が良介の方を向いた。
「りょーすけさん。
アンタさんもですよ。
知恵のついた魔物なんて、そーぞーするのもイヤです。」
「・・・確かに嫌だな。」
「そーゆーわけであんたさんもしっかり受けるように。」
「ああ、わかった。
・・・なぁ、ちょっといいか?」
「なんですか?」
良介は風子に質問した。
「俺の方も減刑されてんだよな?」
「そりゃそーでしょ。
それがどーかしましたか?」
「・・・俺は減刑しないでくれ。」
「・・・え?」
他の2人も驚きの表情をしていた。
「・・・良介、正気か?」
「ええ、俺は正気ですよ。
元はといえば止めなかった俺に非がある。
あの時、その判断ができなかった俺の責任だ。
だから別に減刑しなくていい。」
「・・・それだと、あんたさんに言ったものと彼女と同じ罰、2つが合わさりますが。」
「別に構わない。」
「・・・わかりました。」
良介とエミリアは生徒会室を出た後、すぐに別れた。
良介が1人で廊下を歩いていると、後ろから誰か話しかけてきた。
「りょーすけさん。」
「・・・風子か。」
良介は立ち止まったが振り向かなかった。
「・・・俺になんの用だ?」
「1つ聞きたいことありまして。」
「・・・何だ?」
「・・・もしかしてですが、さっきの罰を受けながら放課後に訓練・・・なんてしよーとは思ってませんよね?」
「・・・・・」
良介は風子の方を見たが、一言も喋らなかった。
「おねげーですから、それだけはやめてくだせー。
ほんとーに倒れますよ。」
「・・・何でそんなことを聞いてくる。」
「第7次侵攻の疲れ・・・取れてねーんでしょ?」
「・・・それがどうしたんだ?」
「前にもいーましたが、あんたさんが倒れたら皆心配するんですよ。」
良介はフッと鼻で笑った。
「・・・お前も俺のことを心配してる、てか?」
「そりゃそーでしょ。
侵攻でもあんな無茶しましたし、心配するのは当たり前です。」
すると、良介は風子の頭に手をのせ、ポンポンと軽く叩いた。
「安心しろよ。
倒れるようなマネはしないさ。
自分の体のことはちゃんとわかってる。」
「・・・ほんとーですか?」
「ああ、本当だ。
無茶しないと約束しよう。」
「・・・わかりました。
破ったら、またあのパフェ、奢ってもらいますからね。」
風子は上目遣いで良介を見つめた。
「ああ、わかったよ。」
良介は風子の頭を優しく撫でた後、紗妃たちのところに向かった。