グリモワール魔法学園【七属性の魔法使い】   作:ゆっけめがね

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※この作品の主人公は原作アプリの転校生ではありません。
 閲覧者様のイメージを壊す可能性があります。
 それでもOKという方は、よろしくお願いします。




第29話 人型の魔物

良介とエミリアは廃墟の奥へと進んでいた。

 

「あれは・・・コウモリでは、ありませんでしたね。

群体性の魔物も報告されていますが、コウモリは洞窟から出ませんし・・・

何よりあの騎士は、群体などではありませんでした・・・

異なる魔物です。

しかも人型は・・・私も初めて見ました。」

 

「俺も人型は聞いたことがあるだけで見るのは初めてだ。

けど、何か問題でもあるのか?」

 

「人型は珍しいんです。

霧の魔物は変化にいくつか法則がありまして。

一般的に、戦闘に適した姿形を取ることが多いのです。

なので、生身ではあまり強くない人間の形は取りません。

ほとんどが獣の姿です。

他にも過去に存在した異形の生物などですね。」

 

「そういや、俺が戦ってきた魔物もほとんどがそうだったな。」

 

「不思議ですね。

霧の魔物は【なぜそうなるのか】がほとんどわかりません。

なぜ生まれるのか、なぜ人を襲うのか。

なぜ多様な形態を取るのか。

なぜ、私たちの文化圏にのみ存在する空想の生き物の姿も取れるのか。」

 

「・・・わからないことだらけだな。

・・・ん?」

 

良介は何かに気付き、前を見る。

 

「・・・うっ!

ま、またあの騎士が・・・!

構えてください!」

 

「チッ!

まだいたのか!」

 

良介は剣を構え、魔物に突っ込む。

魔物に攻撃をしたがバックステップで避けられた。

 

「何!?」

 

そのまま魔物は良介に攻撃する。

 

「くっ!」

 

かろうじて剣で防御したがバランスを崩してしまった。

魔物が追撃をしようとしたところエミリアが魔物に攻撃した。

 

「はぁっ!」

 

魔物は攻撃を受けたが、構わずエミリアに攻撃しようとした。

と、後ろから光弾が飛んできて魔物に命中し、魔物は消滅した。

良介の光の魔法だった。

 

「はぁ・・・はぁ・・・危なかったな。」

 

良介はフラつきながら立ち上がる。

 

「大丈夫ですか!?」

 

エミリアが良介の元にやってきた。

 

「ああ、大丈夫だ。

しかし今のは・・・」

 

「はい、あの騎士も、およそ魔物とは思えない動きです・・・

まるで人間のよう。

ヒットアンドアウェイで着実に狙ってきている・・・」

 

「ああ・・・どうなってんだ?」

 

「・・・思考能力が発達しているようにも見えます。」

 

「・・・何だって?」

 

エミリアの言葉に良介は首を捻る。

 

「魔物はあまり知能が高いとは言えませんでした。

ですが、ここ最近・・・

よくわからない動きを取る魔物が増えてきていると言います。

考え込んでいるようだったり、明らかに何かを守ろうとしていたり。」

 

「魔物なのにか?」

 

「・・・ご存じの通り、魔物は霧が実体化して生まれるものですが・・・

その霧は、もちろん自然現象の霧とは別のものです。

それがどこから生まれ出るのか、やはりそれも明らかになっていません。

答えがあるとしたら、そこなのでしょうけど・・・」

 

「わからないなら、気にしても仕方ないな。

それよりも・・・」

 

「はい。

もう驚いたりはしません。

襲撃の感覚は把握しています!」

 

「そうか。

よし・・・!」

 

良介とエミリアは構えた。

 

「来ます!」

 

   ***

 

魔物が2人のところに突っ込んできた。

良介が魔物の攻撃を受け止める。

そのまま魔物に攻撃しようとした。

魔物は読んでいたかのように避けようとした。

 

「引っかかったな!」

 

良介は風の肉体強化をかけ、後ろに回り込み、攻撃する。

 

「おりゃっ!」

 

攻撃を受け魔物はバランスを崩す。

エミリアがすかさず魔力を込めた一撃を食らわした。

 

「せぇやっ!」

 

魔物は消滅した。

 

「ふぅ・・・終わったか。」

 

良介とエミリアは武器を収める。

 

「・・・消えました。

やはり霧の魔物でしたね。」

 

「なんだよ。

ここにきて、魔物かどうか疑ってたのか?」

 

「あ、いえ、わかってましたよ?

ですが人型は噂でしか聞いていなかったので・・・やっと実感しました。」

 

「そうか。

しかし・・・困ったな。」

 

「・・・これは、今日はコウモリの方は無理ですね。

いったん学園に戻り報告しましょう。

突然現れた魔物と、それを討伐したこと。

コウモリのクエストは日を改めて、ですね。

私たちが受けるとは限りませんが、もしそうなったらお願いします。」

 

「ああ、いくらでも頼ってくれ。」

 

「・・・ありがとうございます。」

 

2人は学園に向かった。

その頃、学園、風紀委員室。

風子と紗妃がいた。

 

「転校生?

これまたまたポンポン入ってきやがりますね。

如月 天とは別ですよね?」

 

「はい。

例年に比べて多いですね。

資料が来たのでお渡ししておきます。」

 

紗妃は風子に資料を手渡した。

 

「・・・あー、まーた厄介なのが・・・予知の魔法使いですか。

世界に3人しかいないうちの1人。

しかも一番若い・・・

出身がニュージーランドって、なんでまたウチを希望したんですかねぇ。」

 

「さあ・・・それはわかりませんが・・・噂では学園長の招きだと・・・」

 

「学園長の噂なら確かですね。

自分で言いふらしてんですから、あのジーサン。

食えねー人ですよ、ホントに。

今何歳でしたっけ?」

 

「100近いと聞いていますが、正確なところは・・・」

 

「早く引退すりゃいーのに・・・」

 

と、イヴが入ってきた。

 

「・・・・・委員長。」

 

「お、来ましたね。

よかったよかった。」

 

「私は、所属しているだけのはずですが。」

 

「ええ、ウチはそれでいーって言ってましたがね。

ちょいとばかし、やってもらわにゃいけなくなりました。」

 

「・・・・・?」

 

「あなたもきょーみあることだと思いましてね。

ウチと一緒に成績あげるチャンスですよ。」

 

「・・・・・っ!」

 

少し経って学園、校門前。

良介とエミリアが戻ってきた。

 

「はぁ・・・なんだか、学園に入るのがおっくうですね・・・

結果的に許可がでたとはいえ、クエストを無視して別の魔物を討伐・・・

罰はあるでしょうか。

良介君には申し訳ないことをしてしまいました・・・」

 

「別に気にすることはないさ。

あの状況だとああするしかなかった。

仕方のないことだよ。」

 

「・・・でも、良介君のおかげで、1人の騎士を救うことができました。

一緒に戦ってくれて、ありがとうございます。

どうにか、罰は私だけになるようにお願いしてみますね。

それじゃあ行きましょうか。」

 

「(・・・恐らく、俺の方が重い罰になりそうな気がするが・・・)」

 

2人は生徒会室に向かった。

 

   ***

 

「・・・ふむ・・・ああ、まぁ、校則違反には間違いない。

クエスト放棄と非討伐対象との戦闘は結構な違反だからな。」

 

生徒会室に虎千代と風子がいた。

 

「2人とも初めてだから、水無月風紀委員長、お手柔らかに。」

 

「ええ。

わかってますよ。

まずエミリア・ブルームフィールド。

しばらくウチらと一緒に校門で取り締まりです。

7時に登校してくだせー。

ルール遵守の大切さを叩き込んであげます。」

 

「わかりました。」

 

「で、りょーすけさん。

あんたさんは彼女を止めなかったんで厳重注意です。」

 

「・・・だろうな。」

 

良介はため息をつく。

 

「氷川とセンセからみっちりお仕置きされてくだせー。

あと、2人とも【人型】について講義を受けるよーに。

確かまだでしたよね?」

 

と、エミリアが風子に質問した。

 

「・・・すいません、今回の魔物が人型ということですが・・・なにが問題なのでしょうか。

確かに珍しいですが、講義を取るほどのものとは思えませんが・・・」

 

「そりゃそーでしょ。

イギリスは人類根源説じゃねーですか。

人間から生まれた魔物が人間に似てても不思議に思わないでしょ。

ですがグリモアは違いましてね。

【武器を使う知能】を持つ魔物・・・

放っておくべからず、なんで。

そーいう意味で、これでも減刑してるんですよ。」

 

「・・・はぁ・・・わかりました。

人型の魔物については、認識を改めます。」

 

「結構。

郷に入っては郷に従えといーます。

きちんと理由も説明しますんで。」

 

良介が風子の話を聞いていると、風子が良介の方を向いた。

 

「りょーすけさん。

アンタさんもですよ。

知恵のついた魔物なんて、そーぞーするのもイヤです。」

 

「・・・確かに嫌だな。」

 

「そーゆーわけであんたさんもしっかり受けるように。」

 

「ああ、わかった。

・・・なぁ、ちょっといいか?」

 

「なんですか?」

 

良介は風子に質問した。

 

「俺の方も減刑されてんだよな?」

 

「そりゃそーでしょ。

それがどーかしましたか?」

 

「・・・俺は減刑しないでくれ。」

 

「・・・え?」

 

他の2人も驚きの表情をしていた。

 

「・・・良介、正気か?」

 

「ええ、俺は正気ですよ。

元はといえば止めなかった俺に非がある。

あの時、その判断ができなかった俺の責任だ。

だから別に減刑しなくていい。」

 

「・・・それだと、あんたさんに言ったものと彼女と同じ罰、2つが合わさりますが。」

 

「別に構わない。」

 

「・・・わかりました。」

 

良介とエミリアは生徒会室を出た後、すぐに別れた。

良介が1人で廊下を歩いていると、後ろから誰か話しかけてきた。

 

「りょーすけさん。」

 

「・・・風子か。」

 

良介は立ち止まったが振り向かなかった。

 

「・・・俺になんの用だ?」

 

「1つ聞きたいことありまして。」

 

「・・・何だ?」

 

「・・・もしかしてですが、さっきの罰を受けながら放課後に訓練・・・なんてしよーとは思ってませんよね?」

 

「・・・・・」

 

良介は風子の方を見たが、一言も喋らなかった。

 

「おねげーですから、それだけはやめてくだせー。

ほんとーに倒れますよ。」

 

「・・・何でそんなことを聞いてくる。」

 

「第7次侵攻の疲れ・・・取れてねーんでしょ?」

 

「・・・それがどうしたんだ?」

 

「前にもいーましたが、あんたさんが倒れたら皆心配するんですよ。」

 

良介はフッと鼻で笑った。

 

「・・・お前も俺のことを心配してる、てか?」

 

「そりゃそーでしょ。

侵攻でもあんな無茶しましたし、心配するのは当たり前です。」

 

すると、良介は風子の頭に手をのせ、ポンポンと軽く叩いた。

 

「安心しろよ。

倒れるようなマネはしないさ。

自分の体のことはちゃんとわかってる。」

 

「・・・ほんとーですか?」

 

「ああ、本当だ。

無茶しないと約束しよう。」

 

「・・・わかりました。

破ったら、またあのパフェ、奢ってもらいますからね。」

 

風子は上目遣いで良介を見つめた。

 

「ああ、わかったよ。」

 

良介は風子の頭を優しく撫でた後、紗妃たちのところに向かった。


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