グリモワール魔法学園【七属性の魔法使い】   作:ゆっけめがね

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※この作品の主人公は原作アプリの転校生ではありません。
 閲覧者様のイメージを壊す可能性があります。
 それでもOKという方は、よろしくお願いします。


第15話 属性の強化魔法

クエストを終えた良介はアイラと別れ、一人廊下を歩いていた。

 

「さて、授業免除だし、どうしようか・・・」

 

何しようか考えながら歩いていると、前方から梓がやってきた。

 

「あー忙し忙し・・・おっ。

良介先輩!

どーもどーも、忍者服部ッス!」

 

「・・・ああ、風紀委員の。」

 

「いやー、お噂はかねがね。

クエストに出ずっぱりって聞いてるッスよ。

誘われるのやっぱり体質と能力のせいなんスかねぇ。

大変ッスねぇ。」

 

そう話している梓は両手に買い物袋を持っていた。

 

「それ、どうしたんだ?

買い物にしてはちょっと多くないか?」

 

「あっ、これッスか?

ぶちょーに頼まれて買い出しに・・・」

 

「買い出し?」

 

「自分はみんなの御用聞きみたいなもんッスから。」

 

「・・・それ、ただのパシリじゃないのか?」

 

「パシリ?

まぁ、そんなとこッスかね。

いやいや、へーきッスへーき。

それより先輩も、クエストだけじゃないの知ってるッスよ?

女の子のお願い。

よく叶えてあげてるらしいじゃないッスか。」

 

梓が怪しい笑みを見せる。

 

「んー・・・まぁ、自分ができる範囲でだけど叶えてはいるな。」

 

クラスを始め、いろんな女子に頼まれごとをされてはできる範囲で叶えてはいた。

 

「自分と似たようなもんでしょう。

こう、見返りとか・・・あるッスよね?」

 

「・・・まぁ、少しはな。」

 

そう言っても、100円玉だけだったりというのがほとんどだが。

 

「自分もそんなところッス。

見返りがあるからパシられる。

たとえば生徒会しか知らない、報道部しか知らない情報・・・

忍者ナめてると痛いメ見るッスよ?

・・・なんつって。」

 

最後の一言で良介は呆れてため息をつく。

 

「結構でかい仕事を請け負ってるんだなーと思ったら、違うのか・・・」

 

「自分みたいな半忍前が、んな大それたことはできねーッスよぅ。

ま、素早く動く訓練を日常からやってるようなもんッスね。」

 

「日常が訓練・・・か。」

 

「あ、でも良介先輩の話は、結構気軽に話してくれるんッスよね。

先輩、いろんなところから注目されてるッスよ?」

 

「俺が?

それまた何で・・・」

 

「生徒会も風紀委員も報道部ってお互いに対立しあってるんですけど・・・

どこも先輩が来たら、大きな戦力になるって考えてるッスね。」

 

良介は呆れて、ため息をつき、窓の方を見る。

 

「大方、体質と能力目当てだろ?」

 

「いやまぁ、一番はその体質と七属性の魔法ですけどね。

それだけじゃないッスよ。」

 

「・・・何かあったか?」

 

「先輩って顔がとっても広いッス。

転校してきたばかりとは思えないくらい。

先輩は実力を見せてるッス。

クエストに出るたびに戦いがうまくなってる。

つまり先輩は将来性がとっても高いんです。

お買い得なんですよね。」

 

「将来性が高いって、褒めすぎだろ。

来てあんまり時間たってないのに・・・」

 

「褒めすぎじゃないッス、自覚してないだけッス。

だから梓ちゃんからのアドバイスっす。

大変なのは把握すること。

なにもわからず利用されるのは、あんま楽しいことじゃないッスよ?」

 

「(別に楽しい楽しくないでしてるわけじゃないんだがな・・・

まぁ、なにもわからず利用されるのは嫌だが・・・)」

 

「利用されるフリして、先輩ナシでは生きていけないようにしちゃう・・・

そう! 先輩はジゴロになるべきッス!

そうすればみんなシアワセ、対立も無くなって丸く収まるッス。」

 

「(それはそれで違う対立起きそうなんだが・・・これ、冗談で言ってるのか?)」

 

良介は目を細めながら梓の方を見る。

 

「・・・あ、ジョーダンだと思ってるッスね?

ま、いずれわかるッスよ。

そのときは自分も混ぜてくださいね♪」

 

   ***

 

梓はその後、走り去り、再びやることがなくなってしまった良介。

廊下をブラブラと歩いていると、歓談部部室の前に来ていた。

その部室前で、海老名 あやせ(えびな あやせ)とエミリア・ブルームフィールドの二人に話をしようと誘われたので歓談部部室に入ることになった。

 

「今日もお茶がおいしいですねぇ・・・

よろしければもう1杯、どうぞ。」

 

「えーと、それじゃお願いします。」

 

あやせにお茶を入れてもらう。

 

「遊びに来てくれて嬉しいです。

私は最初、言葉がよくわからなかったので・・・

東雲さんが英語に堪能でなければ、ここにもいなかったでしょうし。」

 

「(あいつ、そんなに英語堪能なのか・・・)」

 

「良介さんも、アイラちゃんと一緒にクエストにでかけたんでしょう?

とても強くて、頼りになりますよねぇ。

いつも助かっています。」

 

「でも、知れば知るほど変わった人なんですよね。

まだ12歳なのに、とても魔力が強く、少なくとも5カ国後を喋れて・・・

その辺の歴史学者顔負けの知識と、おまけに自称吸血鬼・・・」

 

「確かに、吸血鬼みたいですよねぇ。」

 

「(・・・吸血鬼はどうでもよくねぇか?)」

 

すると、突然エミリアが声に力を入れて話し始めた。

 

「でも、吸血鬼なんておとぎ話です。

いません!」

 

「もしかしたら吸血鬼だけでなく・・・お化けもいるかもしれませんねぇ。」

 

「またそういうことを言うから、東雲さんが面白がるんです。」

 

「良介さんはどう思います?

吸血鬼だと思いますか?」

 

あやせの質問に良介は少し考える。

 

「うーん・・・どうだろうな。」

 

クエスト中、アイラから変な違和感のようなものを少しばかり感じてはいたが、

正直、よくわからなかった。

 

「吸血鬼ではないけれど・・・年齢あたりは本物じゃないかな。」

 

「つまり、300年以上生きているから吸血鬼と名乗っていると?」

 

「ま、そんな感じじゃないかなと思う。

本当のことは知らないけれど。」

 

「なるほど・・・そういう考え方もありますねぇ。」

 

あやせがニコニコしながら頷く。

そのまま話をしていると、自然と霧の魔物のことが話に混ざり始める。

 

「・・・霧の魔物が現れてから、すべての怪物たちは消えました。

そういう怪物たちは、かつて大発生する前の霧の魔物だったのでは、と。

つまり自称吸血鬼というのは、自称霧の魔物ということなんです。

誰も本気にしないからいいものの、万が一本気にされたらと考えると・・・」

 

「それでも、アイラちゃんは私たちと一緒に戦ってくれるお友達じゃない。」

 

「だからこそ、ですよ。

あんなにいい子なのに、どうして・・・」

 

「・・・彼女にも事情があるんじゃない?

冗談が多い子だけど・・・どれだけ注意してもやめないなら、理由があるんでしょう。

幼いとはいえ、ただ無邪気なだけの子じゃないわ。」

 

「自分を吸血鬼だと言わなければならない理由があるなら、聞いたいです。

意味のない冗談です。

学園内ならともかく、外で言いふらさないように。

きちんとやめさせないと。」

 

「(さて、そう簡単にいくかな?)」

 

「そうねぇ・・・あまりきつくならないようにね?」

 

そういった話をある程度したあと、良介は歓談部を後にした。

 

   ***

 

特にこれといってやることがなかった良介は訓練所に来ていた。

ちょうど精鋭部隊もいない時間帯の上、誰も使っていない状態だった。

 

「ちょうどいいや。

試したいことがあるし、好都合だ。」

 

良介は変身し、属性の強化魔法を試そうとした。

 

「(今まで一部の属性しか使ってないからどんな効果があるか知らないんだよな。

それじゃ、まず火から・・・)」

 

火の強化魔法を自分にかける。

良介の体から炎がオーラのように取り巻く。

 

「・・・うーん、攻撃に火属性がかかる・・・だけか?」

 

防御の方は実際に受けてみなければわからないので諦めた。

 

「じゃ、次は風を・・・」

 

風の強化魔法をかける。

良介の体を覆うように風が発生する。

 

「・・・あれ、なんか体が軽いような・・・」

 

良介はもしやと思い、軽めにジャンプする。

すると体が空中に浮いた。

そのまま停滞することにも成功した。

 

「なるほど、空も飛ぶことも可能なのか。

こいつは便利だな。」

 

次に土の強化魔法をかけた。

体が黄色のオーラに包まれる。

体が重くなったような感じがするかわりに、力が湧き出るような感じがする。

 

「・・・パワータイプになったって感じだな。」

 

次に水の強化魔法をかけたが・・・

 

「・・・なんか普通の強化と変わらないような・・・」

 

水色のオーラに包まれただけで特にこれといって変化はなかった。

 

「・・・雷、試すか。」

 

雷の強化魔法をかける。

体から火花が散り始める。

 

「んー、風の時よりも軽くなったような・・・」

 

軽くジャンプするが空中に浮いたりはしなかった。

そこで、試しに力強く地面を蹴ってみた。

すると、一瞬で訓練所の壁に到達した。

 

「っとと!!

一瞬で壁まで到達するとは・・・はっ!」

 

もう一度地面を蹴ると、元の場所に一瞬で戻った。

 

「風よりも疾く動けるけど・・・うまく使えるのに時間がかかりそうだな。」

 

その後、雷の強化魔法をうまく使えるように練習していたが、その途中で精鋭部隊が入ってきた。

一番最初に入ってきた焔の目の前で良介は止まる。

 

「うわっ!?」

 

「おお、悪ぃ悪ぃ。

驚かしちまったな。」

 

「・・・お前、今瞬間移動してなかったか?」

 

続いてメアリーが入ってきた。

 

「属性の強化魔法を試してる最中なんだ。

今は雷の強化魔法をな・・・っと!」

 

一瞬で向こう側の壁に移動する良介。

 

「・・・なんか人間やめてきてないか。」

 

「・・・ああ、あいつ雷神かなにかじゃねえのか?」

 

良介は雷の強化を解き、風の強化に切り替える。

体を宙に浮かし、少し空中で移動する。

 

「・・・なんじゃありゃ。」

 

良介の魔法を見て呆然とするメアリー。

 

「うーん、ざっとこんなもんかな。

さて、帰るか。」

 

良介は変身を解き、訓練所を後にする。

 

「・・・ふむ、我々も負けるわけにはいかないな。」

 

後から入ってきたエレンが良介の後ろ姿を見て笑みを見せた。




人物紹介

海老名 あやせ(えびな あやせ)17歳
歓談部を尋ねればお茶とお菓子で出迎えてくれるお姉さん。
どんな話題にも丁寧な返事が返ってくるので、彼女の元を訪れる寂しい生徒が後を絶たないらしい。
だが彼女の話好きはもろ刃の剣。
気が付いたら2時間経っていたというのは日常茶飯事だ。

エミリア・ブルームフィールド 17歳
イギリスの魔法学園からの留学生で下級貴族の出。
正義感溢れる騎士見習いだが、楽観主義が強く、本物の戦場を知る生徒にたしなめられることも多い。
もともとの実力は高いので、ある程度経験を積めば化けるはず。

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