グリモワール魔法学園【七属性の魔法使い】   作:ゆっけめがね

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※この作品の主人公は原作アプリの転校生ではありません。
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 それでもOKという方は、よろしくお願いします。


第115話 とうふラーメン

朝、学園の校門前。

兎ノ助が説明していた。

 

「えー・・・というわけで、毎年恒例の商店街初売りがある。」

 

「商店街・・・ですか?」

 

エミリアは首を傾げた。

 

「そうだ。

単独クエスト許可が出て以来、さらが根城にしている商店街だ。」

 

「ネジロ・・・!

ネジロとは・・・!」

 

「リナ知ってるぞ。

悪いヤツらの基地のことさぁ。」

 

エミリアの問いに里奈が答えた。

 

「悪の組織ですか!」

 

「こら、誤解するだろう。」

 

怜は里奈に注意した。

 

「さらの初めての単独クエストがあの商店街だったからな。

あれから、よく遊びに行ってるみたいでさ。

今は、龍季が付き添う条件でシローも同行しているらしい。」

 

良介が説明した。

兎ノ助が再び説明し始めた。

 

「その商店街だ。

ちなみにあそこは毎年、この時期に初売りをやる。」

 

「初売りって、もうどこも終わってませんか?」

 

エミリアは兎ノ助に尋ねた。

 

「たいていはな。

だが駅前と同時期にやっても採算が取れないってことで・・・」

 

「初売りはその年初めての開店日のことだと聞いてますが。」

 

エミリアは再び兎ノ助に質問した。

 

「あー・・・だから名前だけだ。

ようするに安売りやるんだよ。

ところで今回は、もう行ったさら、龍季とは別に5人だって話だが・・・あと、誰だ?」

 

「私は特に聞いてませんね。」

 

「リナも聞いてないぞ。

誰か来るのか?」

 

「俺も知らん。

怜、知ってるか?」

 

「ああ・・・今し方、来たところだ。」

 

4人が振り返るとつかさがやってきた。

兎ノ助とエミリアと良介は固まった。

 

「おおー、生天目。

珍しいなー、お前。」

 

「おおおおおいおいおい!

魔物討伐じゃないんだぞ!」

 

「あ、あの、なにかの間違いでは・・・」

 

兎ノ助とエミリアは困惑していた。

 

「間違いではない。

商店街での奉仕活動とやらだろう。

私も行くぞ。

ああ、つまらん・・・」

 

つかさはため息をつきながら先に行ってしまった。

 

「な、なにがどうなってるんだ?」

 

兎ノ助はつかさの後ろ姿を呆然と見つめていた。

 

「もう嫌な予感しかしないんだが・・・」

 

良介は苦笑していた。

 

   ***

 

良介たちは風飛商店街にやってきた。

つかさはつまらなさそうにしていた。

 

「で、どこに魔物が出るんだ?」

 

「つかさ、ここに魔物は出ないぞ。」

 

良介の発言を聞いてつかさはため息をついた。

 

「フン、冗談だ。

わかっている。

力が必要なら呼べ。

細々しいことは性に合わん。」

 

「ああ、ならばあそこの荷物を運び込んでくれ。

これから2月の節分に向けて、大豆を大量に仕入れたそうなんだが・・・主人がぎっくり腰なってしまってな。」

 

怜が荷物を指差して指示を出した。

 

「あれしきの荷物で腰をやるとは、虚弱だな。」

 

「魔法使いと一般人を一緒にするなよ。」

 

良介は呆れていた。

 

「話は聞いている。

真面目にやったなら、そう報告する。」

 

怜は言葉を聞いてつかさは動き出した。

 

「自力地力でゲートが開けられんのならば、どうしても許可がいる。

やればいいんだろう。」

 

つかさの姿を見ていた良介は怜に話しかけた。

 

「なあ、怜。」

 

「なんだ、良介。」

 

「お前、怖くないのか。」

 

「怖くはないさ。

奴がいきなり殴りかかるのは魔物に対してだけだ。」

 

「いや、別にそうでもないぞ。」

 

良介の言葉を聞いて怜の顔色が変わった。

 

「ち、違うのか?

あ、後でしっかり話を聞いておかなければ・・・ちょうどいい、エミリアと与那嶺を呼んでくれ。」

 

「ん?

わかったけど、なんでだ?」

 

「今日に限り、適度に生天目に仕事を依頼できるからな。」

 

数分後、エミリアと里奈に怜は説明していた。

 

「はぁ・・・なるほど。

裏世界に行くために、奉仕活動のノルマ。」

 

「アイツが言うこと聞くなんて、雪でも降るんじゃないか。」

 

「生天目の戦力は是が非でも必要だ。

本来なら請い願う所だが・・・ゲートを餌に、品行方正になってもらおうというのが委員長の考えだ。」

 

「ああ、そういや風子の奴、前にそんなこと話してたな。

まぁ、つかさも本当に嫌なら参加しないか。」

 

良介は納得した。

 

「なるほど。

では・・・私も生天目さんに協力しますね!」

 

「ん?」

 

怜はエミリアの方を見た。

 

「今日のクエストで、みなさんに満足していただけるのが条件なのでしょう?

生天目さんが頑張っても、私たちが怠けたせいで、評判が悪いとしたら・・・申し訳が立ちませんから!」

 

「まぁ、そういうことに・・・なるのか?」

 

「与那嶺さん!

生天目さんに負けてられませんよ!」

 

里奈は嫌そうにしていた。

 

「えぇー。

アイツに張り合ってたらすぐにバテちゃうぞ。」

 

「もちろん、力仕事をしても仕方がありません。

私たちは、私たちにできることをしましょう!」

 

エミリアは元気よく歩き始めた。

 

   ***

 

里奈とエミリアは八百屋に来ていた。

 

「おや。

これは・・・お野菜ですね。

なぜはっぴゃくやというのでしょう。」

 

エミリアは首を傾げた。

 

「それはやおやって読むんだぞ。」

 

里奈はエミリアに正しい読み方を教えた。

 

「あぁ!

確かに!

八百万の神と同じですね!」

 

「やおよろずってなんだ?」

 

里奈はエミリアに尋ねた。

 

「日本には800万の神様がいると聞いています。

多神教ですね!」

 

里奈は首を傾げていた。

そこに良介がやってきた。

 

「どうした2人とも。

つかさと張り合うんじゃなかったのか?」

 

「あっ。

いい所に!

良介さんに訊いてみましょう!」

 

「ん?

一体何だ?」

 

エミリアは良介に八百万の神について尋ねた。

 

「あぁ、そのことか。

別に800万いるわけじゃないぞ。

八百万ってのはものすごくたくさんって意味だ。

で、八百屋もたくさんの物を売っているから、八百屋っていうんだ。」

 

「なるほど!」

 

「知らなかったさぁ!」

 

2人は納得したように頷いていた。

 

「ほら、みんなが待ってるぞ。

話はそれくらいにしとけ。」

 

「はい。

ですが・・・さらちゃんたちと生天目さんが、次々と解決していって・・・」

 

「リナたちの出る幕がないさぁ。」

 

「実は、俺と怜も同じ状況でな。

商店街の人達に何もないのはいいことなんだが・・・」

 

「親切の押し売りをするわけにもいきませんし。」

 

「まぁ、警備するだけでもみんな安心するんじゃないか?

ひったくりが多いらしいからな。

目を光らせておいてくれ。」

 

「はい!

日本とイギリスを繋ぐ、ブルームフィールドの誇りにかけて!

頑張りましょう、与那嶺さん!」

 

「名前でいいぞぉ~。

名字で呼ばれるとムズムズするのだ。」

 

2人は再び商店街を歩き始めた。

 

   ***

 

良介たちは話をしながら歩いていた。

 

「ひったくりとぼったくりって・・・似てませんか!?」

 

エミリアは良介に尋ねた。

 

「似ているも何も、たくりは同じ言葉だぞ。

さてと、何時間もうろつけば、それなりに奉仕活動はできるもんだな。」

 

「お祭りみたいだから、子供や家族連れが多いのだ。

お菓子を落とした子供をあやすのが大変だったぞ。」

 

「リナちゃん、根気よくあやしてましたもんね。」

 

「一緒に困ってただけだぞ。

新しいの買うわけにもいかないし。」

 

「私も、英語圏の観光客がいて通訳のお役に立てました。

ほかにも・・・それなりに、ご満足いただけたでしょうか。」

 

すると女性の悲鳴が聞こえてきた。

 

「ひ、ひったくりだぁっ!」

 

「何?」

 

「ひ、ひったくりです!

現れました!」

 

「よーし、リナが捕まえてやるのだ!」

 

「負けませんよ!

私が捕まえます!」

 

「あっちに逃げたな。」

 

「待ちなさーい!」

 

エミリアと里奈はひったくり犯を追いかけていった。

そこに怜がやってきた。

 

「良介は行かないのか?」

 

「行くさ。

近道を使ってな。」

 

良介は2人とは違う道を走っていった。

ひったくりはひたすら走って逃げていた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・魔法使いがなんぼのもんだよ!

俺は高校陸上の全国大会優勝なんだ!

逃げ切ってやる!」

 

「その割には遅いな。」

 

「うおっ!?」

 

ひったくりの目の前に良介が立っていた。

 

「魔法使いも舐められたもんだ。」

 

「ど、どけっ!

魔法なんか使ったら、マスコミに訴えてやるからな。」

 

「馬鹿が。

お前程度に魔法なんか使うわけねえだろ?

逃げ切れるもんなら逃げ切ってみろよ。

逃げ切れるならな。」

 

「野郎・・・!」

 

ひったくりは走って逃げようとしたが、良介が胸倉を掴んだ。

 

「え、ええっ?

お、お前、手を離せ!」

 

ひったくりは必死に手を振りほどこうとしたがまったく離れなかった。

 

「なんでだ?

まったく離れねぇ・・・!」

 

「安心しろ。

殴ったりはしねえ。

ただ掴むだけだ。」

 

そこにエミリアと里奈がやってきた。

 

「も、もう捕まってます、ね・・・」

 

2人は呆然とその様子を見ていた。

 

   ***

 

ひったくりが捕まった後、良介たちは話をしていた。

 

「ゆ、愉快犯、ですか?」

 

「面白い犯人だな。」

 

エミリアとリナの発言に良介はため息をついた。

 

「愉快な犯人って意味じゃないぞ。

魔法使いを警備に呼んだことを知って、あえて犯行に踏み切ったらしい。」

 

「ああ・・・たまにある問題ですね。

魔法使いがいるからやった・・・犯行を決意させた魔法使いが悪いという。」

 

「仕方ないこと・・・なんて言いたくはないけどな。

とにかく、大事になる前に捕まえることができてよかった。」

 

「結局、良介さん一人で解決してしまいましたね。」

 

「なんか申し訳ないぞ。」

 

「まぁ、気にするなよ。」

 

エミリアはデバイスで時間を確認した。

 

「あ、もうクエスト終了の時間ですね。

さらちゃんたち、警備が終わってからおよばれしてるらしいですよ。」

 

「ああ、そうか。

クエスト後は授業免除だからな。」

 

「で、では私もこの・・・おとうふのラーメンを食べてもいい!?」

 

「ああ、好きにしたらいいさ。」

 

「良介さんも行こう?

里奈ちゃんも、怜ちゃんも!」

 

「リナ、もっと腹に溜まりそうな物がいいのだ・・・」

 

「生天目さんも・・・誘える、かな・・・」

 

「私はいらん。

やることがあるからな。」

 

つかさはいつの間にか良介たちの後ろに立っていた。

 

「ひゃっ!

やること?」

 

「生天目・・・今日のこと、しっかり報告しておくからな。」

 

怜の言葉を聞いたつかさはため息をついた。

 

「好きにしろ。

しかし・・・魔物の1匹も出んとはさすがに退屈した。」

 

「お前、これから戦いに行くつもりか?

校則違反になるぞ。」

 

「フン。

気にいらんならそう報告すればいい。

私は我慢できんだけだ。」

 

「お前、やりたいことがあるんだろ?

戦いが我慢できないなら、俺が相手をしてやる。

いつでも声をかけるといい。」

 

良介は笑みを浮かべながら歩いていった。

 

「も、もしお腹が空いたら、ぜひ来てくださいね!」

 

「そうだ!

真理佳が戦いたがってたぞ。

今度受けてやれよー。」

 

エミリアと里奈も良介について行った。

少し時間が経ち、つかさは一人で商店街を歩いていた。

 

「つかさ、まだこんなところにいたのか。」

 

そこに良介がやってきた。

 

「良介・・・」

 

「魔物を探しに行くつもりか?」

 

「ああ、そうだ。」

 

「少しぐらい、お茶でも飲んだらどうだ?

奢るぞ。」

 

良介は喫茶店を指差した。

 

「ククク、貴様もヤキがまわったか。

私を誘うとはな。

いいだろう。

私を満足させることができれば、おとなしくしてやろう。

だが、満足できなければ・・・その後はわかっているな?」

 

「さっき言った通り、相手をしてやるよ。」

 

「ああ、私の気が済むまでだ。

貴様が力尽きるのが先か、私が満足するのが先か・・・楽しい勝負になりそうだ。」

 

つかさは嬉しそうに笑みを浮かべた。


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