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裏世界、ゲネシスタワーへと続く道。
薫子と結希がいた。
「このあたりのはずですが。」
「私たちの戦力は精鋭部隊より低いから、心配ないと思うわ。」
「我々はともかく、立華さん、良介さん、誠さんの実力はとても高い。
本当に大丈夫でしょうか。」
そこに子供の姿になった卯衣がやってきた。
「念のため魔力を半分ほど消費した状態にしている。」
「表では魔法の実力は、魔力量に放出可能量、精度を掛け合わせた指標による。
こちらが同じ物差しで測っているなら、魔力が膨大でも・・・放出可能量を調節することができる良介くんと誠くんは問題なし。
卯衣は一時的に魔力を放出できない状態・・・魔力腺にあたる機能を無効にすることで脅威度を減らせる。」
「魔力腺を閉じることができるなんて、便利ですね。」
薫子は良介たち3人を羨ましそうに見た。
「こういう時にしか使わない機能だけどね。
念のために魔力も減らしたわ。」
「元々、手加減ができるようにするために覚えたやり方だったんだが、こんなところでこんな使い方するとは思わなかったな。」
「俺なんて短時間で良介に教えてもらっただけだから、本当にできるかわからねえぞ。」
誠は少し不安そうにしていた。
「教えて1時間そこらでできるようになったんだ。
問題なくできるはずだ。
それで、タワーの中に入ったら、卯衣の魔力を補充すればいいんだな?」
「ええ、そうよ。」
卯衣は頷いた。
薫子は話を聞いて納得した。
「なるほど。
だからその姿なのですね。
結構です。
では、ゲネシスタワーの内部に向かいます。」
少し離れたところでゆかりとヤヨイが話をしていた。
「寂しい所。
本当に人なんているのかしら。」
「んー・・・そうなんだよね。
人の気配が全然しないっていうか・・・なんか、かなりの間放置されてるような劣化具合なんだよね。
人が住んでるのとそうじゃないのとで、建物の劣化って全然違うから。」
2人のところに良介がやってきた。
「梓が見た時は、誰もいなかったらしいがな。」
「あ、お兄さん。
いるなら地下、かぁ・・・地下って居住に適しているのかなぁ?」
「さぁな。
天然の洞窟と冷暖房完備じゃ全然違うと思うがな。」
「ま、地下で人がいるなら、アタシがなにか気づけると思うから。
そこは任しといて!」
「あんまり危険なことはしないでね?
良介君がいるからといって・・・魔法でも治せない大けがだと、この世界じゃ致命的だから。」
「お気づかいありがと。
いうなればそのためのアタシだし。
危険なサインは可能な限り、早く気づけるように注意するよ。」
良介たちはタワーに向かって歩き始めた。
少しして、タワーの前までやってきた。
「ガーディアンの地帯は・・・突破できましたね。」
「俺たちの考えは正しかったみたいだな。
後は、地下への扉か。」
「電子ロックらしいが、電気生きてんのか?」
良介と誠は扉の周りを見渡した。
「そうみたいね。
ちょっと待ってて・・・」
結希はデバイスを取り出した。
「今から繋ぐわ。
お願い。」
相手はどうやら心のようだ。
「わ、わかりましたぁ・・・うぅ、わ、わたしのせいで失敗したらすみません・・・」
「成功してくれれば問題ない。
さ、繋いだわよ。」
結希は色々なコードを扉に繋げた。
「はいぃ・・・OS・・・がほとんど進化していませんね・・・や、やっぱり第8次侵攻から、ITの進化は停滞・・・」
「心、進んでるのか?」
良介は心に質問した。
「は、はい!
すみませんすみません!
今開きます!」
扉から鍵が外れる音がした。
「どど、どうでしょうか?」
「開いたぞ。」
「では、待機しますから・・・!」
「ええ。
また連絡するわ・・・」
結希はデバイスを直した。
「行きましょう。」
「さて、鬼が出るか蛇が出るか。」
良介たちは扉を開け、タワーの内部に入った。
***
良介たちはゲネシスタワーの地下へと入った。
「ここがゲネシスタワーの地下か。」
良介は通路を見渡した。
ヤヨイは何かの気配を感じ取った。
「いる、ね。
魔物。
大きいドアでも霧の侵入は防げない・・・もしくはどこかに出入り口があるか。」
「人はいそうか?」
良介はヤヨイに尋ねた。
「いるよ。
つい最近の足跡がある。」
「足跡?
どこにあるんだ?」
誠は目を凝らしながら地面を見た。
だが、誠にはそれらしきものは見つけられなかった。
「右手の方に進んでる・・・でもこの地下、おかしくない?」
「ああ、鳴子さんがくれた地図と、構造がまったく違うな。」
良介は地図を開き、構造を確かめた。
「詳細に描かれていた地図・・・間違いとは考えにくい。
偽装ですか?」
薫子は良介と結希に尋ねた。
「そうみたい。
遊佐さんが改変したのか、元からなのかはわからないけど。」
「どうする、右に進む?」
ヤヨイは良介に聞いた。
「うーん、それじゃ・・・」
「待って。
ハルとキューブを先に行かせるわ。」
「ハルとキューブ?」
結希以外の全員が首を傾げた。
「行って、マッピングをお願い。」
結希の手元に浮かんでいた物体が先に進んでいった。
数分後、ハルとキューブと呼ばれた物体が戻ってきた。
「ある程度の地図ができたわ。」
「へぇ~、その浮かんでるの、そう使うんだ。」
ゆかりは浮かんでいる物体を不思議そうに見た。
「魔導科学がなければ、私は役に立たないからね。」
結希は良介に新しい地図を手渡すと、良介は新しい地図を見た。
「予想以上に広いな。
魔物の姿もある。」
横から見ていた結希は地図に写っている魔物を見て驚いた。
「この魔物は・・・」
「どうした?
犬の形をした魔物みたいだが・・・」
すると、結希は卯衣に話しかけた。
「卯衣。
あなたのデータベースに残ってるわね?」
「はい。
同系の魔物のようです。」
「同系って・・・まさか科研の・・・」
誠の言葉に結希は黙って頷いた。
「POTIだわ・・・どういうこと?」
結希は顎に手をやった。
***
良介たちはゲネシスタワーの地下を進んでいた。
「やー、文明の利器って便利だねぇ。
答え合わせしながら進んでるようなもんだよ。」
ヤヨイは新しく作られた地図を見て関心していた。
「だが、デバイスの電波はここまで届かない。
遮断されてるみたいだな。」
誠はデバイスを見てため息をついた。
「連絡が取れないなら、いよいよケガには気をつけなきゃ。
それにしても、空調・・・効いてないのかしら?」
「魔物がうろついているのなら、頻繁にこんなところまでこれないだろ。
必要最低限のところしか動かしてないはずだ。」
「それで空気がよくないのね・・・戦闘服だから大丈夫だと思うけど・・・」
誠の言葉を聞いてゆかりは納得した。
ヤヨイは地面を見ていた。
おそらく足跡を見ているのだろう。
「人がいったのは向こう。
だけど・・・」
その頃、卯衣は黙って歩いていた。
「卯衣。
あなたのスキャンで、念のため痕跡を・・・」
結希が卯衣に話しかけたが、卯衣はまったく反応しなかった。
「卯衣?」
結希がもう一度呼びかけると、ようやく反応した。
「はい、ドクター。
なんでしょう。」
「あなた・・・考え事、してたの?」
「いえ。
情報収集です。」
「呼びかけに応えないほど集中するなんて、珍しいわね。
なにかわかったの?」
卯衣は少しの間黙った。
「今は、まだ。」
「そう。
わかったら、教えてね。」
「どんなことでもでしょうか?」
「このクエストに必要な情報は、どんなことでも。」
「わかりました。」
卯衣は再び情報収集に入った。
良介は薫子と行動していた。
「これは広いなんてもんじゃないな。」
良介は地図を見て呆れていた。
「良介さん。
お気をつけください。
私たち最大の戦力は良介さんと誠さんと立華さんですが、彼女の力はあなた頼みです。」
「万が一のことが起きたら、全てが無に帰す、って言いたいんだな。」
「はい。
ご自分の命を一番にお考えください。
私たちを、盾にすることを躊躇わないように。
と、言ってもあなたのことですから聞かないんでしょうね。」
薫子はため息をついた。
「よくわかってるじゃないか、薫子さん。
ま、死にに行くような真似はしないように努力するよ。」
良介は薄ら笑いを浮かべながら先に進んだ。
***
良介たちはゲネシスタワーの地下を進んでいた。
「POTIがいるということは、ここは科研の技術が・・・?」
結希は考え込んでいた。
「当然だろ。
人類最後の砦なら、使わないわけがない。」
結希の言葉を聞いていた良介が前を向いたまま答えた。
「でも、ガーディアンといい・・・もしかしてこのPOTIも・・・」
結希は地図に写っている魔物を見た。
「裏世界の人類は、魔物をある程度コントロールできてるってことか?」
良介が結希に聞いた。
「ええ・・・表世界とどこまで同じ道をたどってるかわからないけど・・・このゲネシスタワーの持ち主が、科研の技術を持っている事は確か。
霧の護り手だったら、こちらの私はもう生きていないでしょうね。」
「ドクターの・・・・・」
卯衣が突然黙ってしまった。
「卯衣?
どうしたの?」
結希が心配そうに近づいた。
すると、卯衣は元に戻った。
「いえ・・・なにか、違和感が・・・なんでもありません。」
「タワーに来てから様子がおかしいな。
どうしたんだ、卯衣。」
良介は心配そうに卯衣を見た。
「話しておいた方がいいかもね。」
「何をだ?」
結希の言葉に良介は首を傾げた。
卯衣は黙って結希の方を見ていた。
「ガーディアンのデータ、あなたには伝わってると思うけど・・・破棄されてもすぐに修復する・・・霧の魔物と言うより、あなたに似ている。」
「はい。
私もこのクエストが終わったら確認しようと考えていました。
通常の霧の魔物は、霧散したら再構築まで時間を必要とする。
そのインターバルがなく、すぐに再生するのは、私と同じ動作です。」
卯衣は少し黙った。
「確証が必要です。
決定的な、確証が。
証拠が得られれば、私がいつどこで作られたのかがわかる。」
「ええ・・・遊佐さんの情報ではあなたは裏世界に存在しない。
あなたは、現在・・・ここよりも未来に生まれた可能性があるわ。」
その頃、ヤヨイは少し意識を集中させた後、誠たちの方を向いた。
「魔物が、一方向からしか現れないのには気づいてる?」
「ああ、俺たちの進路を遮るように襲ってくるな。」
「それを踏まえたうえで、この先の分かれ道・・・魔物が来るのと別の方向に足跡が続いているんだけど。
二手にわかれる?」
「いえ、それは絶対にしません。
少人数を更に分けるのは愚策です。」
薫子は否定した。
「俺か良介なら、なんとかできると思うけど。」
誠が薫子に勧めてみた。
「ダメです。
今の私たちが考えなければならないのは最悪の事態。
生き抜くだけでなく、別の目的があるということをお忘れなく。」
「はいはい、わかりました。」
誠は頭を掻いた。
「で、どっちに行く?
足跡の方に生存者がいるのは間違いない。
でも・・・気になることがあって。」
「なんだよ、気になることって。」
誠はヤヨイに尋ねた。
「魔物が来るのって、学園の方向なんだよね。」
「それは確かですか?」
薫子はヤヨイに聞いた。
「間違いないよ。
それに宍戸さんのハルにエコーしてもらったんだけど・・・この通路、ものすごい遠くまで続いてる。
それこそ、学園まで。」
誠と薫子はヤヨイの話を黙って聞いていた。
「魔法使いの村に通じてるってわけじゃないのか?」
誠はヤヨイに聞いた。
「うん。
ここはもっと深いから。
だから、魔法使いの村より下になるね。」
誠と薫子は黙って目を合わせると、頷いた。
「足跡は気になりますが、今回はそちらに行きましょう。」
「結希は学園の関係者だからな。
そっちの方が可能性が高いだろ。」
「それに前回のガーディアン騒動・・・博士である彼女が見に来たとは思えません。」
「足跡は結希じゃない。
たぶんそうじゃないかな。」
ヤヨイは2人の話を聞いて頷いた。
「筋は通ってる・・・でも予測は予測だよ。
無駄足になるかも。」
「結構です。
責任をとるための私ですから。」
薫子はそう言うと、魔物が来る方向へと進み始めた。