グリモワール魔法学園【七属性の魔法使い】   作:ゆっけめがね

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※この作品の主人公は原作アプリの転校生ではありません。
 閲覧者様のイメージを壊す可能性があります。
 それでもOKという方は、よろしくお願いします。


第10話 違和感

良介と怜は雑魚の魔物を倒しながら森の中を進んでいた。

 

「・・・随分と倒したが、魔力は大丈夫か?」

 

「ああ、全く問題ないが・・・どうかしたのか?」

 

「信頼しているとは言ったが、私も初めてのことだからな。

その様子なら心配はいらなそうだな。

それとは別に、疲れているなら・・・」

 

良介はため息をつく。

 

「・・・全く問題ないって言ったろ?

そっちこそ何かあったら言えよ?」

 

「・・・すまない。

ありがとう。

では少し待て。

ここからはさらに警戒が必要だ。」

 

「・・・というと?」

 

「人面樹は比較的よく現れる魔物でな。

ある程度特徴が明らかになっている。

あそこに見えるだろ?

あれが人面樹だ。」

 

怜が指さした方向を良介は目を向ける。

明らかに少し怪しい木がある。

 

「確かに雰囲気が変な木があるな。

もしかだが、あれが本体か?」

 

「本体ではなく、分身だ。」

 

「・・・分身?

偽物ってことか?」

 

「人面樹は、自らの力を他の木々に分け与えることで、分身を生み出せるんだ。

スライムなどと違い自身の力をかなり使うから、その数に限りはあるが。」

 

「なるほど。

スライムほど面倒な相手じゃなけりゃ、まだ楽かな。」

 

「だから駆逐は丁寧にやらないといけないんだ。

まずあいつからだな。」

 

怜が人面樹に向かっていく。

向こうもこっちに気づいたようで、枝をツルのように伸ばし攻撃してくる。

怜はその攻撃を剣で捌いて、接近する。

 

「なるほど、剣で攻撃を捌いて、か。

けど、ちょっと攻撃の数が多いな。」

 

良介は風属性の魔法を撃つ準備をする。

 

「(ここは森の中だ。

火属性なんか使って下手に引火、なんて洒落にならないからな。)

 

風を無数の刃の形にし、敵目掛けて撃つ。

人面樹のツルが次々と切られていく。

その隙を怜は見逃さない。

 

「そこだ!

せいっ!」

 

人面樹を一発で袈裟斬りにする。

 

「・・・すまない、助かった。」

 

「別に礼を言われるほどじゃないさ。

この調子で行こう。」

 

「・・・ああ。」

 

二人はさらに奥に進んだ。

 

  ***

 

その頃、生徒会室では生徒会が準備を進めていた。

 

「いちおう、カリキュラムを警戒用に変えておこう。」

 

「短期間での学園全体の戦力上昇をはかりましょう。」

 

「万が一のための金もいる。

聖奈。」

 

「はい。

執行部へ支給金増額の通知をしておきます。」

 

すると、結希が話しかけてきた。

 

「・・・学園執行部は特にアクションしないと思うわ。

国軍の装備も更新されているから、学園の出番はないという見解よ。」

 

「それが本当ならケチにも程があるぞ。

・・・通知はしておく。

その上で、こちらはこちらで金を集めよう。

クエストの受け入れ数を増やす。」

 

「魔物討伐数が増えれば、政府からの報奨金も増えますね。」

 

「・・・私もできるだけ協力するわ。

といっても、些細なことだけど。」

 

「じゅうぶんだ。

北海道のようなことが2度とないようにする。」

 

「・・・まだ第7次侵攻だとは決まってないわ。

詳しくわかったら連絡するわね。」

 

結希は生徒会室を後にした。

場所は変わって山奥。

良介と怜はさらに奥に進んでいた。

 

「念のためまた確認するが、魔力は枯渇していないな?」

 

「ああ、大丈夫だ。

いくらでも渡せるぞ。」

 

「・・・なるほど。

頼もしさの理由がわかる。

私ももう気にしないことにしよう。

危なくなったら言ってくれ。」

 

そう話していると、怪しい木が目に入る。

 

「お、あれも人面樹か。」

 

「・・・ふむ、二体目だな。

少し奇妙だ。」

 

「・・・どうした?

奇妙ってどういうことだ?」

 

「いや、この間隔で配置されているなら、本体はすぐ近くのはずだが・・・

まだ神社までは距離がある。

離れたところに分身を作るには力が必要だ。

人面樹が誕生したと推測されるのが二日前。

そこまでの力はまだないはずだ。」

 

確かに怜の言うとおりである。

力をつけたにしてもあまりにも急速すぎる。

 

「・・・二日でそれだけも力を?」

 

「・・・とにかく、斬ろう。

時間は無駄にできない。」

 

怜は先ほどと同じように敵に向かっていく。

良介も先ほどと同じように魔法の準備をする。

風の魔法でツルを切っていく。

怜が魔力を込めて相手に斬りかかる。

だが、怜の剣は途中で止まってしまった。

 

「くっ、意外と硬いっ・・・!」

 

剣を抜こうにも抜けない状態になってしまった。

魔物もまだ息絶えておらず、怜を突き飛ばす。

 

「うっ・・!!」

 

怪我はないようだが、怜はバランスを崩してしまった。

 

「・・・やばい!

(少し距離が離れている・・・ならっ!)」

 

良介は肉体強化の魔法を使う。

なんとそれに風属性の魔法をかけた。

 

「(風属性の肉体強化・・・これならっ!)」

 

良介は風のような速度で敵に接近する。

 

「もらった!!」

 

良介はさらに剣に風属性をかけて怜が斬ったところに斬りかかった。

人面樹は袈裟斬りにされ、消えた。

木に刺さっていた怜の剣が地面に落ちる。

良介はそれを拾い、怜に手を差し伸べる。

 

「大丈夫か?

なんともないように見えるが・・・」

 

「ああ、大丈夫だ。

突き飛ばされただけだからな。」

 

良介の手を借りて怜は立ち上がり、剣を受け取る。

 

「すまない、助かった。」

 

「別に気にしなくていい。

当然のことをしたまでだからな。」

 

「・・・ふふ、そうか。」

 

「・・・なんだ?」

 

「なんでもない。

先を急ごうか。」

 

二人は奥に進んだ。

 

   ***

 

「・・・ふうっ。」

 

神社の前まで来たところで怜は息を吐く。

 

「どうした?

疲れたのなら休憩しようか?」

 

「大丈夫だ。

休憩が必要なほど疲れてはいない。

どちらかというと恐れているんだ。

家族の避難は万全だという連絡だが・・・

それが間違いで、もしかしたら命を落としている者がいるかもしれない、と・・・

人面樹がすでに太刀打ちできないほど成長しているのではないかとな。」

 

「・・・心配性だな。」

 

「クエストではいつもこんな心境だ。

まだまだ精進が足りない証拠だよ。

・・・とはいえ、私は襲われているかもしれない家族を助けに来たんだ。

ここまで来て立ち止まっている理屈はないな。

すまないがあと一息だ。

サポートを頼む。」

 

「ああ、任せろ。」

 

「終わったら茶でも飲むか。

今回の礼にねぎらってやろう。」

 

「いや、そこまでしなくていい。

礼をうけるほどでもない。」

 

「お前には随分と助けられたからな。

当然のことだ。」

 

「・・・それを言うのは敵を倒してからの方がいいんじゃないか?」

 

「・・・ふふ、そうだな。

まだ早いか。

おかげで落ち着けた。

ありがとう。」

 

「・・・どういたしまして。」

 

「では行こうか。

すぐそこだ。」

 

二人は神社に入った。

入ってすぐそこにまた怪しげな木が生えていた。

 

「怜、あれがもしかして・・・。」

 

「ああ、本体だ。

あれを倒せば終わりだ。

・・・頼むぞ。」

 

「わかった。

任せてくれ。」

 

正面から敵の攻撃を捌きながら接近する怜。

魔法の遠距離攻撃で敵の攻撃を潰す良介。

すぐに敵に隙が生じる。

 

「今だっ!」

 

斬りにかかる怜。

またも先ほどと同じように剣が途中で止まる。

しかし、今度は抜こうとはせずそのまま切り裂こうとする。

 

「このまま・・・一気に・・・っ!」

 

すると、魔物もそれを許す訳もなく、攻撃しようとする。

と、その瞬間、敵の攻撃がされる前に全て潰された。

良介が風属性の肉体強化をかけ、一瞬で全て剣で斬ったからだった。

 

「怜っ!

やれ!」

 

「せぇいっ!!」

 

怜はそのまま一気に魔物を斬り裂く。

魔物は霧に戻って消えた。

 

   ***

 

魔物を全て倒した後、敵が残っていないか確認する。

 

「・・・うむ。

どうやら分身はこれ以上いないようだ。

分身と本体の距離が離れていたのが気になったが・・・杞憂だったようだな。」

 

「じゃ、これで終わりか。」

 

「いちおう、報告はしておこう。

もしかしたら見落としなどがあるかもしれん。」

 

「そうだな。

そのほうがいいな。」

 

「よし。

ではこのクエストは終了だ。

学園に戻るぞ。」

 

そのまま二人は学園に戻った。

 

「今日は助かった。

礼を言う。

お前のおかげで神社はこれからも続けられる。

私も家族や働いている人たちを守ることができた。

万々歳だ。」

 

「ああ、みんな無事で何よりだ。」

 

「いつもこのようにありたいものだ。

いずれまた、チームを組むことがあるだろう。

その時はよろしく頼む。」

 

「その時は、また任せてくれ。」

 

「重ねて礼を言う。

ありがとう。

さ、報告に行こう。」

 

少し時間は戻って、神社近くの山。

二人の生徒がいた。

 

「神凪ーっ!

どこじゃーっ!

・・・いかん。

もう相当先にすすんでいるようじゃ・・・さすがに遅れたか。」

 

「・・・あっちで戦闘音が聞こえるッスよ。

ふくぶちょー。」

 

「あっち・・・境内か。

よし、行こう。」

 

和服を着た生徒、南条 恋(なんじょう れん)と忍者の梓がいた。

 

「うす・・・でも、ぶちょーに黙ってきちゃってよかったのかな。

後でキゲン悪くするっすよ、ぶちょー。」

 

「神凪の神社は絵を書くためによく行っておった。

世話になっとったから、わっちは神凪を助けねばならん。

じゃがミナにそのような義理はないじゃろ・・・わっちのワガママじゃからの。」

 

「(うーん、勘違いしてるなぁ・・・意外とふくぶちょーも鈍いんスねぇ

ふくぶちょーに声をかけてもらえないからキゲンが悪くなるのに

それに、足手まといってほど弱くはないんだけどなぁ、ぶちょー。)」

 

「お主には迷惑をかけるのう。

わっちは、でばいすがうまく使えんから・・・

1人じゃと追いかけられんのじゃわ。」

 

「いえいえ、まかせてくださいッス。

そんじゃ、魔物に気をつけて進むッスよ!」

 

二人はそうして進んでいったが、着いた時点で良介と怜が魔物を倒した後だった。

 

   ***

 

良介と怜は報告のため生徒会室に来た。

中には虎千代と薫子がいた。

 

「神凪、ご苦労だった。

報告が終わったら家族に会いに行くといい。」

 

「ありがとうございます。

ですが早退したら父に叱られるでしょうから。

全員の無事は確認したので、授業に戻ります。」

 

「・・・クエストの後は授業免除のはずだぞ。

あいかわらずだな、お前は。」

 

「神凪 怜。

今は報告をお願いします。」

 

「・・・では。

良介やクラスメートの助力もあり、魔物討伐はつつがなく終わりました。

軽傷者はいますが、回復魔法が必要な生徒はゼロです。

先ほど申し上げた通り、民間人の被害もありません。」

 

「不審な点はありませんでしたか。」

 

薫子の質問に怜は疑問を抱く。

 

「特に。

なにか気になることが?」

 

「街、神社と続いて現れたことは注目に値するべきできごとです。」

 

「・・・いえ、ありました。

情報では、人面樹は2日前に生まれた魔物です。

それにしては強かった、と感じました。」

 

「具体性を欠く内容ですね。」

 

「申し訳ありません。」

 

「(厳しいな・・・)」

 

「いい、わかった。

違和感がその程度ならよかった。

報告は以上で大丈夫だ。

戻って休め。」

 

二人は廊下に出た。

 

「ふむ。

戦っている間は気にもとめなかったが・・・確かに魔物は強かったな。

良介、お前はどう思う?」

 

「どう思う・・・って言われてもなぁ・・・」

 

顎に手をやって考え込む良介。

 

「といっても、お前はまだ魔物と戦い始めて日が浅かったな。

今日は疲れただろう。

ゆっくりしておけ・・・なにせ、魔力を随分使った。

またパーティを組むときは、よろしく頼む。」

 

「魔力は全然大丈夫なんだが・・・まぁ、そうしておくよ。

組むときは任せてくれ。」

 

良介は怜と別れた。




人物紹介

南条 恋(なんじょう れん)13歳
自他共に認める【あーちすと】であり、よく絵を描いている。
年齢に不釣り合いなババクサい考え方と喋り方のせいでサバ読み疑惑が根強い。
絵の腕は確かでコンクール入選も珍しくないが、
なぜかどこかに必ず梅干しが描かれている。

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