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良介たちは他の一般人を救出しに向かっていた。
すると、望が良介に話しかけてきた。
「お、おい。
良介・・・お前ってさ、人形館のクエストの時、その場にいたんだよな?」
「ああ、いたけど。」
「あのさ・・・やっぱ、歌、上手かった・・・?」
「は?
何言ってんだ?」
「な、なにって・・・歌で追い払ったんだろ?
魔物。
それを今回、ボクがやらなきゃいけないってことはさ・・・ボクががんばって、歌、う・・・」
「それは違うぞ。」
「え?
違うってなにが。」
「大規模な範囲魔法で追い払ったんだよ。」
望は安心した表情になった。
「あ、ああぁ!
そっか、そういうことか!
その時使える大規模魔法が、音無 律の歌しかなかった、ってワケ・・・もおぉ、なんで早く言わないんだよ、勘違いしただろっ!
やっと理解したぞ、宍戸のあなたしかできないって言ったの!」
望は急に冷静になった。
「待てよ、てことは。
攻略もクソもなく、ただ大規模魔法で吹き飛ばせってこと?」
「まぁ、そういうことだな。」
「この建物を、霧の魔物ごと・・・?」
「ああ。」
「や・・・やだやだやだ!
絶対やだぁ!
そんなの完全にチートじゃないか!
ズルだ!
インチキだ!
ボクはこのクエストをまともに攻略しようと思ってたのに!」
望が怒っていると、純が2人を呼んできた。
「おーい、あっちに人いるっぽいから救出に行くってー。
どしたの?」
純は2人の様子を見て理由を聞こうとした。
「ひゃっは~っ!
爽快すぎるぅ~!
鳴海先輩!
コンボ途切れちゃったっす!
もっかい、もっかい!」
「あ!
1発目から大振りな攻撃はダメだかんね~!」
魔物と戦っている自由に呼ばれて、純は魔物の方へと向かっていった。
「どいてどいて~っ!
いっくよ~!」
純は魔物に攻撃した。
「うわぁスッゲー!
なんすかいまの!」
「あははは!
爆発しちゃった~!」
「よし!
俺も続くぜ!」
誠も続いて攻撃しようとした。
「あっ!?」
しかし、攻撃する直前で躓き、盛大に転倒した。
すると、武器が偶然か魔物に直撃し、魔物は霧散した。
「ぶっ!
誠先輩、それはダサいっすよ!」
「あはは!
何よ、それ!」
望は3人の様子を黙って見ていた。
「うぐぐ・・・お前らだけで楽しそうにして・・・ずるいぞ、ボクもやる!
ボクもやるから、そこをどけえっ!」
望は魔物に向かっていった。
良介はその様子を見て呆れていた。
「やれやれ、こんな調子で霧を払うことができるのかねぇ。」
良介はため息をつきながら、4人のところに歩いて向かった。
***
良介たちは城の近くに来ていた。
「で、救助しないとならないのって、あと何人だっけ?」
純が良介に尋ねると、良介は懐から救助者のリストを取り出した。
「えー、あと・・・うん、これだけだな。」
良介は残り僅かであることを確認した。
すると、偵察に出ていた初音が帰ってきた。
「はぁ、はぁ・・・死ぬかと思った・・・なんでアタシが・・・」
「そりゃ、シーフみたいな避けキャラは偵察要員ですからね。」
「それで、城の中はどうだったんだ?」
誠が尋ねた。
「もう敵がウジャウジャ!
イモ洗いみたいに!」
「どういう状態だそれは・・・」
良介はため息をついた。
「城の中になんかありますって。
みんなで突撃しましょうよ。」
「あんなに敵がいて、勝てるわけねーだろ!」
「いやいや、やってみないとわかんないじゃないっすか。
100体倒したら宝箱が出るゲームありましたもん。
リアルはともかく、ゲームならリスクに見合う収穫があるのが当たり前です。
なんか守ってるんですよ、きっと。
ラスボスとか。」
「ゲームなら、ね・・・魔物が作ってて、クソゲー呼ばわりされてるがな。」
良介は頭を掻いた。
「でも、なんだっけ、サイゼンセンの城?
このゲーム内だと一番大きい建物だよな。
宝物庫も牢屋もあるだろうし、見てみないって手はないだろ。」
「確かに。
もしかしたら、牢屋にぶち込まれてる人がいるかもしれないな。」
望の言葉に誠も納得した。
「問題は大量の敵をどうするかなんだが・・・ちゃんとした方法あるのか?」
「デバッグ済みのちゃんとしたゲームなら、な。」
良介は顎に手をやって考え始めた。
すると、望は黙っている自由に話しかけた。
「無理ゲーの場合は?」
「ひっじょおぉぉに、不本意ですが。
その場合は、相応の手段でいかせてもらうしかないっすねぇ。」
「ん?
何か方法でもあるのか?」
良介は自由の方を見た。
***
良介、望、純の3人は魔物の群れと戦っていた。
「良介!
魔力!」
「ほらよ!」
良介は2人に魔力を渡した。
「せーの・・・でぇいっ!」
3人は同時に魔法を撃った。
「へーき?
バフ切れてない?
ヒーラーはいないからね!」
「わかってるよ!
そっちこそ囲まれないように・・・わっぷ・・・!
クソッ、あっちいけーっ!」
望は近寄ってきた魔物を吹き飛ばした。
「あぁ!
もう、飛ばす方向間違えたらハメられないじゃない!」
「さっき、あんなにハメ技嫌がってたじゃないか・・・」
「う、うるさいなぁ!
人の命がかかってるんだから」
「おいおい、まったく・・・ん?」
すると、良介のデバイスが鳴った。
相手は自由だった。
「うーす、そっちどうです?
そろそろいきますよー。」
「ああ、行ってこい。」
その頃、誠、初音、自由の3人は城の城壁の前にいた。
「うい。
ケーいただきましたー。
城壁爆破、侵入しまーす。」
「で、道順を無視して一直線に進めばいいんだな。
大丈夫か、この作戦?」
「いや、どう考えても大丈夫じゃないだろ。
攻略法もなにもねえし。」
「仕様が許すならなんでもやれがこんな形で自分に返ってくるとは・・・」
「ゲーマーって、こだわりがあって大変だな。
んじゃま、誠、頼むぞ。」
「おうよ、2人とも、離れてろよ。
おらっ!」
誠は城壁に向かって魔法を撃った。
城壁が崩れると、中から大量の魔物が出てきた。
「うおっ!?
なんだこの数!?」
「どこに隠れてたんだよこんなに!!」
「そっちちゃんと敵引きつけてるんすか!?」
自由はデバイスで聞いてきた。
「引きつけてるよ!
これでもかってぐらいにな!」
良介はすぐに返答した。
「やばいっすね・・・良介先輩、聞こえます?
自分、お伝えしたいことが・・・」
「あ?
なんだ?」
「この戦いが終わったら・・・結婚、しましょう。」
自由の言葉を聞いて、その場にいた全員が固まった。
「へ・・・は・・・えぇっ!?」
良介は声が裏返ってしまった。
「アレ?
全然ウケない。」
「お前、なに言ってんだ・・・」
誠は魔物と戦いながら呆れていた。
「いやあの、死亡フラグ回避しようと思って。」
「どう見ても今のは死亡フラグだろ。」
「あ、最近は死亡フラグ立てて死なないのがセオリーになりつつあるんすよ。」
「んなことどうでもいいから真面目にやれ。」
さらに大量の魔物が押し寄せてきた。
「チッ、キリがねえな・・・!」
誠は舌打ちしながら、魔物に斬りかかった。
その頃、良介たちも魔物の群れと戦い続けていた。
と、望の顔色が悪くなり始めた。
「っと・・・望、大丈夫か?」
「う・・・わ、悪い・・・」
「とりあえず、休んでろよ。
この程度なら、俺たちだけでも大丈夫だ。」
良介はそう言うと、デバイスを取り出した。
「おい、まだか!?」
「まだっす!」
すぐに自由の返答が返ってきた。
「早くしてくれ!
こっちもいつまで持つかわからねえぞ!」
「わかってるすよ!
もうあらかた破壊したんで、後は地下牢くらい・・・」
「うおっ!?
まだこんなにいるのかよ!?」
誠は階段にいる尋常じゃない数の魔物に驚いた。
「も、もーちょっとお待ちを・・・」
「ったく、仕方ねえな。
こうなったらやれるところまでやってやる!」
良介は目の前の魔物に攻撃しようとした。
すると、後方から何かが魔物を攻撃した。
「なんだ!?」
良介たちは後ろを振り向いた。
その頃、誠たちのところの魔物も攻撃を受けていた。
「なんだ、新手か?」
誠たちは攻撃が飛んできた方を向いた。
「いや、ありゃ・・・デクだ・・・JGJの私兵部隊だな。
援軍だぞ、援軍!」
「え、ええ・・・ファンタジーが急にSFに・・・」
すると、誠のデバイスが鳴った。
相手は茉理だった。
「もしもし?
デク、そっちついたー?
あなたたちが攻略してくれたおかげで、道がわかったから・・・後は任せて。
魔物はこっちがやるから、救出お願いね!」
「ちぇーっ。
アツいっすけど、こーゆーのは伏線が大事なんすからね。」
「伏線ってゆーかウチの施設だからな、ここ。」
「そんなことはどうでもいいだろ。
さっさと助けに行くぞ。」
誠たちは救出に向かった。
***
誠たちは救出した一般人たちを避難誘導していた。
「はいはい皆さん、出口はこちらっすよ。
足元にお気をつけて~。」
誠は自由が誘導しているのを見ていると、救出者のリストを取り出した。
「よし、今のが最後だな。」
すると、初音はデバイスを取り出すと、樹に報告した。
「兄さまー!
行方不明者、救助完了したぜ。」
「脱出を確認。
これより城内にデク部隊が突入する。」
その頃、良介たちはデクが魔物を倒す様子を眺めていた。
「魔物が次々にやられていくな・・・」
「あんなにデク投入して、予算大丈夫なのかな。」
「自分ちの施設のことだからな・・・金は惜しまないだろ。
ボク、もう疲れた・・・楽できるならそれでいい・・・」
良介はため息をついた。
「望、お前はもうひと踏ん張りだろ。」
「うー、軽く言うけど、天気をどうにかするのって、大変なんだぞ・・・」
すると、良介のデバイスから茉理の声が聞こえてきた。
「そろそろ魔物があらかた霧になるよー。
準備お願いね。」
望は良介の方を向いた。
「良介。
魔力くれ、いっぱい。」
「わかった。
ほら。」
良介はありったけの魔力を望に渡した。
「はは。
やっぱ、クソゲーだったなぁ・・・」
望はため息をついた。
少し経って、学園の廊下。
クエストを終えた良介と誠が歩いていた。
「ふぅ、クエスト終わりっと。
さて、腹も減ったし、食堂に行くか。」
「今日は確かコロッケだったな。」
「そうか、コロッケか。」
すると、良介は誠の方を向いた。
「誠、この後予定あるか?」
「ないけど。
どうした?」
「あのクエストやった後のせいか、ゲームやりたくてな。」
「ああ、お前もか。
この後、ゲーセンにでも行くか?」
「いや、一狩り行きたくてな。」
すると、誠は笑みを浮かべた。
「お、マジで?
じゃあ、飯食い終わったらお前の部屋でやるか。」
「ああ、どうしてもクリアしたいクエストがあるから、とことん付き合ってもらうぞ。」
2人は食堂に向かって歩いて行った。