グリモワール魔法学園【七属性の魔法使い】   作:ゆっけめがね

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※この作品の主人公は原作アプリの転校生ではありません。
 閲覧者様のイメージを壊す可能性があります。
 それでもOKという方は、よろしくお願いします。


第104話 AR

アイラの部屋、鳴子がアイラのところに来て、話をしていた。

 

「お主がお主から証言を得ていたとして、それが信用できるかっつの。

お主は信用がなさすぎるわ・・・ま、それで話を進めてみい。」

 

「僕はこう考えている。

そしておそらく朱鷺坂 チトセも考えている。

表世界と裏世界は繋がっていると。

表世界を変えれば、裏世界は変わると。」

 

「変わっておらんではないか!」

 

アイラは怒鳴った。

 

「それは今の表世界が、時間停止の枠にとらわれているからだ。

1年を繰り返すこの状態は隔離されているのと同じだ。

この1年だけが、本来の歴史から切り離されている。

時間停止の魔法が解ければ、裏世界は劇的に変わる。

だから朱鷺坂 チトセは、がむしゃらに働き始めている。

諸問題を解決するためにね。」

 

「諸問題?

第8次侵攻のことか。」

 

「そう。

本来、9月に第8次侵攻が始まるはずだった。

だけど、時間停止のおかげでその年じゃなかったから発生しなかった。

だけど、良介君が聞いた情報によると・・・」

 

「汐浜ファンタジーランドは裏表、両方で襲われている。

同じ年を繰り返している表世界では、ファンタジーランド侵攻は起きないはず。」

 

「そもそも時間停止の魔法の本質は、君が説明してたはずだよ。

霧の侵食を食い止めるために、結果的に同じ時間を繰り返すようになった。」

 

「まぁな。

それが1番、わかりやすかったからというのもあるが。」

 

「同様に、この魔法も時間を止める魔法ってわけじゃない。

いくつかの希望を達成するために、結果として繰り返しているだけだ。

例えば・・・第8次侵攻に来てほしくない。

あるいは先輩たちに卒業してほしくない。

他には学園生活をずっと続けたい。

付け加えるならば・・・でも、魔物は倒さないといけない。」

 

アイラは黙って聞いていた。

 

「最初の3つを叶えるために、時間が停滞した。

でも魔物との戦いまでリセットされてしまったら困る。

そういう彼女の希望が反映されたのが今の表世界だ。」

 

「憶測が多すぎてわけわからんことになっておるぞ。

しかし、その術者はかなり限定されるじゃろ。

裏世界が判明したばかりの時点で、第8次侵攻が来ると・・・知っとったわけじゃ。

ならば、裏世界と連絡を取っていたお主か・・・裏世界から来た朱鷺坂、という二択になるぞ。」

 

「そう。

だけどどちらも違う。

実は第8次侵攻を知っている生徒は他にいた。」

 

「誰じゃ?」

 

鳴子は少しの間黙った。

 

「南 智花だ。」

 

鳴子は智花の名前を出した。

 

   ***

 

良介たちは次の魔物を見つけたが、止めを刺し損ねてしまい逃がしてしまった。

 

「逃がしましたね。」

 

「悪い、止めを刺し損ねた。」

 

「お気になさらず。

気負っても滑稽なだけですよ。」

 

「手厳しいね。

そんなにはっきり言うのは少し酷くないか?」

 

「私を酷いと思うのは筋違いです。

もともとあなたを必要としていないのです。

いらないと言っているのにズカズカと土足で入り込んでくる・・・あなたこそ、酷い人でしょう?

私とあの子の関係などどうでもいいでしょう?

あの子の口車にどう乗せられたのかはわかりませんが・・・いい人ぶりたいなら、よそでやってください。

これは私たちの問題です。

もっといえば、私だけの問題です。

他の誰にも、関係ないんですから。」

 

「はぁ・・・馬鹿馬鹿しい。

何意地張ってるのやら。」

 

すると、逃がした魔物が2人の前に現れた。

 

「さあ、来ますよ。

今度は私がやります。

私は1人で強くなります。

他の誰にも、関係ありません。」

 

イヴは魔物に氷の魔法を撃った。

だが、魔物は一撃では倒せなかった。

 

「ぐっ・・・!」

 

イヴは魔物の攻撃を避けながら、魔法をもう1発撃った。

2発目でようやく魔物を倒すことができた。

 

「やれやれ、この魔物を倒すのに手こずるようじゃ、1人で強くなるのは無理なんじゃないか?」

 

「いいえ、なります。

ならないといけないのですから。

次も私がやります。

あなたは見てるだけで結構です。」

 

イヴは先に行ってしまった。

 

「はぁ・・・初めて会った時から何も変わってないな。

いい加減分かれよ。

1人でやっても、限界があるってことを。」

 

良介はイヴの後ろ姿を見ながら、呟いた。

 

   ***

 

学園のグラウンド。

誠が1人で歩いていた。

 

「はぁ・・・」

 

誠はずっとため息ばかりついていた。

 

「(魔神化を使い続ければ魔物になる・・・か。

俺自身どうなってもいいって思ってたけど、どうすっかなぁ・・・)」

 

誠が歩いていると、1人の少女がやってきた。

 

「あのぉー・・・」

 

「ん?

あれ、お前確か・・・」

 

「今度転校してきた七喜 ちひろ(ななよし ちひろ)ですぅ。」

 

誠はちひろが私服で来ていることに気付いた。

 

「制服はまだなのか?」

 

「はい、今日、寮の方に届いてるって。

学園の見学が終わって、明日からですぅ。

でも、今日お会いできてとっても嬉しいですぅ!

えっとぉ・・・ぜったい、最初にお礼を言おうって思いましてですね!」

 

「お礼?

何かしたっけか?」

 

「汐ファンの時に、助けてくれた魔法使いさんのことを探してたんですよぉ!

そしたらシスターさんに、ここにいるよって教えてもらって・・・」

 

誠は頭を掻いた。

 

「俺は別にそこまで大層なことはしてねぇよ。」

 

「ふぇ?」

 

ちひろは首を傾げた。

 

「どういうことですか?」

 

「俺はただ庇って魔物の攻撃を防いだだけだ。

魔物を倒したのは朝比奈 龍季って奴だ。」

 

「朝比奈・・・龍季・・・?」

 

「ああ、そうだ。

その魔法使いが魔物を倒して助けたんだ。

俺はただ魔物の攻撃からお前を庇っただけだ。

お礼ならその魔法使いに言ってくれ。」

 

「ふぇぇ、そうなんですかぁ?

ありがとうございますぅ!」

 

「え・・・いや、俺は別に・・・」

 

「あなたも、汐ファンを守るために戦ってくれたんですよねぇ!

わたし、汐ファンがとってもとっても大好きなんですよぅ!

だから、魔物さんと戦ってくれて・・・ありがとうございました!」

 

誠は呆然としていた。

 

「お、おう・・・うーん、やりにくいな・・・」

 

すると、そこに葵がやってきた。

 

「えっと・・・後は購買で飲み物を追加で・・・おや・・・?

あ、七喜さん!?」

 

葵がちひろに気付いた。

 

「はい、ちひろですぅ。」

 

「それに、誠さん!

まぁ!

ちょうどよかった!」

 

「何がちょうどいいんだよ・・・」

 

誠はため息をついた。

 

「改めてお願いします!

歓迎会にいらしていただけませんか?」

 

「すまないが、そんな気分じゃない。

俺抜きやってくれ。」

 

「歓迎会、ですかぁ?」

 

「ええ、七喜さんの歓迎会を、汐ファンの時のメンバーでやろうという話で・・・」

 

「え?

ホントですかぁ!?

ありがとうございますぅ!」

 

「朝比奈さんと野薔薇さん達が参加できないとのことだったので・・・図書委員の霧塚さん達もお誘いしたんですよ。」

 

「お忙しいんですかぁ?」

 

「ただそういう気分じゃないだけ・・・」

 

すると、葵が誠に寄ってきた。

 

「きっと楽しいですよ!」

 

ちひろは背中から誠に抱きついた。

 

「わたしも、ご一緒したいですぅ!

ぜひぜひ!」

 

2人はそのまま誠を連れて行こうとした。

 

「いや、だから俺は・・・離してくれ!

頼むから、離して!」

 

誠はそのまま連れて行かれてしまった。

 

   ***

 

良介たちは魔物を発見し、攻撃したが逃げられてしまった。

 

「手ごたえはありました。

あれほどしぶといとは思いませんでしたが・・・まだ私は、満足いくほど強くない。

いえ、満足など望めないでしょうね。

生徒会長にも生天目 つかさにも、風紀委員長にもあなたや新海 誠にも及ばないのですから。

どれだけ努力しても、追いつけないものが・・・ある・・・いえ、私の努力が足りないだけでしょう。

それに私はそこまで望みません。」

 

「なんだ、望まないのか?」

 

「2人分の働きができるだけでいいのですから。」

 

すると、イヴは良介の方を向いた。

 

「風紀委員長とあなたが変な勘繰りをしているのは知っています。」

 

「へえ、てっきりわかってないと思ってたんだけどな。」

 

「そこまで鈍感ではありません。

せっかくお節介を焼いてもらってすみませんが、見当違いですよ。」

 

「ん?」

 

「私はあの子のことなど気にしていませんし、強さを求めるのは違う理由です。

これ以上の詮索は気分を害します。

そろそろ無視してもらえませんか。

そう、これが最後、でどうでしょう?」

 

2人の前に魔物が現れた。

イヴが1人で魔物を攻撃したが、魔物は攻撃を避けると、イヴに接近した。

 

「っ!」

 

イヴが防御の体勢に入ったが、魔物の攻撃は来なかった。

イヴは体勢を解くと、魔物は目の前で光の拘束魔法で縛られていた。

イヴは不服そうな顔をしながら魔物に氷の魔法を撃つと、魔物に直撃し、魔物は霧散した。

 

   ***

 

イヴは周りに魔物がいないのを確認すると、一息ついた。

 

「ふぅ・・・あなたがどうして私たちの問題に立ち入るのかわかりませんが・・・これだけはねのけても挫けない姿勢には敬意すら覚えます。」

 

「ふーん、そうか。」

 

良介はどうでも良さそうに適当に返事した。

 

「皮肉なんですよ?」

 

「わかってるよ。」

 

「生徒のなかにはそれをありたがっている人もいますが・・・迷惑に感じている生徒がいるのをお忘れなく。

確かに、あなたに助けられたことは何度かあったでしょうが。

普段の迷惑で相殺ということでいいでしょう。

私に関わらなければ、あの子に関してはどうぞご自由に。

私と違って、助けがなければダメな子ですから。

あなたのお節介があってちょうどいいでしょう。」

 

「(イヴ・・・そんなんじゃ、いつまで経ってもノエルと仲直りは出来ねえぞ。)」

 

「では、帰りましょう。」

 

良介たちは出入り口へと向かった。

 

   ***

 

良介とイヴは少し休憩していた。

 

「イヴ、情報はどうしたんだ?」

 

「集めて送りました。

ヤヨイ・ロカが知識がないため見逃したものを中心に。」

 

「なるほど、役割分担か。」

 

「ええ、彼女があらゆるものを発掘し・・・選別するのは私たちの仕事。

今のところ、直近で活発に活動しているのは、ここを爆破した団体です。

ロカさんの調べた通り、この碧万千洞には多数の爆薬が設置されていた。」

 

「散らばっている爆薬のかけらを調べれば、材質がわかるってことか。

過去に起こされた事件に使われたものを調べて、どこがやったのか、推測するんだな。

それで、それがわかれば、そいつらの傾向から、次にどこが狙われるかを推測するんだな。

ありえるなら、霧の護り手かノーマルマンズか。

もしくは規模の小さいところか。」

 

「どこの団体にせよ、今後の学園の方針はテロリストの壊滅です。

裏世界が滅びた理由のひとつに、テロリストの暗躍があると聞いています。

第8次侵攻を乗り切るためには、これらの壊滅が重要になってくる・・・重要な仕事なのです。

あなたと同じパーティになるのが避けられないのならば・・・これに取り組んでいるときは、あの子には触れないでください。」

 

イヴは良介を見つめた。

 

「お願いします。

今は余計なことに時間を使っているヒマはないので。

例え裏世界の私たちがどうなったとしても。

うまくやってみせます。

ご心配はいりませんから。」

 

「(そう言われても・・・心配しかないんだよなぁ・・・)」

 

良介は不安そうにイヴを見ていると、イヴのデバイスが鳴った。

イヴはデバイスを取り出した。

 

「分析結果が判明しました。

霧の護り手ですね。」

 

「警察や政府は認識しているんだろうな。」

 

「しかし学園にとってどちらも、味方ではないですから。」

 

「独自で調査する必要があるか。

それに、単独で戦える組織にもならないとダメってことか。」

 

良介はため息をつくと、イヴと共に出口へと向かった。




人物紹介

七喜 ちひろ(ななよし ちひろ)16歳
浜ファンタジーランドが大好きな女の子。
ほぼ毎週遊びに行っていたところ、魔物に襲われて重傷を負い、そのショックで魔法使いに覚醒。
ふわふわほわ~っとしており、きらきらのくるるん。
兎がぴょんぴょんするととってもかわゆいんです。
図書委員。

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