グリモワール魔法学園【七属性の魔法使い】   作:ゆっけめがね

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※この作品の主人公は原作アプリの転校生ではありません。
 閲覧者様のイメージを壊す可能性があります。
 それでもOKという方は、よろしくお願いします。


第100話 壊れた銀の輪

ある日の学園。

色々な飾りが取り付けられた廊下を良介と絢香が歩いていた。

 

「いよいよ当日かぁ・・・ギリギリまでステージの設営手伝わせちゃってごめんね。」

 

「別に構わないさ。

おかげで当日には間に合ったんだから。」

 

すると、そこに律がやってきた。

 

「おーい!

絢香!

やっと見つけた・・・はぁ、はぁ。」

 

「律、どうしたんだ?」

 

良介は律に尋ねた。

 

「いや・・・変な噂聞いてさ・・・絢香の事務所に脅迫文が届いたって聞いて・・・」

 

「えっ?

誰から・・・あ、お手伝いの人か。」

 

「ダンスの練習してたら、スタッフが話してるのが聞こえてさ・・・」

 

「絢香、大丈夫なのか?」

 

良介は絢香に聞いた。

 

「そのことなら大丈夫だよ。

本気の可能性は低いしね。

脅迫ってよくあるんだ。

ちゃんと学園に伝えて、注意してもらってるから。

制服のガードマンもたくさんいるし、大丈夫大丈夫。」

 

「まぁ、それなら大丈夫か・・・」

 

「うん!

だから心配しないで。」

 

「一安心だな・・・あ・・・あたし体育館に荷物置いてきちゃった。」

 

「早く取りに行けよ。

開会式始まるぞ。」

 

「そうだな!

サンキュー。

んじゃライブ楽しみにしてるからなー!」

 

「うんっ!

ありがと!

気をつけてねー。」

 

律は走り去っていった。

 

「はぁ・・・やっぱり広まっちゃってるかぁ・・・」

 

「さっきの脅迫文の話か?」

 

「うん・・・ネットでね。

わたしのファンのコミュニティに書かれてたんだ。

事務所の人が見つけて、すぐに対応したんだけど・・・だから大丈夫なんだけど、ほら、みんな心配しちゃうから。

学園生にはあんまり知られたくなかったんだ。

せっかく楽しい学園祭なんだから、雰囲気壊したくないもんね。

いちおう、ガードマンを増やして、風紀委員にも伝えてるよ。

どうしてもこの学園祭のライブは成功させたいから。」

 

「なるほどね・・・まぁ、なにもなければいいが・・・」

 

2人が話していると、今度は千佳がやってきた。

 

「おっはよーー!

絢香!」

 

「あ、おはよう。

千佳ちゃん!」

 

「やっと見つけたわ。

人多くて見つかんないかと思った・・・ねぇねぇ。

開場したら一緒に校舎のほう回らない?」

 

「え、うん!

ライブのリハーサルまでなら、大丈夫かな。」

 

「良かった、みんなバタバタしててさぁ。

1人でってのも微妙だし・・・良介もどーせ暇でしょ?

来なよ。」

 

「ん?

そうだなぁ・・・」

 

「良介君?

ちょっと来て・・・」

 

絢香は良介の袖を引っ張った。

 

「どうした?」

 

「脅迫文の事、千佳ちゃんには言わないでね。」

 

「あぁ、そのことか。

わかってるよ。」

 

「どうしたの?」

 

千佳は不思議そうに見てきた。

 

「ん?

なんでもないよ。

そろそろ開会だよね?」

 

「あと5分。

グラウンドでやるって言ってたし、いこいこ。」

 

絢香と千佳はグラウンドに向かった。

 

「さて、何も起きなきゃいいが・・・念のため誠には話しとくか。」

 

良介は2人の後をついて行った。

 

   ***

 

良介たち3人は廊下を歩いていた。

 

「うお・・・かなり混んでるな。」

 

「毎年スゴいわ、やっぱ。」

 

「本当、すごい盛り上がってるねー。」

 

良介たちは壁に新聞を貼っている鳴子を見つけた。

 

「これでよしっと・・・ん?

やぁ、魔法祭は楽しんでるかい?」

 

「どうも。

それ、魔法祭の壁新聞ですか?」

 

「そうさ。

今年の魔法祭は面白いネタがたくさんあってね・・・」

 

良介は新聞に目を通した。

 

「何々・・・生徒会と風紀委員のコスプレ警備?」

 

「何それ、ウケるんだけど・・・ちょっと見たいわ。」

 

「確かに・・・見てみたいな。

(風子・・・どんな格好してるんだろう・・・)」

 

「不届きものに知らせてるのさ。

皇君の心配がこれで払拭できればいいけどね。」

 

千佳は何のことかわかっていない様だった。

 

「あ、ありがとうございます。」

 

「なんですか。

この新聞は・・・」

 

風子と虎千代がやってきた。

 

「あれ?

まだコスプレしてないのか?」

 

良介は風子に聞いた。

 

「ウチらは好きでコスプレ警備なんてしてるわけじゃねーんですがね・・・」

 

「まぁまぁ、そう言うな水無月。

せっかくの魔法祭だ。

雰囲気を壊さないように警備する為の手段だ。」

 

「わかりましたよ。

んじゃ、ウチは正門の警備があるんでこれで・・・皇 絢香、心配しねーでも警備はしっかりやるんで。

あ、良介さん。」

 

「ん?」

 

風子は良介に少し近づいた。

 

「暇ができたら一緒に回りましょうね。」

 

風子は小声で言うと、良介は無言で小さく頷いた。

 

「では、ウチはこれで。」

 

風子は去って行った。

 

「それじゃ。

新聞も貼ったし、僕もこれで失礼するよ。

気をつけて、楽しむといい。」

 

鳴子も去って行った。

 

「うーん。

いいアイディアと思ったんだがな・・・コスプレ。

おっと、アタシも用事を忘れていた。

それじゃ皆、魔法祭を楽しんでくれ。」

 

虎千代も行ってしまった。

 

「あ、そうだそうだ!

うちも忘れないうちに・・・これ渡しとくね。

うちの作った学園祭ブレスレット。

記念に作った、みんなお揃いのやつなんだけどさー。

良介の分も作ったからあげる。

ほい。」

 

千佳は絢香と良介にブレスレットを手渡した。

 

「うわ・・・絢香の名前が入ってる。

ありがとう!」

 

「これはいいな。

ありがたく貰っとくよ。」

 

「ホントはもっと早く渡そうと思ってたんだけどさー。

全員の名前入れてたら、むっちゃ時間かかった・・・昨日、完成したんだよね、当日になっちゃったけどさ。」

 

「ううん。

ありがとう。

すっごく嬉しいよ!」

 

「そんな喜ばれると、なんかハズい・・・で、どこか行きたい店とかある?」

 

「調べる暇なかったんだよね・・・おすすめとかある?」

 

「それだったら、料理部はどうだ?」

 

良介の発言に2人とも同意し、料理部に行くことになった。

 

   ***

 

3人は調理室の前に来ていた。

 

「さて、料理部の前に来たが・・・」

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!」

 

良介が入ろうとした瞬間、中から悲鳴が聞こえた。

 

「な、何だ!?」

 

「とにかく、行ってみよう!」

 

3人は調理室に入った。

中には花梨と小蓮と明鈴がいた。

 

「なんてこと!

絶望的ネ・・・!」

 

「どうするのだ花梨!

これじゃお店できないアル!」

 

「んだなぁ。

どうするべ・・・」

 

「おい、何事だ!」

 

良介は3人に話しかけた。

 

「大変なのだ!

お店が・・・焼きそばがぁ・・・」

 

「買い物さ行ってる間に、皆に仕込み頼んでたんだけんど・・・おらの焼きそばと・・・智花が手伝いで作った焼きそばが混ざっちまって・・・」

 

「どれが、智花の焼きそばか分からなくなってしまったヨ!」

 

「この中のどれかが・・・智花の・・・」

 

良介は3人の前に並んでいる大量の焼きそばを見た。

良介は初めて智花の料理を食べた時の記憶がフラッシュバックし、少し顔色が悪くなった。

 

「そういうことなのだ・・・」

 

「料理部、始まって以来の最大的ピンチだヨ・・・」

 

「今回のはいうほどマズくねぇぞ?

なんとか成長できてるすけな。」

 

「しかし智花にはネームバリューがあるネ!」

 

「これ、出すの?」

 

「うーん・・・しょうがねぇかぁ。」

 

「い、いいのか?」

 

「別のもんから売ってくすけ。

焼きそばは料理部で食うぞ。」

 

「その・・・なんていうか・・・頑張れ。」

 

「ほら。

2人とも遊んでねぇで手伝うべよ。」

 

花梨たちは準備に取り掛かった。

 

「大変だな・・・智花が少しうまくなってるって言ってたが・・・本当か?」

 

「あはは・・・他、行こっか。」

 

絢香がそう言うと3人は調理室から出ていった。

入れ替わる形で、誠が入ってきた。

 

「うーい、調子どうだ?」

 

「あ、誠・・・は!」

 

小蓮が何か思いついた。

 

「誠、焼きそば食べるカ?」

 

明鈴も話を合わせるようにやってきた。

 

「実は作りすぎてこんなにできちゃったアル。

よかったら食べるアルか?」

 

「お前がそんなこと言ってくるなんて珍しいな。

何か変な物でも入れてるのか?」

 

「そ、そんなワケないネ!」

 

「だ、大丈夫アル!」

 

「ふーん・・・ま、いいや。

それじゃ、この焼きそばを・・・」

 

誠は一番手前に置いてあった焼きそばを食べた。

 

「うん、中々うま・・・い・・・」

 

「誠・・・?」

 

誠の動きが止まったので、小蓮が近づこうとした。

 

「ウボァー!」

 

誠が突然、白目を剥いて倒れた。

 

「あー・・・ハズレ引いちまったか・・・」

 

花梨は苦笑していた。

 

   ***

 

良介たち3人は話しながら廊下を歩いていた。

 

「そういえば、千佳ちゃんはどんなお店出してるの?」

 

絢香は千佳に聞いた。

 

「うちらのクラスはメイド喫茶なんだけどさぁ。」

 

「えー可愛いね!

行ってみたーい。」

 

「まだ始まってないの。」

 

「えっ?」

 

「仕込みとかいろいろあるんだけど、人が足りなくて・・・うちはブレスレット作ったから休んでていいって言われてんだけどね。

はじまるのって昼からかなぁ。」

 

「お昼・・・もう打ち合わせ始まってるかぁ・・・残念。」

 

「ま、今の内に他の店も見てみようよ。」

 

「この辺りだと何があるんだろう・・・」

 

「確か、歓談部の噂カフェ、天文部の・・・ん?」

 

良介は何かに気づき、前を見た。

 

「オカ研の占いの館へどうぞ。」

 

目の前にゆえ子が立っていた。

 

「うおっ!

ゆえ子か・・・驚かすなよ・・・」

 

「無料で運勢を占うのです。

どうでしょうか。」

 

「占いかぁ・・・ふーん。

やってみようかな。」

 

「ゆえの占いの館では、占星術やタロットなどを使って・・・運勢、金運、仕事運・・・もちろん恋愛運も占えるのです。」

 

「ゆえっちの占い、うーん・・・あたるけど、たまに残酷・・・」

 

「ふーん・・・お願いしてみようかなぁ?」

 

すると、ゆえ子は絢香を占い始めた。

 

「では・・・むにゃ・・・むにゃ・・・ん・・・見えました。

壊れた銀色の・・・輪っかが見えるのです・・・」

 

「えっ?」

 

「輪っか・・・?」

 

千佳と絢香は首を傾げた。

 

「ブレスレットじゃないよね?」

 

「そこまでは。

ですが、お気を付けてください。

皇さん・・・勇気は時に、危険を招くのです。」

 

「今のって・・・予知の魔法かな?」

 

「おいおい、ゆえ子、あまり脅すなよ?」

 

すると、絢香が何かに反応した。

 

「今の声・・・」

 

「絢香?

どうしたんだ急に・・・」

 

「ううん。

ごめん、なんでもないの!

あたし・・・絢香もうライブの打ち合わせに行かなきゃ。

ごめんね!

また後でね!」

 

絢香は行ってしまった。

 

「どうしたんだ、あいつ・・・」

 

良介は不思議そうに絢香の後ろ姿を見ていた。

 

   ***

 

良介と千佳は2人で歩いていた。

 

「まだ、絢香のライブまで時間あるんだよねー。

どうしよっかなー。

そろそろ教室戻ろうかな。

良介。

アンタ、どうする?」

 

「ん、俺か?

俺は・・・」

 

すると、そこに律が走ってやってきた。

 

「あっ、おーい!

良介!」

 

「律か。

どうした?」

 

「やっと見つけた。

絢香がどこに行ったか知らねーか?」

 

「ライブの打ち合わせに行くって言ってたけど・・・」

 

「えっ?

来てないぜ?

もうすぐ本番なのに連絡も取れないって言ってさ。

近くにいたあたしたちが探してんだ。」

 

「どこか寄り道してるって可能性は?」

 

「でも、アイツがブッチとかしそうにないけどなぁ。」

 

良介はさっきの絢香の様子を思い出した。

 

「そういえば、さっき様子が変だったな・・・」

 

「なぁ、良介?

本当に何も聞いてないのかよ?」

 

「脅迫文のやつ・・・関係あるんじゃないのか?」

 

「脅迫文?

あれってただの噂なんじゃねーのか?」

 

2人の話に千佳が混ざってきた。

 

「ちょっと待ってよ・・・脅迫文ってなんの話?」

 

「ああ、実は・・・」

 

良介は脅迫文の話をした。

 

「は?

なんで、そんな大事なこと黙ってたの!」

 

「大丈夫だって言ってたからな。

あいつも魔法使いだ。

攫われるなんてことはないと思うがな。」

 

「んなこと絶対じゃないじゃん!

早く探さないと!」

 

「そうだな・・・それじゃあ・・・」

 

「あ、そうだ!

それでさ、コレ見つけたんだけど。

確かこれ、千佳が作ってたヤツだよな?」

 

律は壊れたブレスレットを渡してきた。

 

「壊れたブレスレット・・・まさか・・・」

 

良介は名前が入っている部分を確認した。

 

「絢香のだ・・・!」

 

そのブレスレットは絢香のものだった。


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