グリモワール魔法学園【七属性の魔法使い】   作:ゆっけめがね

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※この作品の主人公は原作アプリの転校生ではありません。
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 それでもOKという方は、よろしくお願いします。


第99話 火焔の誓約

良介と焔は傷の魔物を探して歩いていた。

 

「これまでの傾向からもそうなんだけど・・・スカーフェイスはデバイスで追うことができない。

マーキングできないんだ。

用心深くて、なかなか姿を見せないからな。

1度なにか目印をつけられたら、ロストするまで逃げ回る。

あいつが人を襲うのは、無事に逃げられるって確信できるときだ。

メアリーはそう書いてた。」

 

「つまり探すには、根気よく痕跡を追うか、こっちが無防備に見えるようにしないといけないのか。

クエストが少人数なのも、精鋭部隊とパーティが違うのもそれが理由か。」

 

良介は納得した。

焔は不満そうにしていた。

 

「くそっ。

結局、アイツらがこうなるように仕組んでたんだ。

情けねぇよ。

そこまでお膳立てされてるってのに・・・」

 

すると、突然良介が立ち止まった。

 

「どうしたんだ?

いきなり立ち止まって・・・」

 

「焔!

下がれ!」

 

良介はいきなり焔の腕を掴んで引っ張った。

すると、そこに1体の魔物がいきなり現れた。

その魔物には傷があった。

 

「っ!?

スカーフェイス!」

 

「こいつが傷の魔物・・・スカーフェイスか。」

 

その頃、誠たちは少し離れたところを歩いていた。

突然誠が立ち止まった。

 

「ん?

誠、どうした?」

 

メアリーは誠の方を見た。

 

「・・・魔物だ。」

 

「あ?」

 

「どうした。」

 

エレンも誠の方を見た。

誠は良介たちがいる方を向いた。

そこには、傷の魔物と対峙している良介たちがいた。

 

「どうしたのかしら。」

 

月詠は不思議そうに誠を見ていた。

浅梨は何か感じ取っていた。

 

「魔物が・・・出てる・・・」

 

「えっ?」

 

月詠は浅梨の言葉を聞いて驚いた。

 

「あの傷・・・スカーフェイスだ!」

 

誠は魔物についている傷を見て傷の魔物だと判断した。

 

「なに・・・前触れがなかったぞ!

どういうことだ、メアリー!

見逃したんじゃないだろうな!」

 

「バカにすんな!

んなヘマするかよ!

くそっ!

あの図体でここまで気配が消せるもんなのかよ!」

 

「あの大きさ・・・タイコンデロガだな。

見るのは第7次侵攻の時以来か。

けど、感じる力・・・あれ以上か。」

 

すると、メアリーは良介たちのところに向かおうとしたが、エレンがそれを制止した。

 

「待て!

来栖の動きを待つ!

単独でのクエスト続行が不可能になったらだ!」

 

「はぁ!?

テメー頭がどうかしてんのかよ!

放っといたら死んじまうに決まってんだろうが!」

 

「来栖はお前の書いた戦い方を読んでいる。

そう簡単にやられない!

私たちは奴に自由にしろと言った。

その言葉に責任を持て!」

 

「アイツがスカーを倒せるってのかよ!」

 

「来栖にはここで一歩、進んでもらわねばならん。

私たちが安易に助けに入れば、元の木阿弥だ。

仇討ちがどういうことか、言葉で言っても来栖はわからなかった。

ならば、実戦で理解させるしかない・・・!」

 

「ぐっ・・・テメェ・・・」

 

「自分の部下を信じろ!

1人で勝てないとわかったら・・・必ず、奴は助けを求める。」

 

「くそっ!」

 

メアリーは舌打ちをした。

話を聞いていた誠は月詠たちの方を向いた。

 

「月詠、浅梨、今の話、聞いてたか。」

 

誠が振り向くとそこに月詠たちの姿は無かった。

誠は急いでロープを見ると、ロープは途中で千切れていた。

 

「あいつら・・・!」

 

誠はロープを投げ捨てると傷の魔物の所へ向かった。

 

   ***

 

焔は傷の魔物を睨みつけた。

 

「出たか・・・その傷、よく覚えてるぞ・・・テメェが・・・テメェがアタシの家族を・・・!

灰にしてやる!」

 

焔は火の魔法を撃った。

だが、傷の魔物にはあまり効いていなかった。

 

「っ!

ダメだ、1発程度じゃビクともしてねぇ。」

 

「焔、手貸してやろうか?」

 

良介が焔に話しかけた。

 

「離れてろ!

アンタの手は必要ねぇ!」

 

その頃、傷の魔物の背後の近くにイヴがいた。

 

「スカーフェイス出現。

詳細なデータを取るにはもう少し近づかないと・・・もし人の手が入っているなら、全身をスキャンした際に・・・作られた不自然さが検出されるはず。」

 

イヴは精鋭部隊がいる方を見た。

 

「精鋭部隊は何をしているの。

ただの討伐じゃないのよ。

あんな魔物、2人で勝てるわけないのに。

危なっかしい戦い方するわね。」

 

すると、イヴは傷の魔物に向かって、氷の魔法を撃った。

傷の魔物は少し怯んだ。

 

「っ!?

今だっ!」

 

焔はすかさず傷の魔物に火の魔法を撃った。

良介は氷の魔法がやってきた方を見た。

 

「今のは、誰がやったんだ?

精鋭部隊は氷は使わないな。

まぁ、いいか。」

 

良介は焔に魔力を渡した。

 

「良介・・・余計な・・・!」

 

「余計な・・・なんだ?」

 

「いや・・・なんでもねぇっ!

まだだっ!

まだ動ける!」

 

すると、突然傷の魔物の雰囲気が変わった。

 

「な・・・なんだ・・・」

 

「どうやら、これからが本気みたいだな。

油断でもしてたのかもな。」

 

「話に聞くより弱いと思ってたけど、やっぱそんな理由かよ。」

 

焔はまた傷の魔物に向かおうとすると、月詠と浅梨がやってきた。

 

「焔っ!

待ちなさいよ!

今までも、アンタ、苦戦してたくせに!

まだ1人でやるつもりなの!?」

 

「1人じゃねぇ・・・2人だ・・・良介が魔力を回復した。

やれる!」

 

焔は傷の魔物に攻撃し始めた。

 

「んもう!

意地っ張り!」

 

月詠は文句を言った。

良介は焔の様子を見てため息をついた。

 

「やれやれ、自分のことを過大評価してるな。

魔力枯渇の疲労は消せても、運動の疲労は蓄積されてくってのに。

さて、俺と誠、エレンとメアリーも参加したところで、こいつを倒しきれるのかどうか・・・難しいな。」

 

良介は顎に手をやった。

 

   ***

 

焔は1人で傷の魔物に攻撃し続けていた。

 

「ぐ・・・クッ・・・チクショウッ!

タイコンデロガっつったって、限度があるだろうがよ!」

 

すると、焔の後ろから魔法が飛んできて、傷の魔物に直撃した。

 

「っ!?」

 

焔は後ろを振り向いた。

 

「テメェら・・・っ!」

 

攻撃したのは月詠と浅梨だった。

 

「もう見てらんないわ。

浅梨、行くわよ。」

 

「はい!

来栖先輩、よろしくお願いします!」

 

「な、なにを・・・頼んでねぇだろ!」

 

「そうよ。

本当は、アンタが助けてって言わなきゃ出ちゃいけなかったの!

でもそんなの、クソくらえだわ!

アンタが1人で戦うより・・・4人で戦った方がマシに決まってるでしょ!

そうでしょ、良介!」

 

月詠が良介の方を見ると、良介はすでに第1封印を解放した状態になっていた。

 

「ああ、その通りだ。

にしても月詠、だんだんメアリーに似てきたな。」

 

良介は肩を軽く回しながら前に出てきた。

 

「焔、トドメはお前に刺させてやる。

いい加減、意地張るのはやめろ。」

 

「来栖先輩!

私が盾になりますから!

攻撃に専念してください!」

 

「ばっ!

馬鹿野郎!

アイツの攻撃力、見てただろ!」

 

「大丈夫です!

お姉ちゃんの魔法の方が、何倍も強力でしたよ!

スタミナには自信があるんです。

任せてください!」

 

少し離れたところで見ていたメアリーはため息をついた。

 

「あーあ、出てっちまった・・・」

 

エレンは黙って4人の戦いを見ていた。

 

「意外といい動きじゃないか。」

 

「調子に乗らなきゃいいがな。

釘刺しとくか。

おい、来栖。

助けが入って、楽になっただろ。

だが、それで勝てると思うなよ・・・そいつはタイコンデロガだが・・・強さは最上級だぞ。」

 

焔はいきなりメアリーの声が聞こえてきて驚いていた。

 

「っ!?

な、なんだっ!?」

 

「最後にもう1度聞くぞ。

テメーらで、スカーフェイスを倒せるか?」

 

焔は何も言わずに傷の魔物に攻撃した。

 

「クソッ・・・クソ、クソッ!」

 

「いつ答えてもいい。

必要になったら、呼べ。

いいか、必要になったらだ。

死んだら地獄まで追いかけてぶん殴ってやるからな。」

 

「地獄行きは決定かよ!」

 

メアリーは焔との会話を終えて、1つ疑問を抱いた。

 

「おい、ところで誠のヤツ、どこいった?」

 

「さっき2人を追いかけてからすぐに見なくなったが・・・メアリー、見ていないのか?」

 

「アタイも知らねぇぞ。

アイツ・・・どこ行きやがったんだ?」

 

その頃、傷の魔物の攻撃を受け続けていた浅梨が少しバランスを崩した。

 

「あっ・・・!」

 

「我妻っ!

食らいすぎだ、下がってろ!」

 

「いえ・・・まだ大丈夫です!

私の心配をするくらいなら、どんどん攻撃してください!」

 

「浅梨、お前・・・」

 

良介は時間を確認した。

 

「もう2時間も経ってんのかよ・・・!

しぶといにもほどがあるだろうが!」

 

すると、焔が浅梨の前に出た。

 

「どけっ!」

 

「あっ!」

 

「この・・・大馬鹿野郎!」

 

「ぐぁっ!」

 

焔が傷の魔物の攻撃を受けようとした瞬間、良介が焔を突き飛ばして、代わりに攻撃を受け止めた。

 

「ぐうぅっ・・・!」

 

「焔!

アンタ、なにしてんの!」

 

「ち、チクショウ・・・いてぇ・・・良介のヤツ・・・!」

 

焔は黙って良介の方を見た。

 

「ぐはっ・・・ぐっ!

クソ・・・なんだこの攻撃力・・・ふざけてんのか!」

 

良介は傷の魔物の攻撃を受け続けていた。

 

「メアリー・・・エレン・・・」

 

「テメー、なにバカなことやってんだ。」

 

また、焔にメアリーの声が聞こえてきた。

 

「我妻に・・・守谷に・・・良介に・・・迷惑かけちまった・・・」

 

「テメーみたいなコミュ障に、我妻と守谷が関わる理由はわかったか?」

 

「わかんねぇ・・・」

 

「じゃあ、テメーが我妻を庇おうとした理由はわかるか?」

 

「アタシのために・・・傷つく意味なんかねぇから・・・」

 

「テメーと精鋭部隊の連中はなんだ?」

 

「ただ、同じ部隊な・・・だけだ・・・」

 

「お前の望みはなんだ?」

 

「アイツを、倒してぇ・・・」

 

メアリーは黙っていた。

 

「メアリー?」

 

メアリーから返答はなかった。

 

「助、けて・・・」

 

「顔上げろ。」

 

焔が前を見るとメアリーとエレンが立っていた。

 

「守谷!

コイツに回復魔法かけとけ!」

 

「は、はぁ!

ツク、回復なんてほとんどできないわよ!」

 

「魔力ぶん回せ!

それである程度カバーできる・・・おい、来栖。

同じ部隊で、魔物を倒したいと願ってるヤツがいる。

その魔物は超強ぇ。

1人じゃ無理だ。

だが全員でかかればイケるかもしれねぇ。

それが理由だ。

他に、なにか必要かよ?

トドメ刺すのはテメェだ。

アレやれ。」

 

「アレ?」

 

「武田 虎千代のホワイトプラズマだ。」

 

「な・・・で、できるわけ・・・」

 

「それが無理なら良介のストナー・・・なんだ?

まぁ、それか、ファイヤーブラスターっつったか。

そこらへんでもいいだろ。

それに、できるかじゃねぇだろ。

なーに、心配すんな。

できなかったら、そん時はアタイがヤツを殺す。」

 

エレンは浅梨の方に駆け寄った。

 

「我妻、平気か?」

 

「は、はい・・・!

まだ耐えられます!」

 

「すまないが、もう少し頼む。

私の強化魔法も重ねておく。

良介。

今から守谷と来栖に魔力を分けてくれ。

大量にだ。

それで、決めるぞ。」

 

良介は膝をついたまま傷の魔物の攻撃を受け止めていた。

 

「この状態・・・だっつのに・・・!

けど、了解だ!

ついでで・・・俺の新しい力・・・見せてやる!」

 

「む?」

 

「火属性・・・極限強化!」

 

すると、良介の髪が赤く染まった。

 

「はあぁっ!」

 

良介は傷の魔物を蹴り飛ばした。

傷の魔物は再び良介に攻撃しようと瞬間、空から何かが傷の魔物を攻撃した。

 

「ん?」

 

良介の目の前に、背中から悪魔のような紅い羽を生やした誠が降りてきた。

 

「誠・・・お前、今までどこにいた?

それよりその羽は・・・?」

 

「悪い悪い、魔神化使ったら突然羽生えてきてさ。

うまく扱えるようになるのに時間がかかったんだ。」

 

「なんで羽が・・・」

 

「さぁな。

けど、以前より少しパワーアップしたのは確かだ。

このまま俺も参加するぜ!

で、良介、その髪どうした?」

 

「ああ、火属性極限強化をするとこうなるんだ。

魔力強化と肉体強化を限界までしてる状態だからな。」

 

「へぇ、なるほどな。」

 

「誠先輩・・・!

あ、エ、エレン先輩はどうするんですか?」

 

「これまでの情報から、スカーフェイスは不利になると逃走する。

それを防ぐのは私とメアリーの役目だ。

絶対にここから逃がさん。」

 

良介はすぐに焔のところに向かった。

 

「焔、話は大体聞いた。

やるぞ。」

 

「ホワイトプラズマ・・・大量の魔力を放出して、レーザーをぶち込む・・・あんたが魔力を流し込むことで、射出時間が伸びて更に威力が上がった。

自分を、魔力が通り抜ける筒と考えて・・・」

 

焔は少し黙った。

 

「何のために訓練してきたんだ・・・!

やってやる!

良介!

力を貸してくれ・・・!」

 

良介は笑みを見せながら焔を見た。

 

「覚悟は決まったみたいだな。」

 

皆が焔を見ていた。

いつの間にかイヴまでやってきていた。

 

「イヴ、危険だからここにいる必要はないんだぞ。」

 

誠はイヴに話しかけた。

 

「スカーフェイスを逃がさないためです。

お気づかいなく。」

 

すると、傷の魔物が動き出した。

 

「動き始めた。

人数が増えて逃げ出す気だな!

んなことさせるか!

良介、行くぞっ!」

 

「ああ、やるぞ!」

 

良介は焔に大量の魔力を流し込んだ。

 

「うっ・・・ぐっ・・・!」

 

焔は魔法を撃つのに少し苦戦していた。

すると、良介が後ろから焔の両手に手を添えてきた。

 

「良介、お前何して・・・!」

 

「黙って集中しろ。

手伝ってやるだけだ。」

 

すると、焔の両手から大量の炎が出てきた。

 

「これなら・・・!」

 

「ああ、今だ!」

 

「消し飛べっ!!!」

 

焔は魔法を放った。

 

   ***

 

焔の放った魔法はレーザーのように飛んでいき、傷の魔物を貫いた。

貫かれた傷の魔物はそのまま霧散した。

エレンは傷の魔物が倒されたのを確認した。

 

「スカーフェイスの霧散を確認。」

 

「ちっ・・・もしかしてこれまでに出てきた傷の魔物・・・同一個体だったのか。

そうじゃなきゃこの強さはねーだろ。

ったく・・・来栖1人だったら確実にオダブツだったぞ。」

 

メアリーはため息をついた。

 

「検証は他に任せよう。

しかし・・・タイコンデロガにしてもあの強さは・・・」

 

「ま、ああいうのがもしかしたら、ムサシになるのかもな。

しかしよ、やっちまった後で言うのもなんだが・・・知性が高すぎねぇか。

話には聞いたことあるが、初めて見たぜ。

タイコンデロガを超えたら・・・それが条件みたいなもんなのかね。」

 

その頃、気絶していた焔は目を覚ました。

 

「う・・・」

 

「やっと気がついたか。

まだ動かない方がいいぞ。」

 

焔は良介の体に凭れるように倒れていた。

 

「ど、どうなった!?

アイツはどうなった!?」

 

焔は体を起き上がらせると、必死に良介に問いかけてきた。

 

「安心しろ。

倒したぞ。」

 

「そ・・・そう・・・か・・・倒したのか・・・ほ、本当だろうな・・・」

 

「帰ったら戦闘データ見ればいいさ。

止めを刺したのはお前だ。

まぁ、さっきまで気絶してたから、実感ないかもしれないがな。」

 

「いや、わかる。

ずっと・・・6年、ずっとあったプレッシャーが・・・ない。」

 

少し焔は黙った瞬間、大粒の涙が目から流れた。

 

「う・・・うぅ・・・」

 

「おいおい、どうしたんだよ。」

 

「く、来栖センパイ!?」

 

「ちょ、ちょっと、どこか痛めてるんじゃないでしょうね!」

 

他の面々は心配していたが、良介は笑っていた。

 

「ちげぇよ・・・くそ・・・バカにしやがって・・・」

 

すると、エレンが皆に呼びかけた。

 

「お前たち。

そろそろ帰るぞ。」

 

「やれやれ・・・いつまで泣いてんだよ。」

 

良介は笑いながら焔に話しかけた。

 

「う、うっせぇ・・・」

 

「歩けるか?」

 

焔は目を擦って、良介を睨んだ。

 

「歩けるよ!」

 

メアリーはその様子を見て、笑みを見せた。

 

「Good!

テメーら、撤収だ!」

 

「あー・・・疲れた。

早く帰ろうぜー。」

 

誠は魔神化を解くと、背中の羽が霧散した。

 

「む?」

 

「あ?」

 

メアリーとエレンが誠の方を見た。

 

「どうした?」

 

「いや・・・」

 

「・・・なんでもねーよ。」

 

3人は先に戻っていった。

月詠と浅梨は焔の方を向いた。

 

「先、行ってるわよ。」

 

「何かあったら呼んでくださいね。」

 

2人も戻っていった。

 

「り、良介・・・」

 

「どうした?」

 

「悪かったな・・・」

 

良介は呆れたように頭を掻いた。

 

「さっきの素直さはどこ行ったんだ?

言いたいこと、正直に言えよ。」

 

良介は笑いながら言うと、焔は少し恥ずかしそうにした。

 

「あ・・・あり・・・がと・・・」

 

「ああ・・・どういたしまして。」

 

その頃、結希の研究室。

結希と天が傷の魔物の霧散を確認していた。

 

「スカーフェイスの消滅を確認。

さすがに同一個体だとは思わなかったわ。」

 

「これで、CMLの検体が1つ無くなったのね。」

 

「討伐を依頼してきたのはCMLよ。

それより、傷の魔物・・・噂が最初に出たのは30年ほど前だったかしら。」

 

「さあ。

興味はなかったから調べてないわ。

その頃だと、第4次侵攻の前後?」

 

「ええ・・・それから単独で生きてきた。

魔物にしては行動パターンが賢すぎるわ。」

 

結希は少し黙った。

 

「冬樹さんが最後まで見届けたのは幸運だったかもしれないわね。」

 

「ちょ、ちょっと、それって・・・」

 

「天。

今すぐ風紀委員の所に行って、傷の魔物のデータを・・・あら?」

 

結希は記録を見て何かに気づいた。

 

「どうしたのよ。」

 

「傷の魔物の消滅から少し後にもう1つ別の消滅の記録があるわ。

これは・・・」

 

「どうせ別の場所にいた魔物でしょ。」

 

結希は驚いた顔をしていた。

 

「な、何よ・・・」

 

「場所は・・・誠くんの・・・体内・・・?」

 

「はぁ?

誠の体内?

何かの間違いじゃないの?」

 

「ただの誤作動・・・と思いたいけど・・・」

 

すると、今度は天のデバイスが鳴り始めた。

 

「わ、私に電話?

誰よ、電話番号知ってるの・・・」

 

天は電話に出た。

 

「もしもし・・・なんだ。科研ならそう言ってよ。」

 

少しすると、天の表情が変わった。

 

「はぁっ!?

なに急に!

できるわけないでしょう!?」

 

天は少しの間黙った

 

「事情を考慮して検討を重ねます!

じゃあね!」

 

天は電話を切った。

 

「どうしたの?」

 

「どうもこうもないわよ!

アンタ、なにか知ってたら教えなさいよ!

来栖 焔を速やかに処分せよって、なんのことよ!」

 

「来栖 焔を・・・処分・・・なんですって?」

 

「誠のことといい・・・何が起きてるのよ・・・」

 

天は困惑していた。


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