東方白霊猫   作:メリィさん

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メリィさんはマイペース。
なので投稿もマイペース(

お目汚しにならないかと日々恐縮するばかりです。
それでは本編をどうぞ。


其の一「鬼神と猫」

鬼神。

 

 

その単語で真っ先に浮かぶのはやはり鬼子母神であろう。

仏教を守護するとされる女神で、仏法の護法善神。

子授け、安産、子育ての神として日本でも祀られているとか聞いた事がある。

だがその一方で五百もの子を持ちながら、他人の子を食べてしまう夜叉としても知られている。

夜叉とはインド神話に出てくる鬼神の総称を事を指す事から、

鬼の母とも言われる事がある。

 

しかしもう一つ、恐ろしく荒々しい神の事や、

そのまま化け物という意味でそう呼ぶ事もある。

 

これらの意味合いから目の前の鬼を示すとなれば、それは後者の意味だろう。

鬼子母神は女神であるからして、目の前の鬼神にそれは当て嵌まらない。

何故ならこの鬼は男なのだ。

 

「貴様、早く名を名乗れ」

 

鬼はこちらに高圧的な態度で言う。

俺は内心ビビってたりするが、それを悟らせない様に返した。

 

「不肖ながら、わたしゃ名乗る程の名を持ち合わせておりませぬ故

種族名の『猫』とでも名乗らせて頂きましょう」

 

なんか変な感じの敬語になったが、多分大丈夫。

 

ちなみに名乗りたくなくて名乗らないんじゃない。

名乗れないのだ。

前世の名前でも名乗っておけば良いと考えていたが、どういう事か思い出せない。

作ろう、と言い出した所で即席の名前では後に支障が出る可能性がある。

それに名前は一生物なのだから、どうせなら凝った名前を付けたいというもの。

 

故に名乗らず。

その返答に納得がいかないのか顔を顰める鬼神。

だが彼は表情を戻したかと思うと、此方を鼻で笑う。

 

「まぁいい。貴様程度の小妖怪風情が鬼である俺様に敵う訳がないからな」

 

俺を見下した様な口調で彼は言い放った。

"様な"というか完璧に見下してますね、はい。

もしかしなくても典型的なプライドの高い実力者って奴だろうか?

少しイラッときた。

 

しかし反論してじゃれ合い(殺し合い)になるのも面白くない。

というか鬼と猫のガチンコなんて絶対嫌だ。

俺は挑発を受け流してフラグを折るべく説得する。

 

「そうそう。こんな小さな獣相手に鬼が喧嘩してたらそれこそ情けない。

放っておいてどうぞ、続きでもなんでもしていって下され」

 

俺はそのまま「それでは」と残し、背を向けて森へと歩き出す。

これほど完璧な返しはそうそう無いだろう。

彼もきっと見逃してくれるはず。

 

――という事で、猫さんはクールに去るぜ。

 

 

「待て」

 

 

だがしかしその願いも空しく呼び止められてしまう。

 

俺は思い通りに事が運ばなかった事に若干の苛立ちを感じながら振り向いた。

今度は何の様だ?

くだらない用事だったらそのボサボサヘアーをストレートにしてやる。

そんな出来る訳も無い脅迫を考えていると鬼神は真剣な表情で

 

「何故これ程の妖気を体に受けてなんともないのだ?」

 

……あー。

 

俺は鬼の言わんとしている事に気付き、思わず溜息を吐く。

あの鬼神が発していたのは妖気。

簡単に言えば妖怪の発する力の源。

それも年月が経てば経つ程、その力は強くなっていく。

恐らく鬼神と言う位だ、余程妖力量に自信があったのだろう。

それをどこぞの獣が受けてケロッとしてたら、そりゃ可笑しいと思うだろう。

 

(こんな単純な事に気付かんとはねぇ……)

 

俺は自分の失態を悔やむ。

とりあえず先程も言ったように長く生きれば力も強くなる。

妖力が強ければそれは力の誇示にもなり、長く生きればその分自分の格も上がる。

強者の証明であり、己の齢を現す力でもあるのだ。

恐らく、人もこれを受けて恐怖してるのではと俺は少なからず思ってる。

そりゃ見た目も怖いの結構いるけどね。

加えて相手は鬼神と呼ばれる程の強力な鬼な訳で……

 

「ククッ、よもやここで俺様以外の強敵に出会えるとはな……」

 

その前に平気で立っているのは「私強いです」と言ってる様なものである。

だって普通そんな奴の前に立ったら震え上がるもん。

怪しまれない様にそれを堪えたのがまさか逆効果になろうとは……

 

炎剋は妖力を噴出させて臨戦態勢を取る。

やばいやばい! このままでは鬼VS猫が実現してしまう!

俺はなんとか避けようと説得するが……

 

「ちょっと待て、落ち着け、私はそんな事望んでいn

      「いざ勝負!!」

             話を聞けこの鬼イイィィィィーッ!!」

 

残念、相手は鬼だった!

 

炎剋の拳を避けると、俺はそのまま森へと全力で逃亡した。

彼もそれを追って走ってくる。

 

(冗談じゃない! 意地でも逃げ切ってやる!!)

 

地味にフラグを立てながらも、俺は茂みに突っ込んでいった。

 

「あれは一体何だったのだ……?」

「助けてくれたのか?」

「あれは神様じゃ! 神様が我等に救いの手を差し伸べて下さったのじゃ!」

「神様ッ!?」

 

こんな厄介な誤解をされてると知らずに……

 

 

 

<<<<<<<<<<<<<<<<<<

 

 

 

「待てぃ! 逃げるな!!」

「待てと言われて待つ奴がいるかッ!」

「じゃぁ逃げろッ!!」

「バカだこいつぅぅ!!」

 

ははは、やぁ、猫だよ。

突然で済まないね。

 

今、俺は鬼と追いかけっこしてるんだ。

それがまぁしぶとくてしぶとくて未だに振り切れないでいるんだ。

真っ先に森に走ったは良いが、中々活路を見出せないでいる。

こっちの体が小さいからか、それとも相手が単純に速いからか……

振り切ろうにも振り切れない。

幸いな事にまだ一撃も貰ってないのと、猫の体のお陰で攻撃も当たらない。

しかし何時まで保つか……

 

隙あらば飛んでくる拳を避けながら、俺は森の中を疾走する。

炎剋も負けじと喰らい付き、攻撃を繰り返した。

あー、もうしつこいね、いい加減。

そんな事を思っていると、突然目の前の風景が一変する。

 

「おわッ!?」

 

眼前に現れたのは切り立つ崖。

俺は自分の足に急ブレーキを掛け、余った勢いはその岩の壁に着地する様に殺した。

 

「ッつぅ!!?」

 

それなりの速度で衝突した所為か、衝撃で足がびりびりと痺れる。

その痛みに思わず声を上げてしまうが、それだけで大した事は無かった。

それ位で済むこの体にも感謝しなきゃな。

俺がそのまま三角跳びの要領で崖を蹴ると、同時に拳が叩き込まれる。

 

――チッ! 追い付かれたか!

 

天然の石壁に衝突した拳は、意図も容易くその場所を抉り取る。

そして爆炎を上げて破片を撒き散らした。

 

「くそっ! 爆発しやがった!」

 

着地した俺は飛び散る破片を避ける。

おかしいだろ。

いくら力が強いっつっても爆発するなんて!

 

炎剋はこちらを向いてニヤリと笑う。

この力を見ても戦いたくないのか? とでも言っているみたいだ。

多分実際そうなんだろう。

だが生憎俺は(あんたら)みたいな戦闘狂じゃない。

 

こちとらただの猫だというのに、鬼とかいう架空の生物、しかもかなりの有名所で

強い部類の化け物と決闘なんて死亡フラグ以外の何者でもない。

死ぬし。絶対死ぬし。

 

だけどなんとかしないと後々厄介だよな~。

俺は駄目元でそれとなくお願いしてみる。

 

「いい加減諦めてくれませんかね?」

「無理だな。俺様は貴様を打ち負かして妖の頂点に君臨する」

 

どうやら本気(マジ)らしい。

というか王様願望もちかいお前は。

 

やだなぁ。

この手の部類は話を聞かん奴が多いから出来る限り相手したくないんだが……

 

「……俺は見れば分かるくらい貧弱なんだが? 今も恐怖でガチガチだし」

 

諦めずにもう一度説得。

理由が「強そうに見えた」というのならば、一度冷静にさせて俺をよく観察させればいい。

そうすれば俺から滲み出る貧弱オーラに気付いて興味を失ってくれるはずだ。

 

「嘘だな」

 

とか考えてたのに一瞬でぶち壊しやがりましたよこの鬼は。

というかなんの根拠を元に言ってやがるのか。

お前絶対何も考えてないだろ。

 

しかし心の中で文句を言ってると、鬼神は何か語り始めた。

 

「鬼は嘘が嫌いだ……故に、俺様たち鬼は嘘は付かない」

 

俺はその言葉が頭に引っ掛かり、思わず考え込む。

何か……何かを思い出せそうなのだが、靄が掛かっていてイマイチ分からない。

 

「だからこそ、俺様たちは嘘に敏感だ。見破ることなど容易い」

 

ふんぞり返る炎刻(個人の印象)

という事は殆ど直感で嘘が見抜かれるってか?

なんだその冗談みたいな話は……本当だったなら酷く恐ろしいじゃねぇか。

 

それと思い出した。

そういや鬼って伝承でも「嘘を付かない」って宣言してたんだっけ?

確か三大悪妖怪として名高い酒呑童子を退治する為に頼光を初めとした頼光四天王による討伐隊を

結成し、宴会をして油断させた所で「神便鬼毒酒」とかいう毒酒飲ませて動かなくなった所を斬首

した。

んで、酒呑童子は死に際に「鬼に横道はない」と最後に罵って息絶えたと。

 

もしかしてその設定に準えて「嘘をある程度見抜ける」という特性でも付いたのか?

だとしたら頼光さんらヤバクナイ? 見抜かれて頭から齧られちゃうよ?

まぁ俺に面識の無い人間の心配なんてどうでもいいか。

 

だが問題がある。

何故なら俺自身は全くこれっぽっちも嘘を付いていない。

確かに猫という範疇で見ればチート臭いが、鬼と比べるとなると比較にならないほど弱い。

だって猫だもの。神格化される事さえある鬼と比べるだなんて甚だ可笑しいというもの。

 

なのに、なのにだ。

あの鬼の直感は俺の事を「強者だ」とか抜かしてやがる。

本人が意地を張って言ってるだけかもしれんが、彼の自信満々な様子から見てその可能性は低い。

仮にも「嘘が嫌い」なのであれば即座に謝ってるだろうしな。

そうしたら後は俺に何か隠された力的なものがあるとしか……

 

「さて、隠し事は無用だ。そろそろ正体を現せ」

 

うーむ、それなら多少は見栄を張った方が良いのか?

でもそれに見合った力が無いとただの可哀想な人(猫)だよなぁ……

そう思って相手を注視すると、相手から湯気のような物が立ち上ってる事に気付く。

僅かに紅色に染まったそれは、彼の体中から噴出してる様に感じる。

 

――アレを真似したら良さそうじゃないか?

 

ほら、アレだよ。どこぞの超野菜人みたいなめっさ凄い気!

アレが出来れば存外騙せるかもしれん。

という事でレッツトライ! 出来ないとか言ってられん!

 

俺は目を瞑り想像する。

体内のありとあらゆる所から溢れ出る力。

激しい気の放流を……

 

すると自分の体が突然体重を失う。

否、感じぬほどに軽く感じた。

そっと閉じていた瞼を開けると――

 

 

「……っ!?」

 

 

僅かにだが、その顔は驚きへと変わっていた。

これは行けるんでね?

そこで俺はすかさず、本来なら挑発になるであろうセリフを言い放つ。

 

「――貴様の為を思って弱いフリをしていたのだが、どうやら無駄だったらしいな」

 

俺は威厳(嘘)と仮スマを発生させて尊大な口調で言い切る。

この場を乗り切る為だ、多少の嘘は仕方ない。

これだけ怯んでいるという事は自分が強いと思っていたレベルより数段上はあったと見るのが

妥当だ。

ならそれに便乗させてもらおうじゃないか。

 

顔はなるべく無表情を保ち、相手を上から見下ろす様に。

あっ、もちろん身長的に無理だから気持ちでね?

 

そしてその演技に負けじとこぶしを握り締めて睨み返す鬼神。

その目には沸々と戦意の様な物が……アレッ?

 

「漸く……漸く俺様と渡り合える奴が現れたか……!」

 

俺は困惑する。

正直見破られて激渇されるものだと思っていたのだから仕方ない。

これ……これ絶対になんかおかしい事になってるよね?

 

「どれだけ待ったか……百年、いや二百年? そんな事はどうでもいい――」

 

ブツブツと語る不気味な鬼神。

その口元はどんどん釣り上がり、笑みの形を作っていく。

しかしその目には闘志が宿って(る様に見える)おり、口元の三日月が却って不気味だ。

フッ、言わなくても良い。その先は言わなくても分かるからなやめて下さいお願いしま――

 

 

「死合え、話はそれからだ」

 

 

死亡フラグキターーーーッ!!

 

彼の目は明らかに他者を嘲る目ではなく、強者を敬い、超えようとする修練者の目だ。

何で俺に使ってんだか分かんないけど!

つぅかさっきドヤ顔で「嘘は見破れる(キリッ」とか言ってたじゃねぇか!

現在進行形で嘘を付いているのに何故分からん?

 

「もう嘘を吐いているとは考えないのか?」

 

俺が嘲る様にその事を示唆してやる。

これで気付けなかったらてめぇ嘘吐き認定してやるからな?と期待を籠めて言葉を待つが……

 

「貴様の様子を見れば分かる。この俺様の戦意に応えようとしてくれている事はな」

 

はい残念! 君は嘘吐きですこんちくしょう。

 

俺が弱いと何度言ったのか忘れたが結構言ってたよね俺?

なんで見抜けんかねぇそれで!

 

しかしその心の叫びは相手に聞こえない。

鬼神は拳を振り払い、雄叫びを上げて物凄いスピードで走ってきた。

 

(ちょ! ヤバッ!!)

 

俺は本能的な危機を感じて全力で横に跳ぶ。

その飛距離を今までで間違いなく一番だと言える。

 

そして直後に響く轟音。

耳を(つんざ)く様なその音は、テレビなどで何度と無く聞いた事のあるものだった。

 

(うげっ! こりゃひでぇ)

 

明らかに拳だけでは不可能だろうと思えるクレーター。

相手が鬼なんだから当然だろと思うがそうじゃない。

鬼であっても不自然なクレーターなのだ。

なんせ何らかの高熱によって大地が若干熔解してしまってるのだから……

 

(さっきも見たがなんじゃありゃ? 力だけじゃできねぇだろ)

 

高熱によって溶けた地面。

その中心から離れた位置は大体が黒く焦げている。

それこそ俺が思い浮かべた物――地面に埋め込まれた爆弾が"爆発"したとしか考えられない。

 

「避けたか……ならばこれはどうだ!」

 

俺は再び怖気の様な物を感じてジャンプ、木の上に飛び移る。

すると俺がいた場所が爆発。

熱風が熱いけど直撃よか幾分かマシだ。

 

というか今度は体術を使ってないな。

ならあの攻撃は別に接触しなくても使うことができる……?

なんじゃその壊れ具合は。

俺に万が一にも勝ち目が無いじゃねぇかよ。

 

(うーん、こういう時って何か、体に秘められし大いなる力的な物が目覚めるのが定石だが……!)

 

生憎俺って猫だからね!

そんなフラグ立つ訳がなかったよ。

 

俺は堪忍して飛び降りると、俺が立ってた木が爆発した。

うへぇ、危機一髪かよ。

 

「面白い力を使うじゃないか」

 

なんとか聞き出せないだろうかと思うのだが、流石にそこまで馬鹿じゃあるまい。

アレとて戦いでは俺より何十倍も手馴れている。

俺のお粗末な駆け引きじゃ何も聞き出せまい。

 

「ほぅ、今ので俺様の力に気付いたか」

「爆発現象を操る……炎系の力でも珍しい部類だ」

 

俺が分かるのは爆発を操れる。

遠距離でも爆発を起こす事が出来る。

そのくらいだ。

出来れば他にも分かれば良いが、生憎俺はアニメの主人公の様な直感や才能は持ち合わせていない。

 

「その通り。俺様の力は『爆炎を操る程度の能力』……あらゆる爆発を起こす事が出来る

俺様の力だ」

 

なんだか喋ってくれました。

が、俺はそれを聞いて戦慄する。

気付いてしまった相手の能力の危険性……!

 

相手の言葉を鵜呑みにするなら、とても危険過ぎる能力だ。

少なくとも一個人で管理していい力じゃない。

あらゆる爆発現象を操るのだから、それこそ粉塵爆発や火薬による爆発等種類は様々だろう。

それ所かもしかしたら『超新星爆発』なんてのも起こせるかもしれない。

 

もしかしたら何か欠点があるかもしれん。

でなきゃいくらなんでもチート過ぎだろ!

下手すりゃ地球上の生物を皆殺し……いや寧ろ地球自体消滅させられかねん。

それを片手間でやられたら幾らなんでも迷惑過ぎる。

 

「確かに恐ろしい力だな……だが、俺の予測通りならその力は欠点があると見た」

「っ!?」

 

 

動揺したな。

本当に嘘の付けん輩だ。

 

多分アレだ、自分の妖力以上の事はできないとかそんなんだろ?

ほらあるじゃん、「MPが足りなかった」ってネタが。

多分強力な爆発現象にはそれなりにエネルギーを馬鹿食いするんじゃなかろうかと俺は予想を立てている。

 

「その力はより強い力を引き出すには相応の代価が必要なのだろう?」

「なん……だと……っ!?」

 

まさかのビンゴ。

というかもう少し隠す努力をして下さい。

その反応じゃ答えを教えてる様な物じゃないか。

 

だが逆に爆発のイメージが単調で小規模な程燃費も良いはずだ。

さっきからやってる程度の爆発なら大した消費ではないのだろう。

どちらにしたってHP5の猫の体では直撃したら死んじゃうので余り違いは無いけどね!

ただ一つの失敗は――

 

「まさかただの二回で見破られるとは……面白い!」

 

相手の戦意を更に引き出しちゃった事かナー。

調子に乗り過ぎた結果がこれだよ!

 

今度は相手の姿が一瞬ブレる。

すると次の瞬間には俺の目の前に――

 

って危なっ!!

 

俺は咄嗟に相手の股下を全速力で駆け抜ける。

その直後に爆発と同時に強烈な地面の振動。

それはこの鬼が地面を殴って能力を発動させたとみて間違いない。

 

(あぁクソッ! 鬼ってだけでも厄介だってのに面倒くさい能力まで持ってるなんて……

神は俺がそんなに憎いか!)

 

それにさっきの速度。

正直見えんかったぞオイ。脳内警鐘が無けりゃ即死だった。

 

俺は神に恨み言を連ねながらもなんとか隙が無いか観察する。

しかし相手も待ってはくれず、その廃スペックの肉体を使って猛威を振るう。

でもなんというか……これって凄い構図じゃね?

「子猫に爆弾とか使って攻撃してくる成人男性」の図とか。

考えたみたらなんとも大人気ない相手に見えてきた不思議。

 

鬼神は下段攻撃中心でなんともやり難そうに思えたが、

俺としては精一杯なのでもっと苦労して欲しい。

 

……しかしどうしたものか。

俺は相手の攻撃をかわしながらも考える。

このまま避け続けていれば恐らく先に体力が尽きて終わりだ。

なんとかして相手を先にダウンさせないと俺に明るい未来なんて無いだろう。

 

「くっ! すばしっこい!」

 

取り得ですから!

と内心ドヤ顔しときながら言ってみる。

 

でも避けてばかりだとホントに拙い。

なんとかして反撃に出たいものだ。

せめて銃みたいな遠距離武器があれば打開も可能なんだが……

 

(でも銃か……物は無いけど、気弾みたいな感じでできないか?)

 

思い立ったら即実行。

それくらいじゃないとコイツからは逃げ切れん!

 

俺は早速、自分の周囲に感じ取っていた力を丸く固める。

最初から出来るとは思ってなかった、だが驚いたことに一発でそれが成功した。

透明で少々分かり難いが、眼前には確かに俺が固めた弾が存在している。

 

(出来た! なら後は……)

 

ぶつけるだけだ!

 

俺は次々と作り出して順序良く撃ち出す。

イメージとしてはマシンガンだな。

 

鬼神は予想外だったのか、もろに直撃を受けて吹き飛び、バランスを崩しながらもなんとか倒れずに地面を滑る。だがまだ終わらんぞ!

 

俺は相も変わらずサイクルをバラつかせながら撃ち込み、相手の動きを封じる。

鬼神も先ほど受けた攻撃が余程堪えたのか、迂闊に身動きできないみたいだ。

うむ、狙い通りだ。

 

俺は左右にステップしながら接近しながら、自分の両手足に力を籠める。

なんとなくだが、こうすれば普段より強いキックができそうな気がしたのだ。

相手の懐まで辿り着くと一気に急加速、そして――

 

「ちょっと凄い猫キック!」

 

相手の顎を思い切りサマーソルトで蹴り上げた。

それをモロに受けた鬼神は、強化された驚異的な脚力で大きく宙を舞った。

本来なら既に追撃不能だが、俺は無意識の内に宙を蹴り(,,,,)鬼神に肉薄。

力を籠めて尻尾を叩き付ける。

碌な受身も出来ず地面に叩き付けられる鬼神。その衝撃で大きな砂埃が舞う。

 

砂埃が晴れると、そこにはアニメで見る様なクレーターの中で鬼神がヤムチャしてた。

ヤムチャってのは願いを叶える8つの玉を集める物語の……あぁ、知ってる? ならいいか。

 

というか「ちょっと凄い猫キック」とか言っておきながらナニコレ?

ちょっとって問題じゃねぇよ!明らかに受けたら死ぬだろ!?

なんとなく出来る気がしたからやってみたが、こいつ死んでねぇか?

 

と思って覗いてみたが気絶してるだけの模様。

やだなにこの超人。

 

とりあえず戦いは終わったのだろう。

一応尻尾使って石とか投げてみるが、起き上がる気配は無い。

鬼と言う化け物相手によく戦えたもんだなと俺は思う。

明らかにリーチとかパワーとか、手足の汎用性が高い相手だったので正直巧く撒ければ御の字って感じだった。だが結果は勝利だ。

これが何を意味するのか、それはまだ俺には分からない。

 

(……なんにしても言える事は一つか)

 

猫すげぇ。

 

俺は猫の恐ろしさに無駄な戦慄を覚えながらも、この後どうしようかと一人悩むのだった。

 

 

 

 




今回はちゃんとリニューアル。
リニュに当たっていなくなったキャラもいたりします。
まぁそれは後々。

そういえば文章ですが、長くてだらだらした感じになってませんかね?
どうにも長くなってしまって……読み難かったら申し訳ない。
もしそう思ったなら意見を下さると助かります。

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