走って本部に帰ると、そこには、口をだらしなくあけ、目は虚ろになり、呆然と座っている日向と、それを労るようにみる戦線メンバー（悪魔のような笑みを浮かべているゆり以外）のメンバーがいた。
ゆりは俺たちに気づき「あら、お帰りなさい」となんらいつもと変わらない笑顔でゆりが言った。その笑顔が逆に怖い。殺人鬼だけど。
引いている俺にまるで気付いてないように「どうだった？新人いた？」と聞いてくる
一瞬迷い「いや、居なかった。わりいな」と嘘をつく俺。「ふうん、そう。」とゆりは流す
それより、と話題を変えるために「日向は一体全体どうなってこうなったんだ？」と質問する。
すると、「ああ、このアホね。このアホのせいで新人を逃がしちゃっのよ」と日向に生ゴミを見るかのような視線を送っている
（それでこれかよ。）と思い、俺はまたゆりに恐怖した。殺人鬼だけど（２度目）
「死より恐ろしい罰ゲームって一体なにやったの？」と出夢が聞く
「それは知らない方がいいよ！」と大山が鬼気迫る表情で言う。あまりの剣幕に俺は出夢よ袖を引っ張り、もう聞くな、と首を横に振った。出夢も渋々頷いてくれた。
「そんなことよりどうしましょうか？１人も捕まえられなかったと言うことは、明日もまた新人集めをするのですか？」と日向を何気に酷い扱いをしながら、高松が冷静に問う
「えー！やだよそんなの！もう僕の我慢の限界が来ちまうぜ！」と出夢が興奮気味に言う
そうねえ、とゆりが悩み「とりあえず、１日様子を見ましょう。あの新人がどう動くか。それまでは各自自由にしていいわ。今日はとりあえず解散だけどね。」とゆりが言う
それと、と繋げ「人識くんと出夢くんは残って」と言い、その日はお開きとなった
「で、なんだよゆり。俺達だけ残すなんて」と、うすうす勘づいてるけど聞いてみる
「わかってるくせにいちいち聞かないでくれるかしら？今日の報告、あれ嘘なんでしょ」と断定して聞いてくる
「…ああ」と答えるしかない
「なんで嘘ついたのかしら？確かあなた達には罰ゲームは無しって言っておいたはずたげど」と言うゆりに「…僕の妹を見つけたんだ」と今まで黙ってた出夢が言う
少し驚いた表情をして、そう、と返すゆり
「で、その妹さんは、その…消えたの？」と聞きづらそうにして聞いてくるゆり
「うん、僕のことが心配だったみたいなんだけど、心配いらなくなった、ってさ」と苦笑気味に言う出夢
「僕達もさ、心残りが無くなるとああやって消えちゃうのか？」と聞く出夢
「ええ、そうよ。でも、大抵、今残ってるメンバーはそう簡単に解消できない生前だから、すぐに消えるってことはないわ」とゆり
「でも、僕の心残りって人識のことなのに、僕は人識と会っても消えてない。これってどういうことなんだ？」と不思議そうに聞く出夢
「そんなの知らないわよ。まだ満足出来てないんじゃない？」とゆりが素っ気なく返す
（じゃあ俺もまだ満足出来てないんだな。まあそりゃそうだよな）と納得する俺。
そうなのか、とまたもや不思議そうに言う出夢
「そうよ。じゃあもう帰って良いわよ２人とも。また明日なにか動きがあったら呼ぶわ」とゆりが言うので本部を出る俺たち
しばらく歩いてると「なあ人識。僕さ、今、結構幸せなんだ」と突然言う出夢に「なんだよ急に」と返す俺
「ゆりがさ、さっき言ってたじゃん。まだ満足してないって、それってさ、僕が今のままの関係じゃ満足できてないってことなのかな？」と聞いてくる出夢。はあ？と返しつつも（なんだこの展開?!もしかして出夢、告白でもしてくんのか？）と心臓の鼓動が早くなる
だからさ、と言い、こう繋ぐ「久々に殺ろうぜ！」と言い放つ出夢
「……………はあ?!」と聞き返してしまう俺
「だぁってさぁ、せっかく再会して、仲直りもできたのにぃ、まだ一回も殺し合いしてないんだぜ？ここは殺しても死なないっていううってつけの場所なのに！」と言う出夢
俺は、ちょっとでもそういうことを出夢に期待した自分を恥じた。そして「…わかったよ」と言ってしまう。思いのほかダメージはでかかったのだ。少しでも体を動かして忘れたい
すると「ぎゃははは！やっりぃ～」とはしゃぐ出夢
そして、２人でグラウンドで殺し合った。あの頃みたいに。
殺り終えると（ちなみに俺の負け。二回死んだ）「うーん、でもやっぱ満足はまだ出来ないみたいだな！今までの分、また２人で殺り合おうな！」ぎゃはは！と笑う出夢に「ああ、また今度、な」と息も絶え絶えに言う
（どうやら、本当にこいつには俺と付き合うとかって考えはないんだな…）と分かっていたけど、いざ確信すると、虚しい人識だった。