ひといずin Angel beats!   作:堂上

45 / 50
長い間間隔開けたわりにかなり短めとなっております。申し訳ないです_| ̄|○


第45話

「零崎、話があるからついてきてくれないか」

そんな事を言われたのは今日起きるであろう戦いに備え昼食をとっていた時だった。

「ん。わかった」

まだ少し残っていたカツ丼を一気にかきこみ席を立つ。(勝負に勝つにかけてカツ丼を食べていたわけでは断じてない。ただの気分である)

 

ー空き教室ー

「で、話っつーのは?」

空々しくそう訊ねてはみるが、話すことなど、一つしかなかった。

「うん。やっぱりあたしたちはここから出てくことにするよ」

そうひさ子が切り出した。

「あたしたちじゃ影と戦うときに足手まといにしかなれないしね」

あはは、とこめかみをかきながら関根が続ける。

「足手まといになるとかは関係ねーだろ。要はここに残りてえかどうかだ」

「そうかもね。でも、これ以上負担かけるのはだめだよ」

「僕達ならお前らを守りながら戦えるぞ!」

出夢の言葉に入江が首を横に振る。

「ダメだよ?2人はもっといっぱいの人のために戦わなきゃ。私たちはもういいの」

「大山には言ったのか?」

「うん。そしたらね、謝られちゃった。

僕に護れる力が無くてごめんって。そんなことないのにね…」

哀しそうに笑いながら言う。

「かはは、あいつらしいわな。藤巻は?」

「俺がお前を守れねえとでも思ってんのかって、怒ってたよ」

「ま、そうなるわな。あいつなら」

「んで、違う、あんたの足手まといにはなりたくないんだって言ったら…」

急に言い淀んだひさ子に皆怪訝な顔をする。

「バカって、抱きしめられた…」

「ひさ子顔真っ赤だぜ」

「うるせえなぁ!」

「もうリア充ばっかりで嫌になりますよね!岩沢さん!」

「りあじゅうってなに?リアルな十円?」

「ガーン!リア充を知らないなんてカルチャーショックです!」

「あーもー!うるせえ!」

話が脱線しすぎだ!と手を大きく振って話を終わらせるひさ子。

「とにかくだ、あたしたちはもう行くよ。ユイも待ってるだろうしな」

うんうんと他のメンバーも次々に頷く。

「だから、最期にあたしたちの歌を聴いてってくれ」

そう言ったのは岩沢だった。

「最期、か」

「ああ最期だ。タイトルはLast song」

既に準備されていた楽器を手に取り鳴らし始める。岩沢の隣にはユイのギターがあった。

今までの曲よりも静かなイントロが始まり岩沢の声が響く。

その歌は誰かへ送るメッセージのような始まりだった。

Aメロは夢を諦めた者を表すように低めの声で歌い静かな音を奏でている。

そしてサビに入ると音が増大し、声を張り上げ今から戦う俺達の背中を押してくれているようだった。

そしてドンドン歌は進んでいき、先ほどまでガンガン鳴り響いていた音がまた静かになる

『Ah ようやく2人きりになれたな Ah お前の歌も聴かせてくれ』

そう締めくくられた。

 

全力を尽くしたのだろう。全員が肩で息をし、汗を拭っている。

「すげえ、やっぱりお前らすげーよ!ぎゃはは!」

曲が終わるなり我慢できないように手足をばたつかせる。

正直俺も鳥肌が止まらないほどには衝撃を受けている。

「ありがと。

でもこれで、本当に最期なんだね」

「そうでもねーかもよ」

「それ、どういう意味?」

「ここを出て生まれ変わってからもう一回お前らでバンド組んじまえばいいんだよ」

岩沢が一瞬目を大きく開き、微笑する。

「はは、そりゃいいね。ならもうここに居る理由は本当にないわけか。その理屈で言えばあんたたちにもまた会えるだろうからね」

「ああ、無事この戦い乗り切れりゃあな」

「なに?自信ないの?」

「かはは、んなわけねーっての」

「はは、だろうね。

それにしても、消えるってのにこんなワクワクするなんて今の今まで考えてもみなかったよ。零崎、あんたのお陰だよ、何もかもね」

「かはは、俺ゃなんにもしてねーよ。そりゃお前が自分で見つけたもんだ」

「ふっ、そうかい。じゃあそろそろ記憶なし男のとこ行かなきゃね」

「記憶なし男って音無か?」

「ああ、あいつが卒業って道を示してくれたからね。挨拶くらいしなきゃね」

「あー、まあそりゃそうだな」

「じゃあ、私たちはもう行く。

零崎、匂宮。あんたたちも皆をキチッと護ってから追いついてきなよ」

「ああ、先行ってろ。すぐ追いつく」

「じゃあ、またな」

「おう。またな」

「また会おうぜ!ぎゃは!」

ガラガラッと岩沢たちは教室から出て行き、出夢と2人になる。

「しっかし、皆俺達に何を求めてんだろーなぁ?護れ護れーってよ」

「ぎゃはは!確かにな~。僕は殺し屋。人識は殺人鬼。護るのとは真逆の存在のはずなのにな」

「今まで殺しに殺してきて、まぁ、例外も居たには居るが」

欠陥製品とかな。

「なのに、今更っつー感じなんだけど…任せられちまったもんなぁ、リーダー様にも」

「ぎゃは!じゃあまあやることは決まってんなー?」

 

「ああ…殺して解して並べて揃えて晒して──ま、ついでに護ってやっか」

「ぎゃはは!まーた、そんな照れ隠ししてよ~?とっしーツンデレ~」

「かはは、、うっせ」

ニヤニヤしながらすり寄ってきた出夢を小突く

その時、ガラッとドアが開かれた。岩沢たちが戻って来たのかと思って音の方向を見てみると

「遊佐じゃん。なんだ?お前も出てくのか?」

「いいえ。私は通信士ですから。最後の戦いまでくらいはお供します。そもそも何故あまり親しくない零崎さんに報告を?」

軽口のつもりだったんだけど、まさかここまで真面目に返されるとは。相変わらずの無表情だし

「冗談だよ。じゃ、お前なにやってんの?」

「最後に見回りをと思いまして。…ガルデモの皆さんは出て行くことにしたんですね」

少し目をキョロキョロと動かした後そう言った。

そういえばコイツガルデモとよく行動してたな

「まあな。ちょうどお前と入れ違いだ。残念だったな」

「そうですね…ですが、仕方ないことですから」

それはそうと、と話を切り替えてきた

「零崎さんたちはやはり残られるのでしょうか?」

「んー、まあな。なーんか色々頼まれちまってよ。おかげで気が重えのなんのって」

「そのようにはお見え受け出来ませんが」

「マジ?」

「ええ、それにゆりっぺさんが託すくらいの人ですからね」

そこに、遊佐のゆりに対する信頼が見えた気がした。

「あっそ。ちなみにゆりは今どこいんの?」

「最後に聞いた時にはコンピューター室へ向かうと言ってました。その後はわかりません」

「コンピューター室?んな所に何かあんのか?」

「さあ?私も何も聞かされていませんので」

「ふーん。ま、いいか」

とりあえずこの事は頭の隅に置いとこう。

「ところで零崎さん」

「あ?なんだ?」

「今更でなんなのですが、もう音無さん達が戦闘を開始していますよ?」

「は?」

「ですから、もう音無さん達が「それはわかったよ!なんでお前それをすぐに言わねえんだ?!」話している途中に始まったようだったので」

「あーそうかい…」

ダメだ…コイツマジなに考えてるのかわかんねえ。人の心わかんねぇっても限度超えてるぜ…

「じゃあ、行くか」

「おー、やっとか!お前ら2人でずーっと話してるから暇だったぜ!」

「申し訳ありませんでした」

「いいよ。じゃ、行きますか!」

そう言うと、グッと腕を掴まれた

「へ?」

「じゃあな!」

「ご武運を」

「まてまてまてまて、何を──」

「いっくぞぉぉぉ~!!」

肺の空気全てを出したんじゃないかというほどの大声で叫び、大ジャンプをした。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。