ひといずin Angel beats!   作:堂上

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出来る限り早く仕上げてみました


第44話

ー焼却炉ー

ゆりに連れられて人気のない所までやってきた。

「なんだ?ゆり」

「その子を影の迎撃に当たらせなさい」

天使を指さす。

「奏を?なぜ?」 

「頭を使って行動させるより、何も考えさせず戦わした方が向いてるわよ。見てた分には」

「ええ、見られてたのかよ…」

ガックリと肩を落とす。

「ま、ゆりっぺの目は欺けんわな」

「てか、あんだけ派手にやってりゃバレるだろ」

「でも、奏は俺達の仲間だ。一緒にいるべきだ」

「他のメンバーだってあなた達の仲間でしょ?彼らを守るにはその子の力が必要よ。我々戦線と長きにわたり戦ってきた、その圧倒的な力がね」

ぐっ…とゆりの正論を前に何も言い返せない。

「確かに、天使だけにそりゃ適任だな」

「別にその子天使じゃないわよ?」

「え?今なんつった?」

「その子天使じゃないわよ。あたし達と同じ人間よ。気づいてなかったの?」

「ええええぇぇぇぇえ!?」

「おい音無!気づいてなかったのか!?天使じゃないのがわかったから手ぇ組んだんだろ?!」

「いや、そんなことは露ほども思ってなかった…」

こいつもしかしてかなりバカなんじゃ…

「神は、何でもお見通しでしたが」

強がってるがガクガク震えている。

「動揺してんじゃねえかよ」

「お、お前!天使じゃねえの?」

「うん。あたしは天使なんかじゃない。それは、初めて会った時にそう答えてるはずなんだけど」

「がっ!ホントだ!」

頭を抱えて落ち込む音無。

「色々あったからなぁ」

「お前らのせいだろ?!じゃあ、奏は何故ここにいる?生徒会長などしていて、何故消えなかった?」

「彼女なりの此処にいる理由があるんでしょ」

「あ…、そうか…。じゃあ、俺達と同じように何かを抱えて来てんだな。そいつも解消してやんねえとな。なっ」

天使の頭撫でる音無。

それの返事としてコクリと頷いている。

 

「で、ゆり。お前はどうする?」

天使が天使じゃない件が一段落ついて、音無がそう切り出した。

「確かめてみたいことがあるの」

「戦うのか?影と」

「場合によっては」

「1人じゃ危険だ!」

「だって仕方ないじゃない。他のみんなには選ぶ自由を与えたんだから」

「お前に付いていく奴もいるはずだ」

「考える時間は必要よ。大事な事だもの」

「そりゃあ…そうだけど…」

「戻ってきた時、みんなが消えて、無事この世界から去っていたら、あなたのおかげだと思ってくわ」

「そんな…俺は待ってる!」

「バカね…1人で待ってちゃ、影に喰われちゃうわよ。そうなる前にあなたもさっさと去りなさい。この世界から。あたしの事は気にしないで」

この話はここで終わり言いたげに歩き出した。

「いや、気にするよ」

日向がそんなゆりに声をかける。

「日向くん…」

「いきなり何言ってんだよ?2人から始まった戦線じゃねえか…

長い時間一緒に過ごして来たよなぁ…だから、終わる時も一緒だ。俺はお前を置いていかない。」

ゆりはこいつのこういう所が好きなんだろうと思う。

「相変わらずあなたバカね…感情論じゃなにも解決しないわよ」

それでも強がってそう言う。

「あ、ちなみに俺達も待ってんぞ?」

「そのとおーり!ぎゃはは!」

「あなたたちまで…ほんとバカよ…」

「かはは、俺達ゃ元々最後まで居るつもりだったんだよ」

「敵襲!敵襲だぁ!」

唐突にそんな叫びが聞こえてきた。

「はっ…!」

「奏ちゃん。よろしく」

「ハンドソニック・ver.5」

ゆりの言葉にコクリと頷いてハンドソニックを発動する。

「人識くんと出夢くんも、奏ちゃんと協力してなんとか皆を守ってあげて」

「俺達ゃ殺し屋と殺人鬼だからなぁ、守るってのは柄じゃねえんだけど」

「ふふ、そうかもね。

じゃ、また会えたら会いましょ」

軽い調子を装って走り出そうとする。

「ゆりっぺ!!」

日向が呼び止めようとする。

「ふふ、ヒドいあだ名…

でも、そのおかげで皆に慕われたのかもね…

ありがと」

後ろ手に手を振りながら闇に消えていった。

 

ひとまず敵襲を乗り切り。寮に帰る道を出夢と2人で歩いている。

「もうすぐここから出てく時が来ちまうな…」

「……………」

出夢は黙ったまま返事をしない。

「意外に早く来ちまったけど、これが最後の戦いだ…」

「…めなのか?」

「ん?」

「だめなのか?ここに居ちゃ」

「出夢…」

「生きてる時は結局お互いに避け続けて惨めに死んぢゃってさ、ここでようやく会えたのにこんな短い間しかしれないのか?ゆりとかはもっと長い間ここに居たんだろ?だったら僕達もここにもっと居ちゃだめなのか?」

気持ちは痛いくらいわかる。俺だって本当は生きてるころもずっと会ってまた一緒につるみたかった。だけど…

「ダメだ」

「っ…!なんでっ!」

「ここに居る限りいつまでも止まったままなんだよ…!」

「止まったまま?」

「ここは死んだ後の世界なんだよ…終わった後の世界なんだ…。

いくらここで恋人になったって、 そんなのは現実じゃないのと一緒なんだよ。だから、ユイもここから卒業した。日向との約束を信じて。そして日向もそれを見送った。約束を果たすって決めたから。

…俺はお前が消えるのを止めちまった…。本当は見送んなきゃいけなかったのにな…。だからせめて、この戦いが終わったら、ここから出てくって決めたんだ」

「人識ぃ…」

眼の端に溜めている涙を拭ってやる。

「な?全てを始めるために、全てを終わらさなきゃダメなんだ。

この戦いも。俺達の我が儘も」

「わかったよ…。僕も、覚悟決める」

「ああ、それでこそ俺の好きな女だぜ…」

出夢の手をとる。指を絡めると絡め返してきた。

「なにはともあれまずあの化け物どもを殺して解して揃えて並べて晒してやんぞ」

「うん。それからだ」

そこまで話すと女子寮の前に着き、名残惜しくも手を離す。

「じゃ、また明日な」

「うん、また明日」

 


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