ひといずin Angel beats!   作:堂上

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第38話

ギルド連絡通路B10

あれから順調に進んで来たけど、ついに天使が現れやがった。

「また現れた…」

「三体目かよ…」

ゆりが憎々しげに銃を天使に向けると、松下五段がその銃を押さえる。

「弾が、もったいなかろう…」

「何をする気だ?」

松下五段は音無の質問には答えずに走り出す。

「ウゥオォォ!でぇい!」

松下五段は天使に飛びかかって、腹を刺されながらも押さえつける。

「「松下五段!!」」

みんなが一斉に叫ぶ。

「行けぇ、俺の意識がある内に行けぇ!」

「なんだよ、その死に際だけ良い奴みたいなセリフ!?」

「お前言っとくけど、いくら良いセリフ言ってもその絵もろ犯罪だからな!?」

日向と俺がつっこむ。

「急いで!今の内に行くわよ!」

「ああ!」

俺たちは松下五段を残して先に進む。

 

ギルド連絡通路B11

「松下くんの犠牲は無駄にしない…」

少し進んだ所でゆりが呟く。

「彼のおかげで分かったんだけど、先に進むにはあれが一番いい方法なのよ」

「あの犯罪的な絵になるのにか?」

「この際見た目なんて気にしてられないでしょ!」

「痛てっ!」

冗談で言ったのに殴られた。あいつ、結構本気で殴ったな…。

「天使は身体が小さいから動きを封じるにはあれが一番。

いくら天使が馬鹿力でも柔道の押さえ込みなら通用する。松下くんに教わった柔道が活きる時が来たわね。」

俺が痛がってる間に早口で説明する。

「えぇ?!」

「つまり、一体につき1人の犠牲で済む…ということですね」

高松がいつものようにクイッとメガネを上げながら言う。

「犠牲で済むって…」

音無がまだ仲間が死ぬことに抵抗があるように呟く。そこで1つ気づく。

「ん?てか、俺柔道とか教わってないけど…」

「あ、僕も~」

出夢も教えてもらってないから手を挙げる。

「じゃあ別にやらなくて良いわよ。…それに、あなた達には最下層でやってもらわなくちゃいけないこともあるからね」

「やってもらわなくちゃいけないこと?」

「今は知らなくてもいいのよ」

何か気になるけど、この感じじゃ話してくれないだろうな。

「話が逸れたけど、私たちがオリジナルを助け出せれば犠牲になっても助け出せる。急ぐわよ」

 

ギルド連絡通路B12

「4体目」

日向が嫌気がさしてきたように言う。

「It′s my torn」

TKがここで出てきたか!

「 Get chance and rock」

TKがよくわからない英語を喋って走り出す。

「Foooo hahhaaa!oa… 」

「TKェェーーー!」

みんながまた叫ぶ。

「おいおい、なんだよこの少年マンガの最終回近い展開は?!」

「てか、最近じゃこんなのジャ○プでも見ねえぞ!?」

「いいから、どんどん行くわよ!」

ゆりが俺と日向のツッコミを適当にあしらって走る。

 

「この肉体、魅せる時が来たようですね」

高松が服を脱ぎ、天使に突撃する。

「高松ぅーーー!」

今度は俺も叫ぶ。つっこむの疲れたし。

 

「へっ、びびってられるかってんだ…うおらあぁ!」

藤巻が顔をひきつらせてそう言い残して天使に突っ込む。

「藤巻ぃーーー!」

もう日向も叫びだして、いよいよツッコミ役がいなくなった。

 

「あさはかなり…あさはかなりぃぃぃ!」

椎名はやはりそれしか言わずに天使に向かっていく。 

「椎名ぁーーー!」

みんなもう泣いている風だ。

 

「さあ、気づくんだ…。お前はピエロだ…、ほうら、あんな所に寂しげな目をしてる女の子がいるよ…」

直井が手を天使の方に向ける。

「あぁ!いっけない、ホントだぁー!あはははは、僕が笑わせて…」

見事に催眠術に掛けられた大山が天使にブッ刺された。

「大山ぁーーー!」

俺と日向は叫ぶが音無は叫ばなかった。

「お前最低な…」

「あぁぁ、音無さん!違うんですよ、聞いてください!言葉のあやです。次は僕が行きますから」

音無に引きつった顔で言われ、直井が必死に言い訳する。

 

ブスッと直井が天使に刺される。

「…おい、誰か何か言ってやれよ」

「いや、あたし名前知らないですし」

「行きましょう」

結局誰も何も言わずに先に進む。

 

ギルド連絡通路B15

「これで何体目よ?!」

ゆりが苛立った様子でそう言う。

「わかんねえ…数えてねえよ」

ただでさえ生きてる頃から死体を見続けてたから死に関する事には興味が薄いんだ、俺。

「今度こそ俺が行く」

「待て、俺の番だ。お前は最後まで残れ…」

音無が行こうとするのを止めて日向がそう言う。

「なぜ?」

「あの子はお前を待ってる…そんな気がするんだ。

だから、お前は進むんだ。いいな…?

あともし…」

そこまで言った所でユイが思いっ切り蹴飛ばす。

「行くんならとっとと行けやぁ!」

「あわわわわわ!」

日向は止まる事が出来ずに天使に刺された。めちゃくちゃいい感じにセリフ言ってたのに…。

「待ってて…先輩…」

ユイがさっきと同じ人間とは思えないくらいキラキラしながらそう言った。

「お前、アイツのこと好きなのか嫌いなのか?」

「おそらく、大好きなんだろ…」

「別にひなっち先輩なんて好きじゃないですよ!!」

「もういいから、行くわよ…」

ゆりがため息をついて歩き始める。

 

ギルド最深部 爆心地

「ついたわね…ギルド爆破のあと。

ここから一気に最下層に降りることになるわ」

ギルドの爆破のあとはなかなかの傾斜になっている。ここを滑るんだろう。

「音無くんとユイはオリジナルを探して、見つけしだいハーモニクスの発動を促すこと」

「俺が戦った方がいい」

女子に戦わせるのはマズいと思ったのか音無がそう意見する。

「日向くんが言ってたでしょ。あの子はあなたを待ってるのよ」

「じゃあ、あたしが戦います」

「弱すぎて話にならない」

「話にしてくださいよ!」

覚悟を決めて言ったであろうユイの言葉を一瞬で却下する。

「それに、人識くんや出夢くんがいるのにあなた達は別に戦う必要ないでしょ。

それに、今回は勝つ自信があるわ」

ゆりがニヤリとして俺と出夢の方を見る。

「天使があと何体いるかわからないけど、おそらく、これがあれば勝てるわ」

ゆりはそう言って俺たちに耳栓を渡してきた。

「これが?なんでだ?」

出夢も不思議に思ったんだろう、首を傾げてゆりに質問する。

「天使が新しい能力を開発してたの、ハウリングって言ってね。超音波みたいなものかしらね」

「なるほど。で、天使がその能力を使った時に狙うのか」

「そう。ハウリングをするときは両手の剣を交錯するの。だから、その瞬間はそりゃもう隙だらけよ」

ゆりが悪党みたいな笑顔を作りそう言う。

「ふーん。まあ、今回は俺はその瞬間狙わなくても勝てる道具、持ってきてんだけどな。かはは」

「なんだよそれ?!ずるいぞ人識ー!」

「かはは、秘密だ、バーカ」

俺は舌をべぇーと出してそう言う。

「秘密兵器があろうと無かろうと、一応持ってなさい。それを使う時にハウリングされたら元も子もないでしょ」

「わかってるよ」

俺と出夢は耳栓をつけて、準備万端の状態にする。

「じゃあ、行くわよ。

…これが、最後の作戦になると良いわね…」

「ああ…」

そう言って、ゆり、音無と坂をドンドン滑って行く。

滑っていると、横にいるユイがふらふらと危なっかしいなぁ、と見ていると「ぐぴゃあ!」尖った岩にぶつかった。

他のみんなは無事に滑りきる。

「あれ?ユイは?」

ゆりは先頭だったから見えてなかったんだろう。

「何か短い悲鳴だけ聞こえたが…」

「天使の餌食か…可哀想に。でも、すぐに助けてあげるわ」

これは…ユイの名誉のために見なかったふりをしとこうか。

「また残ったのはこの4人ね」

ゆりが唐突にそう言い出した。

「そうだな、前回と一緒だ」

「ま、僕と人識は残って当然だからなー。ぎゃはは!」

「かはは、殺人鬼と殺し屋だからな」

そこまで話すと、天使が3体現れた。

「数ピッタリじゃん」

舌なめずりをして出夢がそう言う。

「これで最後かしら?」

「まあ、展開としてはそうだろ」

天使を前にして俺たちはこの余裕を保つ。

「ほら!あんたはオリジナル探す!」

いつまでも動き出さない音無にゆりが喝をいれる。

「お、おう!」

音無はハッとして走り出す。

そして、俺たちは3人ともバラバラの方向に走り出す。

 

出夢たちが見えなくなるところまで走って立ち止まる

「はー、疲れた。出夢とゆりは大丈夫かなー?」

俺はわざとらしく余所見をしてそう言う。

「あなた、ふざけてるの?」

天使はそんな俺の態度が気に入らなかったのか、睨みながら近づいてそう言う。

「ふざける?かはは。アホか、俺がこんな状況でふざけるわけねーだろ」

俺はせいぜいおちょくっている風にそう言う。さりげなく近づきながら。

「そんな薄ら笑いしながらじゃ、説得力ないわよ」

「薄ら笑い?してねーよ、そんなもん。かはは」

天使は眉間にしわがよるほど睨みつけてきた。もう俺との距離は互いに手を伸ばせば届くくらいに縮まっている。そろそろか…

「…もういいわ。死になさ、っ?!」

おそらく俺に剣を刺そうとしたんだろう。しかし、腕を上げようとする体勢のまま動きが止まる。

「な、何を?!」

「かはは、自分の周りよ~く見て見ろよ」

「周り?…はっ?!糸?!」

天使は自分の周りを目を凝らして見ると、驚いて声を上げる。

「そう、これはピアノ線だよ。音楽室からちょっくら拝借したんだ。ほんとはこういうのって俺の趣味じゃねえんだけどな」

クィッと指を動かす。すると糸が締まり、天使は跡形もなく切り刻まれる。

「まあ、お前を殺して解して並べて揃えて晒してやるには、これが一番だからなぁ。かはは、まあもう聞こえてねえか」

俺は笑いながら天使の死体に喋りかけていると。いきなりすごい衝撃波が来た。

「これが、ハウリングってやつか?てことはもう勝負はつくってことだな。そろそろ行くか」

俺は駆け足で元いた場所に戻る。

 

「ああ、ようやくお前をぶち殺せるわけか~。ぞくぞくするぜぇ。ぎゃはは!」

少し走って、立ち止まった所で僕は天使に向かって言い放つ。

「それは無理よ。…あなた1人じゃとても勝てないわ」

天使は無表情でそう言い、突っ込んでくる。

両手に剣を出して、回転しながら切り刻もうとしてくる。けど、バク転しながら避ける。

「あっぶねえ~。おら!」

回転し終わった所に蹴りを入れる。天使は剣で防いでくるが、少し体勢が崩れる。そこに手刀をくらわそうとするが身体をひねって避けられる。

「ち、すばしっこいなぁ」

天使が少し距離をとって両手の剣を頭の上で交錯させる。

「ガードスキル・ハウリング」

すると、衝撃波が発生して地面が割れる。なるほど、確かにゆりの言うとおり耳栓してて良かった。

「ぎゃは!一喰い!」

余裕の表情で勝ち誇っていた天使に近づいて、全力で手を振り抜く

「なっ…?!」

天使は避けることも出来ずに爆散する。

「な、ぜ…?」

もう死ぬ寸前で息も絶え絶えにそう言ってくる天使。

「あー?なに言ってんの?わり、聞こえねえわ、これのせいで。ぎゃは!」

耳栓を取って見せてやると目を見開いて力尽きたように目を瞑る。

「さ~て、スッキリした所で行きますか。ぎゃはは!」

僕は走って元の場所に帰る。

 

パンっと持っているハンドガンを撃ちながら走る。

「やっぱり…」

天使はゆりの撃った弾を弾く。

天使が回転しながら切りかかってくるのを避けてから背負い投げする。

「おらぁ!」

天使はなんともないように着地する。そこをハンドガンで撃ちまくる。弾が切れるまで撃つが倒れない。

ハンドガンを捨てて手榴弾を投げる。やったかと思うが煙の中から天使が出てくる。

「ちっ、しぶとい…!」

すると、天使が剣を交錯させる。

「音無くん!耳塞いで!」

耳栓を渡していない音無くんに届くように叫ぶ。

「ガードスキル・ハウリング」

すごい衝撃波が襲ってくる。耳栓がなかったら頭がおかしくなっていたかもしれない。

天使の所まで走って胸にナイフを突き刺す。

「へへ~ん」

「気絶…しない…」

天使の上に乗っている私を驚いた目で見ている。

「ん?え?なんて?耳栓してるからよく聞こえないのよ」

そんな天使に今までの恨みを込めてせいぜいバカにしたように言ってやる。

「くっ、うぐ…」

「ほーら観念しなさい。なんならもう一本のナイフで喉をかっ切ってあげるわよ♪」

そう言って喉を切り裂いてやる。

「あー、疲れた」

一仕事して伸びをする。

 

「お、いたいた」

元の場所に戻るとゆりと出夢、それと天使の死体があった。

「遅いぞ人識ー」

「わりぃわりぃ。結構遠くまで走ってたんだ」

冷やかしてくる出夢にそう言って謝る。

「さて、後は音無くんを待つだけね…」

ゆりがそう言うのとほぼ同時に天使の死体が消え始める。

「おお!音無やったみたいだ…「無事でいてくれ!奏ーー!」っ?!」

天使が消えて喜ぼうとしたその瞬間に音無の声が聞こえた。

「2人とも、音無くんの所に行くわよ!」

 

声のした所に行くと音無が天使を抱いていた。

「どうしたんだよ音無?!」

「みんな…奏が、分身を取り込む時に分身が出てきて、奏が奏じゃなくなるって!」

音無は混乱してるのか大事な部分を言えてないような感じだ。

「音無くん落ち着きなさい。なぜ天使が天使じゃなくなるのか説明して」

ゆりは音無を落ち着かせるために努めて冷静にそう言う。

「たくさん作り出した分身にはそれぞれ意識があるって…。

その意識たちが奏本人の中に入るから奏の意識じゃ目覚めない、みたいな事を言ってた…」

ゆりに言われ落ち着きを取り戻したようで、なんとかわかる程度に説明してくれた。でも音無自身もよくわかってないみたいだ。

「…とりあえず、保健室につれて帰りましょう…。そこで天使が目覚めるのを待つわよ」

 

 

 

 

 




おそらくこれが夏休み最後の更新です。ユイの所まで書きたかったのですが、スイマセンでしたm(_ _)m

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