ひといずin Angel beats!   作:堂上

35 / 50
第35話

ー天使対策本部ー

「で、報告って何?」

「本日の食券が不足してるとの事で」

ゆりの質問に高松が答える。

「どうする、トルネード行っとくか?」

藤巻が提案するけど、ゆりは少し考えて

「いいえ、今日はオペレーション、モンスターストリーム!」

「遂に来よったか!」

「絶望のcarnival…」

大山は泣きわめいている。

「おい、とっしー!モンスターだってよ!」

「いやいや、モンスターって、そんなのいんのか?」

出夢は早くもモンスターとの戦いをイメージしてテンションが上がってる。

「何なんだよその作戦は?!モンスターなんてのがいるのかよ、この世界には…」

「ええ、川の主です」

「「川の、主…?」」

おお、まさか出夢と音無がハモるなんて、珍しいな。

「ちょっと歩いた所に川があんだろ?そこで食料の調達」

「それってただの川釣りじゃ?」

「そうだけど…それがどうかしたか?」

日向があっけらかんと言う。

「てか、ただの川釣りになんて禍々しい名前つけんだよ」

 

俺達はいつものメンツで川に向かっている。

その途中の花壇を通っている時に、出夢が俺に近づいて耳打ちする。

「なあ、音無が天使の所行ってんぞ。どうする?」

「あー?そんなまさか…マジかよ」

マジで天使の所にいた。

「どうするっつっても、ゆりに報告…」

しかし、ゆりに報告するのが憚られるくらいいい感じだ。

「いや、いいや。放っておこう。行くぞ!」

俺は出夢の手を引っ張ってみんなに追いつく。

 

俺達はいま、ゆり、ユイ、椎名、それに出夢の後ろに隠れてる。

理由は音無が天使を連れてきたからだ。…まさか連れてくるとは。

「しっかし、女の後ろに隠れるなんて情けねえぜ、ったく」

「じゃあてめえも隠れてんじゃねえ!」

俺が呆れて言うと、藤巻に怒鳴られた。ちょっとした冗談なのになぁ。

「お前、なんて奴つれてくんだよ」

日向が呆れて言うと

「いいじゃないか?混ぜてやろうぜ」

音無…そんな気軽に言う事じゃねえぜ。

「敵だぞ?!我らが戦線の宿敵だぞ?!」

野田がまともな事を…!

「アホですね!」

「あさはかなり」

ユイと椎名はお決まりのセリフを言う。

「てか、さっさと戦おうぜ!ぎゃはは!」

「お前今は黙っとけ!話がややこしくなる!」

「えー!戦いてえ~!」

「マジ頼むって…」

「聞いてくれー、もう無害だー、敵じゃなーい」

音無は俺達を気にせずめげずに説得を続ける。てか、天使も喋れよ。

「だが紛いなりにも元生徒会長だぞ!」

「ちなみに、現生徒会長代理もいますが」

「その通りです。しかし、その前に神です」

「神じゃねぇつってんだろ!」

「どうすんだよ?ゆりっぺ?」

「結局ゆりに聞くんだな」

ったく、何回目だよこのくだり。情けねえ。え?棚上げ?なにそれ?殺れんの?

「もう生徒会長じゃないんだし、いいんじゃない?」

みんながええぇぇぇ!とさけぶ。てか、生徒会長じゃないのは、俺達のせいだけどな。

「大丈夫かよ?」

「なんかすごいメンバーになりつつあるな」

「確かに、傑作なメンバーだ」

 

「そういや、みんな手ぶらじゃないか」

もう少しで川という所で音無が気づく。

「うわ、マジかよ~。俺取りに帰るとか嫌だぜ~」

「僕はとっしーと一緒なら戻っても全然いいぜ~!ぎゃは!」

愚痴る俺に出夢が抱きついてくる。

「いやいや、大丈夫ですから!そこまでアホじゃありませんから!」

日向がすごい勢いでつっこんできた。

「なんで敬語?てか、実際釣り道具ないじゃん」

「敬語は気にすんなよ…。大丈夫なんだって。既にギルドに連絡行ってるから。あそこには、そういうマニアもいる」

「「マニア?」」

 

第二連絡橋下 河原

俺達が川に着くと、先客がいた。

「つおりゃぁぁぁ!」

そいつは見事に魚を釣り上げた。みんなも拍手している。

「誰だよあいつ?三平みたいな格好しやがって」

「人識ー、誰だよ三平って?」 

「そこ気にすんなよ…」

「彼は?」

俺の質問が出夢によって邪魔されたからか、音無が改めて質問する。

「斎藤ってやつだ。銃にも詳しいがギルドではフィッシュ斎藤と呼ばれる釣りマニアでね~。このオペレーション時だけは、大量の釣り道具を荷車で引いて地上まで上がってくる 」

「この距離をか?!どんだけ釣り好きなんだよ!」

音無さん!ツッコミ、ご苦労さんです!

「要はアホですね!」

ユイはまたお決まりのセリフを言う。

「よおし!始めるか!」

「おおー!」

松下五段の号令で釣りが始まる。ここはゆりがオペレーションスタートって言わねえんだな。

 

みんな釣りを満喫してるみたいだ。まあ、野田と椎名は釣りでは無いが。

まあ、俺はというと…

「なあ、出夢」

「ん?なにー?人識」

「早く離れろ!釣りしにくいわ!てか、その前にお前も釣りしろ!」

いつも通り、出夢に抱きつかれてた。

「えー、でも、僕釣りのやり方知らないし。あそこでは、そんな事教えられなかった」

うっ、確かにバンドも知らないんじゃ知るわけないか。あそこってのは、匂宮の研究所の事だろう。はあ、しゃーねえなぁ。

「わーったよ。俺が教えてやっから、離れろ」

「本当か?!やったー!とっしー大好き!愛してるぅ~!」

出夢が興奮してキスしてこようとする。

「いや、だから離れろって!釣り出来ねーよ!」

あ、そっか。と言って出夢もようやく離れる。

 

「まずだな、釣り竿の針の所に餌をつけんだ」

俺の説明にふむふむ、と出夢が相槌を打つ。

「餌つけたら、川に向かって、竿を振る」

出夢が大きく竿を振る。すると「うわあぁぁぁ!」と叫び声が聞こえた。

「竹山ぁぁぁ!」

「だからクライストとぉぉぉ!」

最後にいつものセリフを言って、竹山は飛んだ。

「てか、どうしたんだ?竹山は」

「どうも、天使が釣りしようとしたら針が引っかかったみたいだな」

「どんだけ馬鹿力だよ」

出夢とタメはるんじゃねえか?

「その子なら、いけるかもしれん」

「何が?」

「主を釣り上げることが」

いやいや、また主の話?所詮魚だろ?

そんな事を思ってると「引いてる…」と天使が言う。

見てみると、天使の竿の所から巨大な渦ができている。

「本来、モンスターストリームは主の怒りの証。これが起きたら即全員離脱。

だが、この子ならもしや…」

「マジでやんのかよ!竿が折れるぞ!」

音無達はマジで釣るつもりだ。

「オイラの腕を侮ってもらっちゃ困る!主にも耐えれる特製だ!」

「だとしてもこのままじゃ絶対無理だー!」

どうも三人じゃ無理みたいだ。

「主をやる気か?ったく正気じゃねえなぁ。松下五段!肉うどん優先して回してやっから手伝え!」

日向の呼びかけに松下五段がおおよ!と言い加勢に向かう。

「人識ー、僕達も行こうぜー!ぎゃはは!」

「マジかよ?」

「マジマジ!行くぞー!」

「はあ、こりゃ傑作だ」

俺は出夢に引っ張られながら呟く。

でも、俺達が加勢しても、まだ釣り上げれそうもない。

「もっとだ!もっと加勢しろ!」 

音無の呼びかけでゆり、それに隣でぎゃーぎゃー騒いでるユイ以外のみんなが加勢した。

「「「オーエス!オーエス!」」」

しばらく引っ張り続けると斎藤が「今だ!」と叫ぶ。その合図で天使が思いっ切りジャンプする。

そのジャンプで主を釣り上げる事は出来た。…けど、これはマズいだろ!

「釣り上げやがった!」

「俺達ごとかよ!」

「どっちがバケモンだよ!」

「ねえ、この状況…」

「マズいですね」

「ぎゃはは!でっけー!」

「なんだこの傑作具合は!」 

「このまま落ちたら食われるぞ!」

「crazy for you!」

「神は落ちない!」

みんな思い思いの言葉を言う。

「「「うわあぁぁぁ!」」」 

「あさはかなり」 

椎名、お前セリフ、ワンテンポ遅せえ!

「助けなきゃ…」落ちてる最中、天使がそう呟いた。

気づくと、天使は主を切り刻んでいた。

 

「なあ、これあったらしばらくトルネードしなくていいんじゃね?」

切り刻まれた主を見て、藤巻がそう言う。

「え?毎日これ食べるの?」

「いやいや、その前にどうやって保存すんだよ」

「そうだぜ、トルネードしなきゃパフェ食えねえじゃねえか」

俺は日向に同調する。

「いや、今そんな話してねえよ!」

「そうだぞとっしー、問題はそこじゃなくて、トルネードしなきゃガルデモのライブが出来ない事だろ!」

「む、そっちか?」

「そんな話もしてねえよ!」

日向が必死につっこむ。ちょっとした冗談だって。

「んー、捨てるのもなんだしなぁ。しょうがない、一気に調理して一般生徒にも振る舞うか」

「そうだな。そーするか」

 

音無の一言で戦線による炊き出しが始まった。

「なんか、石原軍団みたいだな」 

「なんだそれ?そんなの殺し名にあったか?」

「いやいや、なんでそっちに繋げんだよ!」

「なんだ、ちげーのか」

あ、マジでそう思ってたのか。

そんな会話をしていると、横の台所から音無の声が聞こえる。

「最初から思ってたんだ…綺麗な名前だな、って。好きだよ、お前の名前」

え、なにこれ、告白してんのか?てか、セリフ臭せえぞ!

「奏って、音を奏でるって意味だろ?」

「あなたがそうしたければ、どうぞお好きに」

食い気味?!あの天使が?音無、お前恐ろしい奴だな…。

「俺の名前は結弦。弦を結ぶって書いて結弦。俺の事はそう呼んでくれていい」

ダメだ!これ以上聞くのはやめとこう!しかし、こんなみんなが居る所でよくあんな事を言えるぜ…

「はぁ」

「んー?どうかしたのか?とっしー」

「いやぁ、ただ、青春だなぁってさ」

「はあ?意味わかんねえけど」

「良いんだよ、わかんなくて」

そう言うと出夢は膨れてしまった。

「悪かったって」

俺は出夢の頭を撫でて謝る。

「また今度教えてやっから」

「約束だぞ~」

「分かってるっつーの」

出夢の機嫌も治ったみたいだ。…なんか周りの視線が痛いんだが。

 

炊き出しが終わる頃にはもう暗くなっていた。俺達は今片付けをしてる。

「そういやゆりっぺは?」 

「そういや見ないな」

「どうせ高みの見物だろ?こんな奉仕活動に付き合う玉かよ?てかお前も手伝え!」

野田の質問に藤巻が答える。けど、そういや主釣り上げた頃にはもう居なかったような。

そんな事を考えてるとドサッと音がした。音の方を見るとゆりが傷だらけで倒れている。

「ゆりっぺ!」

「ゆりっぺ!誰にやられた?!」

みんながゆりに駆け寄る。しかし、ゆりがやられるような奴…そう居ねえぞ、この世界に。

「っ…天使」

「天使?」

みんな天使の方を見るが、天使はずっと炊き出しをしてた。

「待てよ!奏はずっと俺と居たぞ!」

音無がそう言うと、ゆりがくっと悔しそうに校舎の屋上を睨む。

そこには、確かに、天使が居た。

「天使?」

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。