ひといずin Angel beats!   作:堂上

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とりあえずこの作品の需要が30件あるということで(/_;)
それでは、今回は岩沢さん視点です


第33話

ー空き教室ー

「あーくそ、歌詞が浮かばない」

私は椅子にだらしなくもたれてうなだれる。

「またですか?岩沢さん」

「またってなんだよ、またって」

「だってそれ今日だけで五回はいってますよ」

ユイが呆れたように言ってくる。そんなに言ってたかな?

「っていうか、なんでThousand Enemiesの曲に歌詞つけてるんですか?その曲は私に任せてくれるって言ったじゃないですか~」

「そうなんだけどさ…こう、せっかく作ったんだし、やっぱり私も歌詞つけたいんだよね」

「確かに曲を作ったのは岩沢さんですから私がどうこう言う筋合いは無いですけど…」

「でしょ?それに、なんかユイの歌詞を見たらなにか頭の中に浮かんだ気がしたんだ」

私がそう言うとユイがにんまりと笑う。…なんか、イラッとくる。

「私の歌詞が岩沢さんに影響するなんて、いやー光栄です~」

ビシッとユイの頭に手刀をくらわす。

「痛いですよ~」

「ごめん…イラッとして、つい」

涙目のユイに本音をぶっちゃける。

「も~、ちょっとした冗談ですよ~。尊敬する岩沢さんにそんな上から目線で話す訳無いじゃないですか」

「わかってるよ。…そうだ、ユイも自分で曲作ってみなよ」

「……は?」

ん?聞こえなかったかな?

「だから、曲を…「いやいやいや!無理っすよ!そんなのあたしに出来るわけないじゃないっすかー!」…聞こえてるなら聞き返さないでよ」

言い直そうとしたらめちゃくちゃ早口で反論された。顔近いし。

「うぅ、スミマセン。でも、でもでも、いきなり曲作れって、そんなの無理ですよ~」

「できるよ」

私は何故だか確信してた。この子は人を感動させる歌が作れるって。

「いやでも「できる」…うぅ」

自信の持てないユイに私は何度だって言う。できると。

「…わかりました」

ユイはようやく渋々という風にOKを出す。

「そっか、楽しみにしてるよ」

「いやいや、ハードル上げないで下さいよ~」

「ははっ、じゃあ私は屋上で歌詞考えてくるから、ユイも曲作っときなよ」

私はユイにそう告げて部屋を出る。

 

ー屋上ー

「さあ、どうしようかな…」

出てきたのは良いけど、正直まだあんまり浮かんでこないな

「Aメロとサビまでは決まったのになぁ」

ここまでは生前の体験で思いついたんだけどなあ。ここからがどうしても降りてこない。

「昔の事、じゃあ駄目なのかな…」

 

ー2時間後ー

ふぅ、なんとか形になってきたな

「あとは最後のサビ、か…」

ここが難しいな

「お?何やってんだ?」

「零崎?!」

声が裏返ったのは急に上から声がかかってビックリしただけじゃないだろう

「ん?なんだ?楽譜?」

「あ、ああ、ユイが歌ってたThousand Enemiesって曲あるだろ?あれを私も歌詞つけようと思ってね」

「ふ~ん、ふんふん、ユイのとは結構違うんだな」

零崎が楽譜を見てそう言う

「まあね、そのくらい変えなきゃ書く意味ないでしょ」

「歌詞も飯の事を書いてんだな」

歌詞も読んだようで一言零崎がそう言った

「……めし?」

「あ?飯の事書いてんだろ?ご飯だよ」

「違う!私が書いてるのはご飯も用意されずに冷たい部屋で過ごさなきゃいけない人達への応援歌でだな」

私のスイッチが入って語り始めた時

「いや、だって華やかな夕飯って書いてあったからよ~。悪かった!この通りだ!」

零崎が手を合わせて謝って来た。別に怒ってるつもりはなかったんだけど

「よ~くわかったから!応援歌ってこと!俺の第一印象が間違ってたよ」

「分かれば良いんだよ。…で?ここに何しにきたの?」

必死に謝る零崎を見てバツが悪くなって話を逸らす

「ん~?いや、出夢と飯食おうと思ったんだけどよ、見つかんねーからここに来たんだよ」

出夢、か…やっぱりな。そんな気はしてた

すると下から「おーい!人識ー!どこだー!」と叫び声が聞こえた

零崎が柵から身を乗り出して下を確認する。

「出夢ー!こっちだー!」

零崎も叫び返す

「おおー!人識ー!飯食いに行こー!」

「わーったー!今から降りるわー!」

そう言って、扉に向かおうとする零崎。すっごく顔にやけてる。

そんな事を思ってると、零崎が急に止まってこっちを向く。

「岩沢!じゃあ俺行くな!完成したら聴かせてくれよ!」

急な事だったから私は要領を得ないような反応しかできなかった。

「曲だよ、曲!あの応援歌!」

「あ、ああ!楽しみにしときなよ!」

「おー!じゃあな!」

そう言って、今度こそ零崎はおりていった。

しっかし…。零崎が降りたのを確認してから呟く。

「ご飯の歌、かぁ…」

初めて歌詞見たらそんな印象なんだ…

「なんか…降りてきた…」

私は楽譜を手にとって歌詞をつける。

 

温かな夕飯が迎えてくれる そういうこと気づかずに生きてきたんでしょ? お腹いっぱい食べたらもう忘れたらいいよ

 

いつだって叫んでいた真っ黒なうるさいカラスなど ずっと鳴いてる カーカー鳴いてる お腹も空かして

 

「できた…」

呟いてから、笑う。

「こりゃ、あいつのおかげか…ははっ」

明日聴かせてやろう…

 

ー翌日、空き教室ー

「おいおい、もう出来たってのか?」

「ああ、あんたのおかげってのもあるんだけどね」

「はぁ?」

「ぎゃははは!いいじゃん!早く聴こーぜー!」

零崎が色々と言おうとしたところを匂宮が抱きついて止める

私は定位置につく

「曲名はHot meal」

私はフッと笑い、ひさ子たちに合図を送る

「さぁ、派手にやろうぜ!」

イントロを弾き、Aメロ、Bメロ、そして、最後のサビだ。

私達は演奏を終える。

「どうだった?」

「良かったぜー!ぎゃははは!」

「俺のおかげってのは、ご飯の事かよ?」

若干無理をした笑顔の零崎に私は最高の笑顔で言ってやる。

「そうだよ!サンキュー!」

すると、零崎がハアッとため息を吐いてこう言う。

「そりゃ傑作だ…」


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