人識は最近常々こう感じていた。
「…俺、ここに来てからキャラ変わってね?」
ちなみに、現在は寮の自室。
「明らかに変わってるよな?確か俺は生前、誰も理解できず、誰にも理解されない、飄々として、捉えどころのないミステリアスな殺人鬼だったはずだろ。なのにここに来てからは出夢のストッパー兼ツッコミ役。…なぜだ!」
ちなみに、現在独りきり。独り言の癖は治っていない。
「人の心が理解出来ない、心を持ってない殺人鬼のはずが、なぜか誰かの為に行動しちまってるし!」
これは生前からなのだが、本人に自覚はない。
「これは、やるしかねぇ!明日から、イメチェンだー!」
こうして、人識の間違ったイメチェンが始まる。
CASE1 とりあえず出夢のストッパー兼ツッコミ役から脱出
「いいですか?出夢さん。まず腕立ては…、で腹筋をするなら…」
「ほうほう、なるほど!」
今出夢は高松から筋トレのレクチャーを受けている。
つっこまねぇぞ。既に怪力のお前にそんな筋トレ必要ねぇとかつっこまねぇぞ。
「そして!一通りの筋トレを終えたその時!己の肉体を鏡で観察するために脱ぐのです
このようにぃ!」
高松が脱いでポージングをとる。
「なるほど!こう…「やめろ、このアホがー!」ぐは!」
服を脱ごうとする出夢に跳び蹴りをくらわす。はっ!つっこんでしまった
CASE1………失敗
CASE2 捉えどころのないキャラに
(よし!やってやんぜ!)
俺は本部のドアを開ける。合言葉無しで。もちろん、トラップが発動する。が、俺はこれをよけて、何事も無かったように本部に入る。
(決まった!こんな訳の分からん事をする奴はいないだろ!これでミステリアスなキャラに…)
「あなた、何合言葉無しで入ってんのよ、アホなの?!」
いきなりゆりに怒鳴られる。…あれ、驚かないのかよ?今の行動ミステリアスだっただろ?
「Don't stop dancing Foooo!」
「あさはかなり…」
そうだった、ミステリアスな奴つったらこの二人が居たんだった…。
CASE2………失敗
CASE3 昔みたいに放浪してみよう
「…ここ放浪できる所ねえじゃん!」
CASE3………失敗
CASE4 他人の為には動かない
(これなら余裕だろ。昔みたいに居りゃいいんだ)
「おお!ちょうど良いところに!人識頼む!ちょっとの間かくまってくれ!」
「は、はあ?どういうこ…「来た!頼むぜ!」…ちょっ!」
突然やってきて俺に頼みこんで掃除用具入れに隠れた日向。一体誰からかくまれと?
「あ!人識先輩!ひなっち先輩見かけませんでした?新技かけるために追いかけてたら見失っちゃって」
こいつか…はぁ。
「いや?知らねえけど?こっちには来てなかったぜ」
「そうでしたか~、じゃああっちか!待ってろよ、ごらぁ~!」
走り去っていったユイ。見えなくなると、キィ、と掃除用具入れから日向が出てくる。
「サンキュー。マジで助かったぜ~。このお礼はまた今度すっからな!じゃあな~」
手を振って日向と別れる。…俺は一体何をしてんだ?
CASE4………失敗
CASE5 一匹狼キャラに
(これなら…)
「とっしー!遊ぼーぜ!ぎゃは!」
「あ?出夢、俺はそんな暇は…「駄目なのか?」…わーったよ!やるよ!」
断ろうとした矢先に上目遣いをしてくる出夢。ずりいよ
CASE5………失敗
数々のイメチェン作戦が失敗に終わった…ってかここの奴らキャラ濃すぎだろ!
「ちくしょ~」
俺が晩飯を食べようと食堂に向かうと
「お!人識ー!」
後ろから俺を呼ぶ声が聞こえる。日向だ。
「今日はマジサンキューな。ちょうどいいや、奢るぜ、今日。デザートまで全部な」
「え?いいのかよ?そんなに」
「良いって事よ!助けてくれたからな。さあさあ、さっさと行かねえと混んじまうぞ~」
日向に背中を押されて食堂に向かう。
俺は肉うどんとメロンソーダ、そしてデザートにチョコレートパフェを頼んだ。
「…で、あの後も逃げきれたのか?」
「いや、最終的に捕まってな。そりゃもう、この世界じゃなきゃ今頃死んでるような技かけられたよ」
何の気なしに聞いたらまさかの答えが返ってきた
「おい!じゃあにげきれてねえのにこんなに俺に?」
「ん?ああ、だってよ、助けてくれたのには違いねぇだろ?」
ニカッと笑って答える日向。こいつ、本当お人好しだよな。そんな事を考えてると
「おーい!とっしー、何上手そうなもん食ってんだよ~!ぎゃはは!」
後ろから出夢に飛びかかられる。
「肉うどんだよ…ってか重いからどけっつーの!」
「ぎゃはは!あーん、してくれたらいいぜ~!」
あーん、と口を開ける出夢。仕方なく肉うどんを出夢の口に運ぶ。
「うん、美味い!とっしーの味がする!」
「しねえよ!」
「お前ら本当仲良いよな~」
こんなやり取りを見て日向がやれやれ、と肩をすくめながらそう言う。
「そうだぜ~!僕達仲良しカップルー!ぎゃはは!」
「はぁ、もういいよ、それで。まったくつくづく、傑作だぜ」
お決まりの台詞で締めながら、人識はこう思っていた。
(こういうのも、悪くねえかもな…)
ちなみに、人識は周りの人達から「なんであいつは出夢と付き合ってないんだ?わけがわからん」とある意味ミステリアスなキャラとして認識されてるのは、また別の話。