「あー、やっと出れたぜー。くそっ首痛って!」
ようやく俺達は反省室から開放された。
「天使を失墜させれば私達の楽園になるのではなかったのですか?」
「なんで脱いでるの?」
「高松マジいい加減にしてくれ、出夢がお前の影響で何回か脱ごうとしてんだぞ…」
服を脱いで真面目な事言っても説得力ねぇしな!
「今度こんな真似したらぶったぎってやる!」
「ダメよ、NPCに危害を加えちゃ」
キレている野田をゆりが窘める
「しっかし、手が出せない分天使より厄介だぜ」
「あんなやつ、殺ってもいいなら一発で殺れんのに~!」
「出夢…お前絶対手ぇ出すなよな…」
出夢もかなり限界に近づいてるみたいだ。まあコイツここに来てから大人しくなってるけど殺戮中毒だからな。
「しかし、おかしいわね。NPCは私達の模範になる行動しかしないはずなのに…」
「天使が抑止力になってたんじゃねえのか?」
「確かにNPCにも私達と同じ自我がある。だからどんな偏屈なやつがいてもおかしくない…か」
悩んでたゆりだけど日向の言葉でとりあえず納得出来る答えを見つけたみたいだ
「どうするんだ?ゆりっぺ」
しかし俺達はゆりに意見を聞かなきゃ動けない集団だよな…
「色仕掛け行きますか?」
ポーズを決めているユイ
「お前のどこに色気があんだよ?」
「なんだと?ごらぁぁ!見たことあんのか?!」
日向の一言でキレるユイ。もう見慣れたなこの光景。
「見なくてもわかるよ」
「んだとぉ!揉んだことあんのか?!絶妙な柔らかさなんじゃい!」
「知るかよ!!」
よくそんな恥ずかしいこと大声で言えんな
「あさはかなり…」
ー天使対策本部ー
「これからどうします?ゆりっぺさん」
高松が切り出す。やっと服着やがったか…
「やっと着たか」
「…とりあえず、みんな好きに授業を受けてみて。ただし、まともに受けちゃだめよ。NPCに迷惑をかけない程度にふざけてね」
-A棟校舎・教室-
現在、教室は混沌としている。
まず、大山がお菓子を食べている。まあこれはいい、まだカワイイくらいだ。
「通れば、追いリー」
「残念♪リーチ、チー取り。ドラドラ 親萬!」
「んだよ、クソ!ひさ子の一人浮きじゃねーか!」
「女相手に、なんたる体たらくな…」
教室の一番後ろ。ひさ子、藤巻、松下、TKでマージャンをしている。
「そこ、もうちょっと静かに…」
「ああ、すいません」
教師に注意されても変わんねーだろうな。
椎名は指でコンパスと三角定規、それに鉛筆を立てている。異様だぞ、これ。
高松は上半身裸で腕立て。野田はNPCの机を使って寝ている。これ絶対NPCに迷惑かけてんじゃん。
日向と音無はしゃべってるだけだけど…
「先生!トイレ!」
「またお前か…行ってこい」
もう何度目になるか、ユイは一分毎にトイレに行くらしい。
そして俺はというと…
「離せっ!出夢っ、くそっ!」
「ぎゃはは!いいじゃねぇかよ~、恥ずかしがんなって、とっしー!」
出夢に抱きつかれている。めちゃくちゃ腕とか絡ましてくるし。
「先生!トイレ!」
「行ってこい…」
帰ってきて早々にユイがまたトイレに行く。
「貴様らっ!何をしてる!?」
扉を開けて直井が叫ぶ。何してるって…言葉に出来ないね。
「私トイレですから!」
ユイがそう言いながら体当たりで生徒会の連中を突破する。
大山はお菓子を隠す。まあ、こいつはこれで大丈夫だろうな。
「やっべ!」
ひさ子達は巧みなチームワークでマージャンの台や牌を片付けていく。
そして窓から逃げていく。…ここ何階?
「I′ll be back」
しかもTKは後ろ向きで落ちる。ってかそれターミネーターな!
高松や椎名はもう居ないし。その代わりにタオルとかコンパスとかは落ちてるけど
「とっしー、じゃあ僕らも逃げるか!」
「ああ、そうだな…」
もうされるがままで俺は出夢に担がれたまま、教室から飛び出る。
「こんな事続けて意味あんのか!」
音無がコーヒーの缶をゴミ箱に投げ入れる。
「おお~、音無、お前コントロールいいな~。あんな穴に入れるなんて」
「ああ、人識か」
たまたま俺は通りかかったので音無に声をかけると、音無は恥ずかしい所見られたなって感じに苦笑している。
「なに苛ついてんだよ?」
「立ば…天使を生徒会長の座から降ろしてまで、俺達はこんな事をしてる…。それにちょっとイライラしちまった」
ふうん…あれ?もしかしてこいつ天使に惚れてる?まさかな…
「好きなのか?天使の事」
ブッ!と吹き出す音無
「ち、違う!ただ俺は…可哀想だと思って」
「ふーん、ま、いいけどな?お前、イライラして他の奴にあたんなよ~」
俺はそう言ってその場から立ち去る
ー天使対策本部ー
「音無くんが行方不明よ…。それに、天使の姿も見えない」
ゆりが放った言葉にみんながざわつく。あいつ、もしかして天使と逃避行を…って、ここじゃどこにも逃げれないか
「それ本当かよ?!ゆりっぺ!」
日向が前のめりにゆりに問い詰める。日向、必死すぎ。
「ええ…、みんな、音無くんを探すわよ。恐らく、天使もそこにいるわ。」
「なあ、なんで天使まで探すんだよ?」
「副会長の彼、直井くんは表では生徒会の仕事をきちんとこなしてる模範生。けどね、彼は裏でNPCに危害を加えてる。…わかる?彼はNPCじゃない。私達と同じ、人間よ」
この言葉にまたみんながざわつく。
「きっとこれから彼の私達に対する行為はエスカレートしていく。それを防ぐ為には天使の力が必要なの。だから、みんな、音無くんを探すわよ。きっと、天使も一緒にいるわ」
「わかったぜ、ゆり」
ったく、音無め、どこにいんだ?
ー空き教室-
今俺と出夢は音無を探して歩き回ってる。
「もう夜かよ…。しっかしどこにいんだよ?音無は」
「さあな~」
こいつ、もうあんまり探すつもりないな?
「おい出夢真面目に…「こんな時間にこんな所で何をしている?」…はぁ、傑作だぜ」
俺が話してる途中なのに直井に遮られる。
「お前こそ何してんだよ?生徒会長代理さま?ぎゃは!」
「お前たちを探していたんだよ。あの連中の中でも屈指の実力者のお前たちをな」
「ああ?意味わかんねこと…「さあ、僕の目を見るんだ…あいつはお前の敵だ。…殺せ」…あ?…て、き?」
直井の目が赤く染まる。すると出夢の様子がおかしくなっている。
「出夢?どうしたんだよ?」
「たおせ…」
直井が出夢の耳元で囁く。
「た、おす…!」
俺が近づくと出夢が蹴りを入れてきた。メリッとあばらが軋む。
「がっ!出夢、何を…?」
「その女は僕の催眠術にかかった。お前を殺せという催眠にな」
「なっ?!直井てめぇ!」
「お前たちは危険だ。だから、こいつに足止めしてもらおうという事だ。…じゃあ、僕はそろそろ行くとしよう」
直井が教室を出ていく。
「町やがれ!ぐぁ!」
直井を追おうとした俺に横から強烈な拳が飛んでくる。
そして、出夢は教室の扉の前に立つ。…俺を通せんぼするように。
「くそ!傑作だ…なんて言ってらんねーぞ、こりゃ」