-男子寮-
(なんでこんな事に…?)
人識は今自分の置かれている状況に戸惑っていた。
「よーし、みんな揃ってるなぁ~?じゃあ始めんぞ!ドキッ、男だらけの大恋バナ大会~!」
「「「お~!」」」
みんなの盛り上がりようについていけていないのは俺と音無だけだった。
「おい、日向。なんだよこれ?」
「おい音無~、聞いてなかったのか?だから、恋バナ大会だよ」
「いや、それはわかってるけどだな、なんでそんな事を?」
「ん?ああ、ゆりっぺが今日さ「今日は恋バナ大会をするわよ。女子メンバー達に伝えておいて」って遊佐に連絡してるのを聞いてさ。これはやらなきゃっていう流れだよ。用はノリだよ、ノリ」
「ノ、ノリ?」
「そう、ノリ!」
音無が日向のわけのわからん理由に丸め込まれそうになっている
「日向。納得は出来ないけどな、まあ理由はわかった。…だが、何故俺の部屋なんだ?」
「だってお前誘っても絶対来ないだろ?だからお前の部屋で集合なんだ。わかったか?」
そう言われると反論できない。
「じゃ、改めて始めんぞ!」
「じゃあとりあえず、今、好きなやつがいるやついるか?」
「む、直球だな、いきなり」
お題にたじろぐ五段
「俺はゆりっぺだ!」
「わかったわかった。てかそんなのみーんな知ってる。」
「む、そうなのか?」
「たりめーだろーが」
「俺はひさ子が好きだ!」
「ふ、藤巻くん、そうだったんだ!?うわ~、盛り上がる展開だよ~!」
藤巻の宣言に顔を赤くして、はしゃぐ大山
「まあ、予想の範疇だな。よく一緒にいるし。で?告白は?」
「告白?!か、考えてもなかった…」
「ヘタレだな…」
「ヘタレだ…」
「藤巻くん…」
「なんだよその目は!」
「じゃあ、次!誰かいねーか?」
「「………」」
「いやいや、確実に1人いんだろうが」
誰も答えないと、日向が痺れを切らしてそう言う。誰かいんのかよまだ?
「とぼけた顔してんなよ?お前だお前。人識」
「………は?」
「は?じゃねぇよ。お前はどう見たって出夢が好きだろーが!」
周りがうんうんと頷く
「ち、ちげぇよ!あいつは、そのだな…そういうやつじゃなくてだな~」
「でもお前は生前出夢と決別しちゃったのが心残りでここに来たんだろ?そんだけ後悔するって事は、やっぱ好きなんじゃねーのかよ」
日向の正論にうっと言葉に詰まってしまう。
「それとこれとは話が別で…」
「あーもうわかったよ!この話はまた今度だ!」
「次のお題はぁ~…好きなタイプだぁ!」
「「おおっ!」」
だからなんなんだよこの盛り上がりは!?
「まず俺な。俺は一緒に盛り上がれるやつがいいな。明るくてさ」
「ふーん、なんかこう、意外性がないな。まあ日向っぽいけど」
「ん?そか?じゃ、音無は?」
「俺か?!…うーん、そうだな~、肌が白くて、綺麗な人、とかかな?」
「ふーん、なんつーか、音無っぽいな」
「そうか?」
「ああ」
「俺はゆりっぺだ!」
「はい、次誰だー?」
「ぼ、僕は、おしとやかで、料理が上手い子とかがいいな」
「それってお前。入江ちゃんのことか?」
「ええっ!?な、なんで?!」
「図星かよ…。ってか、そうならさっき言えよな~」
「うぅ、だって、恥ずかしかったから」
「まあいいさ、しかしお前と入江ちゃんって、結構お似合いだぜ?」
「そ、そうかな?」
「俺を無視するなー!」
「私は知的な方が好みです」
「…少なくとも戦線にはいねぇな」
「…そうですね」
「…ドンマイ」
「俺は、勝ち気なポニーテールが好きだ」
「ひさ子じゃねえか!」
「いいだろ別に!」
「俺はちょっとばかし危なっかしいくらいの子が好きだな」
「へえ、なんか松下五段は意外だな。なんか、落ち着きのあるやつとかが好きそうなのに」
「そうか?俺はこの柔道で誰かを守ってやりたいんだ」
「「ま、松下五段っ!!」」
「流石だぜ!松下五段、一生ついてくぜ!」
「なぜかあの体格が格好よく見えるよ!」
「I like sporty girl♪」
「一緒にダンスでも踊りたいのか?」
「Oh!It's so nice!」
「彼女の前くらいこいつは日本語で喋んのか?」
「「……」」
いや、そこで黙んなよ
「残るは…人識、お前だ」
「俺か?俺は昔っから背の高え女が好きなんだよ」
「意外だな、お前小せえから背の低い子が好きなのかと思ったぜ」
「お前普通に失礼だからな…」
「でも出夢はそこまで背は高くねえよな?お前よりは高いけど」
「だから出夢は関係ねえんだって!…そういうお前はどうなんだよ?日向」
「は?何が?」
「ユイだよユ・イ!お前いっつも仲良さそうじゃねぇかよ?」
「ユイ?あいつは…そんなんじゃねえよ、なんつーか、妹とか、そんなんだ」
「俺もそれと一緒なんだよ」
「ちっ、なあんかずりーな」
「うるせえ」
「もう1時かよ、そろそろ解散すっか!」
「そうしてくれ…もう疲れた」
俺はもう精も根も尽きている
「悪い、邪魔したな、人識。また明日な」
「おー、さっさと帰れー」
みんなはこうして帰っていった
「ふぅ」
俺はつい、ため息をついてしまった。
(女子も恋バナしてんだよな…出夢、あいつなんて言ったのかな?)
「…寝よ」
俺はもやもやを忘れるために眠ることにした