音のする方へ足を進めると、そこに居たのは岩沢だった。…まあ、なんつうか、予想通りだな。
「♪~~♩」ギターに夢中で俺達が来たことに気づいてないみたいだ
「おい、岩沢~、岩沢~!。だぁめだ、全然聞こえてねぇよ。おい人識、なんとかしてくれよ~」日向が必死に声をかけるがやはり気づかない岩沢に、日向が俺に頼んできた。
「なんで俺なんだよ?」
「いいからいいから、一回試してくれよ」日向が手を合わせて頼んでくる。くそ、頼まれるとどうもうまく断れねぇんだよなぁ、昔から。
「はぁ、岩沢~、おーい」ため息をついて声をかけるが、こんなんじゃ気づくはずねぇよなぁ
「ん?ぜ、零崎?!」俺があきらめようとしたその時、岩沢が突然俺に気づいた。
「んな、驚くなよ。こっちがびっくりするわ。つか、さっきから日向が呼んでたよ」
「へ?あ、ああ。日向に、記憶無し男に、匂宮もいたのか。」今ごろ気づいた岩沢
「今気づいたのかよ?頼むぜ岩沢~」
「ははっ、悪いね。その後ろのは?」呆れた日向をよそに、岩沢が日向の後ろにしがみついているユイを指指す
「ほら、お前もしがみついてねぇでちゃんと挨拶しろ」日向がユイを前に押し出す
「い、いいいいいわ、いわ、岩沢さん!こ、このたびガルデモの新ボーカルになる予定のユイでしゅ!」うわ、緊張しすぎだろ
「ああ、あんたが。そう、悪いね。私がスランプなせいで、じゃあ、挨拶がわりに一曲デュエットしようか?何が良い?」
「ああー、ちょい待ち。俺達はコイツの紹介に来たわけじゃねぇんだよ」すぐに音楽の方に話が逸れる岩沢を日向が止める
「俺達球技大会のメンバー探してんだよ。でもみーんな他の奴に取られててさ~。頼む!チームに入ってくれ!この通りだ!」日向が手を合わせて頼む
「球技大会?んー、でもねー、手を怪我したりでもしたら嫌だしねぇ」
「岩沢、別にバット振らなくてもいいからなんとか出来ねえ?」断られそうな雰囲気を漂わしていたので、俺も頼んでみる
「…お、お前もやるのか?」
「は?」
「お前も日向のチームで球技大会やるのか?って聞いてるんだ」
「あ、ああ、やるぜ」目を合わさずに聞いてくる岩沢に戸惑いながら答える
「僕もいるぜー!」
出夢がはしゃいでるのをスルーして岩沢がブツブツ言ってる
「わかった、私も入るよ」
「よっしゃあ!これで六人目だ!」
「じゃあ次行こうぜ日向」六人目のメンバーにはしゃぐ日向に音無が冷静に言う。こいつらもいいコンビだなぁ
「ああ、任せとけ。次こそはちゃんとあてがある」日向が自信あり気ににやりと笑う。ほんとに大丈夫かよ?
-体育倉庫-
「おーい、椎名っちぃー、出てこいよー、椎名っちぃー!」
「何用だ?」日向が少し大きな声で呼ぶとけっこうあっさり出てきた。
「椎名っち、野球やろうぜ、運動神経いいじゃん」
「計ったこともない」いや、運動神経は計るもんじゃねえだろ?
「絶対いいって!」日向はそんな椎名にめげずに勧誘を続ける
「あの日…そこの新人3人に出し抜かれてからずっと考えていた。そこの2人はまだ分かる。こいつらは私と同じプロだ。だが、そこの小僧は理解できなかった」
「ギルド降下作戦の時の事か?ありゃ確かに伝説もんだよな」椎名の1人語りに日向が相槌をうつ
「それから私がそいつに負けた理由を考えた。能力的に全て私が勝っていたはすだ」
「そりゃそうだろうな」
「ただ一点劣っていたのは集中力」椎名が言い切った
「いや、それもあんたのが上だろ?」
「それから私は集中力を鍛えるため、指先の一点でこの竹箒を支えている。」
「うわ、アホだ」
「ちょうどいい頃合いだ、来い、勝負だ小僧」けっこうマジっぽい椎名だが、箒立ててるせいでギャグに見える
「箒立てて何の勝負だよ」
「もちろん野球だ。戦うつってもちゃんと個人成績で勝負しろよ?1対1で戦うな」このままではまずいと、日向が間に入る
「む、仕方がない」
「よっし!これで7人目だ!」
「アホばかり増えていきますね。ああ!もちろん岩沢さんは違いますよ!」
「♪~、ん?何?終わった?」こいつ、またギターいじってたのか…
「わりぃな」
「ああ!ちょっと待ってくれ…。くそ、また失敗か」また日向は勧誘に失敗した
「もう戦線メンバーはほとんど取られてるな」
「どうするんだ?このままでは人数が足りないのでは?」椎名が箒立てたまま言う
「その箒なんとか出来ねえのか?真面目に話しててもギャグにしか見えん」
「それは私の集中力が切れた時だ」げんなりしてる日向を意にも介さずそう返す椎名
「じゃあこれでどうだ!」ユイが椎名に蹴りを食らわそうとする。しかし、その程度が当たるはずもなく避けられる
「何ぃー!」
「何をする?」驚くユイに平然としてる椎名
「ぎゃはは!僕もまぜろー!」その中に入る出夢
「しゃーねえ、あいつを誘うか」
後ろで暴れてる3人を放置してそう言う日向
-河原-
「野田は直情的でゆりっぺの命令にしか従わない」
「つまりあの人もアホなんですね」
「アホだが戦力だ」そんな事を話してる俺達は今、岩の陰から特訓中の野田を観察している。
「それに見ろ。長い棒状の物を扱わして奴の右に出る奴はいない」ハルバードとバットはちげえだろ、流石に
「んじゃまあ、誘ってみっか」俺はさっさと終わらしたいからそう言った
「ふっ、遂に来たか。決着をつける時が!」音無に向けてハルバードを向ける野田
「おおっと!その前に小手調べ。野球で勝負だ」その2人に割ってはいる日向
「何故?」
「強いだけじゃあゆりっぺは振り向いてくれないぜ?」ギロリと睨む野田に日向は臆さず言う
「ふっ、良いだろう」こうして両者で握手が交わされた
「アホだ、利用されてることに気づいてない」いや、マジでアホばっかじゃねぇか
「日向ー、どうするんだ?あと1人足りないけど、…日向?」音無は日向に話しかけるが日向はボーッとしている
「あ?ああ!わりぃちょっとボーッとしちまった。しゃあねぇ、あとはNPCで我慢すっか」
「あー!じゃあ私が仲のいい友達連れてきますよぉ!」ユイがハイハイと手を上げながら言う。
「仲のいい友達?」日向は怪訝そうに聞く
「いいから、行きましょう!」
「私達ー、ユイにゃんさんのファンって言うかー」
「勝手に親衛隊って言うかー」ユイが紹介してきたのは3人の女子のNPCだった
「ユイにゃんは才能におごることなく地道に路上ライブとかでファンを勝ち得ているのです」とユイは鼻高々といった感じだ
「そうなんだ、ユイえらいね」岩沢はそんなユイに感心し、頭をなでる
「い、岩沢さん!そんな、当然のことですよぉ~」頬を赤らめ、くねくねして言うユイ
「よし、とりあえずこれで人数揃ったな。まあ、打順とポジションはそん時決めりゃいっか!」
「ほんとにいいのか?そんなんで」明快に言った日向に音無は冷たく言う
そんなこんなでやっとメンバー集めが終わった。