ひといずin Angel beats!   作:堂上

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第19話

「なぜ新曲がバラード?」ゆりは岩沢の新曲を聴き終わり、淡々と聞く

「いけない?」

「陽動にはね、しんみり聴き入っちゃったら私たちが派手にたちふるまえないじゃない」

「そ、じゃあボツね」岩沢はゆりの言葉にこれまた淡々として答える。だが、やはり無理している感じがする。

「じゃあ、次のオペレーションを説明するわね。音無くんカーテン閉めて」ゆりは音無に命令し、カーテンを閉めさせて、オペレーションを発表する。

「今回は天使エリア侵入作戦よ」

「しかし、それは前回…」ゆりの宣言に高松は動揺したように意見しようとする

「わかってるわ。前回は我々の至らなさを露呈してしまった。だから今回は彼に同行してもらう」するとゆりのイスの後ろからメガネをかけた小柄な少年が出てきた。

「イスの後ろから?!」

「メガネかぶり…」

「そんな青びょうたん使いもんになんのか?」

みんなそれぞれリアクションをする。しかし高松、メガネかぶりはそんなに重要なのか?

「はっ!俺が試してやる!」野田がハルバートを向ける。

「お前友達いないだろ」音無は冷静にそう言う。まったく同意見だ

メガネはフッと微笑し「3.1415926535…」円周率を唱える

「バカな?!円周率だとっ!」松下五段が驚愕する。そんなに驚くことか?

「やめてあげて!その人はアホなんだ!」と大山が大声で叫ぶ。…いや、何気にひどくね?

「そう!私たちの弱点はアホなこと!」自信満々に言うゆり

「リーダーが言うことか?」音無は呆れた風にそう言う。まったくだ。

「だから、今回は天才ハッカーの名を欲しいままにしたハンドルネーム竹山くんが同行するわ!」ハンドルネーム竹山?いや、それって…

「僕のことは…クライストとお呼びください!」クライス…竹山は指を指し、びしっと決めてそう言った。うわ、台無しだ。

「さすがゆりっぺだぜ…カッコいいハンドルが台無しだ」藤巻の言うこととかぶってしまった…

「今回は二度目ということで、天使もより警戒してるはず。今回もガルデモには一丁派手にやってもらわないとね」

「了解」ゆりの言葉に岩沢はクールに返す

「それじゃ、今日は解散」

 

-空き教室-

「なあ、よかったのか?新曲、ボツになったけど?」俺は休憩中の岩沢に問いかける。出夢は関根とまたもやひさ子をからかってる。

「なんで?」岩沢の疑問ももっともだが、なんとなく聞いときたかった

「なんでって言われたら困るけどよ。大事な曲だったんじゃねぇのか?」

「別に…、特別ってわけじゃないよ。作った曲は全部大事さ」俺の質問にそう返す。

「俺は良かったと思うぞ。なんていうか、お前の気持ちがこもってた」俺は感じた事を率直に言う。すると岩沢は急に立ち上がり「みんな、練習再開しよう」と言い。練習を再開する。(なんかミスったか?やっぱり俺には他人の気持ちってのがちっともわかんねえみたいだな。)

 

しばらく練習してると、ひさ子のギターの弦が切れた。

「ごめん、すぐ張り替える」

「そ、じゃあ、休憩ね」ひさ子が弦を張り替えるまで休憩するみたいだ。すると、岩沢はドアの辺りを見つめている。音無が来ていたみたいだ。

 

「すげー熱気だった。思わず聴き入ったよ」

「そう、ありがと」

「だろだろー!かっけーよな!」2人が話をするみたいなのでなんとなくついて来て一緒に話すことにした。

「あんた、記憶がないんだって?」

「?ああ」岩沢の唐突な質問に音無は戸惑いながら答える

「そ、そりゃ幸せだ」

「どういうことだ?」岩沢の言葉に俺は問いかける。

「あんたたち、誰かの過去聞いた?」

「ああ、ゆりの」岩沢の質問に音無が答える

「ゆりのか、ありゃ最悪だ。私のはそこまでひどくない」

「そこまで?」岩沢の言葉に音無が聞く

「歌いたかった歌が歌えなかった…それだけの話さ」岩沢は悲しげにそう言う。きっと、無理をしているのだろう。

 

「私の家はいつも両親が喧嘩をしていて、私は自分の部屋もなく、部屋の隅で縮こまって、耳を塞いでいた。ある日、sad machine というバンドの曲を聴いた。そのバンドのボーカルも家庭環境が悪く、精神的に辛い時期はイアホンで耳を塞いだという。…私もそうしてみた。ボーカルが私の代わりに叫んでくれた。常識ぶってるやつが間違っていて、泣いてるやつこそが正しいんだと、孤独なあたしたちこそが人間らしいんだと、理不尽を叫び、たたきつけ、壊してくれた。こいつと出会ったのは雨の日のゴミ捨て場。私は

私はその日から、路上でライブをし、バイトで金をためて、オーディションを受ける日々。いつか、いつか、上京して、音楽で食っていくんだ。そう、思ってた。ある日のバイト先で私は激しい目眩におそわれ、倒れ込んだ。次に目覚めた時、私は喋れなかった。頭部打撲 脳梗塞による失語症。原因は…両親の喧嘩のとばっちりだった。運命を呪った どこにも逃げ出せなかった そのまま私の人生はここで終わった」岩沢は自分の過去を語り終えた。

 

「お前の過去も十分ひどいじゃねえか」俺はついそう言う。

「ゆりに比べたら全然さ」岩沢はそんな風に言う

「過去なんて、比べるもんじゃねえだろ」

「そう…かもね」岩沢は俺の言葉にそう返す

「岩沢~」ひさ子が岩沢を呼びに来た

「ひさ子、もうOK?」

「待ちくたびれてるよ」どうやら長い間話してたようだ

「記憶なし男!」岩沢は音無に向かってペットボトルを投げる。どうでも良いけど、記憶なし男って音無のこと?センス悪りぃのか?

「やるよ!」しかしそんな些細な事が気にならなくなるくらいイケメンだった。女子なのに。

音無が帰った後も俺達は練習を見ていた。

 

-体育館-

いつもは食堂でやるゲリラライブだが、今回は派手にやるということで、体育館での告知ライブだ。俺と出夢は上から見ている。一応、ガルデモの護衛ということだ。どうやら天使エリア侵入作戦ってのは細かい作業が多いから出夢を連れて行くわけにはいかなかったようだ。そして俺は出夢のお目付役だ。

まず、crow songから始まったのだが、告知ライブにしては集まりが悪い。岩沢たちも焦っているようだ。

crow songが終わり、次の曲はいつもライブの終盤にするというAlchemyだ。NPCを集めるために盛り上がる曲を選んだようだ。どんどんNPCが集まっていく。しかし、教師たちが体育館に入ってきた。NPCたちが必死に教師たちを止める。だか、やはり教師たちのほうが力が強いので、Alchemyが終わると、ガルデモメンバーは捕らえられてしまった。

岩沢とひさ子は振りほどこうとしている。関根と入江は動きようがなさそうだ。遊佐は、なんか倒れこんでいる。

「ちっくしょ~、あいつら~!」出夢は今にも降りて教師たちをボコボコにしそうな勢いで怒っている。俺が止めていないと降りているだろう。

「まったく、文化祭じゃあるまいし、二度とこんな真似させんぞ!」一番体格のいい教師がそう言い、おもむろに岩沢のアコースティックギターを持ち上げ「楽器は全て没収だ。これはもう捨てても構わんな」という。

「…れに」岩沢が呟く。教師は聞こえなかったようで、ああ?と聞き返す。

「それに、触るなぁぁぁぁぁぁぁ!」岩沢は教師の腕を振りほどき、ギターを持った教師に体当たりする。そして、ギターを奪い返す。ひさ子はそれを見て驚いている教師に頭突きをかまし、放送器具のある所へ走る。遊佐がひさ子を追いかけようとする教師の足を何気に引っ掛けて転ばす。

岩沢は追い込まれ、ギターを弾き始める。例の新曲、My songを。ひさ子がしたのだろう、その音が外にも響いている。

教師たちはその岩沢を捕まえようとはしない。そして歌が進むにつれ、岩沢の体からポツポツと光が出てくる。出夢の妹、理澄が消えた時と一緒だ。

横にいる出夢を見ると、出夢もやはりそう感じたようで不安気な顔をしている。歌はもう終盤だ。

俺は、考えるよりも先に動いていた。

俺は舞台の方へ飛び降り、岩沢の前に行き、デコピンをくらわす。

岩沢はびっくりしたという表情を浮かべ「零、崎?なにを…」と言う。

「お前が消えたら出夢がまた悲しむだろーが。消えられちゃぁ困んだよ」俺がそう言うと、岩沢は「ははっ、あんた、いい男だね…」と言うと、倒れこんでしまう。

「っち、マジかよ!しゃーねー、おい!お前ら、ずらかんぞ!」俺が叫ぶと関根たちは、ハッとして、楽器を持ち、逃げる準備をする。

「待て!どこに行くつ…「どけ」」教師が俺達を止めようとするので睨んでやると、びびって道を空ける。

「出夢!お前も逃げとけよ!」俺は出夢にそう言い、体育館から逃げ出す。

 

-天使対策本部-

「わかったことを教えてくれ、ゆりっぺ」日向がゆりにそう問いかける

「天使は自分でガードスキルを作っていた…それくらいよ」ゆりはそう言うと1人、考えているように窓際に行き、少し黙り込む。

「まあいいわ、とりあえず今日は解散。また明日ね」ゆりがそう言うので解散ということになった。

「なあ、人識ー、なんで岩沢を消えないようにしたんだ?」出夢はそればっかり聞いてくる。しかし、理由を言うのは恥ずいので「俺も岩沢の歌が好きだから」と答える。

余談だが、岩沢は気持ちよく歌ってる所を邪魔されたからか、俺が話しかけようとしたら、小走りで逃げられ、目が合いそうになると、さっと目を逸らす。ちくしょー、消えずに済ませたのになんだこの仕打ちは。

 




作者の勝手な理由で岩沢を残しちゃいました。すみません。でもみなさん、批判はなるべくやめてくださいねm(_ _)m

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