ひといずin Angel beats!   作:堂上

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第12話

次の日、オペレーションはないということなので、俺は出夢と食堂にいた。

「なあ、とっしー」と今までどこかぼーっとしてた出夢が話しかけてきたので「なんだよ、いずむん」と返すと「昨日のさ、バンドってやつ、見に行こうぜ」と言う。

(こいつそんなにあのバンド好きなのか?)と意外に思いながら「そりゃあ別になんもすることないからいいけど、そんなに好きなのか?バンド」と聞くと「うーん、わかんねー」と要領を得ない。

「わかんねーって、なんだそりゃ」と言うと「僕音楽聴くのなんて初めてだったし、よくわかんないんだけど、昨日からずっと頭に残ってんだよ。あいつらの歌」と言う。ふーん、と一見興味なさげに返事をするが、内心出夢が一般的な事に興味を持つことは嬉しいので「かはは、いいぜ。じゃ、ちゃっちゃと食っていこうぜ」と言うと、うん!と良い返事がかえってきた。

 

「で?どこであいつら練習してんだよ?」と出夢に聞くと「は?知らねー」と返してくる。「知らねーってお前な、どこでやってっかわかんねーのにどうやって見に行くんだよ?!」と言うと「そこは人識が誰かに聞いてくれたらいいんじゃん」と人任せだ

はあ、と溜め息をつき、とりあえず戦線メンバーを捜すことにする。

 

しばらく校舎内を歩いてると、ピンクの髪の毛、そして、悪魔のしっぽみたいなのをつけたアホっぽいやつを見つける。戦線の制服を着てるので聞いてみる。

なあ、そこの、と声をかけると、はい?なんですか?と振り向くと「な、なんですか?!その刺青!?それに変な髪の色だし!」といきなり失礼なことをぬかす。

「刺青はしょうがねえにしても、髪の色はお前も言えたことじゃねえだろ!」と言うと、「なにがですか!普通ですよ、ピンクくらいざらにいます!あなたのその白黒みたいなのなんですか!オシャレのつもりですか!」と怒涛の罵倒を食らわしてくる。てか、なんか伊織ちゃんみたいなやつだな、いや、伊織ちゃんよりうるさいし失礼だが。と思いつつ

「次俺にオシャレがどうこう言ったら、殺すぞ」と脅すと、はい、と大人しくなった。

「お前さ、ガルデモがどこで練習してるか知ってるか?」と本題に入ると「はい!知ってますよ。第二校舎の空き教室で練習してますよ」と教えてくれた。「サンキュー、えーと」と名前わからないでいると、ユイです。と言うので「サンキュー、ユイ」と言い、出夢の所に戻る

 

すると、出夢がジト目でこちらを睨んでこう言う「人識、えらく楽しそうじゃねえか。女の子と喋れて」はあ?なに言ってんだ?と思い「どこをどう見ていってんだよ。いきなり失礼なこと言われたわ!」と反論すると「嘘だ!僕と話してる時より楽しそうだった!」とすごい剣幕でまくし立ててくる。

(なんだよ、やきもち焼いてんのか?)と思い「そんなわけねえだろ。やっと会えたお前より楽しいわけあるか、アホ」と言うと「ホントか?」と言うので、ああ、と返すと「ホントにホントか?」としつこく聞いてくるので、頭を撫でながら「ホントにホントだ。お前以上のやつなんていねえよ」と冷静に考えるとこっぱずかしいことを言うと、ニッ、と笑い「そっか!じゃあ、いこうぜ!場所わかったんだろ?」と機嫌を直して歩き始める。やれやれ、と思いながら後を追う

 

 

空き教室に着くと、防音なのだろうが、さすがにここまで来るとかなり音が聴こえてきた。

そして、ドアから覗いてみると、すごい熱気が伝わってくる。岩沢の芯が強く、なにかを訴えかけてくるような歌声、ひさ子の素人でもわかるほどの技術、関根の目立ち過ぎず、それでいてしっかりとしたベース、入江のいつもの様子からは信じられないほどの堂々としたドラム、それらすべてが調和し、耳に流れ込んでくる。あらためて、うまいと思う。出夢は昨日のように目をキラキラさせている。

 

やがて曲が終わると岩沢がこちらに気づき「来てたんだ。言ってくれればいいのに」と気前の良いことを言う。「いや、邪魔しちゃ悪いと思ってな」と言うと「ギャラリーが居た方が練習になるのさ」と言う。

「じゃあ、これからも来ていいのか?!」と出夢が興奮気味に言うと「ああ、みんな喜ぶよ」と返してくる。イケメンだ。女なのに。

 

「で、匂宮は私たちのどこが気に入ったんだ?音楽聴いたことなかったんだろ?」とひさ子が聞いてくる。それは確かにそうだ。

「んー、わかんねーけどさ、何か昨日見たとき光って見えたんだ」と言う

「光って、ねえ。そりゃ嬉しいことを言ってくれるな」と岩沢。

「じゃあ、もう一曲聴いてくかい?」と聞かれると、うん!と返事する出夢「じゃあ、みんな、Alchemyやるよ」と言い、それぞれ準備する。

 

軽快なイントロから、岩沢が力強く、どこか切ない歌声で歌い始める

そして、聴き入ってる内にサビに入る

触れるものを輝かしていく そんな道を生きてきたかったよ

この曲をやった意味がその歌詞を聞いてわかったような気がした。

出夢の光って見えたってのが、ホントに嬉しかったんだと思う

後で聞くとこの曲や他の曲すべて岩沢が作詞しているみたいで、いわゆる実体験や、生前感じた想いを歌詞にしているらしい。

 

曲が終わり、帰ることした。すると「じゃ、また来てくれよ」と岩沢に言われ「もちだぜ!」と出夢も返す。出夢はもうファンと化している。

 

帰り道出夢が「また来ような!」と言う、暇だったらな、と返す、が女子だけの空間に男1人というのは若干気まずいのでホントに行くかはまだ決めてない。それに、出夢と再会して一緒に行動するのは楽しいが、他の奴らにも目を向けて見て欲しいのという思いもある。

(一回1人で行かしてみようかな)と思うが、口にするとうるさそうなので言わない

 

そして、寮に帰り、床につく。(出夢、ホントに楽しそうだったな…)と思ってる内に眠気に負け眠りにつく

 

 

(ほんとすごかったぜ、岩沢たち)僕は今日の演奏を思い出し、興奮して眠れない。

「でも、人識の反応、いまいちだったよなぁ。どっか上の空だし」と独り言を呟く。

まあいっか、一緒に演奏聴くとかなんか恋人みたいだったし、と考えてにやける。最近よく人識のことを考えてにやけてしまうことがある。

(この世界なら、いつまでも人識といれるんだよな。ホントに来れてよかった)と思い、少し、決別の時を思い出す。

 

狐さんにたぶらかされ、人識のクラスメートを皆殺しにした。あいつの大切な、汀目俊希としての生活をぶっ潰した。

でも、人識は「俺の出来ることならなんでもしてやる」と言ってくれた。愛してくれるとも言った。あいつは優しいから、あそこでなんとかしたら、もしかしたら和解をできてたのかも知れない。でもあの時の僕は人生で一番狂っていた。そして決別した。

 

(もし、あいつに僕の気持ちを伝えたらどうなるだろう…?)と考えても詮無きことを考える。きっと、ダメだろう。僕はせいぜい友達までしか人識に踏み込めないのだろうという結論に至ってしまう。和解したとはいえ、生前の行為は完全には許されないだろうという思いから後ろ向きな考えしかできない。

ムシャクシャした思いを忘れるため、眠りにつく。

 


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