次の日、ゆりに呼び出されたのはまたもや放課後だった。
俺達は殺り合いを早めに切り上げ、本部に向かう
「ぎゃはは!惜しかったな~、後ちょっとで人識をぶっ殺せたのに~」と物騒な事を言う出夢。(実際後少しで一喰いをくらうところだった。)
「かはは。まあ俺は神に愛されてるからな」と戦線の目的と若干矛盾した軽口を言うと「ちげえだろ、とっしーが愛されてるのは僕だろ~、ぎゃはは!」と出夢が軽口で返してくる。最近本当に昔に戻ったような軽口の応酬をしている。
「しっかし、なんか動きあったのかな、新入り」と出夢が珍しく真面目なことを言う。
「さあな、案外なんも動きなしで人数不足のままなんか作戦するのかもよ?」と返しておく
そうして本部につく。「神も仏も天使もなし」と合い言葉を言い、ドアを開ける
すると、ソファーにボロボロの制服を着た、オレンジ色の髪の男子が寝転び、メンバー達はなにかワイワイ騒いでいる。
「あ、人識くん出夢くん、あなた達もなにか新しい戦線の名前考えてよ」と唐突に話題を振ってくるゆり。
はあ?と思ってると出夢が「ハイハーイ!考えたぜぇ!」と手を挙げる
なになに?とゆりが聞くと「僕と人識の愛の戦線♡」と言い、思いっきり吹き出す俺
「出夢!てめえ、何言ってんだ!?」と言うと、俺より身長高いくせに器用に上目遣いをして「だめか?」と聞いてくる。
(そりゃ、ずるいだろ)と心の中で抗議するものの、口では「いや、駄目と言うかだな… 」と口ごもってしまう。可愛いってのは得だ。
「はいはい、夫婦漫才はそこらへんにしてくれる?」と呆れた口調で言うゆり。「誰が夫婦だ」と反論するが、スルーされる
ううん、と後ろから呻き声が聞こえる。どうやら新入りが起きたみたいだ。
「あら、起きたの。ちょうど良いわ。あなたの意見を聞かせて」と言うゆり。しかし新入りは、なんの事だ?と内容を把握できてない。
「前に言ってたでしょう。新しい戦線の名前よ」とゆり。
すると、「勝手にやってろ戦線」と言う新入り。
「ほお、ゆりっぺに刃向かうってのか?」と藤巻がまた絡んでる。どうやら新人に絡むのは癖みたいだ。
「勝手にやってろつってんだよ!」と新入りが急に怒鳴る。大人しそうなのになかなか起伏の激しいやつだ。
なんだと!と藤巻もすごむ。
「俺はとっとと消えるんだよ!」と言う新入りに高松が、「ではあなたはなんの抵抗もしないまま、フジツボになると言うのですね」と言う
ああそうだ、と言いかけて「フジツボ…?」と聞いてくる。
「あなたは何も考えずに消えるなどと言ってたのですか?人間に生まれ変われる保証などどこにもないのに」と冷静に言う高松。確かに一理ある。
「そんなの、なにを根拠に!誰か調べたやつがいるのかよ!」と声を荒げる新入り。ふと、出夢の方を見ると、うるさそうに見ているが、大して興味はなさそうだ。
「いないけど、仏教では必ずしも人間に生まれ変われるとは信じられてないわ」と言うゆり。
「あなたがフジツボやタニシになっていいのなら、どうぞご自由に」と冷たくあしらう高松。そうだ、とっとと消えろよ。ほら、と同調する藤巻。
そんな…、と絶句している新入り。
「やめてあげなさい。彼はここにきてすぐだから混乱してるのよ」とゆりがフォローする。そして続けて「どうかしら?入隊してくれる気になった?」と聞くと。
「少し時間をくれ。」と答える新入りに「ここ以外ならどうぞ?」と言うゆりに「…わかった、入るよ」と言う新入り。合い言葉は?、と聞いてくる。「神も仏も天使もなし」と答えるゆり。
そして、周りから歓声があがる。そこに、「早まるなゆりっぺぇぇ!俺はそいつをまだ認めてなぁぁぁぁぁ!」と野田が吹っ飛んでいった。この光景前に見たな。
「じゃあ、アホはほっといて、メンバーを紹介するわね」と言い、俺達に紹介したのと同じような紹介をし、俺達の順番が来て「あそこの2人は匂宮出夢くんと、零崎人識くん。バカップルよ」と言ってくる。
おい!と突っ込む俺。しかし出夢は「そうだぜぇ~、僕達バカップルー!ぎゃはは!」と抱きついて言う出夢。新入りは冷ややかに見てくる。
「それと、出夢くんは殺し屋。人識くんは、殺人鬼よ」と平然と言うゆり。
はあ?!、と驚く新入り。そりゃそうだ。新入りは冷ややかな目から少し恐怖の混じった視線を送ってくる。
「あ~、その、なんだ。殺人鬼ってのは昔の話だ。今の俺はそんなに見境なくねえから安心してくれ」と言い。手を差し出すと、一瞬迷い、握手してくる。何もしない俺に、ほっ、とした表情を見せる新入り。
「ぎゃははは!僕はまだまだ大人しくなってないけどなぁ~」と言い新入りをひびらす出夢。アホ、と言い出夢の頭をはたく。
「わりいな、ちゃんとしつけとくから」と言うと出夢が「え、なにとっしー、僕を調教するつもり~、やっらし~!ぎゃははは!」と言う出夢。もう嫌だ。
とかしてる内に話は進む。
「あなたの名前は?」とゆりが聞くと、「……音、無…」と自信なさげに言う音無。
「なるほど、記憶のないパターンね」とゆり
「まあ、別に珍しいってほどじゃねぇよ。他にもそういうやつはいる。」と日向が言う
「直に記憶も戻るわ」とゆり。それより、と日向が言い「制服、渡さなくていいのか?」と日向
「ああ、そうね。はいこれ。」と俺達と同じブレザーを渡す
「なんで違う制服を着るんだ?」と当然の質問をする。そして、またもや俺達が受けたのと同じ説明を受けている。
「今日はこんなもんね。」とゆりが言い
「じゃあ、今日は解散ね!オペレーションは明日発表するわ。」あと、と言葉を繋ぎ「人識くんは残って。あとは各自解散!」と宣言するゆり。
「で、なんだよゆり?」とみんなが居なくなってから(出夢はまだいるが)聞く俺。
「この前頼まれてた刃物類、できたわよ。」とゆりが言い、3つほどトランクを差し出す。開けてみると、そこには色々な刃物が入っていた。
「おお!やっとか!待ちくたびれてたぜ!」と言う俺に「そう言わないであげて、ギルドの皆も大急ぎで作ってくれたのよ」とゆり
ギルド?と聞くと「この学校の地下にあるの。武器はそこで土くれから作ってるわ」とゆり。
「へぇ、面白そうだな」と純粋に言う俺
「まあ、また武器が不足してきたら行くわよ」とゆり
じゃあ、帰って良いわよ、と言うゆり。すると出夢が「早く帰ろーぜー」と急かしてくる
本部を出て、少しすると「さあ、さっきの続きするぞー!」と言って走る
「マジかよ…、かはは、傑作だぜ」とお決まりのセリフを言い出夢の後を追う
結局今日も出夢と殺し合いをする。毎回俺は当たり前みたいに負けて死ぬ。それでも、出夢と昔のようにじゃれあって、友達のように、恋人のように、そして家族のように暮らす日々はとても充実してる。