俺たちの冒険の書No.001〜ロトの血を引きし者〜 作:アドライデ
Lv.1:竜王討伐を言い渡された。
「勇者ロトの血を引く者よ! そなたの来るのを待っておったぞ」
開口一番に告げられたのはこの言葉だった。
王族は話が長い。
要約すると『竜王が現れたので倒してこい』ってことだろう。
旅のヒントもいくつか教えてもらえたので旅立つことにする。
(俺で何人目だ?)
そう出そうになった言葉を慌てて飲み込み、跪き定例文を言う。
「無事に倒し、この世界を平和に導くことを誓いましょう」
「では行け! 勇者アレフよ」
一礼をして、黍を返し、旅の役に立てるものを少しばかり頂き、後方の扉を開ける。
この国の近衛兵に見送られて勇者アレフは旅立つ。
「…………」
城を出て城下町までは実は少し遠い。
出て来るのは一番弱いと言われている雫型のモンスター【スライム】だが、油断はできない。
一匹なら何とか倒せるが、こっちは丸腰だ。
もう一匹出て来たら…上位の雫型で赤い【スライムベス】なんかが出て来たら軽く死ねる。
見送られた場所を振り返り、溜め息をついた。
「ロトって何だよ」
この世界の平和を取り戻した英雄。
うん百年前だかうん千年前の伝説の勇者であることは己でも知っている。
己がその血の子孫だなんて、なぜ分かる。
現在は、御伽噺とか言い伝えとかのレベルである。
それを証明するものはない。
だが、我こそはロトの子孫だと言うものが現れ、こぞって討伐に向かいその道中で命を落とした。
(血で竜王を倒せるわけがないだろう)
ロトの血を引きし者と言う注目を浴び、町の住人からも訝しげに見られる。
「お前がロトの血を引く者? 証拠でもあるのか?」
魔物の脅威が増すばかり、勇者は未だに平和へと導いてくれない。今度こそは大丈夫なのかと期待と不安が入り混じる視線だ。
そんな視線をかいくぐり買い物、竜の鱗と竹槍を買う。
目先の目標は180Gの銅の剣。
竹槍をグッと握りしめて、気合いを入れる。
自分は強くない、血だけで選ばれただけの存在なのだから。
町の外へ出ようとした時、一人の兵が戻って来た。息も絶え絶えに紡ぐ言葉。
「誰か伝えてくれ、ローラ姫の捜索隊は全滅した」
崩れ落ちる兵士に駆け寄る町民。それを右目に見て、すれ違う。
(俺にできることは何もない)
ローラ姫が拐われて半年と言われている。
生死不明。凶暴化しつつあるモンスターに如何程の犠牲者が出たことか。
滅ぼされた町もあると言う。
なぜその町は滅ぼされたのだろう。
一歩外へ出たら油断は禁物。
目まぐるしく、考えが彷徨うがそれを振り切り魔物への警戒を強める。
アレフLv.1の旅の始まりである。