デュノア社長邸の廊下を4人のメイドが金銀黒黒を1人ずつ担いで歩いていく。最初のうちは抵抗していたものの今はもうあきらめている。そのうちの一つが間延びした声で他に問いかけ、それが会話になっていく
「ねーセシリア、私たち何処つれてかれると思う?」
「
「わ、私かっ!?こ、こういった場所と最も縁遠い私に振るかっ!?」
「あーセシリア確かに箒に振るのは無いわー、てか私と箒はこういった場所から縁遠いけどセシリアは違うでしょー?推測しなさいよー」
「確かに広い屋敷には住んでいましたわ……ですけど、どこにつれてくかというのは先導していた筈だったのにさっさと走って行ってしまったあのご婦人と私たちを担いでいるこのメイド達ぐらいでしょうに」
「すみません、もうしばらく辛抱なさっていてください」
そんな彼女らにセシリアを運んでいるメイドが一言釘を刺してきたが会話を続ける
「とは言われてもねー……そいえばラウラーあんたさっきからだんまり決め込んでるけどどうしたのー?」
「ん?ああ、さっきシャルロットが言われていた着せ替え人形とは何の暗号なのかと思ってな」
「あー大体分かったわーどこ行くか」
「ええ、ですけどどうして私たちまで運ばれてるのでしょう?」
「さぁな、それこそ本人にしか分からないだろう」
ガックリと力が抜けた3人とは対照的にラウラはなんのことかわかっていないようで
「???お前たちは分かったのか?」
「あーつまりね……」
どこに連れていかれるかを鈴言おうとしたとき、メイドが止まり大きな扉を開いた。その部屋の中には所狭しと服が並んでいる。
「こういうことよ、なによこの量もしかして全部試すのかしら」
愚痴のように鈴が漏らした言葉にひょこりと顔を出したシャルロットが
「あ、好きな物着て写真撮るだけみたいだよー」
「あら?良いんですの?高価な物もありますし……」
「うん、お義母さんが好きに着て良いって、すごい量だから迷っちゃうよね」
「ていうかシャルロット、あんた何時の間にそんなに仲良くなったのよ」
「ここに来るまでにっ、話してたら凄いいい人だった」
「だが……凄い量だな」
「お義母さんも途中から数えるのやめたって言ったから……あ、ラウラこれどう?」
「な、なんだこれはフリルが凄いぞ……」
ガヤガヤと服を選び始めた5人娘に遠くのほうから声がかかった
「5人娘、服を選んだらこっちに来てくれ。写真を撮る」
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~2時間後~
5人がデュノア夫人と打ち解け撮影が本格化し始めたころに、コンコンと扉をノックする音が聞こえ、ほんの少し開かれ、一人の女性が顔を出した
「あのー?」
その呼び声に夫人がスタスタと歩いていき、何やら話し始める。その2人の様子に5人娘は集まり
「誰あれ?」
「なんか凄い美人さんだね?畏まったとこみるとお義母さんの部下か何かかな?」
「だがそれにしては様子が変だろう」
「部下と言うよりは友人といった感じか」
夫人が残念そうな顔をし、女性が困った顔をしているが部屋に入ってきた。夫人も大きな人だったがこちらはさらに大きく180はありそうだ。
「こちらに来ますわ」
5人娘に手を振りながら奥のスペースにあった5人には明らかにサイズの合わない子供服(見るかぎり小学生低学年向けほどの小ささ)がつられたハンガーラックの前に立つと女性の髪がうごめきハンガーラックを持ち上げた。それを頭上高く上げ他のハンガーラックにぶつからないようにし、部屋を出ていった。
「なんなんですのっ!?」
「ホントに誰だあれはっ」
「なんか手振られたし、ホントにどんな人っ」
「てか、髪蠢いてたし、髪でハンガーラック持ってたし、何者っ」
「掛っていた服もサイズが明らかに合わないモノだったぞっ」
そんな5人娘に夫人が一言、特大の爆弾を投げつけた。
「何言ってる、大十字だぞあれは」
「「「「「は?」」」」」
ダイジュウジ?大十字?え?は?と脳内を駆け回るが彼女らの知り合いに大十字という人物は一人しかいない。そんな彼女らにため息をつき夫人が説明し始める
「アイツにとっては肉体なぞ装飾品と同じだ。一番つけていて楽な物が普段の姿で、こういった場所に入る時にはそれ相応の物をつけている感覚なのだろうよ。あ、そこの銀髪は右側の4歩後ろの服を着てみてくれ、きっと似合う、すごい似合う。シャルは左側の2歩前にあるヤツな、ほら早く着て私に写真を撮らせてくれ」
「ちょっと待ってお義母さん、百歩譲ってあれが大十字君だとしても中身は男だよねっ!?入っていいのここっ!?さっきはお義父さんに入ったら殺す的な事言ってたけどっ」
「あれは男というよりは可変とでもしておいた方が良いだろう。あ、金髪ロールは現在位置から右3列目の4歩先のを着てみてくれ、黒髪ポニテは左2列目の10歩後ろだ。まぁ普段の姿の時でもナニがとは言わないが付けて無いらしいしな」
「え?」
ダラダラと汗をたらし始める5人に再び爆弾を投げつけ説明していく
「ナニがとは言わないぞ。なんでも戦闘時に蹴り上げられて不利になる様な物付けておくだけ邪魔だそうだ。あ、これいいなツインテ着てみてくれきっと似合う。そこからはアイツを男として見なくなったな。それに、アイツは自分の嫁に着せる服は自分のサイズで1回作って着てどうするかを決めるらしい。はい笑ってー……よし、次の服着てこい。ここにあるフリルが大量についた服は大体アイツから型紙を譲ってもらって作った品だからな」
鈴が近くにあったフリルが大量についたワンピースを手に取り掲げてみせる。
「えっ?じゃぁこれとか大十字作!?うっそマジで!てか嫁さんちっちゃ!?」
「ああ、それなんかはドンピシャだな。さっき持っていたのはウチが今度売り出そうと思っている子供服の類だな。アイツの嫁が気に入った物があれば多分売れるだろう。恐らく」
「自信ないんだ。あ、これ可愛い」
「それも大十字作だぞ」
黄色の長袖のシャツに白で華柄のついたものをハンガーラックから外し見ていたシャルロットにそんな言葉が飛んできた
「なんでもフリル付き以外でいい服を作れないかと模索していた時の物だそうだ」
「意外な才能よね」
「ホントに」
「アイツは何処か抜けているが完璧超人だからな、家事全般なんて朝飯前で、作る料理は幅広く全てが一流レストランよりも旨くて掃除させたら塵一つ残さない。知識も広く深くあってスポーツはどれも金メダル選手をはるかに超えている。ついでに武器全般も手足の様に扱う奴だ」
「そう聞くと人外だと思うけど実際の所どっか抜けてるのよねぇ大十字って」
「確かにな……む、着物まであるのか」
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それからしばらくした後、先ほどセシリアを運んでいたメイドが入ってきた。
「奥方様、昼食の用意ができました」
「む、そうかありがとう。みんな食事の時間だ。食堂に行こう」
着せ替え人形のように大量の服を着ては脱ぎ着ては脱ぎの繰り返しで疲れていた5人娘はこれ幸いと返事をし、6人は部屋から出ていく。
「今日の昼食は?」
「はい、大十字様が自分が作ろうとおっしゃられたので作っていただきました」
「それはいいっ!……だがアイツから言い出すなんて珍しい事があった物だな」
「なんでも狐の方が来られたとか」
彼はデュノア夫妻にいくつかの情報を教えていた。
「なんとっ!?急いで食堂に向かうぞ」
まったくと言っていいほど地上界に降りてこない3人のことを聞いていた夫人は走って食堂まで向かっていった。その背にシャルロットが静止をかけるのもきかずにだ。
「あっえっお義母さん?……行っちゃった」
「はぁ、仕方ありません。皆様、着いて来てください」
それから2分ほど歩いたのち、食堂につき、メイドさんが扉を開けてくれた。
5人が入ってくると九桜と狐色の髪の狐耳と尻尾9本を生やした女性の姿が否が応でも目に入った。明らかにその場所だけ異常なのだ。
そんな彼らはこちらを向き
「お、来たな」
「あ、あの子達?」
「そそ、見てて楽しいんだそいつら」
九桜が自分の母親に彼女らを説明し始めるが、シャルロットが霊華を指さし
「え?耳と尻尾?」
そんな驚きようをしている彼女らに九桜が笑いながら
「ん?ああ、これうちの母親の1人」
「ひっどいなぁもう、もうちょっとあるでしょ何かー」
「つってもなぁどうやって説明したらいいんだよこのセカイの奴に」
「え?母親の1人?え、じゃあ他にも……」
困惑しているところにさらに
「ん?ああ、そこか……この人ウチの母様に対してだけのレズだしなぁ」
「「「「「は?」」」」」
「こっちじゃ生やしたり生やされたりってのが割とあるからなぁ。ナニをとは言わないけど」
ちなみに九桜の場合霊華が生やして虚が産んだ
「いやんもう九桜ったら大胆」
「いやぁ事実だしなぁ」
「「ハッハッハッハッハ」」
この時5人娘はあきらめ、もう突っ込むのはやめようと心に誓った。