その無限なる時の旅路~無限の空~   作:黒水 晶

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第56話:今日もドッキリ楽しかったな~早く遺跡行って後始末しなきゃ(使命感)

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しんと静まりかえった屋上に声が響く。動けるようになった5人(約1名未だに気絶中)がゆっくりと息を吸いタイミングを合わせ

 

「「「「「ちょっと待てえええええええええええええ」」」」」

 

九桜が持つ看板を指さしてそう叫んだ。そんな彼らの行動に腹を抱え

 

「ハッハッハ、俺の部屋にあんなもん置いとく方が悪いんだよ阿呆共が。あー笑いが止まらねぇ」

 

そんな事を言って大声で笑い続けている九桜に半目になったデュノア社長が

 

「君は……もしかして事情を何も話さずに来たのかい」

 

「ええ、ちょっとしたドッキリの為に……てか半目になったって娘の頭撫ぜてたら迫力もなにもないっすよ」

 

む、と唸った父親の腕の中で、シャルロットはもぞもぞと彼の方を向き

 

「あ、じゃぁさっき僕を殺さないといけなくなるかもしれないっていうのは」

 

「あ、それはマジ、だけど問題無かったからそんな気にする必要ないぞ。あとでお前の母親の墓参り行くからその気で。では、俺は前回の仕事の不備を帳消しにしてきまーす」

 

「ちょ、え、大十……行っちゃった」

 

言いたいことだけ言って急ぐように視認できないような速度飛んでいってしまった。デュノア社長が苦虫を噛んだような顔で

 

「依頼を出そうと思っていたのだが……これが彼なりのサービスという事でいいんだろうかな」

 

え?という疑問の声が屋上で多く出たが彼はそれに苦笑するばかりで答えようとしない。そんな中空きっぱなしだった扉の奥から180近くはあるのではないだろうかという高身長の女性が歩いてきた。

 

デュノア婦人だ

 

そのカツカツという靴の音を聞きデュノア社長が名残惜しいように一つ頭を撫ぜてシャルロットから離れ一歩左に体をずらす。

 

女性は彼が空けた場所にゆっくりとしゃがみこみ、シャルロットの顎を親指と人差し指だけで掴み、手首を左右に動かし彼女の顔をよく観察すると低い声で

 

「ふむ、なかなかいいな。」

 

「え?え?え?」

 

いきなりのことで思考が追いついていないシャルロットの腰あたりに腕をのばし肩に担ぐように持ち上げ非常に笑顔で彼女の腰を叩きながら

 

「なに、しばらく着せ替え人形になってもらうだけだ。沢山用意してきたからな。あ、メイド達は残りの女子を運んで来い。男は要らん」

 

その笑顔のまま左に顔を向け

 

「もしも入ったら、分かってるだろうな」

 

ドスのきいた声だった。なまじ顔が整っている分、恐ろしいほどの迫力だったがデュノア社長はやれやれとでも言いたげに肩を落とし

 

「分かってるよ。流石にまだ死にたくないからね」

 

その言葉に一つ頷き、少し沈んだ声で

 

「ならいい、だが大十字が逃げたのは残念だな……折角あの子用の服も用意したと言うのに」

 

「どうせ戻ってくるだろう。その時にでもやればいい」

 

それもそうだなと言い来た道を戻っていった。

 

それと変わるように何人かのメイド服を着た女性たちが扉をくぐり屋上に出てきた。彼女らはいきなりのことで放心状態だった織斑姉弟以外を肩に担ぎあげると足早に主の背中を追っていった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

~遺跡~

 

「ヤバいヤバい、奥方に見つかったらオウルが着せ替え人形みたいにされる所だった」

 

(今はヤダ)

 

「だよなぁ、分かれてるときだったら多少は人前出れたけど今のお前はなぁ」

 

昔来たときは人づきあいが“まだ”できる光の書(オウル)の状態だったから良いものの今の彼女は人づきあいと言うものが壊滅的にダメな無限光の魔導書(オウル)になっている。

 

九桜や無形のメンバー、九桜爺の周辺の人物以外の前ではヒトガタをとることもしない彼女を出せと言われてもヒトガタをとるかとらないかをオウルの気分しだいとしている九桜は無理にヒトガタをとらせるのはNOと言いたいものなのだ。

 

(右)

 

遺跡を解析しマップを製作した彼らは少しでも時間をかけるた最奥まで一気に行かず徒歩で遺跡の奥を目指していた。無論デュノア婦人に捕まらないためだ。少しでも時間を掛ければ残してきたメンバーがおもちゃになるだろう。それが白熱したぐらいに館に帰ればいい

 

だが、次作る服のデザインを考えていたが行き詰っていたので、服を見るのはやぶさかではないのだがいかんせんこのオウルを人前に出したくない。そんな彼の中で一つの答えが浮かんだ。

 

「ほいよっと……そうだオウル、奥方には写真で満足してもらって服だけは着てみるか?俺と2人だったらいいだろ」

 

(それなら)

 

「よっし、じゃあ決まりだ。ぶちくさ言われそうだがこっちだって色々と服みたいんだよなぁ」

 

(次左)

 

「おいよ、ってかこの遺跡こんな曲がりくねった感じになってたっけな?」

 

以前調査としてきた時はこのように迷路のように幾つもの曲がり角を曲がる様な構造をしていなかった気がするのだが……もしかしてなぁと嫌な予感がする九桜に

 

(構造が変化している可能性有)

 

「あらら、いっちゃん面倒な事を……これ浄化終わった後俺達で直すんだよな」

 

(おそらく)

 

「あーめんどくせ、直すんだったら壁ぶち抜いて行こうそうしよう」

 

うん、と一言つぶやき目の前の壁に人ひとり通れるほどの大きさの穴をあけていく。正味5分も壁を壊していくと広い部屋に出た。

 

昔調査に来たときと変わらない最奥……壁画が壁一面に描かれた部屋だった。その奥、中央に黒い人のようなモノが彼らの方を向き

 

「フハハ、来タナ魔術師ヨ、アノ2人ノ肉体ヲ乗ッ取ルノハ失敗シタガ、貴様ノ肉体ヲ」

 

おぞましい声だった。常人であれば魂まで汚染され、性格そのものが変化するであろう。だが彼らはそんなものお構いなしに口上の途中で

 

「うるせぇ黙って浄化されろ」

 

神界式第9位術式――といってもただただ(コトバ)に魔力を込め形にしたモノを投げつけるだけというとてもとてもレベルが低いものなのだが――去れ穢れ、ここに在るべきでは無しという呪が込められた光弾を手のひらの上に作り上げそれをオーバースローで投げつけた。光弾は一瞬で黒い人型に到達し爆発したかのような光を周囲にまき散らした

 

「ウヴォアー」

 

黒い人型の断末魔が響くなか、九桜はふと、疑問に思ったことを首を傾げ、顎に人差し指をあて呟いた

 

「この馬鹿なんで俺を乗っ取れるとか思ったのかね?……ま、どうでもいいが」

 

(修復)

 

「時計で戻すと戻らなくていい奴も戻るからちまちまやってくかね……その頃には向こうは白熱してるだろ」

 

まずは道からだな~という彼の言葉が部屋に反響した。

 


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