翌日朝
あの後九桜は
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彼がいつもに比べ比較的早い時間に目を覚ますと布団の近くにふわふわとした9本の尻尾と頭頂部より少し左右にずれた場所にキツネ耳を出した霊華が居た。
彼女は何やら鏡のような物を覗きこんでいたが、九桜が起きた事がなんとなく分かったのであろう。彼の方に顔を向け
「あ、九桜おはよー」
「はぁ、おはようございます?……えっと、なんで母さんが俺の部屋にいるんだ?」
不意の事に驚いた彼は呆けた様な声をだしたのだが、そんな彼の様子が面白かったのか霊華はクツクツと手で口を隠し笑っている。
「いや、別に笑うとこじゃないから。ホントになんで居るの?」
「ふっ……くすす……ごめんね。ちょっと笑えてきちゃって……なんでって言われても、ちょっと外が危ないからってだけだよ。遠見の鏡を持ってきたから見においで……って言っても無理かなそれじゃ」
彼女はチラリと彼の両腕に頭を乗っけている2人を見ると、よいしょと掛け声をつけ立ち上がり彼の近くに鏡を持ちやって来る。
「魔導具に対するリンクも虚から習ってたよね」
「まぁ一応は……」
一体何があったのかと思いつつ遠見の鏡とリンクする。脳内にホームの庭の映像が映りだされそこには尾を引く白と黒の光が見えた。その映像を見た瞬間彼はリンクを切り
「なんだ、爺様来てたのか」
「うん、お義父さん来ちゃったみたい。朝からドンパチやってたからここに逃げ込んできたんだけど……お庭酷い事になってるね」
霊華の言うとおり庭の状態はひどい物だった。大量の穴が開き中には地下格納庫外壁にまで達している穴もあるほどだ。あの外壁には最高にして最硬が誇る絶対防御壁が紋章として刻み込まれており損傷はないもののあの2人がほぼ全力に近い領域で戦っているのだからいつぶち抜かれるのか分かったものではない。
「こりゃいつ終わるか分からんね」
「大体1週間ぐらいあれば終わるんじゃないかな?いつもそれぐらいだし」
そういうもんなのかと納得して腕を占領している2人が起きるのを待つことにした
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「死ねやこのクソ親父ィィィィィィ!!」
「孫の顔見に来るのがそんなにも悪いかああああああああああああ!!!」
激突する黒と白。双方長い髪をたなびかせ激突を繰り返す。片方が魔術を放てば片方がそれを破壊する。その繰り返しをしているだけなのだがその魔術のレベルが最低でも準3位であり最高で正2位の魔術が飛び交っているのである。
普通ならば最高位の魔術師たちが3日から7日かけ作りあげる魔術群が準3位及び準2位、正2位という魔術群である。
正3位は少し違い、特定人物又は血族にのみ許可された限定使用許可が与えられた魔術群、それが正3位という区分。
そんな階位の魔術が雨霰のように多量に降り注いでいるのだが2人とも被弾すらしていない。防ぎ、破壊し、次を撃つ。その繰り返し。膨大な魔力を誇るこの2人だからこそ出来る戦法である。連続してばら撒かれ続ける魔術が地面を抉り続ける。まだまだこの親子喧嘩のようなじゃれ合いは続きそうである
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「3日経ったけどまだ続けてるなあの人ら」
透視の魔術で壁越しに祖父と母の親子喧嘩を覗き見ていた九桜がぼそりとそう漏らしたそんな彼の右手には専用魔法陣が浮かびあがっている。
中心に黒円、それに接触するように左右に楕円が伸び上下には両刃の剣の刀身部分が伸び、楕円と刀身の間の隙間四か所に円に囲まれた五芒星が配置されている。そして円か楕円の端と刀身の頂点に接するように紋様をかこっている物だ
円と五芒星の接している箇所の間の空白に様々な魔法陣が切り替わっていく。魔導書状態のオウルに左手を乗せその情報を直接脳内で読み込んでいる。そんなかれの後ろでポリポリとスナック菓子を食べているエインがそんな彼の呟きに
「まだ三日しか経ってないしね~。あと四日ぐらいはやってるんじゃないの?」
「防音抜いてくるレベルの爆音鳴らされ続けりゃ言いたくもなるわ……っとオウル、二秒ぐらい前の検索結果の一覧出してくれ」
(りょーかい)
彼の眼前に数百の組み合わせが乗っている表が浮かび上がる。彼はその一覧を眺めているとある1点で目を止め指さす
「オウル、この組み合わせに戻してくれ。多分すこし魔導路弄ってやれば反応すると思う」
(ん)
短い了解の返答と共に魔法陣が組み変わる。彼はそれに手を伸ばし何やら指を動かし魔力を注ぐ。反応が無いとまた指を動かしていく。そんな作業を何度か繰り返していくと魔法陣がその円陣の内部を回転させ発動が確認できた。
「おっしゃ来た」
(完成)
「おーきれいなもんだねぇ」
発動した魔法陣は淡い緑色の光を放ち美しいものであった。そしていつの間にか
「なんでぇ花丸が陣の隣に出てるのかねぇ?」
「それぐらいの余裕はあるんじゃないの?」
未だに爆音鳴り響く中での出来事だった。
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