その無限なる時の旅路~無限の空~   作:黒水 晶

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ここ最近忙しくてまともにかけませんでした。これからは少しずつ改訂と続きを上げて行こうと思います


第51話:その後のお話~九桜編~

同時刻――ホーム内の彼の部屋、そこの真ん中に布団が敷かれ3対の翼を出したままの彼がうつ伏せの状態で寝かされていた。虚にぶち抜かれ風穴をあけられた彼の体にはもう傷は無く完治していた。だが彼が目覚めないのは神速域(光速の二百乗)へ到達し、訓練を続けていた72時間分の訓練プラス、神速域での模擬戦の精神的疲れからである。

 

虚が彼を運んできた際に設置型術式に癒しの効果をつけてこの部屋に発動させて行った為、回復は早いであろう。

 

そんな彼の部屋に入ってくる白い長身の人影があった。

 

「このクソ親……ってまだ起きて無かったかー」

 

エインである。彼女は飛行魔術を発動させふわりと浮きあがり彼の傍に行く。6日前の一件で文句を言うためにそろそろ起きているだろうと思いここに来たのだが、彼はもう少しの間目を覚ましそうにない。

 

「はぁ、まったくいつまで寝てるのかなぁ父さんは?」

 

ボソリと呟き、床ぎりぎりまで高度を下げ彼の翼や髪を触り始める。そのまま彼女が手持無沙汰に暇をつぶしていると彼と融合状態にあった無限光の魔導書(グリモワール・オブ・アイン・ソフ・オウル)が彼の体から抜け出した。それによって黒く染まっていた彼のコートと髪が白色に戻る。

 

オウルは魔導書形態のままゆっくりとエインの方に近づくと彼女の前に止まる。エインは半回転し仰向けになるとそのまま上半身を起こし改めてオウルの方を向く。浮き上がり、静止していたオウルが淡い光を放ち、その形を人に変えていく。その姿を完全に人の形になると光が収まり、見慣れたオウルの姿が現れる。だが彼女はそのままエインの方に体を傾け

 

(疲れた)

 

と、いつも以上に小さな声でぼそりと呟いた。エインはそんなオウルの頭を撫ぜ、抱きしめる。

 

「お疲れ様。早く父さんも起きるといいね」

 

そんなエインの言葉にオウルは首を動かすだけで答える。

 

そんな彼女の頭をやさしく撫ぜる。手触りが非常にいい。これはずっと触り続けたくもなるわ、とオウルと共にいる時は大体頭を撫ぜている父親を思いながら手を動かす。

 

数分経っただろうか。小さなうめき声とが彼の方から聞こえ、彼が身を起こし胡坐をかいた。そんな彼にいち早くエインが

 

「おはよう父さん、6日前はよくもあんな事を」

 

などと恨み節言うがそれを無視しエインの方を向き、彼女に身を預けていたオウルに手を伸ばし、彼女の脇の下に手を入れ引き寄せ組んだ足の上に乗せる。そしてエインの方を向き一言

 

「あーその件はすまんと思っている。弁明終了」

 

簡潔に謝罪をすませオウルの頭を撫ぜ始めた。そんな彼に一瞬ポカンとしていたエインだったが、次の瞬間には

 

「それだけで済ますか馬鹿―!!!」

 

と叫び声をあげたが彼は自分とオウルの耳に防音術式を発動させ何食わぬ顔でエインの方を向き

 

「まぁそんなに怒るな怒るな」

 

「人の体ボロボロにしといてそれで済まそうとしたら怒るに決まってるじゃない!!」

 

うがーとでも吠え出しそうな彼女を見て、彼はやれやれと肩を竦め倉庫に手を突っ込み一つの包みを取り出す

 

「ホントはもうチョイ後に渡そうと思ってたんだがな……」

 

その包みをエインにさしだしす、エインは憮然とした表情でそれを受け取り包みを開ける

 

「なにこれ?髪留め?」

 

その中には美しく、複雑な細工が施された銀色の髪留めが入っていた。手に取り、様々な角度からそれを眺める。そんな彼女に彼は

 

「あっちに居た時に言ってただろ、髪留めが欲しいって。そっからコツコツ細工して術式刻んで作ってたんだよ」

 

「あー……確かに言った覚えはあるけど、よく覚えてたね」

 

たしかに髪留めが欲しいとは言った記憶はあるのだが、それは1度しか言った覚えは無く会話の中で何気なく言った一言に過ぎない。自身でも少し忘れかけていたほどだ。それを覚えていてくれたことは素直に嬉しく思う。そんな彼女に九桜は微笑みかけ

 

「よくぶっ壊したりなんなりで苦労掛けてるからそのお返しってことでな。ホントはお前の誕生日にでも渡そうかと思ってたんだがな。そっちはまた別のもんにするさ。今から作り始めれば間に合うだろ」

 

空いていた片手をエインの方に伸ばし彼女の髪をすくように頭を撫ぜる。彼は続けて言葉を紡ぎ

 

「ま、これで許せ」

 

彼女の頭をぽんぽんと数度叩き手を引いた。エインは一つため息をつき、彼の右側に移動し肩に頭を預け

 

「大分高価な物貰っちゃったからね。今回はこれで許してあげるわよ」

 

そう言い、彼に笑顔を見せるのであった。

 


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