休み時間に入り九桜は鞄の中を漁っていた。ごそごそと中身を動かしていると目的の物を見つけ取り出す。取り出した物は4~5冊のノートだった。右手にそれを持ち織斑に近づいていき
「いやはや、まったくまさか捨てているとは道理でこの段階の事すら分からない訳です」
呆れかえった様な声を出し後ろから声を掛けた。だがしかし、後ろから突然声を掛けられたら誰だって驚くだろう。当然の如く織斑は
「うわっ」
テンプレチックな驚き声を上げ驚いた。しかも彼は常に気配を希薄にする魔法を用い大変薄い気配で近づいたため余計驚く。
だが彼にとってはその反応が楽しくてつい使っているのだが、そのせいで初対面の人間によく驚かれる。無論その反応の後の返し方も分かっており
「ああ、驚かせてすみません気配が薄いとよく言われるんです。」
と謝った。
「あ、ああ。で、確かアンタは」
『引かれてる』
ああ、そうだろうなと言ってきた彼女に言葉を返しつつ
「大十字九桜といいます。大十字と呼んでください。真に信用するに値する人にしか名は呼ばせるなと言うのが私の家の規則なので。織斑一夏君よろしくお願いしますよ、同じ男性操縦者として」
言い切り、左手を差し出した。織斑も少し迷いはしたものその左手を掴み
「おう、よろしくたのむ。俺のことは一夏って呼んでくれ」
と織斑は返事を返した。彼は微笑を浮かべ、持ってきたノートを織斑に差し出しつつ
「ええ、分かりました一夏君。そしてこれを貸して差し上げましょう。」
「これは?」
「わたしがまとめた参考書のまとめですよ。さすがに1週間で覚えるというのはキツイと思いましてね。参考書が届くまでにそれを読んでいれば覚えやすいと思いますよ」
織斑はノートを捲る手を止め彼に顔を向け
「おお、助かる。いやほんとにありがとう。でもいいのか?」
「ええ、私はその内容を暗記していますし、誰かの役に立った方が良いでしょう」
微笑を深くし、そう言った。道具は役に立たない人に持たれているより役に立つ人に持たれていた方が良いと彼は思っている。だからこそもう使わない自分より一夏に使われた方がいいと思ったから貸そうと思った。たったそれだけのことである。そして彼は
「まぁ私が声をかけたことで声を掛けるタイミングを失った人も居るようなのでそろそろおいとましましょうか」
「は?」
織斑は気づいていなかった様だが、声を掛けようとして立ち上がっていた金髪の少女がいたのだ。その場をそそくさと立ち退き教室の出入り口付近に男子を見に来ていた女子達をかき分けまた学園散策に出て行った。織斑にきつい言葉を浴びせている少女の声を聴きながら
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休み時間が終わり2時間目が始まった。この時間は実践で使う兵装の特性についての解説がされるようなのだが織斑先生がここでふと思い出したように
「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな。」
続け
「クラス代表者とはそのままの意味だな。対抗戦だけでなく生徒会の開く会議や委員会への出席義務もある。自薦他薦問わず、決まったら1年間変更はしないからそのつもりで」
その言葉を聞きざわざわと教室がざわめきだす。ほかのクラスならば入学試験内で行われた実技試験の結果なりIS適正なりで決めるだろうがこのクラスはそうとはいかない。世界に2人しかいない男性操縦者がそろっているのだ。つまり
『ほぼ確実的に九桜か一夏君に推薦がくる』
そんな結果に落ち着くだろう。実際に
「はい、私は織斑君を推薦します」
「わたしは大十字くんを」
と元気のいい女子の声がわき始めた。ああ、別にいいことだろう。他のクラスより目立ちたいという事を悪いとは言わない。だが、IS操縦経験が皆無にも近い織斑を推薦するのはどうかと思う。思うだけだが
『俺は別に試合がつまらなくなることを了承してもらえばやってもいいが、さてさて今は無反応だが一夏はどんな反応をするかね』
『おそらく騒ぎ出す』
ぼやきもきっちり拾う優秀なAIだと思いつつ彼は一夏の反応を見物することに決めた。さきほどから気づいていないのかどうか分からないがこれといった反応をしていない。
「では、候補者は織斑一夏、大十字九桜の二人か。他にはいないか自薦他薦問わんぞ」
ここまでいってようやく自分が推薦させている事に気付いたのだろういきなり立ち上がり
「お、俺!!」
良いリアクションを返してくれた。
「織斑席に着け、邪魔だ。さて他に居ないか、居なければ決選投票できめてしまうぞ」
「ちょ、ちょっと待った。俺はそんなのやらな……」
「他薦されたものに拒否権などない。覚悟を決めろ」
一夏の拒否権を使おうとしたが織斑先生にばっさりと切り捨てられた。彼は選ばれるのは休み時間毎にクラスから出ていく自分ではなく一夏だろうなーとだいぶ呑気に考えていた。だがこの結果によく思わなかった人物も居るらしい
「納得いきませんわ!」
叫びのような声をあげ机を叩き立ち上がったのは、先程の休み時間に一夏に話しかけた金髪の少女だった。実力から言えば自分がクラス代表になるのが必然と言うだけでなく、結構な罵詈雑言をまき散らしている。だがこのコンビは
『さぁさぁ織斑選手言われっぱなしだ、ここからどう言い返すか気になりますねぇ。オウルさん』
『おそらく相手の国の批判をすると思われる』
などとやる気のない声(イメージ)で疑似実況をして楽しんでいた。我慢の限界に来たのかついに一夏が
「イギリスにだって大したお国自慢ないだろ。世界一まずい料理何年1位だよ」
と言い返したが
『おいおい、あれだけ言われてこの返しか……まぁ国を批判するってのは良い事だがな』
『ちょっと弱いね』
『んじゃま、挑発の手本ってのを見せてやりますかね』
この間約0.2秒そして
「駄目ですね一夏君、その程度では。こちらがボロクソ言われたのに、なんですかその返しはこういう手合いにはこう言えばいいのですよ」
クラスの視線が集まる中彼はおもむろに口を開き
「あなたの脳は頭揺らせばカラカラなるのですかいえその無駄にでかい脂肪の塊に栄養が行ってるのですね可哀そうに人を簡単に嘲ることができるなんてそうとしか思えませんなので黙っていたください
と、大変ドスの効いた冷たい声で良い放ち
「これぐらい言わないでどうするのです?まったく、だから男は軟弱だと思われるのですよ」
追加で織斑も挑発しておき席に着いた。周りはえ、なにそんなキャラだったのという視線を向けらているが彼は気にする様子は無く
『ちょっと言い過ぎたかもしれん』
『ちょっとじゃない』
金髪の少女の方を見ると肩を震わせている。これは言い過ぎたかもしれんな、などど思っていると少女は
「け、決闘ですわ!!!」
そこからは転がりだした石のように決闘の約束が決まっていき……
「では話は纏まったな。代表者決定戦は一週間後の月曜、放課後、第3アリーナで行う。出場者は準備を始めておくように。それと大十字お前は言い過ぎだもう少し自重しろ。では授業を始める」
決戦は1週間後、そのイベントをどのように遊ぼうか彼は思案していくのであった。
あ~れれ~?なんか九桜君の性格がかなり悪くなってるぞー(棒)