ここで一つ、彼ら――神界産まれの神の総魔力量の上昇方について語ろうと思う。
1つ目――自身を再度作り直す方法。一度に多量の魔力上昇を行なえるがこれはあまりにも条件がキツく行われることはまず無い
2つ目――瞑想によって上昇させる方法。上昇量は微々たるものだが、ここ最近は並列思考による方法が確立されたため上昇量も馬鹿に出来なくなりつつある
3つ目――大量に魔力がある者が金策用に作っている魔力結晶を極稀に王城で行われる儀式によって取り込む方法。これも行われることが数京年にあるか無いかの儀式なので論外だろう
主な物はこの3つだろう。
だがもう1つ
超高等魔術に分類され、もはや知識としてのみ残り
その系統の魔術を
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開幕を告げまず初めに虚が行ったことは自身の周辺に9つの同じ形の魔法陣の展開であった。中心に黒い円形があり、その上下左右の4方向に両刃の剣が少し間を開けて配置されているその魔法陣を見た彼は少し涙声になりながら
(王族専用魔法陣の起動なんて模擬戦でするなよ⁉)
多種多量の魔法陣を起動させその魔法陣から魔術を連射させながらのことである。そんな彼の魔術を小さな結界(先程展開した魔法陣と同じ型の物だ)を連続展開し適格に防いでいく虚は、口角を僅かに上げ小さく唇を動かした
bh64-4
それは音を伴っていたが、人の耳では正確に聞き取ることは出来ない音の連なりであり、
(神言詠唱から正3位術式発動させるなッー!!!)
そう念話を送った次の瞬間だった
虚が展開させ、周囲に浮かんでいた9つの魔法陣が変形した
円の周囲にあった剣が前に90度倒れ込み砲身を作りその後ろに円が張り付く
そうして出来た9つの砲から黒い柱のような長い砲弾の砲撃が行われた。断続的に生まれるその柱を躱しつつ虚に魔術を放ち、時に切りかかる彼に虚は結界を展開し彼の攻撃をいなしつつ
(ほらほら、お得意の技でもやってみたらどうよ)
(無茶言うなよっ、あれは低速域だからこそ出来る技であってこの速度じゃ成功率なんぞ雀の涙ほどだわ畜生)
(模擬戦なんだから練習してみればっと)
大きく彼から距離をとり砲撃を先程よりも速いペースで連射する
砲撃の隙間隙間を縫って砲撃を躱す彼だが先程の様に虚に近づけず砲撃を避けることになる。だがいずれそれも限界を迎えるだろう
(練習してみる?)
彼の魔力操作に専念していたオウルがそう彼に聞いた。だが彼は苦虫を噛み潰したような顔をし
(練習したいってのは確かにそうなんだが……高速域での戦闘は安定しないってのと、流石母様魔術構成に穴が無いぜってことかねぇ。まったく入り込ませる余地が
苦々しい声でそう彼女に返した
(こっちは安定した……やるなら出来るよ)
九桜の現在消費魔力が一定になり彼女が制御せずとも大丈夫になったと言うことだ。だからこそ練習するかと彼女は聞いているのだ。そんな彼女にやはり苦い声で
(今の俺たちの速度域での
(だからこそ)
(そうかい……なら、やってみるかねぇ)
(サポートは任せて)
(おう、よろしく頼むわ)
(是)
彼の見えるモノが瞬く間に変化した。視界内全ての魔力持つモノの魔力流動が見えるようになり魔術の場合は構成が緩い部分が見えるがそれは動き回りその位置を変えていく
(さっきよか分かりやすくなったけどやっぱ移り変わり速いな……だけどっ!)
砲撃の雨を掻い潜りながら魔術式を立ち上げていく
(準備完了、撃って九桜)
彼女が告げたのはその準備が終わった事を告げるモノだった。その言葉に彼は
(応!!)
短く、だがしっかりとした声で彼女に答え、準備していたモノを放つ
その術式はこの速度域でも高速で彼が予測した構成が緩い場所に着弾しその効果を表す
その光景を見た彼は笑い声を含ませた声で
(ああ、ああそうだよな)
(九桜?)
(ああそうだ。今までの高速域戦闘でも母様達はこの設定での魔術を使っていたんだから成功なんてほぼしなかったんだよな。ようやくこっちの速度が追いついたんだからそりゃ当たるわな)
砲撃された弾頭の1つが綻び、その弾頭を構成していた魔力が彼に吸い込まれる。
紛れもなくドレインの魔術が発動した証拠であった
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ドレインは確かに強力な術式であることには変わり無い
だがその術式には欠点があった
直接相手に当てても効果は無く、相手が発動させた魔術及び発動させる前の魔法陣の構成が最も緩い場所に当てなければならないと言ったものだ
この術式が作られてから永い年月が立つが改良しようとすると何故か術式が発動されなくなるのだ
それにプラスして構成が緩い場所が固定されているのならばまだ使い道があったのだがその場所は常に変動し続けている
このことからドレインの術式を使うものは誰一人居なくなった
だが、とある環境が大十字九桜という使い手を生み出した
周囲には最高と最強がおり、最高の魔導書が与えられた
常に生死が伴うような模擬戦を行い続け、魔術が飛び交っていた
避ける場所を作ろうと魔術を壊し、作れない場合は結界を張った
魔術を壊すときにふと違和感を感じることがあった
それは模擬戦を続けていく中で積み重なり、その違和感の再現をしていると魔術を壊すときに威力が必要なくなっていた
それが異常だと言われるまで彼は気づかなかった
彼にとってそれが普通になっていたのだった
そこで虚がドレインを教えてみると面白い具合に彼は成功させていった
異常なまでの強者との戦いと異常な程の魔術破壊量、最高峰の魔導書とそれを扱う才
この様な特定の極めてありえない要因が合わさり成功率はそこそこのドレイン使いが生まれたのだった
おそらく、これからさらに修練を積み重ねれば彼は魔術師にとって最悪の敵になる事だろう
ドレイン……良い響きですねぇ