~3日後~
「こっちの術式だと枠追加が起動しなくて、あっちの術式足すと枠追加は起動するけどリミッターの擬態が作動しなくなってで、あー頭の中グチャグチャしてきた」
リミッターと擬態は下級呪文なのだがそれに最上位呪文の枠の追加を足すとなると話は変わり、組み合わせの難易度が途端に跳ね上がる。彼はエインの魔力道を強化した後から食事もとらずに部屋に籠り術式を組み合わせていた。そんな彼にオウルは
(休む?)
一度休憩することを提案した。彼は少し考え
「あー、そうだな……流石に一度頭冷やすかね。今までと違う見方も出来るようになるかもしれんし」
どっこらせと声をつけ立ち上がり、魔導書状態のオウルを持ち上げ、扉を開け縁側に座り込む。その隣に魔導書状態から人型に変わったオウルがちょこんと座る。それから少し時間が経ち、彼がふと思い出したように
「こんな風にのんびりとホームで過ごすのは始めてだな。前に来たときは限定空間内での戦闘行為のやり方の実践で来たんだっけ」
苦笑交じりにそう言った。そんな彼に彼女は
(是)
短いがしっかりとした返事を返した。そこから、前回ここに来た時の思い出を2人で話し始める。
「あの時は死にかけたなー教官役に風の旦那と爺様の2人がかりで来られて」
(最上位が雨のように)
「しかも最後にやってきたのが正1位だったし」
(消滅しかけた)
「あれで一月ぐらい寝込んだもんなー。風の旦那と爺様はその後母様と母さんと婆様にこっ酷く説教されてたっけ、肉体言語付きで」
(心配した)
「俺が起きた時、お前ボロボロ泣いてたよなぁ……」
(是)
少ししんみりとした空気になり、彼が彼女の頭を優しく撫で始め、彼女が気持ちよさそうに目を細める。時計の長針が半周程回った時であった
「お、九桜出てきてる」
背後からそんな声が掛った。いくら彼女の頭を撫でていたとはいえ、常時発動型の探知魔法にも引っ掛らずに背後にたてる存在は多数居るが、声から判断し
「母様、何か用か?」
虚にそう返すと
「ん?いや、そろそろ出てくるころかな~って思ってね。それで模擬戦の誘いに来たんだけど」
もっともキツイお話しを持ってきた。彼はげんなりとした声で
「あー、速度合わせてくれるんならやっても良いけど……また急に」
嬲られる過去の記憶が思い出される。攻撃が当たらない、魔法が掠らない、それ以前に発動を許されることも少ない。故に、頼むから速度だけは合わせてくれと言ったのだ
「いやいや速度は流石に合わせるよ。実際の所九桜の魔力量が上がったからねぇ、それの慣らしもかねてガンガン模擬戦やってこうと思ってたんだけど九桜籠っちゃったから声かけるタイミング逃してね~。だから今掛けに来た」
話しの途中からげんなりした顔が、何か気づいたようになり
「なるほどねぇ、確かに慣らしておかないといざって時に全力出せないか」
「うん、だから慣らしと最高速のチェックかな。今まで以上に魔力流せるから多分神速の1,2歩手前ぐらいか神速が出るかもね。オウルから見てどう?」
現在の彼の魔力総量と神速域に達するために必要な魔力量を計算し彼女が出した答えは
(制御可能ならば神速域に達することは可能)
可能だと彼女は判断した。それに満足したのか何度も虚は肯き
「うんうん、なら尚更模擬戦しなくちゃね」
それに、と前置きして
「私と戦ってると何か気づくことがあるかもよ~」
そんなことを言うのであった
導入回だし