その無限なる時の旅路~無限の空~   作:黒水 晶

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そうそう、この作品は原作6巻で終了するように組まれております。


第43回:目覚め

「髪の長さはもう伸びないところまで伸びたね~後は艶が良くなっていくだけだね」

 

彼の踝まで伸びた髪を手に取り虚はそう言った。

 

「うっげ、マジで踝まで伸びてやがる」

 

その言葉に彼は苦虫を噛み潰した様な顔をし、そう言った。そんな言葉を聞き虚は呆れた様に

 

「そこまで神外(こっち)に入ること嫌なの?魔力多いと楽だよ色々」

 

「あー、確かに魔力多いのは良い事なんだが……元が一般人の身としてはそっちに行くことを理性が拒否しているというか、なんというか」

 

元が何も特徴が無かった一般人なだけに、訳が分からない所で理性がストップをかけるのだろう。

 

「小心者め」

 

「返す言葉が御座いませんな」

 

茶化すような声でそう言った虚に彼はそう返した。その返しに苦笑したかのように

 

「まったく……で?オウルはどうなの」

 

「あともう少しで起きるだろうな。前回9割魔力持ってかれて起こした時に比べると凄い楽だわ」

 

鎖を解き無限光の魔導書を手のひらに落としながらそう答えた。そんな彼にまたも茶化すように

 

「そりゃあの時の20倍の魔力持ってるんだから楽になるよ」

 

今の彼の総魔力の5%程で今回からは済む様になっているのだ。楽にならない訳がない。だが彼はため息まじりに

 

「急に魔力量が上がってなんだか俺の魔力じゃないような気がしてならんのだがなぁ」

 

そんな彼の肩を叩きつつ

 

「ま、慣れなさいって……もう少しで起きるんじゃないの?」

 

「ああ、多分もう起きるだろ」

 

そう彼が言った時であった。

 

無限光の魔導書が彼の手から浮き上がり彼の眼前へと移動し白い光に包まれ次第に高度を落としていく。

 

彼の腹の辺りまで降下するとその形をぐにゃりと変え人の形をとった。その光が収まるとそこに立っていたのは、(0)の書の精霊であったオウルと全く同じな黒いゴスロリに身を包んだ眠たげな眼を擦る幼女であった。

 

そんな彼女を指さし

 

「ほれ、起きた」

 

「まだ眠そうだけどね~」

 

そんなやり取りを母とし、彼女を抱きかかえ

 

「おはよう、オウル」

 

(おはよう)

 

頭に直接彼女の言葉が響いた。その彼女の声を聴くと彼は虚の方を見て

 

「念話だと世界に影響が無いってのは便利なもんだよな。神外の領域に入ってる奴にとっては」

 

神界最上位の中でも上位に存在するモノは言葉を発するだけで世界の理を捻じ曲げる。しかしその中でも力の制御が不安定なモノや思っただけでも理を捻じ曲げるモノも存在するのもまた事実だ。

 

だが、念話ならば理を捻じ曲げる事無く意思を伝えることが可能なのだ。明らかに祖父か母が手を加えたのだろうと思い彼は()を見たのだ

 

「なんで私の方に向かって言うかな……改良したの私だけど」

 

「やっぱりか」

 

(便利)

 

「ま、改良した理由がオウルがしっかりと意思を伝えられるようにするためだから君達にも恩恵はあるわけだ」

 

著者が神界王の娘にして神界最高にして最硬の魔術師によって書かれた魔導書なのだ。最初期から人の形をとれたし、話す言葉全てが世界を歪め次第に話さなくなっていった彼女を見ていた虚がそんな彼女でも意思を伝えられるように念話の術式を改良したのだった。

 

「俺もいつか使い始めるかもしれんしな」

 

神外の領域に2,3歩入っていて壁を2つばかり超えれば無形の姓を名乗ることを許されると言う事は詰まる所言葉を発しただけで世界の理を捻じ曲げる事が出来るようになるという事だ。だからこその彼の発言である

 

(頑張って)

 

そんな彼を応援するようにコトバを伝える彼女に彼は微笑みかけたその時であった

 

「そうだ! 」

 

虚が何かを思いついたような言葉を発したのだった

 

「いきなりどうした母様」

 

(狂った?)

 

ちなみにこの状態のオウルはさらりと酷い事を言う事がある。

 

「ちょ、オウルひ~ど~い~。ただ単に九桜にリミッターを外した状態でも地上界に居れるようにするための小技を教えようとしただけなのにー」

 

「そんな便利な小技あったんかい⁉」

 

(初耳)

 

「九桜は知らないとしても無限光の魔導書(オウル)の中にはしっかりと書いてある魔術の組み合わせだよ?」

 

その言葉に反応した彼女は虚に質問した

 

(どれ?)

 

「第91章の5ページ目上から3行目右から5つ目と第6章の8ページ目の下から2行目中央、それから第81章の2ページ目上から6行目右から8つ目の組み合わせ」

 

(リミッターと擬態、枠の創造?)

 

枠の創造――世界は多数の枠と多数の境界によって構成されている。その枠を新たに作り、自分自身の新しい枠を追加させる術式である。

 

「そうそれ! 自分自身にリミッターを掛けたとセカイに誤認させるように擬態させた状態だけだと世界がバリンと逝っちゃうから自分だけの枠を作っておいて世界に負担を掛けない様にするの。それからね自分だけの枠を持ってれば世界を調律して枠の変更をしてくるような相手には効果覿面でね、自分1人だけの枠だから変更もできないし、既存の枠の中に入れられる心配もないの。だってこっちはただ1人だけの枠の世界と同じになるからね」

 

途中から話が変わったがそれに対しては彼は修行中に何度か模擬戦をし、ことごとく打ちのめされた翠色の衣を常に纏った女性を思い浮かべ

 

「その世界調律する相手って翡翠祖叔母様だろ」

 

「うん、何度も模擬戦で苦渋を飲まされたから新しく作ってやったんだ」

 

神王である彼の祖父の妹である世界の調律を司る神である神のことで間違いなかったらしい。

 

(負けず嫌い?)

 

「いや~もうかなり昔のことだしね。あの頃はまだちょっと熱血入ってたかも」

 

10の何十乗単位の昔の話である

 

「はぁ、それで世界改変クラスの術作ったのかよ」

 

「便利だよ~常時発動させて少し組み替えれば自分の快適な状態を常に展開できるわけだから。でもって九桜の夏の宿題はさっき言った魔術の組み合わせて1つの術を作ることにします。あ、何個でも別の術式使ってもいいからね~。それじゃ地下を見に行ってみよう」

 

そう言い虚は歩き出したが、彼はいきなりのことで困惑しているのであった

 




「」が通常会話
『』がIS間
()が念話と区別して今後は使っていきます

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