その後、SHRはつつがなく終了した。担任がかの有名な織斑千冬であったとか、そのことを知った女子達のテンションが最高潮となり大変五月蝿かったなどと言うこともあったが終了した。そして今彼大十字九桜は何をしているのかと言うと……
『学園って言ったもんだから広いと思っていたがまさか此処までとは』
と呑気に学園散策をしていた。なぜその様な事をしているのかだが、彼の今までの経験上自己紹介の後には女子の質問攻めにあう事が多い。なぜならば、彼の長髪のせいである。別段手入れや特別高い洗髪剤を使っていないにもかかわらずサラサラなのである。だが女子達は何か秘密があるのではないか、特別な手入れをしているのではないのかと聞いてくるのである。なので休み時間に入ったと同時に、自身の身体能力と身体強化術式をフル活用して人垣ができる前にクラスを飛び出したのである。
『前方、二つ目の曲がり角に熱源反応1』
と彼女も協力しているので今まで人と遭遇しなかった(もう一人の方に集中していたとも言える)こともありだいたいの主要施設を見てまわれた。
『そろそろ戻るか、授業に遅れるのはさすがにまずい』
強化魔術と彼の身体能力を駆使すればこの程度の広さは楽に見て回れる。
『是、そろそろ戻った方がいい』
AIにもそのことは異常とも思われずに居られるのも向こうでの教育期間が取れたからであろう。そう考え教室の方面に足を向ける。
その後、もう一時間目が始まる時間近くなっていても出来ていた人垣(廊下で織斑と黒髪をポニーテールにした少女が会話しておりその周りに出来ていた)を割って教室に入った彼は何事も無かったかのように一時間目の準備を終えた。
その後、チャイムがなってから織斑とその少女が教室に戻ってきたが、織斑は席についていなかったので本日4度目(3度目はSHR中に織斑先生のことを家で呼ぶように読んでしまいたてられた)の鈍い音が鳴った。
1時間目が始まりISの運用規則についての授業が始まった。まだまだ基礎的なことではあるが、彼は入学するまでに教科書の内容をほぼ暗記しており教科書も開かずに黒板に山田先生が書いた内容を少しアレンジするなどしてノートに写していた。
『なぁオウル、俺の勘違いで無ければ1人目君は授業の内容がこれっぽっちも分かっていないように見えるのだが…』
『同意、教科書を捲ってはいるようだけど全く意味が分かっていない様に見える』
とAIと会話しつつと付くが…
『おまけに隣の女子のノート見てるしな、後ろからだと良く分かるわ。あ、隣の女子気づいた。』
彼曰く、授業?ノートしっかりと書いておけば何やったか思い出せる。との事なのでAIと話していても何ら問題ないが、ここで織斑が隣の少女のノートを見ていることに気付いたのであろう山田先生がわざわざ
「織斑君、何かわからないところはありますか?」
と織斑に言い、それに対し織斑は一度教科書に目を落とし自信に満ちた声で
「先生!」
と言いそこに山田先生がやる気の満ちた返事で
「はい、織斑くん!」
と言った。間髪入れずに織斑が
「全部分かりません!」
と、特大の爆弾を落とした。彼は彼女に
『いや、さすがにこれは無いわ。入学前に必読って書いてあった厚みで人を殺せそうな参考書配られたし、あの太さとはいえかなり噛み砕いて書いてあったからすらすらと読めて頭に入るはずなのだが…』
そう、IS学園の入学前には広辞苑にも負けを劣らないデカさの参考書が配られる(無論彼はそちらも暗記済み)それに一通り目を通すだけでもついていける授業をしているのだ。そのレベルの事が全然分からない事に困惑を隠せない山田先生は
「え、えっとそれじゃ、大十字くんは今の段階で分からないことはありますか?」
と困り声で訪ねてきたので彼は
「ええ、入学前に参考書及び一通りの教科書類は暗記してきました。大丈夫ですよ」
と返した。それに安堵したのか山田先生は
「それでは、他の人はどうですか?」
クラス全体に対し問いを投げかけたがやはり0人分かっていなかったのは織斑だけだったらしい。
なんでも織斑は参考書を古い電話帳と間違えて捨てたらしいのだ。この事を聞いた織斑は織斑先生から5度目の音をたてられた。
そこからは実姉である織斑先生のありがたいお説教を聞き1時間目は終了となった。
ボーキも足りない