第38話:帰省
夏休み 無形家前
ごく普通の一軒家の入口の前に彼とエインは居た
「にしても、なんでこんなゴツイ鍵作ったんだろね?」
「防犯のために作ったそうだぞ。この鍵の魔力波長まで合わせないと鍵が開かない仕組みを作ったのは良いが魔力波長を複雑化させるにはこういうゴテゴテした形にしないといけなかったそうだ」
2人は家の前で、取り出した鍵についての話をしていた。
その鍵というのがとにかくゴツイ。ゴテゴテ装飾が多数付いており尚且つ、美しい彫刻が彫り込まれている白い鍵だ。
これにはしっかりと意味があり、彫刻にしろ装飾にしろ魔力波長を複雑化させ、鍵自体も複製されにくくするためのものだ
「まぁそのせいで馬鹿みたいに重いんだがな……」
そう言いながら鍵穴にその鍵を差し込み、鍵を回すと彼らの姿が光に包まれ次の瞬間には彼らの姿は消えていた
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狭間世界 無形本宅
光に包まれた彼らが転送されてきたこの場所は、彼の母親である無形の長が作り出したどこの界にも属さぬ世界にある無形の本宅。無形に属している者からはベーズと呼ばれる広大な面積に建つ日本屋敷だ。その屋敷の門の前に転送された彼は、鍵を倉庫の中に放り込み
「ここに来るのも久しぶりだな」
そんな彼を見つつエインは
「私はメンテナンスとかで時々来てるけどね」
門を押し開き、くぐり、広い庭園を進んでいくと、そこには長い銀髪を腰まであるポニーテールにし、さらにそこから九等分に分け纏めている背丈160cmくらいの狐色の和装の女性と、同じぐらいの背丈の鳶色の髪を長く伸ばし毛先の方(膝の裏辺りだ)で結んでいる蒼色の和装女性が2人を待っていたかのように立っていた。その2人は彼らを見ると
「お帰り九桜。なんか派手にやらかして魔力不足でヘロヘロになってたそうじゃねーか。エインもお帰り」
と、鳶色の髪をした女性がそう言うと、銀髪の女性がたしなめるように
「駄目だよ時雨。そんな言い方しちゃ……」
続けて
「お帰り九桜それからエイン。あの人は中で待ってるって」
「ただいま時雨姉さんに霊華
「ただいまー時雨さんに霊華さん。確かに2人とも母さんに何にも言わないね」
2人の女性――霊華と時雨は顔を見合わせた後
「「だってまだ起きてないじゃない/だろ」」
彼はその返答に頭を掻きつつ
「あー、確かに魔力量足りなくて九割九分方寝てるが何か言われたら発光して反応を返すぐらいはするぞ」
「そうだったのか。そんじゃ、お帰りオウル」
「お帰り、オウル」
霊華と時雨の声に反応し僅かに彼のISの待機状態の鎖に巻かれた彼女の本体無限光の魔導書が発光し返事を返す
彼女らはそんな反応に満足したのか歩き出す
彼とエインもその背中を追う様に付いていく。
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屋敷内 大座敷
彼とエインそれから時雨の前には、霊華を隣に座らせ、左腕に抱き着かせている白い和装の白髪の女性が座っていた。髪形はポニーテールだが、立てば恐らくは
「おっかえりー九桜、オウル、エイン」
砕けた口調だった。だが彼とエインは少し硬い声で
「ああ、ただいま母様」
「ただいま、御婆様」
そう返した。何故ならば、彼女こそが九桜の言う母様であり無形の長――無形
さて何でもできるぞ。楽しくなってきた