その無限なる時の旅路~無限の空~   作:黒水 晶

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説明回導入回


第32話:枯渇

17:10 結界内

 

「結界消したら間違いなく説明しろって言ってくるよな」

 

「そりゃそうでしょ」

 

「だよなー……説明する気はあるが流石に詰め寄られたらする気が失せるぞ?」

 

「ハッハッハ、がんばれー」

 

完全に他人事だと思ってやがるな、と彼は思いつつ説明するための段取りを決めるための思案を始め、終わらせた

 

「よし、一度記憶を改竄(かいざん)して夜に説明会をやろう。うん、それが良い」

 

笑顔で人の記憶を操る宣言をし、無限光の魔導書(グリモワール・オブ・アイン・ソフ・オウル)を捲る。

 

「オウルもこっちの状態にしたし、そこら辺の記憶は全員分の書き換えだからアカシック・レコードから上書きをする事にして、除外設定は今の光景を見た者全員」

 

魔導書に書かれている魔法陣が少し形を変え浮き上がる

 

「除外した全員は一時的な記憶の改変、改変の解除は22時頃にして、その前後に睡眠の魔術の発動。起きる時間は6時頃。先程と同じ除外設定で除外された者は大座敷に転送するように」

 

魔導書の別のページから光が漏れ、そのページから魔法陣が出てくる。彼は、宙に浮かぶ魔法陣を組み合わせていき

 

「あ、篠ノ之博士ってこの場合除外されるの?」

 

「入るぞ。まぁ、なんにせよ、あの博士には色々と聞きたいことがあるからな」

 

そっか~、とエインが呟くのを聞きながら、組み合わせた魔法陣に魔力を通していき、発動する直前に

 

「結界解除」

 

その場を覆っていた結界が砕けるように崩れ、消滅する。消滅した瞬間に

 

「発動」

 

歴史が書き換わった。教育実習生のアイン・S・オウルという人物は存在しなかった事になり、篠ノ之博士と彼の戦闘で発生した海岸への被害も消失し、織斑先生と彼らも本来の歴史の流れへとくみ込まれのであろう。この場から消えた。

 

「私たちは、久しぶりに会ったから2人で話したいって事で海岸に出てきてると」

 

「大体そんな感じだな」

 

彼はISの待機状態のイヤリングの鎖を本から外し、位相領域に作った倉庫に本状のパーツ投げ込み

 

「オウル、このぐらいまで小さくなれるか?」

 

愚問と言いたげに、一度魔導書全体を光らせサイズが縮小していき、待機状態の鎖が巻き付いていた本と同サイズになった。彼はそれを鎖で巻き付け

 

「ねーねー九桜、一つ質問していい?」

 

「どうした?」

 

「ISの待機状態ってそんな簡単に弄れない筈なんだけど……どうやったの」

 

「魔術で細工を」

 

時計の長針が半周する程の時間、無言が続き

 

「そろそろ戻ろっか」

 

「そうだな」

 

旅館の方に体を向け歩いていく。だが、彼のその足取りはおぼつかない所があった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

21:30

 

歴史の書き換えを行い、歴史の調整が発生し、彼の同室は山田先生となっていた。そろそろ移動して彼らが来たときにはもう居ようと思っているので部屋に戻ってきていた山田先生に睡眠の魔術を掛け、部屋を出る。のろのろとした動きで大座敷まで歩く。大座敷に入って人払いの結界を発動させた後に座敷の奥に座り、倉庫から美しい彫刻がされた長煙管を取り出し、魔力を多量に吸わせ成長させた葉――並の魔導師なら1口で魔力の過剰摂取で1年は昏睡するレベルの魔力を含んでいるものだ――を魔術で刻み、指で丸めて固め、火皿に押し詰め魔術で火種を火皿に落とし吸い始める。

 

(流石に魔力が足りなく無くなってきたか……全体の1割の解放魔力も無限光の魔導書の合成に大部分が消えた。5月には魔力ドバドバ使って虚無を発生させた。自己を保つにも魔力が必要。夏休みに実家に帰って魔力補給するまで余裕で持つかと思ったが事件多すぎだよ、まったく)

 

はは、と口から笑い声が漏れ、彼らが転送されるまでの時間を、魔力を膨大に含んだ煙を吸いつつ待っていた。

 




次から中二病濃度が高まるかも?

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