午前11:30 作戦開始時刻
彼は海岸に残り万が一の場合に備えるため主スラスターに内蔵された小型スラスターの展開作業を行っていた。1機につき13機を展開させる為作業が終わった4機の主スラスターはいたる所から小型スラスターが飛び出している。今現在作業している5機目の主スラスターも12機を終え13機目の展開中である。
(連中いくらなんでも付け過ぎだろ……しかも手動展開しか出来ないとか欠陥だろこれ。)
などと思いつつも13機目の展開作業を終わらせる。先程一夏と篠ノ之が飛び立つのを見ているので手早く終わらせないとまずいので、周りに誰も居ないことを確認しスラスターに微量の魔力を流し込む。魔力を操り小型スラスターを展開させるためだ。だが魔力を操作しようと思った瞬間、小型スラスターがひとりでに展開した。
(正式運用法がこれだったら泣くぞ、俺。今までの苦労はなんだったんだよ)
ため息を吐きつつ、ISに乗り込む。万が一が起こらないことを願いつつも、多分起こるだろうなと確信めいた感覚があった。事実
「大十字、オルコット、作戦は失敗だ。織斑と篠ノ之の回収を頼む」
「了解」
ほら来たやっぱり、彼は心の中でそう思いながら
(並列思考
並列思考…別の行動を行いながら魔術を扱う者にとっては必須スキルの1つである。だが常人はせいぜい訓練を積んだとて5~6列。天才と呼ばれる者も15列ほどが限界だ。今彼が解放した84列と言うのは異常なものだ。しかも、彼は解放と言ったのだ。つまり本来ある筈の思考を封印しているという事に他ならない。
スラスター内にエネルギーが溜まり一気に解放する。彼の全身に強烈なGが襲い掛かるが、彼は平然とそれを受け流していた。彼が
「ずいぶんとお早いですわね」
オルコットが到着していたようだ。彼女に一夏か篠ノ之のどちらかを渡そうとしたその時
「大十字、オルコット。そちらに
織斑先生の怒号のような通信が送られてきた。
「オルコットさんできるだけ足止めをしますのでその内に撤退を」
「なっ・・・無茶ですわ」
「そんなもの承知の上です。ですがあれの最高速度で来られたのならば速度が出せない2人ともどもやられます。さぁ早く」
そう言い2人を強引に渡す。福音が向かってきている方向に体を向けIS用に製作されたバルザイの偃月刀を展開させ移動を開始する。
相手も移動している為数十秒後に接敵、福音は直後多量のエネルギー弾をばら撒いてきた。彼は直劇弾のみを偃月刀で切り裂き間合いを詰めていく。だが福音も後退しつつ、エネルギー弾の弾幕を濃くしてくる。
(まずいな……こちとら最初の多段式瞬時加速でエネルギーごっそり持ってかれたってのに)
そう、彼が最初に行った多段式瞬時加速で彼のISの総エネルギーの8割が持っていかれた。ならばなぜ彼が囮役をしているかなのだが、単純な事だ。オルコットに任せても時間は稼げるが、自分が行った方がより多くの時間を稼ぐことが出来ると判断したまでのことだ。だがこの弾幕に彼のエネルギーもまた減り始めていた。
(エネルギー残り1割か・・・なんとかオルコットが戻るまで持たせないとな)
最悪、撃墜されても問題無いと彼は考えていた。なぜなら
(海の中ならば本来の1%程の効果だが
そう限定されたすぎた彼のISの単一仕様。その条件の1つ周囲の酸素濃度が大気中よりも低い事が水中ならばクリアできる。単一仕様さえ使えれば撃墜されたとしても生き残れはする。無理にダメージを与えに行き、接近戦闘で時間を稼ごうとせず、遠距離でも相手の弾を切り裂き防御しているのは長く時間を稼ぐためだ。
『大十字さん、こちらは岸に着きましたわ。あなたも早く!!』
オルコットから到着したとの連絡が入る。だが彼のISはもうエネルギーの9割5分をもううしなっていた。背中を向ければすぐに撃ち落されるだろう。なので
『あー救護部隊をお願いします。流石にこのエネルギーでは帰るのは不可能でしょうし』
彼はそう伝えると、生命維持装置(元が宇宙空間での活動を想定している為積んである)とシールドエネルギー以外の機能を全て切って海に向かい急降下をした。何発かが掠り残りエネルギーが1分になったが、着水できた。その時、相手に自分はエネルギーが切れたと誤認させる対機械用術式を掛けておくことも忘れない。海に飛び込んだ直後に単一仕様が限定領域化起動をする
単一仕様「蒼天陽光」発動
単一仕様蒼天陽光――発動には厳しい条件が必要だが、発動すると光さえあれば、無尽蔵のエネルギーを生み出す。その生み出されるエネルギー量は秒間200エネルギーを生み出し続ける。
少しだけ単一仕様でてきたよ