()内の文字は基本念話です
翌日
本日の予定は1日かけてISの各種装備試験運用とデータ取りである。本来ならば集会を行った後試験に入るのだが、彼と引率で着いて来ているオウルは搬入された自身のISを受け取りに来ていた。なんでもかなりの重量の防護ケースに入っているらしくIS試験用のビーチに運び込めなかったらしい。指定された場所には中にISの全高の2倍はありそうな巨大な防護ケースが置いてあった
「教師の1人ぐらい立たせとけよ」
「重いから運び出す事が無理と判断された結果」
さいで、と彼は彼女に返し、防護ケースに近づくと、暗証番号を入力するための空間投影型ディスプレイが映し出される。彼は慣れた手つきで暗証番号を入力すると、防護ケースの前面が折りたたまれるように開いていく。1月ぶりに見た彼の専用機はスラスター部分が大きく変わっていた。まず大きな変化としては接続アームで繋がっていたスラスターが
「スラスター内には小型スラスターを1機につき13機積んでいる。小型ながらも
「速度がより一層出せるって事だな」
「うん」
彼女の説明を聞き、受け答えをしたが少し素朴な疑問が生まれた
「なんでそんなこと知ってるんだ?お前」
「開発に少し関わってその時に」
少しの静寂が生まれ、何事も無かったように
「さて起動させて戻るか。許可はもう取ってあるし」
「そうだね。早く戻ろう」
彼はISに乗り込み、設定を手早く済ますと機体がふわりと浮きあがる。だが
「あれ?
そう積まれていた筈のAIが搭載されていなかったのだ。彼女はその疑問に対し
「外した」
短い一言で答えてくれた。双方言葉を出さずに見つめ合い、時計の秒針が半周程回る時間を置き
「ま、戻るか」
「うん」
何事も無かったかのように動き出した。彼女を抱え、来た通路を戻る。道中
「ッ!!!」
「くおー?」
本来ありえない物が入っていてそれの確認のために急停止。彼女が不安そうな声をかけてくるが、彼が“ソレ”を拡張領域から取り出すと彼女も驚愕した声を出す。なぜなら、表紙が擦り切れた黒い本が“2冊”あったからだ。1冊は寮の自室に置いてあった筈の物。もう1冊は実家の彼の部屋に防護魔術を大量にかけて保管してあった筈である。それが機体内にあるという事は…
「十中八九、母様が細工して突っ込んだとしか考えられないな」
「同意。この世界ではあの人ぐらいしか取り出せない筈」
二人そろってため息を吐き、彼は2冊の本を拡張領域内に戻し、再びビーチに戻る為の道を飛ぶ。何の目的であるにせよ、あの母親がやった事ならばなんらかの意図があるのだろうと思い彼は速度を少し速めた。
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ビーチ
彼がISを受け取りビーチに戻ってくると何やら騒がしかった。彼女を下ろし近くに居た女子から事情を聴くと、なんとあの篠ノ之博士が妹に専用機を造って持ってきたというのだ。驚きつつ、なにやら不穏な気配を篠ノ之博士が居る方から感じ、探査魔術を起動させると
(んー、なんか魂魄反応がダブってるような感じがする)
(感じ?)
(なんか微妙に違うものが混じってるようなそんな感じ。もっと高位の魂魄反応読取術式があれば精査できるんだけど…魔術書が必要になる上に触れてないと精査できない欠点があるしなぁ)
心の中でため息を吐き、教えてくれた女子に礼を言い、専用機持ちが集まっているであろう、篠ノ之博士が居る方に近づいていく。彼女は先を進み道を開けるように言っている。人垣を抜けると、やはり篠ノ之博士の近くに彼ら(女子5:男子1)と織斑先生、山田先生が居る。
「すみません。流石に時間が掛りました」
と織斑先生にあやまる。
「いや、時間が掛るだろうとあらかじめオウル先生に聞いていたからな」
「ぶい」
彼女がこちらにピースサインを出すのを横目で見つつ、織斑先生に一礼をし、彼らの方に近づく
「あれが篠ノ之さんの専用機ですか」
近くにいたオルコットに話しかける。オルコットが返事をしようとこちらを見た瞬間ガタガタと震えだした。
「どうかしましたか」
彼が心配そうな声でそう聴くと
「え…ええ、大丈夫ですわよ。ええ」
震えは止まらないようだがそう返した。そのオルコットの反応に彼らもこちらを見る。
「大十字の専用機って初めて見たけど、なんだか……」
「ああ、シンプルな機体だと思っていたが……」
デュノアとボーデヴィッヒは、なんだか曖昧な感じでそう言った。彼は苦笑しつつ
「なんだかゴツイと言いたいのでしょう。ほぼスラスターの所為ですよ。まったく」
うっ、と彼女らが声を詰まらせる。かなりの大きさのスラスターが6機もあるのだ。ごつく見られても仕方のない事なのだろう。織斑の方に目を向けると篠ノ之博士が白式のフラグメントマップを見ている所であり、何気なく望遠魔術を使って見てみると
(あれ?)
そのフラグメントマップ構造の一部が一時期よく見ていた物にそっくりであった
(機械式魔術の魔法陣?いや魔導言語を機械に読み込ませて陣にした物か。あれ、結構読み取り面倒なんだよな。えっと、あれがああで、こっちがこうだから意味は……這い寄る混沌!?)
(嘘……それじゃ本当に)
ああ、と空中に飛び上がる篠ノ之を見つつ彼女に対し彼は
(篠ノ之博士は接触していたようだな。混沌に)
嬉しくも無い事実をただただ言うほか無かったのであった。驚愕の事実が判明し、放心状態に近かった2人に山田先生の慌てた声が突き刺さる。彼女は織斑先生と共に山田先生と情報のやり取りをする。途中数人の生徒の視線に気づいたのか手話に切り替えた。結論が出たのか山田先生と彼女は走って他の先生の所に行き織斑先生は
「全員、注目!」
手をパンパンとならし生徒全員を振り向かせると
「現時刻よりIS学園は特殊任務行動へと移る。今日のテスト稼働は中止。各班、ISを片付けて旅館に戻れ。連絡があるまで各自室内待機すること。以上だ。」
不測の事態に周囲の女子達がざわめき出す。しかしそれを織斑先生の声が一喝した。
「とっとと戻れ!以後、許可なく部屋から出た者は我々で拘束する!いいな!!!」
全員が大きな声で返事をして慌てて動き始める。
「専用機持ちは全員集合しろ!織斑、オルコット、大十字、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰!――それから篠ノ之も来い」
「はい」
妙に気合の入った篠ノ之の声を聴き篠ノ之に対し不安感が生まれながらもISを待機形態に戻し、織斑先生の方に歩いていく。
戻ってきました。改造されて