臨海学校初日バス内
「海っ!見えたぁっ!」
トンネルを抜けたバスの中、クラスの女子が声を上げた。中ほどの座席の窓側に座っていた彼は、隣に座っている彼女…いつの間にか隣になっていた…に
「久しぶりに海に
「あまりいい思い出がない」
たしかに、と苦笑しつつ彼女に答え、海で起こったことを思い出す。ダゴンに強襲されたり、某タコ神様を封印しに行ったり、インスマスを殲滅したりと碌な事が無かった事に若干涙が出てくる。そんな彼に彼女は
「楽しもう?」
と声をかけ彼の左腕を抱きしめる。
「ええ、そうですね」
彼女の頭を撫ぜてそう返す。周りに座っている女子達が隣に座っている者とお互いに扇ぎあっているが気にも留めずにバスを降りるまでその行為を続けた。
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旅館花月荘
旅館前で女将さんにあいさつを済ませ、彼女につれられ教員室と書かれた紙が貼られた部屋の前に来ていた。
「ここ」
彼女がそう言い部屋の扉を開ける。部屋から海が見える2人部屋だった。彼は部屋に入り
「なかなか広いな」
口調を地に戻しそう言いつつ、荷物を置きその中から彼の部屋に貼ってあるお札と同じものを取り出し、部屋の四隅に張り付けていく。
「私は職員の集まりに行ってくる」
「ああ、こっちが終わったら海の方に行ってるからな~」
彼女が頷き、部屋を出ることを確認して旅館全体を覆うように結界を拡げ、悪意や呪いが一夏に向かった時にお札に溜まるように設定する。
「あ?」
設定した瞬間お札が真黒になり崩れ落ちた。
「おいおい、冗談だろ…数千人が瞬時に絶命する呪いだろうが多少黒くなる程度で済むレベルの札だぞ。マジで混沌レベルが居るのかよ……勘弁してくれ」
顔を手で蓋い、そう呟いた。応急処置として結界に浄化魔法を込めておく。ため息を吐き、荷物から水着を取り出し海へと向かう。
(見回りをしないといけないな。いい思い出を作れるかと思ったんだがね…まぁ昼間は海でも見て過ごしますか)
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海
ビーチパラソルの近くにレジャーシートを拡げ座り込む。いつも元気な女子達が海に来て5割増しで元気になっているようで、離れていても騒がしい。それをぼーっと見ていたがそばに来た女子に
「あれ、大十字君海入らないの?」
そう聞かれたので彼は髪を指さし
「これの手入れが大変面倒な事になるので入りたくとも入れないのですよ」
「あー…凄い長いもんね。切らないの?」
「面倒ですので切らなかった結果ですよ。行こう行こうと思うのですがいつも行かずじまいで」
ちょっと引き気味に笑い声をあげ、友人に呼ばれた女子は海の方に走って行った。その背中を眺めつつ、若いっていいなぁと思う
数分後
こちらを見ていた女子がざわざわとざわめき出す。否こちらを見ているというかむしろ後ろを見ているようで
「だーれだ」
目を隠され、感情の乏しい声でそんな声がかかった
「オウル、まったくあなたは」
即答した。むぅという声があがり目隠しが外される。彼女が彼の前に来るとざわめきが更に増えた。何故ならば
「スク水?」
「嘘でしょ…」
「でも凄い似合ってる」
彼女の着てきた水着がスクール水着(旧型)であったからだ。しかもご丁寧に名前がひらがなで書いてある。彼は彼女を抱き寄せ
「いつも通りよく似合ってますね」
彼女の頭に顎を乗せそう言った。通報されてもおかしくは無い光景である。彼女と少しの時間イチャつき周囲の温度を上げた後昼飯を食べに行く。無論その間に部屋で起きた出来事を報告していた。
その後特には何事も無く1日目が終了した。