世界にISというマルチフォーム・スーツが一人の科学者によって作り出され、世界のパワーバランスが激変した。
だがISには女性にしか動かせないという欠点があった
それゆえこの世界は女尊男卑が当たり前となった
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アメリカ、マサチューセッツ州の片田舎にある都市アーカム。その都市にあるミスカトニック学園世界中の奇人変人が集まり一種の混沌と化しているこの学園、その裏側。世界の裏側の法則である魔術を学ぶ陰秘学部。
そんなミスカトニック学園に存在する学科が集合している場所に通ずる扉を1組の男女が開き、その一定間隔で扉がある長い廊下を背の高いモブ顔の男性と背の低い少女が寄り添い、手をつなぎ歩き始めた。双方とも白髪でポニーテールだが長さが違っていた。男性は腰まで、少女は首の後ろまでの長さだった。
その二人はどこか眠たげであった。
「流石に2時間しか寝て無いのはキツイものがあるな」
「うん、見栄張らずに時間操作型の結界貼って寝ればよかったね」
「そうだよなぁ、はぁなんで魔力ケチったんだろうなぁ」
ため息まじりである男の声はの街の何処からでも聞こえてきそうなものであり後につづく少女の声はよく透き通ったものであった
「それもこれもあんな時間に魔導兵装送りつけてきた母様が悪い」
「高価な品物だったけどね」
「そうなんだよなぁ……はぁ、あんなもの送ってきたら性能チェックで時間かけること知ってるだろうから多分知っててやりやがったな」
「九桜、すごい楽しそうだったね」
その言葉に少女の方に顔を向けて九桜と呼ばれた男性は
「そりゃな、日常で持ってても別に何とも思われないもんだし、尚且つ効果が強力だからな」
「さっそく持ってきてるもんね。でね九桜、今1つ思った事があるんだけど……」
「どうした?」
「うん、それで一定範囲の時間をゆっくり進むようにすればこんなことにならなかったんじゃないのかな?」
2人そろって足を止め時計の秒針が1周する時間が空き、彼は額をぴしゃりと叩き
「その手があったか」
悔しげな声であった。彼らは再び歩き始め
「どうしてあの時思い浮かばなかったんだろうね」
「結構テンションハイになってたからなだな。うん」
それから少し歩き扉の上に『魔導機械科』と書かれたプレートが貼られている扉を開ける
ちなみに、ISの開発者は日本人であり整備マニュアルやらなんやらも日本語で書かれていたため今現在の世界共通言語は日本語である
普段ならばこの時間ならば空席が多いはずが珍しく彼の席以外は埋まっていた。驚きつつも彼は自分の席に移動し、椅子を引き腰を下ろす。その膝の上に少女が乗る
「にしても今日は珍しいな」
そんな彼の呟きを聞き取ったのだろう、音をたて席を勢いよく立ち上がった3人がいた。揃いの黒スーツに光が反射して目が確認できない丸メガネをかけた3人、兵器開発を得意としロマンを追い求め時々暴走するクラブ『K・A・T』のトップ、如月、アスピナ、トーラスの面々が早口で
「忘れているのか大十字」
「今日はISの男性操縦者適正チェックだぞ」
「そんな大イベントを我らが逃すとでも」
先日、日本でISの男性操縦者が現れたからどこの国でも男性の適性検査を行っている。そして日程も確か言われていたにも関わらず高価な魔導兵装が送られてきてハイテンションになっていた彼はすっかりとそのことを忘れていた
「あ、今日だったのか。すっかり忘れてたわ」
「気づいてるかと思ってた」
そんな2人のやり取りを聞き、クラス中がざわつき始めた。人並み外れた彼らの中で最も人から外れている彼が忘れてるなど思いもよらなかったからだ。そんな中教室の扉が再び開き、1人の長身の男性が入ってきた。枯木のように細く髪を伸ばしっぱなしにしている彼は迷いなく教卓の前に立ち
「みなさん……おはようございます」
おじぎをし挨拶した。彼がこのキチ○イと変態と人外の巣窟の担当教師である
「先生相変わらずお細いですね、早くISを出せ」
「先生相変わらず不健康そうで、早くISを出せ」
「先生相変わらず不気味ですね、早くISを出せ」
「「「「「「「うちの科が最初に検査をすると言うネタは上がってるのだ先生、さぁ早くISを出せ」」」」」」」
K・A・Tの3人を初めとし九桜と少女以外の声がISを早く出せと催促している。
「あいも変わらず教師を敬いませんね……どこから情報を入手したかは聞かないでおきますから早く済ましてしまいましょうか。では運びこみますので少し待っていてください」
フラフラした足取りで扉に近づき、手をかざす。
すると手と扉の間に魔法陣が現れ空間が歪み、ISが少しずつその歪みから出現する。技術者連中は興奮を抑えきれず、九桜や少女は何処か冷めた目でそれを見ていた。
ISが出現し終わると教師は教室を見渡し九桜の所を見て
「さて……それでは……はい、まずは大十字君お願いしますね」
「へーいっと」
テキトウに返事をし、少女を膝の上から退かしISに近づき、前に立つとゆっくりと手を伸ばしISに触れる。起動しないだろうと思っていたが意表を突かれた
「おや……反応しましたねぇ」
ISが反応した。クラスのざわめきが大きくなり、彼の目が大きく見開かれる
「おいおい、冗談だろ」
ぼそり、と彼が言葉を漏らす
「では、大十字君は後で校長室に行ってください。では、あとは左側の列から順番に来てください」
とぼとぼと席に戻り膝の上に座ってきた少女の頭の上に顎を乗せ物思いにふける
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「失礼しましたー」
扉を閉め、廊下を歩きだす。
「なんだって?」
「ああ、やっぱIS学園に行けってさ。確かにIS学園からは護衛要請はあったけど……まさか俺が行く羽目になるとはなぁ」
「行きたくない?」
「万が一を考えたらお前を連れてけないしなぁ」
九桜は空いている手で少女の頭をグリグリと撫でまわす。少女は目を細め気持ちよさそうにしている。
だが、この少女は人間では無い。高位の魔導書が生み出した自意識、それが形を持ち、具現化した物。簡単に言えば本の妖精である。そして魔導書は瘴気を持っている。それは高位の魔導書であるほど強く、純度が高い物になる。彼女程の物になると耐性がある者しかいないこの学科内なら九桜からの抑えと彼女自身が自制すれば無害であるが耐性が無い者が大半を占める場所に行くと万が一が起こればIS学園自体が崩壊する可能性もある。
「仕方ないよ。今回はこっちで留守番してるから、お仕事頑張ってきて」
「ああ、頑張って来るよ。でもなぁ……」
「どうしたの?」
「いや、今回は優等生を演じてくれって言われてな……口調をそれっぽくしろってさ」
「……ご愁傷様?」
「そう言ってくれるなよまったく。まぁISはアイツらに組ませるかね。多分用意してるだろ」
2分ほど歩き教室の扉を開け、彼は一言
「お前らIS作って」
と、その一言で教室に居た全員が立ち上がり
「「「「「「「「「「「「「「「やってやろうじゃないか!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」
それを聞き、彼は口を弧にして笑い顔を作った。
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それが2月のことであった。その後7日8晩でISが組みあがり、セカンドシフトまで終わらせ性能テスト中に第3世代専用機の数十倍の性能を叩き出し、
『皆様、当便はまもなく着陸態勢に入ります。席にお座りになってシートベルトを装着してください』
(そろそろ、か……久しぶりだな日本も)
鎖でまかれ本の装飾のイヤリングであるISの待機形態に触れながら久しぶりに来た日本に胸を躍らせる九桜であった。
大分設定が変わるから登場人物紹介も書き直さないとな