6月
時が過ぎるのは早いもので2ヵ月の時が流れた。彼――
普段ならば彼のIS――エイン・ソフの待機形態である黒い本が鎖で縛られたデザインのイヤリングが耳に付いているのだが、3日前に4(内訳:代表候補生2、天災の妹1、世界初の男性操縦者1)対1をしたときに、リベル・レギス・レプリカとの戦いの際行ったISに対する魔力流入がたたり背部スラスター全壊、関節部中破というスクラップ同然になってしまったので、ミスカトニック大学工学部に修理依頼を出したので今は付いていないのだ。しかも修理期間が1月ほどかかるので今月末のリーグ戦に量産機で出るはめになり、AIとの楽しいお喋りも出来ないので彼は多少落ち込んでいた。
だがコヤツ量産機で織斑先生倒しかけている事を忘れてはならない。
周りの女子はISスーツの話題を一夏や山田先生としているのだが、彼の陰鬱な雰囲気に声を掛けてこないので彼はISの日常生活で多様していたハイパーセンサーの変わりとなる術式を適当に組み上げていた。
(隠蔽術式入れて気づかれない様にして、一定距離の熱源及び魂魄を感知するようにすれば良いから、式の組み立て多段直列式か並列式のどっちかになるけど、作るとなるとどっちもどっちだし並列でいっか)
本当に適当に作っているのだがこれがしっかりと効果を発揮するので本人は気にしていない。
組み立てた式を動作確認のために発動させると、織斑先生の魂魄反応の後ろを2つの見慣れない魂魄が付いてきている事に気が付いた
(教育実習生だとするには魂魄がまだ若いし、後二人は転校生か?)
教室の近くまで来ているので、SHRまで待てば分かるだろうと思いSHRの開始を待つ
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朝のSHR
「ええとですね、今日は転校生を紹介します!しかも2名です。」
突然の事に教室がざわめき出す。
(やっぱりかー、でもなんでクラス分けなかったのかね。厄介な連中ここに集めとこうって事か?)
下を向いて考えていたら転校生が入ってくるようだった。顔を上げ転校生を見た彼は
(一方おなべさんか…百合の園でも作る気かねぇ?)
とざわめきが止まったクラスの中で、かなり的外れな事を考えていた。
「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れな事も多いかと思いますが、みなさんよろしくお願いします」
転校生の1人、どう考えても魂魄反応が女なのに男の格好をしたシャルル(仮)の自己紹介中、デュノアという姓に彼はまたしても顔を下げ思考の海へダイブする
(デュノアっていうと…確か3年前に遺跡掘り出したからってうちの大学の講師に調査依頼出してきたデュノア社の社長さん関係か?まぁ行ったの俺だが…確か不倫して不倫相手に子供生まれちゃったとか
初めての遺跡探索でテンション上がりまくってたので調査中に話させたことは大体覚えているが、男子だったとは一言も聞いていないので彼は首を傾げる。
(まぁデュノアって姓もよくあるだろうし、後で聞いてみるかね)
思考の海から上がり、顔も上げると殴られた状態で止まっている一夏と殴ったであろう銀髪の少女がこちらに歩いてくるといった状態であった。そんな状態を見てもSHRの終了が迫っているため、次の時間が実技教科で着替える必要がある為、空いているはずの第2アリーナ更衣室への最短ルートを一夏とデュノアと共に走り抜ける事を加味しつつ考えていた。
「あー……ゴホンゴホン!ではSHRを終える。各人はすぐに着替えて第2グラウンドへ集合。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。デュノアの面倒は織斑と大十字が見てやれ。解散!」
担任直々に言われるまでも無く解散がかかると同時に一夏と彼はデュノアの元に行く
「君達が…」
とデュノアが声を掛けてくるが
「自己紹介は後です。早く更衣室に行かなければ」
「ああ、早く行かないと女子が着替え始めるから」
織斑がデュノアの手を取った事を確認し
「先導するので着いて来て下さい」
彼らの前に出て走り始めた。
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第2アリーナ更衣室
感知術式も使い女子の包囲網に捕らわれる事無く更衣室まで駆け抜け
「時間も多少は余裕がありますね。着替えつつデュノア君に自己紹介でもしましょうか」
振り向きそう言うと
「ぜぇぜぇ…お前……早すぎるん…だよ」
「はぁはぁ…つ、疲れた……」
完全に息を切らせていた。デュノアに自己紹介をできるような状態でも無いため彼は
「体力無いですねぇ、先に着替えてますよ」
そう言い着替え始め、着替え終わった。
「速えぇよ!!!」
一夏からツッコミが来たが彼は何食わぬ顔で
「ふふ、これ位出来なくては」
と返す。その数分後2人がISスーツに着替え終わり更衣室を出た。幸いまだ時間があるので歩いて第2グラウンドまで行くことにした3人は
「それでは改めてデュノア君に自己紹介をしましょうか。構いませんね?」
「うん、いいよ」
「俺も、構わないぜ」
「では、言い出しっぺの私から…大十字九桜といいます。真に信用するに値する人にしか名は呼ばせるなと言うのが私の家の規則なので大十字と呼んでください」
「じゃ、次俺な。俺は織斑一夏、一夏って呼んでくれ」
「うん、よろしく2人共。僕のこともシャルルでいいよ」
自己紹介が終わり、彼は気になっていた事をデュノアに聞く
「ところで、シャルル君の姓はデュノアでしたよね?もしやデュノア社の?」
「うん、僕の家だよ。」
「ほう。あそこの社長さんには3年ほど前にお世話になりましてね……」
そう言った時一夏が
「ちょっと待て、お前タメだったよな。3年前って言ったら13だよなぁ!!?」
「テンション高いですね一夏君。13の時にはもうミスカトニックに入学していましたよ。」
時間に余裕を持って動きたいため、唖然とした表情の2人を置いて歩き出す。確証も得られたことなので今度デュノア社に連絡を取ろうと思った彼であった。
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第2グラウンド
授業の序盤は本来の歴史通りに動いたので割愛する。
「専用機持ちは、織斑、オルコット、大十字、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰だな。では10人グループになって実習を行う。各グループリーダーは専用機持ちがやること。いいな?では分かれろ」
織斑先生が言い終わると同時に、男子3人の周りに人垣ができた。まぁこうなるだろうと予測していた彼は群がってくる女子を手で制しつつ織斑先生に助けてくださいとアイコンタクトを送る。
「この馬鹿者どもが……。出席番号順に一人ずつ各グループに入れ!順番はさっき言った通り。次にもたつくようなら今日はIS背負ってグラウンド百週させるからな!」
額を押さえながら低い声で織斑先生が言うと、先程まで群がっていた女子達が蜘蛛の子を散らすように移動を始める。女子の移動が終わると
「ええと、いいですかーみなさん。これから訓練機を一班1体取りに来てください。数は『打鉄』が三機『リヴァイブ』が三機です。好きな方を班で決めてくださいね。あ、早い者勝ちですよー」
山田先生が指示を出した。彼は班員に
「どちらを使いたいですか?」
「「「「「「「「「「大十字君が使いやすいと思う方」」」」」」」」」」
つまりお任せという事なので専用機が造られるまで練習で使っていた『リヴァイブ』を持ってきた。
「それでは出席番号順にISの装着、起動及び歩行をしてみましょう。」
「「「「「「「「「「はーい」」」」」」」」」」
その後、彼の班は順調に装着、起動、歩行を行い授業終了まで二回りほど練習をし授業は終了となった。
ラウラが一言も喋って無いけど次は喋ると思うよ(願望)