その無限なる時の旅路~無限の空~   作:黒水 晶

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新11話:汚れるのは勘弁

翌日のSHR

 

「では、一年一組代表は織斑一夏くんに決定です。あ、一繋がりでいい感じですね」

 

副担任の山田先生のそのような報告から始まった。それを聞いたクラスの女子は喜んだと同時に、なぜ大十字くんがやらなかったのだろう。と疑問に思った。彼は2勝しているのにもかかわらず織斑くんがクラス代表になったのかと

 

その彼は今日教室に入ってきた時から何か考え事をしている様子であった。

 

クラスがざわついている中一夏が挙手し

 

「先生、質問です」

 

「はい、織斑くん」

 

「俺は昨日の試合2戦とも負けたんですが、なぜクラス代表になってるのでしょうか?」

 

「それは――」

 

山田先生が理由を言おうとしたその時

 

「私が辞退したからですわ!」

 

音を立て椅子からいきなりオルコットが立ち上がり腰に手を当てそう言い放った。彼女は続けて勝負に勝ったのは当然の事だの怒った事を反省しているだの言い加えて

 

「”一夏さん”にクラス代表を譲ることにいたしましたわ。IS操縦にはやはり実践が何よりの糧。クラス代表ともなれば戦いには事欠きませんもの」

 

一夏にとっては大変有難迷惑のだろう。だが1人辞退とはいえ彼は全勝だ。普通ならば彼がクラス代表になるはずだがその彼がなっていないという事はつまり………

 

「そちらの彼女と似たような理由で私も辞退させてもらいました。それに私より一夏くんの方が話題は欠かないでしょうし」

 

そういうことだ。その事に

 

「いやぁセシリア分かってるね!」

 

など

 

「大十字くんでも話題は欠かないと思うけど一夏君のほうが情報調べやすそうだし」

 

などと言った女子の声があった。その後オルコットと篠ノ之が、どちらが一夏を教えるかといった事でちょっとした揉め事があったが織斑先生が登場し収まった事をここに追記しておく

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

時は動き四月下旬

 

「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、大十字。試しに飛んでみせろ」

 

織斑先生指導の下、今日も今日とてISの基礎訓練を行っていた。

 

彼とオルコットは織斑先生の指示を聞きすぐさまISを展開した。だが一夏はまだ慣れていない様子で、織斑先生に急かされようやく展開した。三人がISを展開し終わると織斑先生が

 

「よし、飛べ」

 

と合図を出した。

 

彼は合図が出されたと同時に300mほど急上昇した。

 

『オウル、上空1kmを設定高度しとけ。あんま高く飛びすぎると戻るまでが面倒だ』

 

『是』

 

そういったやり取りを行いスラスターを全開にし、天空高くに舞い上がった。だがそれすらももはや見慣れた光景でありクラスの誰一人として驚きの声をあげない。わずか2秒ほどで

 

『設定高度まで到達、及び特定発生源の通信を遮断』

 

『ん?どうした一体』

 

『篠ノ之が山田先生のインカムを奪って騒ぎ始めた』

 

『そりゃまた難儀なことで……織斑の奴はこれから大変だねぇ全く』

 

正直仕事が増えるのは勘弁してほしいという九桜の心情だが確実に無理だろう。荷物が届いたときに出た結果は試練や苦難といったもので占いを外したことがない九桜は頭を抱え護衛するにしても魔術的な要素があるものに限ってしようと心に決めたほどだ。

 

『織斑、オルコット、大十字。急降下と完全停止をやってみせろ。目標は地表から10センチだ』

 

目標なのでそれよりも低くてもいいかなぁとか思った九桜だが

 

『あ、やっべ髪の毛地面についたら汚れるじゃん。いくら洗浄術式あるとはいえ髪汚れるのいやだなぁ』

 

『女子か』

 

『辛辣だな、オウル……髪の毛の先端が地表から10センチでいっか』

 

そんな感じの緩いやり取りで停止位置を決め、背部大型スラスターをすべて上下を反転させ、自身も頭を地表に向ける。

 

『オウル、制御全部こっちに渡せ。お前は何もしなくていい』

 

『是、ぶつけないでね』

 

『あいよっと』

 

スラスターすべてを全開にし、一気に地表に向かって落ちていく。途中で織斑とオルコットを抜かし地表からかなり高いところで完全に静止する。加速していた時、彼の背中側で止まっていた髪が地面の方に垂れ髪と地表の間はピタリと10センチだった。

 

「珍しいな、貴様がそんな温いことをするなど」

 

「髪の毛汚れたら洗浄1時間乾燥1時間で2時間はかかるので絶対に汚したくないので……まぁ髪と地表との隙間は10センチですのでご容赦を」

 

と九桜と織斑先生が話しているさなかにオルコットがピッタリ10センチで機体を止めた。それをチラリとみて、織斑先生は

 

「女子であるオルコットが髪の汚れを気にせず目標に正確に行ったのにどこぞの男子は汚れるのがいやか」

 

「長さが違うのでそういう言い方はしないでください」

 

クルリと上下を入れ替え地表に降り立つ。そのまま上を仰ぎ見て

 

「ああ、あのままの速度なら……」

 

高速でISが落下してきた。

 

「ああ、やっぱり」

 

九桜ならば確実に、オルコットは多分止まれるだろう速度の落下だったため、ものの見事に織斑墜落。グラウンドに穴をあけた。

 

その後織斑は説教くらって、武器の展開の見本を見せることになった。

 

織斑は時間がかかりすぎると言われ、オルコットは腕を真横に突き出し、銃口が正面を向いていない状態でレーザーライフルを展開したので、正面で展開できるように直せと言われていた

 

「次、大十字」

 

「了解です」

 

彼のIS、『エイン・ソフ』には固定武器はないものの接近武器4種、中遠距離武器3種4丁が格納されておりどの距離でも戦闘ができるようになっている。

 

ただ立っているだけというような自然体の状態で右手に莫大量の光がほんの一瞬現われ気づいたときにはISサイズの日本刀が握られていた

 

「よし、次、遠距離武器」

 

「はい」

 

そう彼が言った時には日本刀は収納され、両手に1丁ずつのアサルトライフルに切り替わっていた

 

「セシリアと織斑は今後コイツの展開速度を目標にしろ。以上で今日の授業を終わる。織斑は穴を埋めておくように」

 

なおそのあと九桜は全力疾走で更衣室に行ったもよう

 


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