ぺディグリーすかーれっと   作:葉虎

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第11話

 

翌日、気を取り直して…能力を使ってみる事にした。

 

大体の効果はあんちょこの横に書いてあるのだが実際に使ってみないと…ぶっつけ本番は怖い。

 

んで、結果を言えば試してよかった。

 

能力が使えなかったのだ。

 

その原因も分かっている。

 

「こんなのすらすら言えるかーーーー!」

 

詠唱を間違えるのである。

 

あんちょこを見ながらとは言え、正確に読むのは至難の業だ。

 

俺は声優さんじゃねぇし。

 

なので…まずは普通のノートに詠唱を書き写し、音読をすることから始めた。

 

毎日、毎日、朝昼晩ぶつぶつと。

 

その際の念の修行は基本から応用を一通り繰り返し、系統別の修行は自身の能力の練度を挙げるべく薬を作り続けた。丁度、ストックも切らしちゃってたしね。

 

正直、念の修行よりも詠唱の方が精神的にきつかった。

 

俺はもう中二病は乗り越えていたのだ。

 

なのに此処に来て……あの暗黒時代に逆戻りだ。

 

まぁ、詠唱すると能力が発動する訳だから中二病じゃないのかもしれないが。

 

この練習を始めてから眠りが浅くなり、夢の中まで自分の音読が聞こえてくる事もあった。

 

なんか、別の病気に掛りそうである。

 

そんな苦難を乗り越え、どうにか間違えずに言えるようになった呪文を試してみる事にする。

 

 

―――

 

かれその神避りたまひし伊耶那美は

Die dahingeschiedene Izanami wurde auf dem Berg Hiba

 

 

出雲の国と伯伎の国 その堺なる比婆の山に葬めまつりき

an der Grenze zu den Ländern Izumo und Hahaki zu Grabe getragen.

 

 

ここに伊耶那岐

Bei dieser Begebenheit zog Izanagi sein Schwert,

 

 

御佩せる十拳剣を抜きて

das er mit sich führte und die Länge von zehn nebeneinander gelegten

 

 

その子迦具土の頚を斬りたまひき

Fäusten besaß, und enthauptete ihr Kind, Kagutsuchi.

 

 

 

 

創造

Briah―

 

爾天神之命以布斗麻邇爾ト相而詔之

ここにあまつかみのみこともちて、ふとまににうらへてのりたまひつらく。

 

 

「……おぉ!?」

 

テンションが上がる。すげぇ。

 

唱え終えた俺の身体は炎に包まれていた。

 

だが、熱くもなく。服も燃えていない。

 

そう、今の俺は炎に包まれているのではなく炎となっている。

 

俺は腰を落とし、正拳付きの構えを取り…

 

「炎拳!!」

 

拳を付きだすと同時に炎を放出する。

 

ぶわっと一直線に放たれる炎。おぉぉ、感動的だ。

 

その後も炎を出しては形を変えてみたり、手から放して自由に動かしたりしてみる。

 

おぉ、自由自在だ!!

 

きゃっきゃと能力が切れるまではしゃいだ。

 

 

 

「……こほん」

 

誰が効いているわけでもないのに、わざとらしく咳払いをする。

 

我に返り湧き上がってきた羞恥心を誤魔化すためだ。

 

気を取り直して能力の検証を続ける。

 

今の能力の仕様でオーラの大体7割くらい持って行かれた。

 

やはり効果が高い反面消耗も激しいのだろう。

 

継承前の俺本来のオーラは今保有しているオーラの0.5割程度。

 

爺様とお母様のオーラは全て俺に継承されているわけで…。

 

生前、爺様がこの能力を問題なく使っていたとすれば…。

 

計算すると爺様が生前保有していたオーラって。

 

「化物かよ爺」

 

もはや妖怪の類ではないか?

 

まぁ、その能力はまんま俺が引き継いだのでそのままだと自分の首をも絞めかねないので考えないようにする。

 

まぁ、何はともあれ通常の状態でこの能力が使えるのは1回のみと考えていいだろう。

 

まだ他の詠唱で発動する能力も多分同じだろう。

 

燃費の悪さはあの能力の凄まじさを見れば仕方がない。

 

だが、問題は…。

 

「発動までに時間が掛りすぎるな」

 

しかも現時点では足が止まった状態で詠唱をしてどうにか成功する。

 

実際、あれほど長時間足を止めていたら殴られ放題だろう。

 

動きながら詠唱を完成させる必要がある。

 

まぁ、これは練習すれば恐らく可能だ。

 

だが、問題は今の俺の身体能力ではたとえ、動きながらの詠唱が可能だったとしても相手の攻撃を裁き切れないという事だ。

 

詠唱途中で喉を潰されたら終わり。そんな回りくどい事をしなくても、詠唱完成前に殺されてしまう可能性もある。

 

その点を踏まえて、今後の俺の修行は攻めよりも守りに重きを置くべきだろう。

 

俺のほかにもう一人……時間を稼いでくれる頼りになる前衛が居たら話は別なのだが……。

 

ない物を強請っても仕方がない。

 

 

 

 

天空闘技場に着て一か月が経とうとしている。

 

試合の方は150階~180階の間を行ったり来たりしている。

 

おかげで資金はがっつり手に入った。口座には見たとこもない桁数に達した数字が記されている。

 

念の修行の方も新たにメニューを構築し順調だ。

 

応用技である流を重点的に鍛え、系統別の修行では変→強→変→特→変。というローテーションで行っている。

 

具現化系の修行の代わりに特質系…あんちょこに記載されている詠唱の効果を一つ一つ確認している。

 

説明的にヤバそうなのは使っていない。

 

そして寝る前に堅の持続時間を延ばす修行をする。

 

こんな感じで念能力の向上を図っている。

 

そして念の修行の何処かで必ず緋の眼になるという訓練も行っている。

 

此れは緋の眼への変化の時間を短縮する事と持続時間を向上させるのが狙いだ。

 

まぁ、こんな事をして効果があるのかどうかは分からない。

 

だが、効果が発揮された場合、格段に戦術の幅が向上する事だろう。

 

理想はナルトの写輪眼みたいな感じで緋の眼を運用する事なのだが。

 

……大丈夫だよね?使っても失明とかしないよね?

 

それが心配だ。

 

ま、まぁいい。取りあえず上記の修行を今は重力五倍、空気の薄さは重力五倍が相当辛いので、変えていない。そして、時間の流れは若干変えている。

 

大体、こっちの一時間が中では一日に当たるようにしている。

 

その分、年は取るが。出来るだけ早く自身を護れるだけの状態にしなければならない。

 

老けてもグリードアイランドで魔女の若返り薬を使う事を画策しているので、あまり気にしていない。

 

最初は魔女の若返り薬の為にゲームクリアが必要か?結構大変だな…と思ったのだが、別にクリアして持ち帰りのカードに含めなくても、グリードアイランドの中でカード化解除して使えば良いんじゃね?という考えに至ったのだ。

 

なので、並行してグリードアイランドの情報も集めている。

 

その結果、9月にあるヨークシンのオークションでグリードアイランドが出品されるという情報を入手した。

 

今は6月だから…3ヶ月後。

 

買うなんていうのは当然無理なので、やはりバッテラ氏からパクろうと考えている。

 

爺さんの能力を使えば、襲撃は容易だ。

 

しかも爺さんの能力は奇襲で絶大な効果を発揮する。

 

なぜなら、詠唱完了状態で先手が取れるから。

 

それにバッテラ氏にはそこまで強い能力者は付いていないと思う。

 

フィンクスとフェイタンにあっさり奪われたこともそうだが。

 

そもそも、そんな強い能力者がいるならグリードアイランド攻略をしていても不思議じゃない。

 

でも、バッテラ氏の下で一番強いのは多分ツェズゲラさんである。

 

それまでは天空闘技場でこれまで通り、金稼ぎと修行をしようと思う。

 

あと、考えておくべきなのはハンター試験か。

 

別段ハンターライセンスを取らなきゃいけない理由は無い。

 

天空闘技場である程度…豪遊しなければまぁ暮らしていけるだけの金を稼いだ以上、ライセンスを売る必要もないしな。

 

だが、その恩恵は魅力的だ。

 

様々な特権に加えて…一番俺が欲しいのは。

 

ハンター専用サイトへのアクセス権だ。

 

情報収集するならば、このサイトへのアクセスできるメリットはかなりデカい。

 

今後、何があるか分からない。何かあった時に必要な情報を収集するための環境はあった方が良い。

 

受けるならばゴンと同じ時期に受けるのが合格率が高いだろう。何故ならば試験の内容を知っているのだから。

 

いちおう忘れないように何年か前にノートに原作の覚えている限りの内容は書き留めている。

 

そのノートを取り出して内容を確認する。……うん。取りあえず試験内容は網羅してあるな。

 

だが問題はそれが今から何年後か……時系列が分からない。

 

流石に第何期の試験とか…そんな事は覚えちゃいないのだ。

 

あともう一つ問題がある。これは受験者に関してである。

 

注意すべき人物に関してちゃんとチェックが入っていた。薄れている今の俺の記憶でもこいつらの名前は覚えている。

 

注意すべきは3人。

 

まずは言わずもがなヒソカ……。あの変態である。

 

俺にはそっち系の趣味は無いうえに、戦闘狂でもない。

 

目を付けられたら速攻で逃げの一手だ。

 

次はイルミ。

 

こいつはヒソカ程、好戦的じゃないが…やっぱり危険だ。

 

それにこいつもどっかオカシイ。つか、ブラコンすぎて気持ち悪い。

 

そして、最後の一人。こいつは場合によっては上記2人よりもやっかいな相手だ。

 

「へびつかい……バーボン」

 

あの忌々しい生物を操る。俺からすればこいつも精神異常者だ。

 

ある意味俺の天敵とも呼べる相手だろう。

 

こいつを殺してくれた女……ポンズには感謝してもしきれない。

 

原作通りならポンズに殺されてしまうとはいえ、関わり合いにはなりたくない。

 

 

「……ふむ、ずらすか」

 

それらの点から如何に試験内容を知っているとはいえ、避けるのが無難と言える。

 

今年申し込んで、来年受験すれば流石にゴン達と時期がズラせるだろう。

 

取りあえず申し込みはしておこう。

 

 




声優さんてすごいよね?

噛まず、トチらずすらすら言えるんだぜ?

とりあえず連休も終わりましたね。

連休中かなり書いた……。

此処からは執筆速度が少し低下するかも。

いちおう、今の仕事は定時に帰れてるから前よりは時間があるので今のうちに頑張って、書けるところまで書きたいと思う。

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