魔法少女と悪を背負った者   作:幻想の投影物

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今回の表現は結構なものです。
もう一度言います。結構なものです。

気分を害すようなら、すぐさまブラウザバック推奨。
少なくとも、書いてていい気分ではありませんでした。


灰塵・集束・善悪

かっちこっちカッチコッチかっちこっちカッチコッチかっちこっちカッチコッチ

 

―――規則正しいね。うん、そーだね。

 

カチコチかちこちカチコチかちこちカチコチかちこちカチコチかちこちカチコチかちこちカチコチかちこちカチコチかちこちカチコチかちこちカチコチかちこちカチコチかちこちカチコチかちこちカチコチかちこちカチコチかちこちカチコカチコチかちこちカチコチかちこちカチコチかちこちチかちこちカチコチかちこちカチコチかちこちカチコチかちこちカチコチかちこち

 

―――あ、早くなってきちゃった!

 

か……ち……こ・……か、カカカカカカカカカカカカカ…………かかかkっかっちこっきいりかおかかいksきぎぎぎっぎぎぎぎぎぎぎぎっぎぎぎぎぎっぎぎぎぎぎっぎぎぎっぎ

 

―――あわわ……どうしよう!

―――ま、ママ!時計が壊れちゃった!!

 

―――あらあら、落ち着いて。

―――…………でも、どうしようかしら。……そうだわ!これ、もう古いから―――

 

 

 

「捨てちゃいましょ―ブゥエ!!!」

 

……ダメじゃない。

どうして捨てるなんて言うの?その子はまだまだ使えるわよ。仕えるのよ。閊えなさい。あなただ~け。

 

「ママ!? ママぁ!!!」

 

「煩いわ」

 

また服が汚れちゃったわね。

あらあらああああああ~~あ。どうしようかなどうしようかしらねぇ?

これじゃ、まどかに合わせる顔が無いじゃない。

 

……顔? 、そうで、そうねそうsきさああも、そうだ!

持っていっちゃいましょう。そうそう。その方がキッと良いわよね。

キッと、ギッと……うん。取れた…?

 

「汚い」

 

ぽいっと捨てて、消しちゃいましょう。

美樹さんもこれで消したんだもの。切ってキッときっと消えるわよね。

 

チッチッチッチッチッチッチッチッチッチチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッッチッチッチッチッチッチッチッチッ―――

 

「どかーん」

 

 

 

 

 

 

 

魔法少女まどか☆マギカ

~魔法少女と悪を背負った者~

 

第二章、再醜血戦。指導の歯車は、始動の歯車は……結局それしかそれしか。。

 

結局、布石に過~ぎな~いの☆★欲しいの?欲しくないの。あ~ららら。

 

救えないなら消えちゃってー救おうとして頑張ってー繰り変え繰り返してーも。

 

 

 

 

ばーい?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ざざぁっと雲が棚引いて、モクモクぐるぐる回り続けているのです。

 それは、暗転を曇天を表しているのよね。ですたよね。

 川原も多荒れ模様ですのよ。橋が揺れすぎだってハナシ、あっぶないな~!

 

「……チッ、結局アイツの到着は遅れたか」

「そう言わないの。あの子も私たち以上に忙しいじゃないの」

「マミ……そうは言ってもなぁ」

「オイオイ、手はずは整ってたんじゃないのか?」

 

 上から順に順番に、(杏子)、紅《アンリ》、黄《マミ》、白《キュゥべえ》、(まどか)そして(シャルロッテ)。みんなみーんな……。

 

 ……そう言った杏子は、訝しげな視線をアンリに向けた。その意味が分かっているからこそ、アンリは居心地悪げに頬を掻く。苦笑いのオプション付きで。

 

「でも、私と同じ“まどか”なんですよね。……死んだりはしないんですか?」

「はぁ? どういう意味さね、そりゃあ」

「鹿目さんが言ってるのは、『ドッペルゲンガー』の話でしょ?」

「はい……」

 

 少しカタカタと震えて、まどかは心配そうにマミを見た。

 

「心配無いだろうね。それなら、僕らが全員死んでるだろうからさ」

「(>_<)キュゥベエオナジカオー」

「ああ、そういやそうだったね……」

 

 まだ少し納得がいってないのか、ぶすっとした杏子がキュゥべえを半目で睨みつける。

 その視線に気付くと、尻尾を力無く下げてキュゥべえは眉間にしわを寄せる。せっかくの愛嬌の姿も、こうとなっては哀愁が漂ってくる。

 

「アンリ、視線が痛くてかなわないよ」

「数十年越しだがインキュベーター卒業オメデトウ。そして耐えろ」

「血も涙もないわね。あなたらしいけど…………まあ、そんな余裕も――」

 

 くすっと笑って、マミは空を見上げた。視線を崩すこと無く引き締め、装飾が黒く変わったソウルジェムを掲げる。

 

「――これまでよ」

―――アハ、アハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!!!

 

 彼女が言った瞬間、魔女の狂った笑い声と共に万国旗が端とビルを繋いで現れた。その国旗は▼の下に球体がついただけのシンプルな模様。それを拡大する為の像や動物が通り過ぎようとして―――

 

「“無限(アンリミテッド)(・レイズ)残骸(・デッド)”っ!」

 

 アンリの泥に行く手を阻まれる。

その泥はサーカスに彩られた動物たちを切り裂き、移動結界の役割を果たしている、「ワルプルギスの夜」の存在理由を否定するように立ちふさがった。

 

 ワルプルギスの夜は、あの国旗が広がれば広がるほど移動範囲が広がるようにも思えていた。だからこそ、この橋の周辺……いや、この橋から50メートル圏内からこの魔女が出ないように誘導するための泥である。

 だが、そんな泥を弾き飛ばすのが、彼女が倒してきた、もしくはどこかに生きていた筈の魔法少女たちの影。砲を持つ()は集合して泥を吹き飛ばす。剣を持つ()は魔女の為の道を切り開いて行く。

 しかし―――

 

「オオオオオオオォォォォォォオオオ!!!」

 

 アンリから聞いた、“全力を出し続け(・・・・)ても構わない”という言葉。

 それを信じて、この世界の杏子は何の遠慮もなく魔力をつぎ込みにつぎ込んだ大槍を振るう。衝撃波を伴った大槍は、周囲の使い魔達を吹き飛ばす。砲を持つ者は砕け散り、剣を持つ者は引き裂かれる。

 マミも同様に、周囲に展開した砲撃で確実に国旗の伸びる先を狙い落としていった。狙撃に夢中になっている彼女に隙を見出したのか、ワルプルギスの周囲にいる影の一つが鋭く尖ってマミに迫ったが、それらは彼女の微笑の前に崩された。

 

「それっ」

「あの頃と比べると、随分と余裕が出来たねマミ」

「そりゃ、私も実年齢はおばあちゃんですもの」

 

 リボンは尖った影を難なく縛り上げ、杏子の的としてフラグを回収される。時に、アンリの泥をあびて漆黒に染まり、リボンそのものが鋭くなって結界の基点(国旗)を容易く切り裂いて行く。総力を挙げてワルプルギスという『災害』を正しく喰い止めている中、キュゥべえは最後の仕上げだと言わんばかりにまどか囁く。

 

「まどか! 僕と契約を―――」

「させない!!」

「なっ……キュゥべえっ、後ろだ! ―――」

 

 両腕を地面に突き立て、泥の制御のみに全神経を注いでいるアンリは見た。突如出現し、キュゥべえに銃口を突きつけている“ほむら”の姿を。

 

 きっと、彼女はずっと覚えていたのだろう。

 キュゥべえがこの場面で契約を迫り、最悪の展開に陥ったという経験を。

 だが、今はそれが最善の策である。彼女が為す行動はなんと皮肉な事かと。

 

 だからこそ、アンリは悲痛に叫んだ。キュゥべえという『家族』が失われそうになっているから。その事に誰も気付いていないから。彼を助けるためにはあと一歩届かないから。

 

 だから――――彼女(ほむら)を悪魔の様に嘲笑うのだ。

 

「―――なんてな」

「あなた……よくもぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 引き金を引いた瞬間、弾丸のせいではなく、キュゥべえとまどかの姿は掻き消えた。

そして、杏子やマミ。アンリでさえもがその場から消失する。

 まどかが消えたことで唖然としているほむらは、ワルプルギスが結界ごと薄れて消えていくのを見て、獲物を取られた怒りと、まどかを消した憎悪で消えたアンリに吼える。だが、消えていったそれは幻影(・・)のようで……

 

「シャル、捉えて!」

「オチャカイノジカンッ」

 

 新たな結界に包まれて、ほむらの身体はマミのリボン、シャルロッテのネズミに雁字搦めに縛られた。シャルロッテの魔女結界がこの辺りを覆い、ワルプルギスの夜が現れる筈である(・・・・)この場所を隠した。結界の外から見れば、結界の魔法陣が浮き上がっている以外、一切の異常は無いように見えるだろう。

 

 これが彼らの作戦。最初から杏子の幻影でワルプルギスと言う存在そのものを、戦闘の全てを偽りで映し出し、結果――ほむらをおびき寄せることに成功したのだ。

 

「は、なしなさい!! ハナセハナセハナセハナセハナセェェェェェェェ!!!」

「ほむらちゃん……」

 

 獣のように暴れるほむらは、盾から零れた重火器を魔力で暴発させる。自分を炎で巻き込んでまで、自分自身を傷つけてまでも。

 だが、自傷を繰り返すほむらの前に、この世界のまどかが現れた。

 

「まど―――!!」

 

 魔法少女の衣を纏っているまどかに、叫ぼうとしたほむらは喉が引き攣ったように声を詰まらせる。同時に、その体の動きも完全に停止していた。

 次の、瞬間には――

 

「ッ!」

 

 右手を左手の盾に押し当てる。きっとそれは、彼女が幾度となく繰り返してきた時間遡行で自然としみついた動作だったのだろう。

 秒針を無理やり手で戻すかのように、勢いよく盾を回転させようとしたところで―――

 

「シャァアアア!!」

「ギ、ァァァァアアアアアア!!?」

 

 ほむらの両腕を、アンリが切り落とした(・・・・・・)。当然のように鮮血が溢れ、脳の指令を無くした腕は、乱暴に切り裂かれた為か血肉の欠片を撒き散らしながらしばらくはびくびくと動いていたものの、その執念も抜けきったか、最後にはピクリとも動かず、沈黙に伏した。

 これで、ほむらが過去に戻ることはない。戻ることすらできない。その望みは、彼女の盾ごと踏み砕かれたのだから。

 

作戦(ミッション)完了(コンプリート)だ。囮役を頼んですまなかったな。鹿目ちゃん」

「は、い…………」

 

 現実ではこのような場面(スプラッター)を見ることなど、一介の中学生では有り得ない。余りにグロテスクな光景に、それがほむらだったとしても顔をそむけて青くさせる。血の気が引いた状態、その最たる例となっていた。一般人として、鹿目まどかは間違いなく正しい。

 目を背けたとしても、この惨状が無くなるわけではないのだが。

 

「ア、 ァァアア、アアアアア…………」

「さて、最初に言っておくが、“ワルプルギスの夜”はもう居ない(・・・)。……というか、魔女自体が消えていなくなった」

「な、ニヲ。戯れゴトを!」

「完全に狂う前に、よっく聞いとけ。それを成したのが此処にいる“神ちゃん”だ。……なあ、もしかして見覚えがあるんじゃねぇか? ―――なぁ」

 

 まどかの後ろから、結界の奥から。最後のゲストの足音が響き渡る。

 それは、神々しい衣装に身を包み、半透明で幾何学的な翼を持った概念と化した筈の少女。実体を持った彼女の桃色の髪は、艶を持って足先まで伸びて成長しており、その力はこの世界そのものを消滅させてもおつりがくるだろう。ただ、その優しげな顔だけは……昔と一切変わらぬまま。

 

「“久しぶり”だね。ほむらちゃん」

「“まどか”……あなたは…“まどか”なの……!?」

 

 彼女を見た瞬間、何も映していなかった黒水晶のような瞳に光が灯り、現れた彼女を凝視するように見開いた。だが、その光は「まどか」だけに向けられたものらしく、ほむらの瞳を覗きこんでも彼女の姿以外の景色は一切見受けられない。それほどまで、彼女は濁りきって(・・・・・)しまったのだろう。

 

 だからこそ、そんな彼女を見たまどかは悲しげな、悲痛な表情を形作る。

 

「ごめんね。私はそんなつもりじゃなかったの。でも、私との“約束”が……ほむらちゃんをこんなに狂わせちゃった」

「私は狂ってなんかいないわ。大丈夫、まどかとの約束は覚えているもの。ホラ、今でも言えるもの――――え……?待って!今、言うから!!……どうして、そんな。私は!!!!」

「“キュゥべえに騙される前のバカなわたしを、助けてあげて”……やっぱり忘れちゃってたんだ。本当に、ごめんね。そんな事を言う私こそバカだよね」

「あ…………」

 

 ほむらは力無く吊り下げられ、肘から先が無くなった両腕の力を抜いた。だらりと抵抗を無くした彼女を見て、“まどか”がマミに目くばせをすると、微笑んで頷いたマミはほむらの拘束を完全に解いた。

 地面にゆっくりと下ろし、マミのリボンは割れるように消滅する。

 

 なんとか踏みとどまって立ち尽くすほむらに、まどかは微笑する。

 

「でもね、ありがとう」

 

 “まどか”はほむらに歩み寄り、彼女の両腕を拾ってくっつけた。

 感謝の言葉と共に、淡い桃色の光がほむらを覆っていく。その光が収まるころには、切断痕も残っておらず、完全にほむらの両腕は接合されていた。

 ほむらはワケが分からない。と涙ぐみ、混乱した表情を“まどか”に向ける。そんな彼女を、まどかが優しく抱きしめた。

 

「ほむらちゃんは、頑張ったよね。だから……だから……」

 

―――もう、いいんだよ

 

「あっ…………」

 

 まどかがそう言って、ほむらが身につけているソウルジェムに触れる。

 すると、黒っぽい(・・・・)紫水晶の様なソウルジェム……いや、グリーフ(・・・・)シード(・・・)は砕け散り、その破片を周囲に散らした。

 

魔女(・・)になってまで、心を失ってまで“()”を救おうとしてくれたんだよね。何度も見てきたよ。私の力が及ばない並行世界に飛んで、何度も私を救おうとした姿を。

 でも、“私”は皆バカだったんだよね…ほむらちゃんの忠告も聞かず、キュゥべえと勝手に契約しちゃって…………その中の私の一人は、“ワルプルギスを倒して”なんて願って、たったそれだけでそのまま魔女になって……ホント、ばかだよね」

「まどか……まどかぁ…………」

「ゴメン。ごめんね。……でも、私はちゃんと救われてるんだよ? “私”は、皆と一緒にいる事が出来るんだよ。……だから、もうほむらちゃんは頑張らなくて良いの」

 

 ほむらの瞳にともった、命の光は細まって行く。線香花火の最後を看取るように。それでも、彼女はまどかの言葉を魂に刻みつける。心に刻みつける。

 たとえ、その魂そのものが無くなっていても。

 

「最悪は、私が直す。最高は、ほむらちゃんが創ってね。だから……今はお休みなさい」

 

 まどかはしゃくりあげ、涙を流す。

 その涙は、ほむらの頬に一滴の湿り気を与える。

 確認するように手を伸ばし、その暖かくも冷たい感触に微笑んで、ほむらは言った。

 

「大好き」

 

 それだけを言い残して、ほむらの身体は闇に溶けて行った。

 後には、何も残っていない。後には、何も残せない。

 

 だって、“まどか”が魔女の全てを消してしまう存在だから。

 

 一人の少女が涙を流し、そしてこの戦いは幕を閉じる。

 

 

 

 

 ……そう、この(・・)戦いは。

 

 

 

 全てが終わり、景色が渦巻く結界の中でアンリは言った。

 

「……ワリィな。約束、叶えたけど守れなかったよ」

「ううん。“ほむらちゃん”に会えたんだもん。これでいいの」

 

 それは、正真正銘初めて出会った時の約束だった。

 “まどか”の世界にいたほむらに会わせる。確かにそれは成就したが、誰もが望むような形で終わった訳ではない。

 

【ほむらの死】

 

 これによって、その約束は叶いながらも破られてしまったのだから。

 

「………さて、ほむらのヤツはどうだか知らないけど、アタシらにはまだやることが残ってるだろ?」

「“私”の魔女を、倒すんですよね」

 

 二人のやり取りが終わったと確認すると、この世界の住人であるまどかと杏子が本来の目的を口にした。ほむらが来る前に人知れず消滅したワルプルギスは、この世界では単なる魔女でしかなかった。概念・鹿目まどかが来た時点で、所詮はただの魔女でしかなかったワルプルギスの夜は消滅していたのだから。

 しかし、今直面している問題はそれどころじゃない。

 

「“全ての鹿目まどか”が集合した魔女。最悪の魔女である“クリームヒルト・グレートヒェン”が残ってやがるからな」

 

 そう、ほむらは魔女となってからというもの、逆行を繰り返しに繰り返した。

 そのたびにまどかという存在には因果の鎖が絡みつき、「鹿目まどか」はより強大な「素質」を持つ存在へと昇華されていったのである。当然、そうなればまどかの魔女は、概念となった“まどか”よりも強力な能力を持ち、あらゆる並行世界で同じ存在をかき集めて強くなっていく。

 

 最初の最悪の魔女は、地球を滅ぼすのに一週間かかった。

 だが、今は一日。地球そのものが、既に魔女の結界となってしまっているのだから。

 

 だからこそ、それを聞いて絶望するまどかは言う。

 

「杏子ちゃん、勝てる……のかな」

 

 そんな弱音を言ったまどかに、杏子は鳩が豆鉄砲くらったな顔をし、一瞬で大笑いに変えてしまった。吃驚しているまどかを尻目に、杏子は気楽な表情で言った。そこにあるのは諦観ではない。此処までの付き合いで確かめた、希望の光だ。

 

「ったく、まどか。アタシらにはアンリ・マユっていうカミサマがついてるんだ。ソイツが手を貸してくれるってのに、手を借りるアタシらが不安になってどうするのさ。

 ここは、アタシたちがどーんと構えてりゃいいんだろ」

 

 ニッと太陽のように笑い、槍を掲げて見せた。そんな自信満々の杏子を見て、まどかの不安も少しずつ拭われていく。そして、勇士は杏子だけではない。この場にいる皆なのだ。

 

「シャルモイッショ、ガンバロ!」

「シャルちゃん……うん!」

 

 ぽん、とまどかの足に手を置いたシャルロッテ。

 そうして励ましを貰った彼女はすっかり恐怖を無くしてしまった。単純かもしれないが、希望を前にして人間は必ず光り輝くものなのである。それが、たった一度だったとしても。

 

「……来るよ。みんな、気をつけて」

「ついに……ね。佐倉さんに鹿目さん、私達の怪我は気にしないで良いから、あなた達は絶対に生き残りなさい。これは、先輩としてじゃなくて人間としてのアドバイスよ」

 

 魔女の気配を感知したキュゥべえに続いて、マミは必ず生きるようにと、二人へ言った。

コク、と頷いた二人を満足そうに見やると、突如空間に穴があく。

 魔女である方の“まどか”は、まずはその同存在を取り込んでから全ての命を吸い取る(救う)らしく、その習性を利用する為にずっとシャルに結界を張らせていたのだ。

 惑星規模である「最悪の魔女」が姿を現す際には、その地球と言う名の結界の中が魔女の木の根っこの様な部分で覆われる。これが、命を吸い取る概念を表しているようで、これまで吸われた命の怨念か、どす黒いものがその表面に渦巻いているらしい。

 

 そして今、その最悪の魔女は頭角を顕わにした。嫌悪すべき救世(吸生)の波動が彼らを襲い、命そのものを脅かし始めた。そんな魔女にアンリは歩み寄ると、高々と言い放つ。

 

「さてさて、今宵のキャストはご退場。此方に残るは道化と主役にございます」

 

「ゲスト出演まことに感謝。ですが貴女の台本は決まっております」

 

「ちゃんと目を通しておきましたか?

 そうでないなら聞かせて差し上げましょう」

 

 自分こそが愚かなのだと、自分こそが正しいのだと矛盾を孕んだように言霊を紡いでいく。大きく息を吸うと、右手を掲げて宣言した。

 

「そちらの台本は“死”あるのみ。……まあ、オレの脚本はハッピーエンドしか存在しないんでな。それをぶち壊す様なテメェは……」

 

 掲げた右手に、歪な刃。

 伸ばした右手に、黄金の銃。

 掲げた左手に、朱塗りの槍。

 番えた両手に、生命の弓。

 

 役者は揃い、物語の歯車は弾け飛ぶ。

 

「オレにとっての、“全ての悪”! 世界の悪は、オレは一人で十分!! 此処に宣言しよう、オレこそが“この世全ての(アンリ)悪背負わされし者(・マユ)”―――テメェを背負って生きるモノだ」

 

 全ての人々が幸福でなければ、一切の傷入れる事が出来ない巨大な魔女。

 因果という名の同存在を吸収したそれは、あまりに強大。

 

 それでも、愚者という名の彼らは挑み続けるのだ。

 

 

 それが、彼らの願いなのだから。それこそが、彼らの存在なのだから!

 今宵は()も、祝福を捧げる。彼の――を――――たメに…?

 

 サて、ここいら今宵にこのように語りましょう。物語の、最後を。

 






語り部地の文にするとそこはかとなく漂い始める厨二臭。
前回でも全開だったんでいまさら後悔はしてませんが。

そういうわけで、短編第二部。次回が最終回。

ここまでお疲れさまでした。
正直言って最初の描写はただの文字数稼ぎです。

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