今はともかく…時間がないっ! (他の小説的な意味で)
デモンストレーションのためとはいえ、魔女を面白おかしく倒すやり方をとったアンリ達。元が魔法少女だった存在と言う事を知っている彼らにとって、あまり今回の事は良い思い出とするには難しいな、と考えていた。きっちりと魂は回収し、今はアンリの中に在る「楽園」の住人としていても、だ。
それでも、一度訪れた世界に破滅をもたらすなどと言う事は出来ない。
お人好し、偽善者、自分勝手……そう蔑まれようとも、どう言われようとも、自分達と言う存在は“外敵に対する悪”という名目で行っている行動なのだから。傲慢だと蔑めばいい。その感情も、彼の彼らの力へと昇華されるのだから。
マミは変身を解き、白に黄色いラインが入ったフリースを出現させる。夜の寒さには、丁度温かそうだった。
「私は先に帰ってるわね……彼女、任せたわよ」
「任された。で、キュゥべえは当然行くんだろ?」
「当り前さ」
軽く頷きあうと、彼らはその場から離れる。
誰も居なくなった場所には、街灯の光だけが残るのだった。
「魔女がいない?」
可笑しいおかしいオカシイ? 魔女がいないの何処にもね。
鳥カゴ・鳥男の馬鹿な魔女。時を止めればあら不思議、何をするでもなくいなくなっちゃうあの弱い奴。どうしていないの此処にはいない? さがして見つけて『 』さなきゃ。
そーゆー彼女に足音テクテクテクテク、テクテクテクテ。おっと止まってニヤニヤと。黒い男が佇んだ。方には反対まっしろけっけの白くてしろぉーいキュゥべえチャン? どうしてどうしてどうしてどうして? 生きてるのよ。
「キュゥべえは居なくなった。どうしてここにいるのかしらね?」
「僕は僕で在って僕でない。インキュベータを卒業した、ただのキュゥべえ。
理解する必要もないし、戦う必要もない。まどかに興味はないし、この世界の馬鹿なシステムを切り離しにきただけだよ」
「貴方はなんなの? 私が殺す」
時を止めれば引き金一つ。時が動けば弾丸一つ。
どうしてかしら、黒いニヤニヤに止めれられたみたい。不気味なものね、ニヤニヤ笑いでしかない男だなんて! こいつはどうにも怪しいな。……使い魔、それもいいかもしれないわ?
「さてさて、お初にお目に掛かる。オレは
ただの
さて、アンタはとるのかこの腕を、鹿目ちゃんもが手にしたこの腕を」
「…………まどか」
この男を信じてとったその手をとった?
信じられない何があるの? だってただの男じゃない。戦う力もない筈よ。どうしてまどかはその手をとったっていうの? 弾丸くらいは防いだみたいな、英霊ってなんなのよ? 私は分からない分かりたくもないどうしてこんな笑っているの。あなたは何をしにきたの? ……・ああ。ああ、ああああ。……ワルプルギスを倒さなきゃ。じゃないとまどかが魔女になる。救いも何もかもを履き違えた救済の魔女になっちゃうじゃない。うん、そうね。そうときまればソコヲ退いてちょうだイ?」
よくよく喋るねぺらぺらりっと、これまたいい長話。黒い男は吟味する。私の言葉をあなたの耳で。
「質問全部に応えらんねぇ。だが、確かにこの世界を“救う”……なんて、お題目を引っさげて来たのは間違っちゃいない。さて、並行世界のオマエさんは手を貸してくれたが、こっちのアンタはどうなんだい?」
改めてぇ、スッと差し出す落書きの手。ほんとは刺青? 分かってる。
不快な目で弾いて
「……排除。排除排除。あなたは今まで出てこなかった。
ああそっか。あなたはワルプルギスの使い魔ね?その手には乗らないわ。残念無念ねだからこそ殺す!!!!!!!殺す殺す殺す!!!消えなさいよォォオォォォぉオォォオオオオオオオオオオ―――」
ティクタク、クロック、オフザレコード。
時間が止まってガチリと固まる。ニヤケた男は凍りつき、キュゥべえだけが消えていたでも彼は倒さなきゃ。だって、悪夢へいざなう使い魔なんだもの。
爆弾爆弾ぽんぽいぽんぽい。ちゃんちゃらおかしいわ、だって既に貴方は――
「―――残念無念」
ドォン、どちらかな?
爆音、一条の光。連なり重なり相乗して、爆撃は街の一角を完全に破壊する。だが、それは聞こえる事のない刹那の時間、隔絶された空間でのお話。何故か? 彼がそれらを抱え込み……いや、背負ってしまったからだろう。
「あらいけない。街が壊れちゃった」
やり過ぎたかしら? いいえ、別に問題ないわね。だって彼は使い魔だもの。死んで当然殺して当然。魔法少女の私には、彼を倒す義務がある。今だけは感謝しようかしら、あの忌々しい白い生き物キュゥべえだっけ?
いいえ、インキュベーターね。地球に寄生する見にくい醜い
一般人には見えないもの。間違ってなんかいない筈。映画みたいに人の
「疲れたわ。だからもっともっと動かなくちゃ。私に休みは必要ない。私に休みはとれないの。まどかを守る……守る?守るって何だったかしら???」
頬づえついて首ひねり、そのまま首は一回転。
ゴキゴキメリメリ音が鳴り、無表情が一回転! 笑えない冗談だ。
「嗚呼思い出したわ。ワルプルギスを倒せば終わりだったわね!」
ランランスキップ乱嵐乱。乱れて折れて、吹きすさぶ。街は壊れてまっさらさ!?
まったく、魔女って本当に碌なのがいない。どうしてこうも無慈悲に街を――ああ、私がやったんだっけ? まぁ、いいわね。
「………あっぶねぇぇぇぇええ!!?」
街の一角、ほむらの爆弾で破壊された瓦礫の下から、アンリが障害物を押しのけて飛びでてきた。その瓦礫の上をぴょんぴょんと跳ねて、一匹の白い生物が心配するように駆け寄っていく。当の本人は、口に入った砂や石を吐き出していた。
「大丈夫かい?」
「ゲホッゲホッ……いや、威力もそうだがよ。ここまで街を破壊するとは思わなかった。こう言う時、アレだ……えっと……そう、“ないん☆ている”が無かったら即死だった! ……いや、無傷なのにそれはねぇか」
言って、アンリは手に九本のふさふさした尻尾の固まった様なストラップを懐に仕舞う。大事な、大事なものなのだ。無くしてしまうことは許されない。
「……ネタは良いから。君はもう少し、自分を大事にしたほうがいい」
「おお、すまんな。どうにも――≪アンリ!? 爆発音が聞こえたけど何があったの!!?≫――……お姫様がお怒りだーよ…ってか、聞こえてたんかい」
≪工エエエェェ(ω・´ )━(・ω・´)━( `・ω・´)━( ´・ω・)━( ´・ω)ェェエエ工!!≫
「落ち着けシャル。オマエは癒し要因でボケじゃないだろ。あと念話でかっこあぽすとろふぃーとか、記号をそのまま送ってくんじゃねぇ。何が言いたいか判らん」
爆発の衝撃は人格にまで衝撃を与えていたようだ。せっかくのシリアスが台無し。もはやシリアルの様相と化している。キュゥべえとアンリは同時に溜め息を吐いて、二重の意味で疲労していた。
「交渉失敗で街が破壊……これなんてムリゲー?」
「むしろ鬼畜ゲーじゃないかい?」
「違えねぇ……はぁ、歪みねぇな…………」
キュゥべえの突っ込みに、ぐったりと肩を落とした。よっこらしょ、瓦礫から全身を出すと、その山を眺めて頭を掻く。オヤジ臭いというキュゥべえの忠告には実年齢で黙らせた。
そして、彼は一面の惨状を見て、頬を引き攣らせる。それはいつものニヤニヤではなく、呆れの感情より顔に浮き出た表情。
「面倒だが、直すしかないよなぁ。コレ…」
≪シャルをそっちに送ったわ。家の準備はもう少しかかるから、存分に秘匿頑張ってね≫
「うぃ。晩飯楽しみに待ってる」
そこまで言うと、マミとアンリは念話を切った。アンリは宝具を発動させて、人型の喰らってきた魂の持主を再現させる。蟲爺さんとかか弱い雪の聖女とかいるけど、まあ戦力になるだろうと判断してのことだった。
「日が昇る前には片づけっぞ!終わったら“
『オオオオォォォォ!!!』
彼は魂を喰らうと、そのままその人の性質を頂戴するだけではなく、こうしてパーティーなどを開いて魂たちに飽きがこないように手配している。
……そこ、ホーエンハイムとか言わない!一人芝居とかシュールとかもいらないから! それから、さっきの魔女も当然ながらに参加している。魔法少女の姿に、魔女の装飾を足したような感じだが。…なにはともあれ、こうして夜は更けていった。
元の世界と同じく、欠けて来た半月の光がこの街を照らして彼らを見降ろす。その月には、もちをついた兎ではなく、ある一点を見つめて苦笑いしていた狐の娘が見えたとかなんとか。ここ見滝原の住民が、そう言い表したらしい。
忘れているかもしれないが、ワルプルギスの夜まであと2日。
決戦の日は、近い。
次回からまじめに書きます。
クオリティ下がりすぎでしょう……書いたのは自分達ですが。
そういえば、最近ペットを飼いました。かわいい「よもぐちゃん」です。鎧と土竜の種族ですが。
では、お疲れさまでした。
次回に当たって、描写をもっと増やしてほしい場合は感想へどうぞ。
望まれたからには返す所存にございます。