二度目の人生は長生きしたいな   作:もけ

9 / 26
続~10歳、非常事態発生ですっ!!

 困りました、困りました、困りました。

 

 はぁ~~、早口言葉で10回くらい言ったら問題が勝手に解消してくれないでしょうか。

 

 無理ですか、そうですか。

 

 はぁ~~、溜め息が止まりません。

 

 まさかこんな事で頭を悩ます日が来ようとは、さすがに予想外です。

 

 あれですか、日頃からブリミルにお祈りするフリをして転生させてくれた女神様にお祈りを捧げていたせいで、ブリミルがお冠とかそう言う事ですか。

 

 つまりこの事態はブリミルからの嫌がらせと。

 

 仮にも神様と崇められている存在がする事じゃありませんよね。

 

 そんな調子だから虚無関係で子孫に迷惑かけるんですよ。

 

 あ、どうも、絶賛現実逃避で負け惜しみ中のカミル・ド・アルテシウム、10歳の冬です。

 

 まぁ、嘆いてばかりいても仕方ありませんから少しは建設的に頭を使う事にしましょう。

 

 まず何が起こったかと言うと、姉様の結婚が決まりました。

 

 わぁ~~、パチパチパチパチ~~。

 

 ……………………。

 

 えぇ、ヤケクソですが何か?

 

 ……………………。

 

 止めましょう。

 

 不毛です。

 

 こほん、仕切り直しまして、姉様の結婚自体はお目出度い事なのですが、問題はそのお相手です。

 

 しっかり者の姉様の事ですから、どこぞのヒステリック女史のように行き遅れたり、見栄ばかり張って借金を増やすような貧乏くじを引かされる事はないと思っていましたが、まさかこんな結果になるとは……。

 

 いくら好きに選んでいいからと言って、何もわざわざアルビオン貴族の方を選ばなくてもいいじゃないですかっ!!

 

 その男性は、うちがアルビオンの窓口として取引している家の長男で、家柄も経営状態も問題なく、先日行われた顔合わせでも確かに人柄も良さそうではありましたが、問題はそこではありません。

 

 アルビオンと言えば、レコンキスタによるクーデターによりウェールズ王子を始め王に近い王侯貴族は全滅。

 

 そのレコンキスタも裏で糸を引いていた黒幕ガリア王ジョセフに見限られ、最終的にはこちらも全滅。

 

 つまり王党派に付こうと貴族派に付こうとアルビオン貴族に未来はないと言う事です。

 

 お先真っ暗ですね。

 

 最悪、姉様だけでも実家に呼び戻すという手もありますが、これは姉様自身が却下されると思います。

 

 姉様の性格からすれば、最後まで旦那様を支えきってみせるでしょう。

 

 えぇ、命の灯が消えるその瞬間まで……。

 

 グスン、泣いてないですよ。

 

 これは心の汗です。

 

 と言うか、泣いている場合ではありません。

 

 私の行動指針は『二度目の人生は長生きする』ですが、それはただ年を重ねると言う事を意味しているのではありません。

 

 それは平穏で満ち足りた人生を送り天寿を全うしたいという願いなのです。

 

 当然ですが、大好きな姉様を見殺しにするなんて選択肢は論外です。

 

 こんなの私のキャラじゃないのですが、こうなってしまっては覚悟を決めるしかありません。

 

 私は私のために私の願いを全てにおいて優先しますっ!!

 

 と、格好つけた所で出端をくじく様で申し訳ないのですが、まだ10歳の子供でしかない私では行動の自由度がほとんどありません。

 

 怒られずに済むのは徒歩またはフライで一時間で行って帰って来られるくらい範囲のみ。

 

 俗に言う「ご飯までに帰って来なさい」というやつです。

 

 勝手に自領から出るのなんて以ての外。

 

 つまり何をするにも協力者の存在が必要不可欠。

 

 候補は、まぁお父様とお母様しかいないわけですが、説明が難しいですね。

 

 転生云々、未来の知識云々は正直無理でしょう。

 

 むしろ信じる方がどうかしています。

 

 在り方の違いが分かるミツハさんは例外中の例外ですね。

 

 まぁ泣き言を言っても仕方ないですからどうにか上手くやるしかありません。

 

 最終目標を『アルビオンにおける内乱の阻止』として、考えられるいくつかの手段に対する情報収集と根回し、それにカモフラージュの理由を設定してお願いと説得をする。

 

 アンドバリの指輪がこちらにあるからと言って油断はできません。

 

 目標は、内乱の規模縮小ではなく、あくまでも内乱の阻止。

 

 場合によっては非合法な手段も取らないといけなくなると思います。

 

 その際、姉様を言い訳にはしません。

 

 これは私が幸せになるための単なる我が儘。

 

 歴史を変える事の、どう取ればいいか分からない責任なんて気にしません。

 

 これより先の未来は全て白紙です。

 

 考えてみれば、それが普通なのですから臆する事はありません。

 

 願わくば私と家族とその周りの者に幸多き未来が訪れますように……。

 

 ブリミルには願いませんけどね。

 




今話は問題提起という事で短いですが、これでやっと物語が動き出します。

と、その前に含んでおいてもらいたいポイントがあります。
問題、公爵と伯爵、身分の高いのはどちらでしょう。
これは当然公爵です。
では次の問題、公爵は伯爵に命令できるでしょうか。
これは出来ません。
公爵だろうと伯爵だろうと、はたまた男爵だろうと身分に違いはあっても、それは上司と部下の関係ではなく、あくまでも貴族は王にのみ仕えているのであって、命令を下せるのは王のみです。
とは言っても、王の定めた階級制度によって上位者に対して礼を取るのは当然で、しかも権力や財力で圧倒的優位に立っている相手に逆らう馬鹿はいません。
ただ、それは軍隊のような縦社会ではないと了解しておいてください。
言うなれば、放射状社会ですかね。
王を中心に貴族が散らばっていて、身分によって王までの近さが違う。
そして王と貴族の間に他の貴族が入る事はない。
そんな感じです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。