早いもので魔法を習い始めて2年が経ちました。
カミル・ド・アルテシウム、7歳です。
細かい事ですが、ここで言う『年』という単位は365日ではありません。
コチラの世界、ハルケギニアの暦は12の月と4の週、8の曜日から構成されていて1年は384日。
地球より19日ほど多い勘定になります。
公転周期、地球と違うんですね。
興味深いです、はい。
こう言うと「では自転は?」と続けるのが自然な流れですが、こちらの検証には絶対的に必要なものがあるのがお分かりになるでしょうか。
そう、時計です。
原作では登場しなかったので、どうしているのか皆さん疑問だったと思いますが、コチラの世界にも時計に相当する物はちゃんとありました。
まぁ、そうですよね。
ないと困りますもんね。
照明器具である『魔法のランプ』とセットで貴族の部屋の必須アイテムとなっている『魔法の振り子』。
減衰せずに一定の間隔で振動し続ける振り子を自動でカウントするマジックアイテムです。
こういう発明は自然現象からヒントを得るものですから、考える事が似通ってしまうのは歴史の必然なのでしょう。
単位は『スコンド』『ミニュット』『クル』と大きくなって行き、100スコンドで1ミニュット、50ミニュットで1クル、20クルで1日という計算になっています。
最小単位で比較すると地球での1日は86400秒ですが、ハルケギニアではきっちり10万スコンド。
数字が揃ってるのって、気持ちが良くないですか?
そして脈の速さや「いち、に、さん」と口ずさむ感覚的な速さで比較する限り、秒とスコンドにそこまでの差は感じられませんでした。
つまり1日が2割ほど長い事になります。
その場合「地球より自転の速度が遅い」と評すればいいのか、「速度は同じですが立っている惑星のサイズが大きい」と評すればいいのかは迷う所ですね。
とりあえずこれら、公転と自転の周期から分かる事は「ゼロの使い魔の世界は地球のあったかもしれない可能性の一つ」と言う考察は真っ向から否定されると言う事です。
惑星の規格が違いますからね。
それはもう別の星です。
衛星である月も二つありますし、当然と言えば当然ですが。
『魔法少女リリカルなのは』の設定のような多次元理論とまでは言いませんが、きっと地球と同時に存在する遥か宇宙の彼方、無数にある星の中の一つなのでしょう。
もしかしたら遠い未来で『超時空要塞マクロス』の様に移民船団が組まれたあかつきには、たどり着けるかもしれません。
まぁ虚無の魔法でならそんな事しなくても行き来できるわけですが。
さておき、自分で覚えられない様な魔法については宇宙の果てにでもうっちゃっておいて、系統魔法の話をしましょう。
魔法を習い始めて2年、雨にも負けず風にも負けず……とは言いませんが、家の事情やグレゴワール教官にどうしても外せない用事がある場合を除き、午前中だけとは言え休日である虚無の曜日以外、毎日欠かさず魔法の訓練に勤しんできました。
まぁ、そうは言っても1日3時間くらいですけど。
午後は貴族にとって必要な知識や技術を学ぶための時間なので、言い方は悪いですが魔法に構っている余裕はありません。
そして子供らしく夜は眠くなってしまうので、夜間特訓とかは論外ですね。
背、伸びなくなったら困りますし。
原作の女性メンバーの中で1番背の高いキュルケ嬢が170ちょっと。
当然ハイヒールを履くでしょうから、ダンスパートナーの理想としては180くらいが目安でしょうか。
遺伝子的には問題ないので、後は健康的な生活を心がけるだけです。
と言いますか、不摂生をするだけの娯楽がないので生活スタイルは自然とそうなるんですけどね。
娯楽が少ないというデメリットが、まさかこんな所で役に立つとは……。
まぁ全然嬉しくありませんが。
テレビやラジオとは言いませんが、せめてもう少し実用書ではない本のバリエーションをお願いしたい所です。
大人向けの破廉恥な描写のある本は当然読ませてもらえませんし、子供向けの本は冒険譚や偉人の伝記がほとんどで、この2年で正直飽きてしまいました。
私としてはミステリー、しかも社会派ではなく本格派の「謎ありき」「これぞミステリー」みたいなものが読みたいと思う今日この頃です。
コチラの世界は魔法のあるファンタジー世界ではあっても虚無魔法を除けばテレポートは出来ないわけですし、高位のメイジのかけたロックを低位のメイジのアンロックでは解けないわけですから、十分ミステリー小説が書けると思うんですよね。
例えば、こんな感じです。
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吹雪によって外界と閉ざされた貴族の館でスクウェアメイジである当主が死体で発見される。
当日の朝、メイドが定時に寝室へ向かったところ、当主は不在。
そんな事は今まで一度としてなかったため急遽屋敷中を探す事になったが、しかし結果は芳しくなく、最後に残されたのは鍵のかかった書斎。
当主は普段から書斎で仕事をする際は部屋にロックの魔法をかけ誰も同席させる事がなかったのは周知の事実だ。
ドア越しに呼びかけるが返答もなく、もし室内でサイレントの魔法を使われていたらどうしようもない。
しかし室内で意識を無くしている可能性を捨てきれない以上このままと言うわけにもいかないが、スクウェアメイジのかけたロックを解除する方法がない。
仕方なく最終手段を取るための許可を当主の子息である長男、次男、三男に取り、了承が取れたためドアを壊して侵入した所、机に突っ伏す形で頭から血を流して事切れている当主の死体を発見した。
その場で確認した事だが、窓は扉同様ロックがかけられており、隠し部屋の類は存在していなかった。
凶器は床に転がっている血の付いた抱えるほどの大きさの花瓶だろう。
当主の死体は明らかに他殺である事を示唆している。
そして現場はロックの魔法による密室。
当然、犯人は屋敷内にいるメイジと考えられた。
しかしここで問題になったのがメイジの格だ。
現在屋敷にいるメイジは、ラインの長男、トライアングルの次男、ドットの三男、ラインのメイド長、ドットのメイドが3人。
つまり誰が犯人だろうと当主のかけたロックの魔法を解除できないのだ。
このままでは手詰まりなので、情報収集がてらメイドの噂話をまとめてみる。
①長男は父親に任された内政の仕事で大きなミスをして皆の前で叱責され、恥をかかされたことを不満に思っていた。
②当主はこのまま長男に後を継がせることに不安を感じていた。
③次男はメイジとして自分の方が優秀なのに、自分に劣る長男が後を継ぐ事を不満に思っていた。
④長男と次男の兄弟仲は最悪であり、次男は父親に対しても含む所があったようだ。
⑤三男は体が弱くメイジとしての才能にも恵まれなかったが、頭脳は明晰であったため書類仕事の面でよく父親をサポートしていた。
⑥三男は専属のドットメイジであるメイドとただならぬ関係である。
お話の語り部である探偵役は最近代替わりした新米執事。
魔法は使えないが、メイジ殺しと言って差し支えない実力を有している。
謎解きの前に立ちふさがるロックの壁だが、死体の状況から違う答えを導き出す。
当主は死体の状態を見る限り後ろからの不意打ちで殺されていた。
これはロックの魔法を何らかの手段で解除して侵入していた場合には不可能ではないだろうか。
つまり、ロックを解除したのは当主自らで、招き入れられた犯人は隙を見て当主を殺害、自分でロックをかけて偽装したのではという推理が成り立つ。
そこで注目されたのが、使用人が扉を破壊する許可を3人の息子たちに求めた時の会話。
試しにアンロックの魔法をかけてみる事すらせずに破壊を勧めた人物はいなかったか。
皆が自らの記憶を掘り起こした結果、視線が三男に集まる。
普段寂しげな微笑みを浮かべていた表情は抜け落ち、次いで観念したのか罪の告白を始める。
自分は体も弱く魔法もろくに使えない。
貴族の三男と言っても婿に行く事も出来ない。
だからこそ少しでも家の役に立とうと学を付け頑張ってきた。
そんな未来のない自分の気持ちを理解し、側で献身的に支えてくれたメイドと恋に落ちた。
しかし当主である父は平民との結婚を認めてはくれなかった。
あまつさえ、二人の仲を引き裂くために彼女に暇を出し、自分には小さいが領地を分け下級貴族から嫁を取ろうとなどと言ってきた。
情けない事だが、自分では彼女と逃げても生きていける自信がなかった。
だから彼女との未来を守るためにはこうするしかなかったんだ――――――――――――と。
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ちょっと練り込みは甘いですが、とりあえず私がどんなものを求めているかは分かってもらえたと思います。
どなたか書いてもらえませんかね。
私のお小遣いじゃ作家の卵を囲ってパトロンなんてのは無理ですし、我慢するしかないんですかね。
刺激が少ないと脳の情報伝達物質ニューロンの発達に悪いと言うのに……。
こほん、盛大に話が逸れてしまいましたね。
系統魔法の話です。
2年の訓練の結果、私ことカミル・ド・アルテシウムは晴れてドットメイジになる事ができました。
ぜひ盛大な拍手をお願いします。
7歳でドットメイジ、なかなか良い滑り出しではないですか?
系統は予想通り水でした。
この『ドットメイジになる』という感覚は言葉で伝えるのが難しいのですが、魔法を唱える際のイメージの中で、系統ごとに色の分かれたカラーボールがぽっかり空いている穴にハマる感じと言えば想像がつくでしょうか。
ちなみに、そのカラーボール自体、まだブルーのものしか頭に浮かんでこない状態です。
魔法はとても感覚的なモノなので、このイメージもきっと私だけのものなのでしょう。
他の色のボールや穴が増えたら掛け合わせとかも出来るようになるんですよね。
あぁ、子供の様に胸が高鳴ります。
実際、子供なんですけどね。
とりあえず、これを励みにこれからも頑張って行こうと思います。
そういえばお酒についてご報告があります。
なんと、シャンパンとグラッパが今年から本格的に販売目的で作成される事になりました。
わぁ~~パチパチパチパチ~~。
……自分でやるとなぜか虚しいですね。
私、気にしませんっ!!
シャンパンについては熟成させる時間も必要ですから、今年から販売ルートに乗るのはグラッパだけですが、お目出度い事に変わりはありません。
グラッパはワインを作る際の絞りカスが原材料ですから価格設定は低め……と言いたい所ですが、アルコール度数が高くワインよりも少量で酔っ払ってしまう事から客単価が下がってしまう事は目に見えていますから、そこは高めに設定してあります。
ワインのグラス1杯とグラッパのダブルが同じくらいが目安ですね。
ただし、店側には初回特典として5本に付きお試し用で1本を無料でサービスします。
さらに試飲用の小さな専用グラスも10個付けちゃうという大盤振る舞い。
まずは試してもらわないと話になりませんからね。
もちろん王室や有力貴族には先に配る予定です。
こういう手間を惜しむと後で余計な軋轢の原因になるからと、お母様が色々と手を回していらっしゃいます。
お母様、さすが抜け目がないです。
先に自分でも嘆いたように、ハルケギニアには娯楽がほとんどないですから新しいお酒は話題になるのは確実です。
とは言っても、今はまだ不安と期待でソワソワと落ち着かない気分です。
マールは熟成した時の味の変化の確認中でまだ様子見ですが、売り出す事は決定なので数は仕込んであります。
リキュールは色々と研究中ですが、お父様が楽しそうですし何年もしないうちに形になると思います。
ブランデーは、私の我がままで端っこの方でこっそり続けていますが、超限定生産のプレミアものになるか私専用になるかはまだ未定。
焦っても仕方のない事ですから地道に行こうと思います。
死亡フラグさえ回避できれば10年20年とかかっても問題ないですからね。
お酒についてはとりあえず形になってきましたから、少し今後の展開に思考を向けようと思います。
あぁでも別に今すぐ何かすると言うわけではなくて、将来的な意味でです。
まず前提条件として、前世での技術はあまり持ち込みたくありません。
分かり易い所だと、武器や移動手段の発展は直に戦争に繋がってしまう危険があるので基本的に全面却下です。
ちょっとした諍いから仮に戦争に発展したとしても、移動には時間がかかり、それには膨大な食糧と兵士への給金が必要になります。
つまり簡単に殺せる武器と簡単に移動できる手段がないという事は、この点で遠まわしに戦争の抑止になるという事です。
ここからは前に話した事と重複する部分がありますが、領地を統治している貴族がある程度の善政を敷けば、ハルケギニアはとても安定した世界と言えると私は思っています。
人口は増え過ぎず、土地も足りなくならない。
それだけで戦争をする理由を1つ減らしています。
発展する事と幸せになる事はイコールではありません。
農業や工業の発達で平民の生活が潤い、初等教育がなされ、魔法に頼らない土地の、建物の、交通の、自衛手段の開発が進むと、世界が開かれると同時に確実に狭くなります。
そして足りなくなれば、当然他から調達する事になります。
つまり戦争です。
人は誘惑にとても弱い。
そして同時に酷く貪欲です。
生活に余裕が出れば出るほど新しい刺激を求めるでしょう。
身近な所で簡単に想像がつくのがギャンブルです。
ハメる人、ハメられる人、巻き込まれる人。
そして人身売買や娼館が増えるでしょう。
後は麻薬ですか。
お金が全ての基準になり、他者の思いを平然と蔑ろにする。
そんな腐った社会はごめんです。
前世で学んだ歴史をわざわざ繰り返す必要はありません。
魔法があるせいで貴族と平民の人種差別はありますが、魔法があるおかげで科学技術の進歩を止められているこの世界。
戦争と闘争は人の性(さが)です。
でも、この世界ならそれを最小限に抑えられる。
大海には出ず、エルフのいる砂漠も越えられない閉じた世界。
この箱庭に過剰な発展は必要ないと私は思います。
原作のコルベール教諭のような天才の出現も歴史の必然ではあるのでしょうが、少なくとも私のいる間は安易な発展は出来れば止めたいと思います。
説得できるといいのですが、もしできなかった時は……。
おっと、思考がダーク面にいってしまったようです。
こほん、仕切り直します。
えっと、つまり何が言いたいかと言うと、世界に影響を与えない範囲で自分の領地を潤わせるためには何が出来るのかという話です。
バランス感覚が大事ですね。
生き残る事だけではなく、その先の未来も出来たら幸せでいられたらいいなと思っています。
内政チートって普通だったら戦争まっしぐらですよね。
土地が限られていると言うのが最大のネックです。
他のサイトで連載されているアンリエッタの兄に転生した話のSSでは、その辺ガッツリ練り込まれていて感心してしまう。
この作品では、6000年続いたハルケギニアのシステムを壊したくないと言うスタンスでいます。
決して腐敗した貴族を擁護するつもりはありませんが。
そしてゲルマニアが邪魔ですね。
プロットは一応出来ていますが文章に起こせるか謎……。