二度目の人生は長生きしたいな   作:もけ

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5歳、現状確認と行動開始

 いや~~、転生早々死ぬかと思いました。

 

 え? あぁ、いきなりそんなこと言われても困りますよね。

 

 説明しますと5歳の誕生日からこっち、一週間にわたってインフルエンザ並みの高熱で倒れていました。

 

 しかも表面上の症状としてはただの熱なのですが、実際はそうではなくて、前の記憶やら何やらその他もろもろマルッとひっくるめて頭に送り込まれていました。

 

 いえ、強制的に思い出させられたと言った方が正しいのかもしれません。

 

 頭の中の事ですから証拠やら証明やらと言われても困るのですが、感覚としては一週間前の自分と今の自分に齟齬は感じられません。

 

 体の外見は変わってしまってもその中身、この場合は魂でしょうか? それは同じだったって事なんでしょう、きっと。

 

 これぞまさしく転生ですね。

 

 え? よく分かない?

 

 そうですか……どう説明したらいいですかね。

 

 記憶やその時の感情なんかを脳内で追体験する事によって同じように成長したって言うのがイメージに近いでしょうか。

 

 その証拠に、生まれ直してからの5年間分の記憶や感情もしっかりとありますし、齟齬もありません。

 

 分かり易い例えを挙げると、お父様とお母様、ジュリア姉様に対して家族としての愛情を感じているということです。

 

 もちろん前世の家族に対しても変わらず愛情を感じていますが、そうですね……それはそれ、これはこれと言いましょうか、単純に家族が増えた感じですかね。

 

 まぁ、あちらの家族にはもう会えないわけですが。

 

 自分としては死別をしたわけではないので、遠い地で元気にやっている事を祈るばかりです。

 

 さて、根底が違うのならその後の成長も違うだろうという野暮なツッコミは聞きません。

 

 前の自分と今の自分、情報量で言えば圧倒的に前の方が多いのですからメインになってくるのはおのずと前という事になるのは自然な事でしょう?

 

 なんて、それらしい理由を考えてみた所で結果としての自分が今ここにこうしている訳ですから過程は無視しても問題ないでしょう。

 

 その過程のせいで、頭ん中はグルグルのグチャグチャ、熱で間接が痛い怠い動けないという転生早々死ぬかと思った一週間を過ごした事も、まぁ過ぎてしまえば些細な事です。

 

 もうちょっと優しい方法はなかったのでしょうかとは思いますけど。

 

 せめて半分が優しさで出来ている某解熱剤くらい……。

 

 水の秘薬と言うのでしょうか? そういったこちらの薬は飲ませてもらったのですが残念ながら効果は芳しくなく……。

 

 まぁ何とか無事にダウンロード? インストール? 出来たのですから文句を言うのは罰当たりなのかもしれません。

 

 さてさて、ではさっそく死にそうになりながら思い出した情報と現状のすり合わせをしておきましょう。

 

 まず初めに、ここはどうやら『ゼロの使い魔』の世界みたいです。

 

 魔法が使えて、ドラゴンやエルフ、精霊なんて不思議生物がわんさかいるファンタジーな世界で、でも他の作品と一線を画すように地球から銃や戦車、戦闘機なんてものが送り込まれているトンデモ設定なライトノベルの中の1作品ですね。

 

 ちなみに、そう考えた理由は単純に固有名詞が一致したからと、杖による魔法とその発動ワード。

 

 ハルケギニア、トリステイン、アンリエッタ姫、レビテーション、フライ、錬金などなど。

 

 よくある二次創作の様に、似て非なる世界かどうかは確認のしようもないですが、まぁ本物だろうと偽物だろうと世界観が同じなら認識としては問題ないでしょう。

 

 原作をしっかり覚えているわけではないですが、アニメ4期を全部見て二次創作も読むくらいには好きな作品だったのでちょっと嬉しいです。

 

 『かなり』じゃなくて『ちょっと』と言った理由は、医療や食事、娯楽といった文化レベルの低さや、戦争といった死亡フラグの多さがマイナス要因になっています。

 

 サービスなのか何なのかアンリエッタ姫と同い年の様なので、このまま行けば動乱の時代にまっしぐらでしょう。

 

 某苦労学生の口癖を真似て「やれやれ」と肩をすくませて言いたくなる気分です。

 

 まぁ基本的には他人任せで、虚無の使い手にして物語のヒロインであるルイズ嬢とその使い魔『神の左手』ガンダールヴにして主人公のサイト少年が何とかしてくれるだろうと高を括っていますが、モブキャラであろう自分の将来については不安が募ります。

 

 戦争が起こった場合、貴族である以上参加は避けられないでしょうし……。

 

 原作メンバーについては友誼を結ぼうとは思いませんが、じゃあ全く関わらないのかと聞かれればそれはそれで寂しいと思ってしまう俗物な自分。

 

 別に一緒にアルビオンに行ったり、水精霊騎士団に入りたいとは思わないのですが、出来れば原作キャラをちょっと遠くからでもいいから見ていたいと思うのは人情というものでしょう。

 

 特にエルフ耳でサイト少年に「胸革命(バストレボリューション)」とまで言わしめたティファニア嬢にはぜひ一度会ってみたいものです。

 

 煩悩9に知的好奇心1という割合でしょうか。

 

 ツンデレより素直&純真系、レモンちゃんよりメロンちゃんです。

 

 さておき、次は自分と家族のことを少々。

 

 今生の私はトリステインの伯爵アルテシウム家の長男カミル・ド・アルテシウムとして生まれました。

 

 父のダニエルは濃い金髪に童顔糸目でひょろりとした体形。

 

 たまに見開かれる瞳の色は鳶色ですかね。

 

 ホントにたまにしか見られませんが。

 

 糸目の人って、ちゃんと見えているか心配になります。

 

 お父様は悪い人ではないんですが、何よりも自分の研究を優先するタイプです。

 

 とは言ってもどこぞのマッドサイエンティストというわけではなく、領民が困っているのをチャンスと捉え役に立ったり立たなかったりする物を押し付けては試させるといった感じで、領民には呆れられながらも嫌われてはいないみたいです。

 

 メイジとしては土のトライアングルと水のドット。

 

 やっぱりこの世界で科学者と言えば土メイジですよね。

 

 錬金、仕組みは謎ですが汎用性が高く素晴らしい魔法です。

 

 母のイレーヌは腰まである薄い金髪に碧眼。

 

 優しい微笑みをいつも浮かべていて、これぞ貴族といった雰囲気のとても綺麗で絵になる人……なんですが、その実、裏のボスと言いますか、実権は全て掌握していらっしゃいます。

 

 たまに父に見せる微笑みながらプレッシャーをかける姿は傍目で見ていても恐ろしいの一言。

 

 あの眼力はぜひ見習いたいものです。

 

 メイジとしては水・風・土のラインと万能の才能の持ち主。

 

 ソツないお母様らしいです。

 

 10歳年上の姉のジュリアは外見こそ母親似ですが、誰に似たのかポジティブでアクティブでエネルギッシュで楽しい事が大好きなお転婆さんで周りを振り回すタイプ。

 

 自分にとっては歳が離れているのによく一緒に遊んでくれる優しいお姉ちゃんですかね。

 

 でも今年から魔法学院に通っているので、残念ですが今は家にいません。

 

 お姉ちゃん子の自分としては寂しい限りですが、我儘を言ってどうにかなる事でもありませんし長期休暇を心待ちにしておきましょう。

 

 メイジとしては土のライン。

 

 入学したてでラインと言うのはかなり優秀な部類なのではないでしょうか。

 

 この先、お父様みたいに土メイジとして突出するのか、お母様みたいに万能型になるのか自分の事の様に楽しみです。

 

 ちなみに私の容姿も母親似で、薄い金髪に碧眼で自惚れではなくそこそこ顔も整っています。

 

 まぁまだ5歳ですからこの先どう転ぶかは分からないですが。

 

 5歳までの性格は、引っ込み思案とまではいかないまでも押しは弱い方で、ジュリア姉様に連れ出される以外は外で遊ぶよりも読み書きのできるメイドと一緒に図書室で本を読んでいる事が多い子供でした。

 

 そのおかげで年齢以上に文字が読めるのには正直助かりました。

 

 しかし読んでいた本が『イーヴァルディの勇者』を始め、おとぎ話が中心だったので知識としてはあまり役に立ちません。

 

 その辺はおいおい情報収集していきましょう。

 

 今後の方針ですが、アンリエッタ姫と同い年という事は我らがツンデレヒロイン、ルイズ嬢の1つ上という事になります。

 

 ルイズ嬢が憐れなる主人公サイト少年を使い魔として召喚するのは彼女が16歳、魔法学院2年目の春の事ですから入学自体は15歳。

 

 つまり私が16歳の春に入学すれば同学年になれるはずですね。

 

 そこから逆算するとサイト少年が召喚されるまでの準備期間は今から12年。

 

 いつ何に巻き込まれても生き残れる様に、それまでに出来るだけ魔法は使える様になっておきましょう。

 

 後はベタですが領地経営ですね。

 

 自由になるお金は多いに越した事はないですから。

 

 二次創作知識は伊達ではないという事をお見せしましょう。

 

 まぁ、せっかく2度目の人生なんですから今度こそ長生きできる様に頑張っていきましょう。

 




ゼロの使い魔のSSを書くにあたって、ハルケギニアとヨーロッパの違いって考えさせられるポイントだと思うんですよ。
船を使って海には出れず、砂漠化とエルフによってアジアにも行けない。
しかし海はまだしも砂漠化前ならアジア方面と交易を行っていたかもしれない。
フッと思い付く所だとシルクや茶葉、漢方に見られる香辛料など。
その辺をどう作品に反映させるのか。
史実では烏龍茶を運ぼうとして発酵が進んでしまい紅茶になったとかなんとか……。
それまではハーブティを飲んでいたのでしょうね。
ファンタジー世界なんでぶっちゃけ何でもアリですが、その辺のバランスが考えていて面白い所です。

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